概要・あらすじ
豊かな農村で暮らす玫伶は、ある日、村を訪れた語集部のトキと出会う。その翌日、弟が神隠しに遭ってしまい、一緒に探してほしいとトキに助けを求める玫伶。トキと共に弟を探す中で、玫伶は世界の広大さを知り、語集部の生き方に憧れを抱いた。その後、玫伶は語集部の志願者として、語集部と語部の国である天外に向かう。
そこで語集部と語部が果たそうとしている目的を知り、獣人のレンゲと絆を結んだ玫伶は、晴れて語集部の資格を得るのだった。こうして語集部の見習いになった玫伶は、トキと共にさまざまな土地を巡りながら、多くの出会いと出来事を経験していく。
登場人物・キャラクター
玫伶 (めいりん)
トキとの出会いをきっかけに語集部の生き方に憧れ、天外での資格試験を経て語集部見習いになる少女で17歳。正直者のお人好しで、困っている人を見過ごせない性分。その性格がアダとなり、しばしば危険な状況に首を突っ込んでしまう。トキと一緒に旅をする中で、内に秘めた優しさを知り、心惹かれていく。
トキ
語集部見習いになった玫伶の先生役になる語集部の青年で19歳。語集部の仕事中は穏やかな物腰の好青年だが、それは営業用で、実際はぶっきらぼうで無愛想な性格。複雑な生い立ちを抱えており、語集部をしているのも、父親代わりであるルーグルの霊仙石を奪った妖魔を探すためである。他人のために厄介ごとに首を突っ込む玫伶に当初は厳しく接していたが、一緒に旅をする中で、本来の優しさを取り戻していく。
チャロ
トキの相棒である獣人。エルフォア族という手のひらサイズの獣人族で、外見は幼い少女だが、実は20歳を過ぎている。トキとは逆に大人の分別と落ち着きを備えた女性で、早く一人前になりたいと焦る玫伶をなだめたりと、一行の良きまとめ役になっている。
レンゲ
玫伶を相棒と認め、霊仙石に変化する獣人。見た目は幼い男子で、話しぶりや性格も少年っぽい。玫伶が一人前になるまでは、チャロのように自由に実体化できないが、玫伶が悩んでいたり窮地に陥った時には強引に実体化する。本来の手のひらサイズから人間サイズに巨大化し、さらに玫伶を抱えて追っ手の人間から逃げ回るなど、チャロにはないパワフルな一面も見せる。
ルーグル
トキの養父。人間と同サイズの獣人イスフェイル族で、見た目は若いが50歳を過ぎている。元は語集部として世界を巡っていたが、ある事件で妖魔に霊仙石を食われ、相棒の獣人もその時に行方不明になっている。思慮深く、穏やかな性格。
天狼公 (てんろうこう)
稜と呼ばれる国を治める女王・紅羽の家臣で、後見人を務める人物。その正体は天狼で、通常は人の姿になって紅羽のそばについている。また、時おり天狼の姿に戻って国の上空を飛び回り、他の妖魔や周辺国の侵攻を抑えている。トキの親類で、玫伶とトキが稜に立ち寄ってからは、たびたび2人の前に現れるようになる。 人間になっている時は若い男性の姿だが、本人も年齢を忘れるほど長い年月を生きている存在。
紅羽 (こうう)
稜の国の女王。弱冠12歳で王位を継承しており、まだ若いことから天狼公を後見人に据えて国を治めている。トキとは面識があり、稜を訪れた玫伶とトキを温かく迎えてくれる。天狼公を家臣として信頼しつつ、家族のようにも思っている。
場所
天外 (てんがい)
仙人たちが住む天の山よりもさらに高いところにあるという、小さな獣人が治める「天外の地」と呼ばれる場所。語集部と語部が住む国で、世界を旅する彼らの本拠地になっている。また、語集部や語部の志願者も受け入れており、天外で1か月暮らす間に資格ありと認められれば、見習いになることができる。地上の世界よりも発達しており、水道、湯沸し、冷蔵庫など文明の利器が存在。 語集部や語部、獣人たちの家も天外にあり、トキの家には養父のルーグルも住んでいる。
稜 (りょう)
玫伶とトキが旅の途中に立ち寄る国。木作りの建物、レンガ屋根、風雅な庭園など、独自の文化をうかがわせる景観が特徴。かつては荒廃していたが、天狼公の庇護のもと、現在は豊かな国になっている。
その他キーワード
語集部 (かたりあつめべ)
世界を旅しながら、各地の知識や昔話、人々の身の上話などを収集している人々。額に霊仙石と呼ばれる青白い石がついており、その霊仙石の持ち主である獣人とペアで行動している。霊仙石の力によって、並外れた身体能力を発揮したり、不思議な術が使えるなどの特殊能力を使用可能。また、関所をフリーパスで通れるなど、旅をするうえでのさまざまな特権も与えられている。
語部 (かたりべ)
語集部が収集した情報を世界各地に広めて回る人々。額に霊仙石がある、獣人とペアで行動しているなど、基本的な特徴は語集部と同じ。霊仙石の色(語部は琥珀色)で語集部と見分けることができる。
獣人 (けものびと)
人間に獣の耳と尻尾が付いたような外観が特徴の種族。手のひらサイズのエルフォア族と、人間サイズのイスフェイル族が存在する。世界で最強を誇る種族の1つだが、穏やかな気質の平和主義者のため、罪なき者を傷つけるとジンマシンが出てしまう。
常世の者 (とこよのもの)
エルフォア族の獣人の中で、体の成長が止まって歳を取らなくなった者の総称。額に「止まった時間の結晶」である透明の霊仙石が付いている。語集部や語部の志願者は、彼らにパートナーと認められることで霊仙石を託され、以降はペアで行動することになる。
霊仙石 (れいせんせき)
常世の者である獣人や、語集部・語部の額に付いている不思議な石。語集部や語部たちは、「霊仙石より硬くないものなら壊せる」「雷などの術が使える」「浄化作用で体が汚れにくくなる」といったさまざまな恩恵をこの石から得ている。語集部が聞き取った情報を記録しているのも霊仙石である。
妖魔 (ようま)
人知を超えた能力を持つ生き物の総称。2つの口がある巨大なサメ「フタクチブカ」や、集団で作物を食い荒らす6本足の短足ウサギ「兎蟲」など、さまざまな種類が存在する。その多くは人に被害をもたらすものだが、翼を持つ狼「天狼」のように高い知性を備え、人間の生活に溶け込んでいる妖魔もいる。
妖魔センサー (ようませんさー)
天狼公の羽が玫伶の体に溶け込むことで生まれた生き物。外見は小型の竜で、妖魔の気配を察知すると玫伶の脳天からズボッと飛び出し、「ヨーマガイルゾー」と警告を発する。また、天狼公より力の弱い妖魔から守ってくれる効果もあり、巨大化してフタクチブカを退散させるなど危機回避に役立っている。天狼公の影響か、愛嬌のある性格。
天狼剣 (てんろうけん)
トキの体に同化している大振りの剣。かつては天狼公の持ち物だったが、過去にトキが持ち出した際に体と同化して取れなくなった。必要な時だけ手から出現させることができ、剣以外の形状に変化させることも可能。天原ふおんの別作品『ミストルティンの魔法』に登場した「神剣ミストルティン」と同一の剣であることが明かされている。