あらすじ
野宮と御子柴
全寮制の男子高校の2年生・野宮竜斗は、男子ばかりに囲まれ、恋愛とはまったく無縁の日常生活を送っていた。だが、そんな野宮を翻弄する人物がいた。それは寮で同室の御子柴奏で、男子でありながら女子顔負けのかわいらしさを誇る、いわば男子校のアイドル的存在だった。野宮はなぜか、御子柴を見るたびにドキドキしてしまうが、自分はホモではないと、野宮は頑なに御子柴への気持ちを認めようとしない。そんな中、御子柴は、女装姿でミスコンテストに参加したことがきっかけで、ファンが急増。邪な思いで御子柴に近づき、手籠めにしようとする輩から犯されそうになる事態に陥ってしまう。野宮はそんな御子柴をいつも助けることとなり、御子柴はいつしか野宮に思いを寄せるようになる。だが、二人は互いに相手がホモは嫌いに違いないと思い込み、自分の気持ちに蓋をして、ギリギリのところで平穏な寮生活を送っていた。一方、そのわかりやすい二人の言動から、周囲で生活を共にする友人からは二人が両思いであることは明白だった。そんなある日、中王子翔からの度重なる好きアピールに困り果てた御子柴は、野宮と付き合っているとウソをついて中王子をあきらめさせることに成功する。この一件をきっかけに、野宮は自分の中の御子柴への思いを認識し、無防備な御子柴に翻弄され続け、自分の体の暴走を止めるのに必死となっていた。一方の御子柴も野宮への気持ちを募らせていき、互いに自分の気持ちをごまかすことに限界を感じ始める。
同室
野宮竜斗と御子柴奏は理性を失い、むさぼるようにキスをしてしまう。そして自分の気持ちを隠し続けることに限界を感じた二人は、互いに告白を決意する。しかしその矢先、寮監・鬼束によって、寮内で同室の者が恋愛関係になった場合、別々の部屋に移動させるという新ルールが制定される。しかも野宮と御子柴の噂を聞きつけた鬼束は、ルール制定に先駆けて、二人の関係を厳しく問い詰める。そこで宮井雄大は、二人が付き合っているというのは噂であり、これまでのいきさつを説明したことで、野宮と御子柴は処分を免れるものの、二人はいっしょにいられなくなるかもしれないことへの不安を強く感じ始める。そんな中、京都への修学旅行で同じ班になった野宮と御子柴は、旅先でも行動を共にするが、寮での一件から二人を監視する鬼束は、粗探ししては何かと口うるさく突っかかり、結局宿泊先の部屋を別々にされてしまう。しかし、友人たちからの温かい応援と協力を得た翌日、野宮と御子柴は自由行動日を利用し、二人だけのデートを満喫する。こうして修学旅行は何事もなく無事に終了する。後日、生徒に温かい目を向ける養護教諭・熊田が、まじめがたたって暴走しがちな鬼束を一喝したおかげで鬼束の厳しい締め付けは多少ゆるみ、寮生活にも平穏が訪れる。そして野宮と御子柴も、互いに堂々としていたいからと、新たに鬼束によって改正された、著しく成績の落ちた者は即別居というルールにも負けないよう、必死に勉強に励んでいた。二人はお互いの距離を縮めながらも、あらためて自分の気持ちを相手に伝えようと、タイミングを探っていた。
登場人物・キャラクター
野宮 竜斗 (のみや りゅうと)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う2年生の男子。身長186センチで一見細身だが、実は筋肉質な細マッチョ。トレーニング部に所属しており、日々筋トレに明け暮れている。女子の柔らかいおっぱいが大好きなことを公言し、ホモではないと頑なに自分が異性愛者であることを信じている。以前、女装姿で校内のミスコンに参加した御子柴奏が、あまりのかわいらしさにその後、何度も同性から襲われるなどの危険な目に遭うようになり、彼を幾度となく助ける。そして、2年から寮が同室になった御子柴の言動に、精神的にも肉体的にも翻弄されることが多くなる。間違いなく御子柴に、ただの友達以上の感情を抱いているものの、自分の気持ちを認めることができないでいる。ただし、御子柴への気持ちを隠していると思っているのは野宮竜斗だけで、周囲の友人たちからは野宮の御子柴への気持ちはバレており、野宮と御子柴が両思いであることも知られている。中王子翔から御子柴へのアプローチがあまりにも激しいため、それを回避するための理由付けとして、御子柴と相談して自分が御子柴の彼氏であるという虚偽の関係を作り上げ、利用することにした。それ以来、何かと暴走しがちな御子柴への気持ちを抑えきれなくなり、御子柴との関係は虚偽のものから本当のものへと変化していく。御子柴に対して紳士でありたいという心とは裏腹に、体の反応は正直なため、日常的に自分の下半身の反応の素直さに困らされることが多い。
御子柴 奏 (みこしば かなた)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う2年生の男子。身長167センチの華奢なスレンダー体型をしている。ロリ系でおっぱいの大きい女の子が好みと公言している。1年生の時に校内で行われたミスコンテストに女装姿で参加して以来、あまりのかわいさにファンが急増。しかし、あわよくば手籠めにしようとする危険なファンが続出し、同性に襲われかけて身の危険を感じたことも少なくない。偶然にもそんな状況にあった自分を、野宮竜斗に助けられて以来、野宮に恋心を抱くようになった。2年から寮が同室になった野宮と生活することになるが、自分の気持ちを伝えることで野宮との関係性が壊れてしまうことを恐れている。そのため自分にとって、初恋の相手である野宮への思いは叶わないものとして自分の気持ちを心の内に留め、今の時間を大事にしている。ただし、野宮への気持ちを隠していると思っているのは自分だけで、周囲の友人たちからは御子柴奏の野宮への気持ちはバレており、二人が両思いであることも知られている。日常的に中王子翔からの好きアピールがあまりにも激しいため、それを回避するための理由付けとして、野宮からの提案で、野宮が自分の彼氏であるという虚偽の事実を作り上げ、利用することにした。それ以来、野宮に対して何かと暴走しがちになり、同様に御子柴への気持ちを抑えられなくなった野宮との距離感は少しずつ縮まり、二人の関係は虚偽のものから本当なものへと変化していく。何も考えずに行動する暴走気質で、我に返って赤面することも多い。奈良漬で酔ってしまうほど酒に弱く、酒に酔うと好きなものは好き、嫌いなものは大嫌いと理性のセーブが利かなくなる。学校では大学と提携している英会話部に所属しているため、日常会話程度なら英語で話すことができる。野宮からは「柴」と呼ばれている。
森下 凛太郎 (もりした りんたろう)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う男子。寮では岩間と同室で生活している。長めのマッシュルームヘアで、前髪で目元まで隠れているため、表情が読みづらい。オタク気質のサブカル男子で、盗撮魔でもある。ボーイズラブ趣味の腐男子でもあり、校内の生徒のデータを基に、全員をホモ化したオリジナルの「男子図鑑」をひそかに作成中で、その中には受けや攻めといった腐男子ならではの表記もある。野宮竜斗に御子柴奏の女装写真を手渡し、何かと二人にかかわっている。実は野宮と御子柴が両思いであることも知っており、早く二人にイチャイチャしてほしい思いがあり、完全に自分の趣味を目的に二人を焚きつけようとしている。高校では大学と提携しているアプリ開発部に所属し、部活で開発したアプリの収益を給与としてもらっている。
宮井 雄大 (みやい ゆうだい)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う2年生の男子。寮長を務めている。ハイスペック男子で顔面偏差値も高く、周囲のあこがれの存在。宮井雄大自身がゲイであることを公言している。周囲からの信頼も厚く、カリスマ性がある。野宮竜斗と御子柴奏が両思いであることに気づいており、二人の関係がなかなか進展しないことにやきもきしながら、早くラブラブにならないかと見守っている。野宮を焚きつける目的で、意図的に御子柴に近づいたり、せまろうとしたりするが、なかなかうまくいかずにじれったい思いをしている。野宮と御子柴から互いの恋愛感情について相談を受けることになり、二人にとってよき相談相手となる。どんなときも当事者の側に立って物事を考え、対処する冷静さを持ち、人間味にあふれている。トレーニング部に所属しており、日々筋トレに明け暮れているため、筋肉質のマッチョな体型をしている。宮井自身の初体験は中学3年生の時で、相手は家庭教師の男性だった。
中王子 翔 (なかおうじ しょう)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う男子。寮では佐藤と同室で生活している。バスケットボール部に所属しており、イケメンながら残念な性格から、校内では「残念イケメン」「愛すべきバカ」という位置付けで、「バカ王子」と呼ばれている。一時的に寮からいなくなったが、無事に帰寮した。女装した御子柴を本気で女子と思い込み、女子として扱っている。御子柴は女子という考えのもと、男ばかりの環境下に御子柴を一人にしておくのは危険だと、やたらと心配している。これまで御子柴に何度も告白しては玉砕されているが、しつこくアプローチを繰り返して御子柴を困らせている。趣味はAV収集とAV鑑賞で、かわいい女子と猫が大好き。女好きの自分が、男に惚れるわけがないという思い込みの力が働き、御子柴を女子として扱うことで自分にとって都合の悪い事実をないものとしていた。しかし目の前で、御子柴と野宮竜斗のラブラブな関係性を見せつけられ、さらに御子柴が男子であることを認識させられたことで、ようやく失恋を自覚。あらためて自分が同性も好きになれるという事実を受け入れた。その後、それをポジティブに考えるようになり、以来AVは男性同士の作品も鑑賞するようになる。さらに、AVで女性側の気持ちにも着目するようになり、野宮の下半身に強い興味を示し、見せてほしいと詰め寄るようになる。
熊田 (くまだ)
桐浜高校で養護教諭を務める中年男性。生徒たちからは、親しみを込めて「熊ちゃん」と呼ばれている。髭面でがっちりした体型ながら、言葉遣いは女性っぽく、いわゆるオネエ。物腰は柔らかいが、力は非常に強い。基本的に生徒たちの立場で物事を考える、生徒にとって頼もしい存在。野宮竜斗と御子柴奏の関係も察しており、理解した上で温かく見守っている。修学旅行先では、ジェンダーレスとして大浴場の入浴を配慮してもらい、特別に個室の利用を許可された。また、露天風呂付きの部屋にアップグレードした。修学旅行中、野宮と御子柴の行動を監視し、暴走しがちな鬼束を諌め、鬼束の暴走はひとまず収まることとなる。実は鬼束は、同じ男子校出身の後輩にあたる。まじめすぎる鬼束を見かねて指導を行い、その後はうまくコントロールしている。
岩間 (いわま)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う男子。寮では森下凛太郎と同室で生活している。表情に乏しく、何事にも動じない寡黙な人物で、裏表のない性格が評価されて周囲からの信頼を集めている、現代版硬派。スキあらば同室の森下がオタクグッズで自分の机まで占領するため、ちょっと困っている。
美作 (みまさか)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う男子。自他共に認める男の娘マニアで、校内のミスコンテストに出場した御子柴奏の女装姿を見て以来、御子柴に惚れ込んでいる。日常的に自作の衣装を持ち歩き、人のためになるからとめちゃくちゃな理由を付けて、御子柴に繰り返し女装をせまっている。何度断られてもあきらめることなくせまり続け、修学旅行先では、野宮竜斗が期待していたとウソをつき、御子柴に浴衣で女装させることに成功した。衣装の制作だけでなく、メイクの腕前もかなりのもの。
佐藤 (さとう)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う男子。ミスター平凡で、寮では「バカ王子」と呼ばれる中王子翔と同室で生活している。奇跡的に中王子との関係性も良好。中王子が寮をしばらく不在にしていたため、単独で部屋を使って穏やかで静かな日常を満喫していた。しかし中王子が帰寮し、再びバカでうるさい中王子との生活に戻ったことに絶望する。繊細な性格ながら世話好きで、周囲には「オカン佐藤」と呼ばれている。
ぶさぶさ
全寮制の男子校・桐浜高校に通う二人の男子。宮井雄大の熱狂的なファンとして有名で、本名はそれぞれ「延里」「渋沢」。赤の他人だが、なぜか顔がよく似ていることから、意気投合した。二人の苗字を合わせ、周囲からは「ぶさぶさ」と呼ばれている。オネエ口調でしゃべり、二人そろうとなぜかとてつもない威圧感を放つ。カゼを引いた宮井を御子柴奏が看病したという噂を聞きつけ、御子柴に対し、宮井はみんなのものだから抜け駆けしないようにと釘を刺した。それ以来、御子柴を勝手にライバル視している。
八尾 (やお)
とある女子高に通う女子。バスケットボールの試合観戦に行った際、桐浜高校の宮井雄大たちと知り合い、友人も合流して試合の打ち上げに参加することになった。同席した野宮竜斗が気になり、積極的に声をかけた。最終的には野宮にフラれることになるが、実はボーイズラブが大好きな隠れ腐女子で、フラれたことはさておき、野宮と御子柴奏の関係を察して内心ほくそ笑んでいる。
鬼束 (おにつか)
全寮制の男子校・桐浜高校に副寮監として就任したばかりの男性教師。生徒にとっては面倒くさい系の堅物教師で、生徒たちからは「鬼セン」と呼ばれている。トレーニング部の副顧問を務めており、筋肉を愛している。実はバツイチの離婚経験者で、宮井雄大のカリスマ性には人知れずあこがれを抱いている。寮生の中に、セックス未遂事件を起こした同性カップルがいたことをきっかけに、寮で恋愛関係になった場合、別々な部屋に住むという新ルールを設定しようとした。その上で、交際中との噂がある野宮竜斗と御子柴奏が同室であることを危惧している。二人の関係を確認した際、御子柴が自分のファンから襲われるのを防ぐためについたウソであるという宮井の言葉を信用し、その時はおとがめなしとしたが、その後も二人の行動をしつこく監視している。頑なな性格から、二人のことに関しては暴走しがちで、修学旅行先では御子柴と野宮を別室に移すなど、暴挙に出た。実は、熊田は同じ男子校出身の先輩にあたる。熊田からは「鬼ちゃん」と呼ばれ、のちにまじめすぎる性格を正され、熊田にうまくコントロールされるようになる。
三バカトリオ (さんばかとりお)
全寮制の男子校・桐浜高校に通う三人の男子。なかよし三人組で、周囲からは「三バカトリオ」とも呼ばれている。メンバーは、そそっかしい一之瀬、影が薄い天然キャラの三村、リーダー的な存在の二階堂。修学旅行に参加した際、野宮竜斗や御子柴奏、宮井雄大、森下凛太郎と同じ班になり、行動を共にしていた。