作品誕生のいきさつ
本作『曰く付き物件の夜黒さん』は、作者である姉子のTwitterおよびPixivアカウントで公開されていたショートコメディ作品で、姉子が初めてきちんと制作した漫画となる。Twitterで投稿された第1話が10万いいね、Pixivでの累計閲覧数が100万を超えたため、書籍化が決定した。なお、姉子本人はホラーが苦手なため、夜黒の作画にあたってはホラー作品を資料にすることができず、自分の髪をボサボサにした写真を参考にしたと語っている。
あらすじ
第1巻
大学生の零菅友輝は、通学のためにアパートに引っ越してきた。ある日の夜、就寝していた友輝はブツブツと呟くような誰かの声に目を覚ます。するとそこには長い黒髪で顔を隠した、白いワンピースの女性霊が立っていた。しかし、それを目にした友輝は感激のあまりその女性霊に飛びつき、ずっとそんな女性霊に恋い焦がれていたことを告白する。生前の記憶がないという、その女性霊に「夜黒」と名前をつけた友輝と、そんな友輝にドン引きする地縛霊の夜黒は、奇妙な同居生活をスタートさせる。(エピソード「1話」。ほか、18エピソード収録)
登場人物・キャラクター
零菅 友輝 (れいかん ゆうき)
夜黒に恋している男子大学生で、オレンジ色の髪をしている。昔、姉に無理やりホラー映画を見せられた際、恐怖心を恋心だとカンちがいしてしまう。それ以来、白いワンピースを着た黒髪ストレートの女性霊を探し続けていた。そのため、「入居者は白ワンピースで黒髪ストレートの女性霊に呪い殺される」とネットで噂になっていたアパートにあえて入居した。夜黒に一目惚れし、夜黒の一挙手一投足すべてをかわいいと思っている。生前の記憶がない夜黒に、名前がないと不便だからと「夜黒」と名づけたのも零菅友輝である。入居当初、夜黒が金縛りや、心霊現象を起こして追い出そうとしても毎回喜んで受け入れていた。ストーカー気質があり、夜黒に連絡を取るために留守番電話を使用すると、必ず録音される内容は不審者を思わせるものとなる。夜黒に出会う以前は霊に会いたい一心で、何度も降霊術を行っていた。友人の久我通からは「レイ」と呼ばれている。
夜黒 (やくろ)
女性の地縛霊で、零菅友輝が住む部屋に取り憑いている。白いキャミソールワンピースに黒のロングストレートヘアで、人を驚かせるときは髪全体を顔に垂らす。生前の記憶がまったくなく、名前も思い出せなかったため、友輝から「夜に溶けるような美しい黒髪」という意味で夜黒と名づけられた。呪い殺すまでの強い能力はないため、これまでは入居者を怖がらせては部屋から追い出し続けていた。友輝のことも怖がらせて部屋から追い出すつもりだったが、何をしても喜んでしまう友輝にうんざりし、同居生活を受け入れている。しかし友輝が、たびたび見せるストーカーじみた言動にはかなり引いている。ただし、友輝が入居してからというもの、友輝の外出中はテレビをつけて出掛けてくれるため、退屈がまぎらわされていることは喜んでいる。猫やぬいぐるみなどのかわいいものが好きで、かわいいものを見るとリアクションが大きくなる。
久我 通 (くが とおる)
男子大学生で、零菅友輝の友人。茶髪で少々目つきが悪い。空気が読めず、人との距離感も読めないため、入学してからしばらくたっても一人も友達ができなかった。どのグループにも所属できていないことに焦りを覚えていたところ、同じくグループに属さず、一人で行動している友輝に目をつけた。当初は強引に距離を詰めようとして友輝に困惑されていたが、久我通の住居で心霊現象が起きると知った途端、逆に友輝に興味を抱かれるようになった。ちなみに、通自身は霊感がまったくなく、下宿先の心霊現象疑惑もただ部屋がボロいというだけだった。しかしこの件で友輝との距離が縮まり、自他共に認める友人となった。