妖怪と小学校教諭の共同生活
巣ノ本小学校で教師を務めている皆藤ゆりえは、恋人の本田元がポルトガルに出張して離れ離れになったことをきっかけに、一人暮らしのためにアパートに引っ越す。2階の角部屋で日当たりもよく、その割に家賃も格安という好物件に飛びついたゆりえは、「幽霊が出る」という噂も気にすることなく、意気揚々と引っ越しの作業を終える。その時、部屋に響いた子供のすすり泣く声に導かれるように押し入れを開けると、そこにはブカブカのYシャツだけを身につけた少年がいた。当初ゆりえは、妖怪を自称する少年の存在を受け入れようとしなかったが、生意気ながらも人懐こい彼と次第に打ち解け、「正太」と名付けて共同生活を送ることになる。
正太と交流のある妖怪たち
ゆりえは、正太と共に生活するにつれて妖怪のいる日常に慣れていくが、正太以外の妖怪の存在を信じていなかった。そんな中、アパートの押し入れから唐突に正太の母親を自称する、ろくろ首の梨奈が現れる。ゆりえは梨奈に警戒心を抱くものの、酒を酌み交わすことですぐに打ち解け、梨奈が恋人ののっぺらぼう・慎と共に、正太を二人の子供として育てようとしていたことを知る。梨奈の話を聞いたゆりえは、人間と妖怪の常識や考え方は違うものの、心根の部分はほとんど変わらないことを実感する。
心に闇を抱えた児童たち
本作には、妖怪と共に環境に問題のある子供が登場する。巣ノ本小学校とは別の小学校に通っている天神竜子は、心霊現象に興味を持っており、当初は学校でも心霊系の物知りとして人気を集めていたが、次第に白い目で見られるようになり、やがて学校で孤立してしまう。また、巣ノ本小学校に転校してきた草野恭は、実の母親の無理心中に巻き込まれかけたことから、生きることに希望が見いだせずに無気力な状態が続いている。彼らが正太やゆりえとの交流を通じて、希望と居場所を取り戻す姿が見どころの一つとなっている。
登場人物・キャラクター
正太 (しょうた)
妖怪を自称する少年。全裸にブカブカのYシャツを着ている。物心着いた時から皆藤ゆりえが引っ越してきたアパートの押し入れに住んでいるが、なぜここに居るのかはまったく覚えていない。物おじしない性格で、人間妖怪問わず誰とでもすぐに打ち解けるほどコミュニケーション能力が高く、ゆりえと共同生活を始めてからは、巣ノ本小学校の校長や児童たちとすぐに仲よくなった。一方で、納得できないことを一切譲らず、一人前の男になりたいとの願望も強いため、ゆりえに近づく男性に嫉妬するといったおませな一面を持つ。趣味はテレビ鑑賞で、お笑い番組と相撲の中継が大好き。
皆藤 ゆりえ (かいとう ゆりえ)
巣ノ本小学校で教師を務める女性。現在のアパートに引っ越して以来、押し入れに住んでいた正太と共同生活を送っている。実直な性格で面倒見がよく、教え子たちからは慕われ、校長や同僚の教師たちからの人望も厚い。両親はすでに他界しており、10歳離れた弟・皆藤檀の面倒を母親代わりとして見てきたが、檀の度が過ぎるシスターコンプレックスぶりには辟易している。本田元とは大学時代からの付き合いで、大工の元がポルトガルの世界遺産の修復に行ったことで離れ離れになってしまうが、現在も彼を忘れられずにいる。
書誌情報
おしいれのわらしさん 全3巻 KADOKAWA〈MFコミックス フラッパーシリーズ〉
第1巻
(2010-12-22発行、 978-4840137232)
第2巻
(2011-06-23発行、 978-4840140096)
第3巻
(2012-01-23発行、 978-4840144049)