イムリ

イムリ

支配民族の少年デュルクが、自分たちの星に住む民族と歴史、そして自分の出生にまつわる秘密を知り、孤独な戦いに身を投じる姿を描く。

正式名称
イムリ
ふりがな
いむり
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
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概要・あらすじ

支配民族カーマによって統治される星マージでは、カーマたちは他人の精神を操る能力侵犯術を使って、奴隷民族のイコルたちを支配し、階級社会を形成していた。マージの隣星ルーンは、古代戦争の際にカーマたちによって凍りついていた。4000年の時を経て、ルーンの氷は溶け始め、カーマたちは命の宿らない星マージを捨て、故郷であるルーンへの移住を始めていたが、そこにはかつてカーマとの戦争に敗れたルーンの原住民イムリたちが暮らしていた。

支配階級の家に生まれたデュルクは、マージの支配者である呪師となるための学校に通い始めたばかりの少年だったが、非凡な才能を発揮してルーンへの研修旅行に選抜される。

カーマの民であることを誇りに思っていたデュルクだったが、カーマが隠していた古代戦争や支配体系、そして、自分の出生にまつわる秘密を知ってしまう。真実を知ったデュルクを、激動の運命が待ち受けているのだった。

登場人物・キャラクター

デュルク

ルーンの原住民であるイムリの少年で、離れた場所にいる肉親や恋人と夢の中で会話をすることができるという力を持つ。しかし、マージの支配者層たちの策略で出生を知らされずにカーマとして育てられ、権力者の息子として呪師となる教育を受けさせられている。光彩と呼ばれる、物質や生物が持つエネルギーを操る技術の才能が優れており、呪師の「候補生」としてルーンへの研修旅行に選抜される。 研修旅行中には、かつて古代戦争でイムリたちが使っていた兵器イムリの道具を探し出すという任務を与えられていたが、自分の出生を知り、カーマたちのイコルとイムリに対する暴政を目の当たりにしたことでカーマに反発、また、自分がイムリの道具を操る方法を発見してしまったことで、カーマたちから命を狙われることになる。

ミューバ

ルーンの支配者のひとりであるデュガロの養女でデュルクとは瓜二つの顔を持つ。実はカーマたちの策略で幼少期からデュルクと引き離されて育てられていたデュルクの双子の兄弟。たびたびデュルクの夢にあらわれていたが、デュルクがそれを自分の姿だと思い込んでいたために、女装をさせられるようになっている。 デュルクのことを幼少期から知っており、デュルクと一緒に暮らせる日を待ち望んでいた。しかし、カーマを裏切ったデュルクとは敵対するようになる。

ラルド

強力な侵犯術を操る男で、階級は「候補生」の上の「覚者」。デュルクの指導者として、ルーンへの研修旅行に同行する。支配者階級だが、イコルの血が混じった出自を持つ。奴隷階級にあるイコルの地位を向上させるためにカーマに仕えているが、その強力な侵犯術と忠誠心をカーマに利用されている。

イマク

ラルドに仕える人物。イコルの出身だが、ラルドと共にカーマに仕えることで奴隷化を免れている。ラルドに対する忠誠心は厚く、ルーンで起こったクーデターに巻き込まれ利用されそうになったラルドを守るために、舌を噛み切って自殺を遂げようとした。

オレイグ

デュルクの父で、カーマの支配者階級である「呪師衆」のひとり。実際にはデュルクを身ごもっていたピアジュを拉致し、イムリのもつ強力な能力を利用するために育てている。デュルクがカーマに反抗的な思想を抱いていないか調べるために、定期的にデュルクに侵犯術をかけて調べている。

ピアジュ

デュルクの母。ルーンに生まれ育ち、予知夢や肉親や恋人と夢の中で会話をする能力に長けた夢見のイムリだったが、その能力を利用しようとしたカーマの支配者たちによって拉致される。対外的にはオレイグの妻とされ、デュルクにもそのように振舞っていた。デュルクが研修旅行に行ったルーンでクーデターが起こり、デュルクの身に危険が迫っていることを感じとる。 夢見のイムリは死の間際に自分の記憶を他人に残すことができるという言い伝えから、デュルクに自分の記憶を残して自殺を遂げる。

ドープ

ルーンに住むイムリの男。定住せずにルーンの大陸を旅し続けている旅のイムリ。光彩を使って獣奴たちを手懐ける術に長ける。無愛想でカーマたちを嫌っている気むずかしい人物だったが、クーデターによってその身に危険が及んだデュルクを助けているうちに、デュルクとの間に友情が芽生える。

バニエストク

ルーンの最高権力者である「大大師」であり、軍事系の最高責任者。ルーンの実権を呪師系の人間たちが握っていることを快く思わず、カーマたちの最高権力者である賢者を拉致してクーデターを引き起こす。

賢者 (けんじゃ)

カーマ社会の最高権力者として君臨している人物で、ある一族の血を引くもののみがその地位を認められている。しかし、現在の賢者は呪師たちの傀儡として実権を失っている。賢者の一族は、最上位の侵犯術である「命令彩輪」を無効化する特質を受け継いでいると信じられている。

集団・組織

カーマ

『イムリ』に登場する民族。賢者と呼ばれる最高権力者を頂点に、マージとルーンの人々を支配している。侵犯術という他人の精神を操る技術をその支配体系の根幹としている。古代戦争でイコルとともにイムリと戦い、ルーンを凍結させたとされる。

イコル

『イムリ』に登場する民族。カーマの社会で最下層である奴隷民族に位置づけられている。幼少期はマージのイコル区と呼ばれる地区で育つが、一定の期間が過ぎると侵犯術によって奴隷化させられ、自我を奪われてしまう。古代文献には、古代戦争の際にはルーンを支配しており、カーマに侵犯術を教えた民族と記されている。

イムリ

『イムリ』に登場する民族。ルーンに住む原住民で、古代戦争ではカーマと激しく争っていたが、4000年の年月を経たことで戦争の記憶を忘れつつある。凍結したルーンで生存してきた素朴な民族だが、カーマたちによって秘密裏に滅ぼされようとしている。物質の光彩に働きかけて力を引き出すことができるなど、カーマやイコルたちにはない特殊な能力を持つ。

場所

マージ

『イムリ』に登場する惑星。ルーンの隣に位置する。古代戦争後にカーマたちがイコルを伴って移り住んでいる。すべての物質が光彩を浄化させられており、命の宿らない星になっている。呪大師をトップに、呪師系のカーマたちが厳しい階級社会を築き上げている。

ルーン

『イムリ』に登場する惑星。すべての民族の故郷だったが、古代戦争によって凍結し、原住民のイムリたちを残してマージへの移住が行われた。4000年後の現在ようやく人類の生存に適した環境に戻りつつあり、マージからの移住が行われている。大大師をトップに呪師系のカーマたちが賢者を擁立して統治しているが、軍事系のカーマたちが勢力を伸ばしつつあり、緊張した政治情勢にある。

その他キーワード

光彩 (こうさい)

『イムリ』に登場する物質。生物や物質に宿るエネルギー。生物が持っていて強化可能な光彩のことを特に「彩輪」と呼び、カーマの操る侵犯術は「彩輪」に働きかけることで可能となっている。またイムリたちは物質の持つ光彩を利用して生活に役立てている。

侵犯術 (しんぱんじゅつ)

『イムリ』に登場する技術で超能力の一種。他人の「彩輪」を、「強化彩輪」と呼ばれる鍛えられた「彩輪」で操る技術のことをいう。「強化彩輪」には「誘導彩輪」「促迫彩輪」「命令彩輪」の三段階がある。もっとも弱い「誘導」は他人に行動を促すのみだが、「促迫」は精神を完全に従わせることができ、かけられた人間はかけられた期間の意識もない。 また「促迫」を3度続けてかけられると、相手を奴隷化することができる。もっとも強力な「命令」は、かけた相手を即座に奴隷化することができる。術者の階級によって会得できる「強化彩輪」には制限があり、「命令彩輪」を身につけているものはわずかである。術をかける際には、相手の正しい名前を発言する必要があるが、個人名を持たないイコルやイムリたちは、民族名だけで侵犯術を掛けられてしまう。

イムリの道具 (いむりのどうぐ)

古代戦争においてイムリたちが開発して使用した兵器で、カーマはその存在を最高機密として隠匿している。小石ほどの大きさの物体で、13種類が存在する。イムリの血を引くものだけが使用でき、その光彩を利用したものに様々な能力を与えるという機能を持つ。しかし、古代戦争から長い年月が過ぎたことで、イムリたちは使用法や存在そのものを忘れつつある。 そのためイムリたちは通常の物質をイムリの道具と呼んでいる。

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