あらすじ
第1巻
迷宮都市として知られる大都市、オラリオでは、神によって結成され、神の恩恵を受けた数々のファミリアが、日々ダンジョンに挑んでいた。オラリオの酒場「豊饒の女主人」で働く元冒険者のリュー・リオンは、戦いの日々から離れ、シルやアーニャ達と共に平和な日常を過ごしていた。そんなリューはある日、街に住む夫婦の一人娘が行方不明になった事件と遭遇する。父親の賭博に巻き込まれたアンナが何者かにさらわれたと知ったリューは、かつて所属していた「アストレア・ファミリア」の事を思い出す。娘を心配する夫婦のため、リューは正義の女神、アストレアの名のもとに、事件の調査を開始する。表通りの酒場に向かったリューはアンナの情報を得るために、ゴロツキの男とポーカー勝負をする事になる。勝利したリューはアンナの行方を聞き出し、さらなる調査をアスフィに依頼するが、アンナの行方には資産家が集まる「グラン・カジノ(最大賭博場)」が関係していた。リューは招聘状を手に入れたシルと共に、欲望と陰謀が渦巻く、危険なカジノに潜入する事になる。
第2巻
シルと共に資産家の夫婦に変装し、グラン・カジノに潜入したリュー・リオンは、カジノ内で偶然遭遇したベル・クラネルの幸運により、賭札を大きく増やす事に成功する。当初の思惑通り、経営者のセルバンティスを引きずり出し、貴賓室へ招かれる事となったリュー達は、そこで連れ去られたアンナと対面。リューはセルバンティス達を牽制しつつ宣戦布告し、アンナ救出を賭けて、彼らとのフロップポーカーに挑む。ゲームは一見リューが有利に思えたが、ほかのゲスト達はすべてセルバンティスの共謀者であり、罠にはめられた彼女はピンチに陥ってしまう。下衆な笑みを浮かべるセルバンティスの本性を悟ったリューは、怒りのままにその場で暴れそうになるが、彼女を静止したシルが代わりに勝負をすると申し出る。リューは混乱しつつも、神々に一目置かれるほどのしたたかさを持つシルの策略を信じ、彼女の勝負を見守る。そんな中、シルは唐突に自分の手札を相手に明かすなど、予想外の行動に出る。
第3巻
シルの助けを借りてゲームに圧勝し、セルバンティスを追い詰めたリュー・リオンは、アンナとほかの女性達をすべて解放するよう要求する。しかし素性と悪事が暴かれるのを恐れ、リューの要求を受け入れようとしないセルバンティスは、二人の用心棒を差し向ける。リューは二人の用心棒と戦う事になり、アンナ達の運命はこの戦闘に委ねられる事となった。三人の戦いはグラン・カジノ全体を巻き込み、シルの言葉に促された女性達は自ら逃げ出そうとする。リューは用心棒達を圧倒して戦いに勝利するが、混乱するセルバンティスはアンナを連れて逃走し、奥の金庫に籠もろうとする。追いかけたリューは魔法で金庫を破壊し、反撃を仕掛けたセルバンティスを殴り倒してアンナ救出に成功。しかしガネーシャ・ファミリアの登場により、シルとアンナを連れての逃走は困難な状態になっていた。追い詰められたリューの前には、最強クラスの冒険者、シャクティが姿を現す。
第4巻
まだ、ルノア達が酒場「豊饒の女主人」で働いていなかった頃。迷宮都市、オラリオで賞金稼ぎをしていたルノアは、冒険者達のレベルが高いオラリオでの見合わない仕事に、嫌気がさしていた。そんな時に「疾風」の二つ名を持つお尋ね者のリュー・リオンに関する依頼が舞い込み、ルノアはリューを狙う事になった。また、同様の依頼を受けていた暗殺者のクロエも、報酬のためにリューを狙うようになる。一方、仲間の敵討ちを遂げたものの戦いで負傷したリューは、仲間を失った虚無感の中、路地裏で力尽きていた。そんなリューに優しく手を差し伸べたのは、「豊饒の女主人」の看板娘、シルであった。シルとミアの介抱を受けたリューは、半ば強引に従業員にさせられ、身を隠しながらウェイトレスとして働く事になる。その頃、ターゲットであるリューの情報をなかなか摑めずにいたルノアとクロエは、それぞれの稼業から足を洗う事を決意し、最後の仕事を遂げるべく行動を開始していた。
第5巻
恩人であるシルから感謝の言葉を受けたリュー・リオンは、仲間を失った過去を引きずって塞ぎ込んでいた心を、シルや周囲との交流で少しずつ解きほぐしていく。リューは、「豊饒の女主人」で平和に過ごしながらオラリオに平穏が訪れた事を次第に実感し、少しずつ前を向けるようになっていた。そしてリューは、助けてくれたシルへの恩を返すために、「豊饒の女主人」に留まる事を決意する。リューは離れ離れになっているアストレアに手紙を書き、自分の近況と思いを報告する。一方、リューを狙っていたルノアは観察を重ねる内に、彼女にさまざまな変化が現れ、新たな居場所を得た事を知る。そして、知らない内にリューに対して親近感を抱いていたルノアにも、徐々に心境の変化が訪れる。リューの変化に複雑な感情を抱くルノアは、幼い頃の自分の生い立ちと過酷な過去を思い出すのだった。
登場人物・キャラクター
リュー・リオン (りゅーりおん)
元冒険者で、エルフの女性。薄緑色のセミロングに空色の瞳を持つ。年齢は21歳。現在は酒場「豊饒の女主人」のウェイトレスとして働いている。冒険者としての二つ名は「疾風」で、かつてはオラリオの治安を取り締まる「アストレア・ファミリア」に所属していた。複数の暴漢を瞬殺するなど戦闘力が高く、冒険者時代の悪友に鍛えられていたため、ギャンブルや心理戦にも強い。 敵対しているファミリアの罠にはまり、仲間の団員をすべて亡くした過去を持つ。仲間の仇討ちのために多くの人間にあらゆる手段で復讐したのち、力尽きていたところをシルに拾われ、「豊饒の女主人」で働くようになった。復讐のために多くの者を手にかけたため、ギルドのブラックリストに載っている。 同僚のシルとは親友でもあり、恩人でもある彼女の事を信頼している。エルフの性質上、謹厳で潔癖だが、まじめで義理堅い面も持つ。大半の事は器用にこなすが、料理や接客は苦手。復讐に手を染めた身では正義を語る資格はないと、戦いから離れていたが、誘拐されたアンナを助けようとするなど、正義感の強さは残っている。シルの思いを知りつつも、ベル・クラネルの事が気になっている。
シル
酒場「豊饒の女主人」で働くヒューマンの少女。年齢は18歳。青いロングヘアをおだんごとポニーテールでまとめている。リュー・リオンの同僚であり、親友でもある。いつも明るく元気な店の看板娘で、時おり天然な面を見せるものの、気配りもできる優しい性格。店の常連客でもあるベル・クラネルに片思いしているが、恋愛に奥手な彼には気づかれていない。 一見純朴な少女だが、入手困難な「グラン・カジノ」の招聘状を入手するなど、非常に優れた人脈を持つ。リュー以上に頭の回転が速く、神々に一目置かれるほどのしたたかさと演技力を秘めている事から、同僚やセルバンティスからは「魔女」と評されている。さまざまな人と触れ合ったり人間観察をするのが趣味で、これらを重ねた結果、瞳を見て相手の考えがわかる鋭い観察眼も持ち合わせている。 復讐を遂げたあと路地裏で力尽きていたリューに手を差し伸べた、彼女にとっての恩人でもあり、互いに信頼し合う仲。
ミア
酒場「豊饒の女主人」の女将。大柄なたくましい女性。実は豪傑豪快な元冒険者で、種族はドワーフ。オラリオの最大派閥として有名な「フレイヤ・ファミリア」に所属しているが、ファミリアを半脱退した状態で酒場を経営している。冒険者から離れて酒場を切り盛りする現在も、腕っ節の強さと気の強さは健在。リュー・リオンをはじめとする、訳ありで行き場をなくした娘を拾っては、店の従業員として雇っている。 シルをはじめとする従業員達と常連客からは、「ミア母さん」や「母ちゃん」と呼ばれている。厳しい性格だが、大らかで面倒見もよく、リュー達からの信頼も厚い。
アーニャ
酒場「豊饒の女主人」に住み込みで働いている、キャットピープルの少女。リュー・リオンの同僚でもある。癖っ毛のあるセミロングに猫耳を生やしている。明るくて人懐っこく能天気な性格。少々頭が弱く、時おり注文を間違えるなどのミスをしている。「豊饒の女主人」の従業員としては、リューやクロエ、ルノアよりも先輩。
クロエ
酒場「豊饒の女主人」に住み込みで働いている、キャットピープルの少女。リュー・リオンの同僚でもある。少々お調子者な性格で、黒髪のセミロングに猫耳が生えている。一人称は「ミャー」。犯罪組織系ファミリアに生まれ、幼少期から暗殺術を叩きこまれながら、まともな倫理観が育たない環境で生きてきた。あこがれを抱いていた暗殺者の女性が組織に殺され、それが自分の母親であった事を初めて知り、組織に反発して脱退する。 根なし草となったあとは単独の暗殺者として活動するようになり、裏世界では「黒猫」の二つ名で呼ばれていた。のちにニョルズと契約するが、彼の運営する「ニョルズ・ファミリア」には所属していない。実は美少年が大好きで、美少年に囲まれた優雅な生活を送るのが夢。 オラリオで暗殺者廃業を考えていた頃、お尋ね者になっていたリューを最後の仕事として狙っていた。
ルノア
酒場「豊饒の女主人」に住み込みで働いている、華奢なヒューマンの少女。リュー・リオンの同僚でもある。茶髪をセミロングにしている。温厚な性格で、一見ふつうの少女だが、腕っ節はかなり強い。生まれはオラリオから離れたとある帝国の領地で、戦争によって両親を失い、幼い頃はストリートチルドレンとして過酷な生活をしていた。 その後はファミリアに加入するものの仲間と気が合わず、派閥同士の争いでファミリアが消滅した事で根なし草となり、複数のファミリアへの加入と脱退を繰り返すようになる。その後はデメテルと契約しながらオラリオでも賞金稼ぎとして活動を始め、裏世界では「黒拳」の二つ名で呼ばれるようになる。賞金稼ぎ廃業を考えていた頃、お尋ね者になっていたリューを狙っていた。
アスフィ
「ヘルメス・ファミリア」の団長を務めるヒューマンの冒険者。メガネをかけた理知的でクールな女性。非常に幅広い情報網を持ち、マジックアイテム作りも得意としている。リュー・リオンとは古くからの仲で、時おり彼女に協力している。アンナが誘拐された事件では、リューの依頼を受け、事件の詳細を調査した。
アンナ
オラリオの花屋で働いているヒューマンの少女。ウェーブのかかった茶髪のロングへアで、小さなリボンをつけている。気立てがよく容姿端麗な街娘で、周囲の男性から求婚される事が多い。両親と共に暮らしていたが、父親の賭博に巻き込まれ、セルバンティスにさらわれてしまう。リュー・リオンに救出されるが、潜入のために男装していたリューを男性と勘違いし、恋心を寄せる。 リューが女性だと知ったあとも完全にあきらめ切れず、彼女の事が気になり続けている。両親のもとへ帰ったあとは父親を厳しく監視しながら、平和に暮らしている。
セルバンティス
「グラン・カジノ」のオーナーで、莫大な資産を保有する資産家。口元とあごに髭を生やした小太りの中年男性で、種族はドワーフ。大規模なカジノを経営する一方でかなりの好色であり、若い女性をあらゆる手段を使ってコレクションのように集め、愛人としている。オラリオのゴロツキ達を使い、アンナを連れ去った張本人。本名は「テッド」で、本物のセルバンティスの死を利用して身分を偽りながら、グラン・カジノを経営していた。 かつてオラリオで悪事を働き、「アストレア・ファミリア」に裁かれた過去を持つ。その際はアストレアに許しを請うて釈放されるものの、再び悪事に手を染める。また、その頃にアストレア・ファミリアの一員として活躍していたリュー・リオンとは因縁がある。
ベル・クラネル (べるくらねる)
「リトル・ルーキー」の異名を持つ、新人冒険者の少年。種族はヒューマンで、年齢は14歳。ヘスティアが運営する「ヘスティア・ファミリア」に所属している。白髪と赤目を持ち、白ウサギのように見える事から、しばしばウサギ扱いされている。酒場「豊饒の女主人」の常連客でもあり、シルが密かに思いを寄せる相手。しかし恋愛には奥手で、シルの思いには気づいていない。 気弱で頼りなく見えるが、実際はひたむきで素直、心優しく勇敢な性格。賭博知識は皆無だが「幸運」のスキルを持ち、ギャンブルにも強い。
シャクティ
「ガネーシャ・ファミリア」の団長を務めるヒューマンの冒険者。藍色の短髪を持つスレンダーな女性で、クールな性格の持ち主。「象神の杖(アンクーシャ)」の二つ名を持つ。ガネーシャ・ファミリアが誇る最強クラスの冒険者で、その実力はリュー・リオンとも互角。冒険者時代のリューとはかつて協力関係にあり、共にオラリオの秩序と安寧を守っていた同志。 リューの冒険者時代の素顔を知る数少ない人物であると同時に、リューが尊敬する人物でもある。暗殺者時代のクロエに狙われて戦った事があるが、圧倒的な戦闘力で彼女を返り討ちにした。
アストレア
冒険者時代のリュー・リオンが所属していた「アストレア・ファミリア」の主神。慈悲と正義を司る女神。ロングヘアの女性の姿をしている。正義の心と慈悲深さを併せ持ち、現在でもリューに敬愛されている女神。ファミリアを率いてオラリオで活躍していたが、5年前にアストレア・ファミリア団員が殺されてファミリアが壊滅したのをきっかけに、オラリオを去った。
アリーゼ
「アストレア・ファミリア」の団長を務めていた、ヒューマンの冒険者。赤いロングヘアの快活な少女。冒険者時代のリュー・リオンをファミリアに誘い、仲間となった。いつでも前向きで、誰にでも分け隔てなく接する、明るく優しい性格。リューが尊敬する人物の一人。5年前に敵対するファミリアの罠にはまり、リュー以外のほかの団員と共に敗北する。 遺体は見つかっておらず、生死は不明。
デメテル
「デメテル・ファミリア」の主神。おおらかで穏やかな性格の優しい女神。周囲の女性がうらやむ豊満なバストを持つ、ロングヘアの女性の姿をしている。野菜を中心とする作物を育てており、オラリオで流通している良質な野菜は、デメテルとファミリアの団員が育てたものであり、農業を通してオラリオの食料事情を支えている。料理やお菓子作りも得意としており、紅茶も絶品。 賞金稼ぎをしていたルノアと契約している。ルノアの賞金稼ぎとしての仕事を知るものの多くは問い詰めず、彼女の事を心配している。
ニョルズ
オラリオの南西にある港町「メレン」で活躍する、「ニョルズ・ファミリア」の主神。漁を司る男神で、長い茶髪をポニーテールで束ねた、長身で筋肉質な男性の姿をしている。デメテルと同様、オラリオの食料事情を支える活動をしており、漁によって得た新鮮な海産物を出荷している。子供思いで優しい性格。暗殺者時代のクロエと契約しているが、彼女とはたまにしか会っていない。 腹黒いクロエには何かと振り回されているが、文句を言いつつ何かと協力し、危険な仕事をしている彼女を心配している。
集団・組織
アストレア・ファミリア (あすとれあふぁみりあ)
慈悲の女神、アストレアによって構成されたファミリア。アリーゼが団長を務めていた。冒険者時代のリュー・リオンが、かつて所属していたファミリアでもある。オラリオが正義と悪の対立によって荒れていた暗黒期に、ほかのファミリアと協力しながら悪を裁き、街の治安を守りながら秩序と安寧をもたらした。しかし闇派閥の罠にはまり、リュー以外の団員すべてが全滅した。
場所
オラリオ
広大な下界の中で、唯一地下迷宮を有する迷宮都市として知られる大都市。巨大な壁に囲まれている。冒険者達の根城とも言える都市で、さまざまなレベルの冒険者達が活躍しているが、大半の者は下界に降りた神が組織した「ファミリア」と呼ばれる集団(派閥)に所属している。第二級や第一級の強力な冒険者達も活躍しており、人外魔境や魔屈とも呼べる地域。 かつての「暗黒期」と呼ばれる時代では、「闇派閥(イヴィルス)」と呼ばれる悪の組織が恐怖と混乱を招き、治安が悪い状態に陥っていた。しかしリュー・リオンが所属する「アストレア・ファミリア」や、「ガネーシャ・ファミリア」をはじめとする正義のファミリアの活躍によって、徐々に平和が訪れるようになる。
豊饒の女主人 (ほうじょうのおんなしゅじん)
オラリオにある酒場。ミアが女将を務めている。リュー・リオンやシル達の勤務先でもある。かつて冒険者として活躍していたミアが、所属する「フレイヤ・ファミリア」を半脱退した状態で経営している。リュー以外にもミアが拾った訳ありの娘達が従業員として働いており、酒場や街で起こる荒事にも慣れている。女将のミアを筆頭に、気が強く腕っ節の強い女性が多いため、一部の客からは恐れられている。
その他キーワード
開錠薬 (すていたすしーふ)
使用する事で、その者に刻まれた神の名前と、真名(本名)を暴く事ができる。リュー・リオンがセルバンティスの正体を暴くために使おうとした。
クレジット
ベース
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (だんじょんにであいをもとめるのはまちがっているだろうか)
大森藤ノの小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のコミカライズ作品。冒険者の少年、ベル・クラネルが美少女剣士のアイズ・ヴァレンシュタインに一目惚れしたことで始まる成長物語。一人の少... 関連ページ:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
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