概要・あらすじ
幼少時より、祖父に空手の手ほどきを受けていた白羽秀樹は、昭和23年、満州から日本に引き揚げ、さらに空手道に邁進。日大芸術学部に進んだ頃には、数々の空手大会で優勝。空手三四郎の異名をとる学生空手界のホープとなっていた。そんなとき、ボクシングジムの会長・野口修が訪ねて来て、タイ式ボクシングこそ地上最強だと言い放ち白羽を挑発する。
一撃必殺の空手を信奉する白羽は怒りに震え、タイ式ボクサーとの戦いを承諾。初戦を勝利で飾るが、二戦目、タイのチャンピオンとの戦いで惨敗してしまう。タイ式ボクシングの強さを体で知った白羽はキックボクシングへの転向を決意。野口を師と仰ぎ厳しいトレーニングを経て、キックボクシング界に旋風を巻き起こしていく。
登場人物・キャラクター
沢村 忠 (さわむら ただし)
昭和18年1月5日満州に生まれる。中国唐手流の達人である祖父・吉田秀之助に5歳の時から空手の手ほどきを受ける。昭和23年、日本に引き揚げてからも空手修行に明け暮れ、法政一高から日大芸術学部に進む頃には、唐手流だけでなく剛柔流の免許皆伝となり、数々の空手大会で優勝、空手三四郎の異名をとる。 日本にタイ式ボクシングを根付かせようとしていた野口修と出会い、タイ式ボクシングとの試合で惨敗したことからタイ式のすばらしさを知りキックに転向。長野県八ヶ岳で山籠もりを敢行、基礎体力作りを終えた後は野口のもとで地獄の修行を積む。昭和42年、強豪モンコントン・スイートクンを破り、東洋ミドル級チャンピオンになる。 王座を守るため、特訓の末に必殺技・真空とびひざげりを開眼。本場タイ国にも遠征し国内外で活躍。東洋ライト級チャンピオン獲得後も、数々の試練を乗り越え、ついに前人未到の100連勝を達成し、国民的英雄となる。
吉田 秀之助 (よしだ ひでのすけ)
主人公・沢村忠の母方の祖父。中国唐手流の達人で、沢村が5歳の頃から空手を教える。技術的なことだけではなく「空手に先手なし」の精神も伝えた人格者。また沢村の天性の才能は足のバネにあり、空手界制覇の武器になると予言。この予言が沢村の必殺技・真空とびひざげり開眼のヒントになった。
野口 修 (のぐち おさむ)
キックボクサー沢村忠の育ての親。元・野口ボクシングジム会長、のちに目黒ジム会長。タイ式ボクシングを日本に根付かせようと、空手界のホープであった沢村忠に白羽の矢を立て、わざと挑発してタイ式ボクシングとの試合をさせる。タイ国チャンピオンとの戦いでの沢村の凄まじい根性に惚れなおし、固い師弟関係を結ぶ。 二人でタイ式ボクシングをキックボクシングとして日本でスタートさせる。沢村忠のリングネームの名付け親。
サマン・ソー・アジソン
タイ式ボクシングライト級チャンピオン。昭和41年6月21日、日本空手界のホープ、空手三四郎と呼ばれていた沢村忠がキックボクシングに転向するきっかけとなった試合の対戦相手。沢村を完膚なきまでに叩きのめし病院送りにする。同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
モンコントン・スイートクン
タイ式ボクサーで、タイ国ライト級チャンピオン。昭和42年2月16日新宿体育館で、東洋ミドル級王座をかけ、沢村忠と戦う。一年前、沢村が惨敗した相手サマン・ソー・アジソンを軽くKOしたほどの強豪だが、キックの修行を積んだ沢村の前にKO負けを喫する。昭和44年6月28日日本武道館で東洋ライト級王座をかけ沢村と再戦、沢村と死闘を演じるもKO負けに終わる。 同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
バイヨク・ボーコーソー
「不死身の鉄人」の異名を持つタイ式ボクサー。異常筋肉の持ち主で投げナイフすら筋肉の鎧を貫けない。昭和42年6月18日東京浅草公会堂で、東洋ミドル級王座をかけ、沢村忠と戦う。沢村の必殺技・真空とびひざげりの最初の犠牲者となる。同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
ポンチャイ・チャイスリア
「燃えるトカゲ」の異名を持つタイ式ボクサー。タイ国ライト級チャンピオンでタイの国民的英雄。本場タイに乗り込んだ沢村忠と昭和43年9月13日ルンピニースタジアムで対戦。最終ラウンドまで死闘を演じ引き分けた。沢村の実力が国内外に知れ渡るきっかけとなった選手で、ポンチャイとの対戦後、沢村や野口会長念願のキックボクシングのテレビ定期放送が実現した。 同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
ジミー・ゲッツ
黒人キックボクサー。沢村忠のテレビ定期放送第一戦の相手。一流ボクサー出身で空手二段、柔道も段位を持つという人間凶器。打倒沢村のために、日本の空手道場やボクシングジムを道場破りする特訓を重ねる。試合は2R、沢村の必殺技・真空とびひざげりにあっさり敗れる。同名の実在キックボクサーがモデル。
カンワンプライ
「人間暴風」の異名をとるタイ式ボクサー。昭和44年1月7日横浜体育館で沢村忠と対戦。ヒジと足を負傷していた沢村を攻め込み判定勝ちを収め、沢村の連勝記録を30でストップさせた。同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
遠藤 (えんどう)
目黒ジムに所属する沢村忠のマネージャーで、会長・野口修の古くからの友人。沢村の真空とびひざげり特訓を皮切りに、以降沢村のトレーニングを担当する。同名の実在人物がモデル。
タノンスク・キットヨーテン
「黄金のライオン」の異名を持つタイ式ボクサー。タイ国ミドル級チャンピオン。18歳にしてその実力はタイの国民的英雄ポンチャイ・チャイスリアに匹敵する。沢村とたびたび対戦したポンニット・キットヨーテンの従兄弟。昭和44年3月23日後楽園ホールで沢村と対戦。ポンニットに教えられた技で、真空とびひざげりを封じるも、沢村第二の必殺技フライング・ドロップまわしげりにKOされる。 同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
真名島 堅城 (まなじま けんじょう)
沖縄空手の濤風館館長。沖縄では超人扱いされている達人。沖縄で興行を行う沢村忠たちを挑発し、キックボクシング対沖縄空手の他流試合を実現させる。自身は試合に出なかったが、結果は沖縄空手の惨敗。これを不服とし、後日、沢村とエキジビション・マッチを戦うが沢村のスピードについていけず敗北。 敗戦後は道場をたたんで行方不明となる。
ソラカイ・シンコンカー
タイ国フェザー級1位のタイ式ボクサー。一年前、沢村忠の真空とびひざげりでKOされた兄の復讐のため、来日する。本場タイで34勝のうち28KOという高いKO率を誇る。空中で錐もみ回転して相手を蹴る必殺技スクリューキックの使い手。昭和44年7月31日広島県立体育館で沢村と対戦。 必殺技スクリューキックで一度はダウンを奪うものの、二度目はキックを両グローブで封じられ、最後は真空とびひざげりでKO負けを喫する。
ポンニット・キットヨーテン
沢村忠とたびたび対戦したタイ式ボクサー。タノンスク・キットヨーテンの従兄弟。昭和44年8月2日愛媛体育館で沢村と対戦。新必殺技・垂直2段げりの前に1R31秒KO負けを喫する。同名の実在タイ式ボクサーがモデル。
ラジャマハー
タイ式ボクシング界を支配する大興行師。東洋ライト級チャンピオンである沢村忠を倒しタイ式ボクシングの威厳を取り戻すために、タイ国で選手たちを集め、ジャングルで秘密特訓キャンプを開催。打倒沢村の刺客を日本に送り込む。
キング・コング
元プロレスラーの巨漢。本名はエミール・アナヤというハンガリー人。過去、力道山と数々の死闘を繰り広げた実力者。タイの大興行師ラジャマハーが打倒沢村のための特別コーチとして秘密特訓キャンプに招へいした。タイの選手たちに受け身や投げ技、ココパット(脳天頭突きわり)などを教える。 実在の元プロレスラー、キング・コングがモデル。
ダウソン・バンカーロップ
ライト級のタイ式ボクサー。打倒沢村を悲願とするタイの大興行師ラジャマハーの秘密特訓キャンプから送り込まれた第一の刺客。プロレス特訓で得た飛行機投げやハンマー投げで沢村を窮地に追い込むが、最後は死中に活を求めた沢村の二段げりに敗れる。
チャイリス・キットヨーテン
『キックの鬼』イト級のタイ式ボクサー。打倒沢村を悲願とするタイの大興行師ラジャマハーの秘密特訓キャンプから送り込まれた刺客。元プロレスラー、キング・コングから授かった必殺技ココパットを引っさげて沢村忠と対戦。ココパットで沢村の意識を飛ばすが、無意識状態で沢村が放った真空とびひざげりにKOされる。
その他キーワード
真空とびひざげり (しんくうとびひざげり)
『キックの鬼』に登場する必殺技。沢村忠の超人的な足のバネを利用した技。敵の頭上より高くジャンプ、落下途中で膝が相手の顔面あたりに来たときに隙を見極め、右ひざか左ひざを決めて蹴る。重力に逆らった真空地帯での膝蹴りのようであるところから命名された。
フライング・ドロップまわしげり
『キックの鬼』に登場する必殺技。真空とびひざげりを封じられた沢村忠が、タノンスク・キットヨーテンとの戦いの中で開眼。敵の前蹴りに合わせてジャンプし、カウンターの回し蹴りを放つ。
垂直2段げり (すいちょくにだんげり)
『キックの鬼』に登場する沢村忠の必殺技。垂直ジャンプから胸元に蹴りを入れると見せかけ、相手が胸をガードしたところを胸元から顔へ狙いを変えキック。さらにほぼ同時に逆の足をボディに入れる技。少年の日、2匹のトンボをフェイントをつかい同時に捕まえた経験からインスピレーションを得た。
ココパット
『キックの鬼』に登場する必殺技。元プロレスラー、キング・コングがタイ式ボクサーたちに授けた技。別名、頭突き脳天割りといい、黒い魔神ボボ・ブラジルが得意とした。ジャンプし、人体最大の急所である脳天に全体重を乗せて頭突きをする危険な技で、ボボ・ブラジルによって脳波を狂わされ精神に異常をきたしたり、再起不能に陥ったレスラーが10人以上いるという。