特殊な眼「サイコアイズ」を持つ者たち
本作には、常人には視えないものをとらえる特殊な眼「サイコアイズ」を持つ者たちが登場する。彼らが視る世界は多様であり、人と人との「縁」を糸のように視覚化したり、人が放つ「警戒心」を膜のように視覚化したりと、能力は所有者によって異なる。しかし、その特異な能力ゆえに、彼らの多くは社会から疎外され、心に深い孤独を抱えている。彼らはその心の隙間を埋めるかのように、二つの組織へと引き寄せられていく。一つは、武藤善が率いる能力者たちを保護する「念視特別捜査班」、通称「マルメ」。もう一つは、彼らを洗脳し、尖兵として利用する謎の組織「世界の眼」。「サイコアイズ」を持つ者たちは、否応なくどちらかの道を選ぶことをせまられる。
引きこもりの青年・渡辺経の成長と念視特別捜査班への挑戦
人と人との「縁」を糸のように視覚化する特殊能力「サイコアイズ」を持つ経は、幼い頃から人間の裏の顔を見続けたことで極度の人間不信に陥り、引きこもりの生活を送っていた。そんなある日、経はネット上で犯罪予告をしていた人物「ウルス」と接点を持ち、警察官の善に身柄を確保される。善から、自分以外にもサイコアイズの能力者がいること、そしてウルスが命の危機に瀕していることを知らされた経は、戸惑いながらも協力を約束する。善の指示のもと、経はその能力を駆使してウルスの居場所を特定し、無事に彼女を保護することに成功した。この事件をきっかけに、経は善から「念視特別捜査班」への参加を誘われる。孤独だった青年は、初めて見つけた居場所で仲間と共にさまざまな事件に立ち向かうことになる。
「サイコアイズ」を悪用する特殊犯罪組織
「世界の眼」は、サイコアイズ能力者を悪用し、裏社会の支配を目論む特殊犯罪組織。複数の幹部による合議制で運営され、目的達成のためには拉致や殺人、洗脳といった非道な手段も厭(いと)わない。この組織は、念視特別捜査班の班長の善にとって、かつての戦いで弟のシュンの命を奪った宿敵でもある。さらに、主人公の経の父親が、実はこの組織の幹部であることがのちに判明する。彼はやむを得ず家族と離れていたとされていたが、その裏では狡猾な手口で能力者たちの心をもてあそんでいた。このように冷酷非道な組織である一方、幹部たちはWeb会議の最後に謎の決めポーズを義務付けられており、その多くが内心「ダサすぎる」と不評を買っている。
登場人物・キャラクター
渡辺 経 (わたなべ けい)
念視特別捜査班に所属する青年。年齢は18歳。生まれつき、人と人との「縁」を糸のように視覚化する特殊能力「サイコアイズ」の持ち主。この能力により、他人の思考をある程度読み取れるほか、敵意の「縁」をたどって、潜んでいる敵の位置を特定することも可能。さらに、ほかの能力者とは異なり、動画に映った人物の「縁」も視認できる。一方で、長年の引きこもり生活の影響で体力は平均以下であり、荒事は苦手としている。もともとは内気で心優しい性格だったが、能力のせいで人の心の移ろいを目の当たりにし、両親からも拒絶されたことで人間不信に陥り、引きこもっていた。しかし、善にありのままの自分と能力を認められたことで、再び人を信じる心を取り戻す。のちに父親と再会し、一応の和解を果たすものの、彼が敵対組織「世界の眼」の幹部であることには、まだ気づいていない。
武藤 善 (むとう ぜん)
念視特別捜査班の班長を務める男性。相手が放つ「警戒心」を膜のように視覚化する特殊能力「サイコアイズ」の持ち主。敵の次の動きを完璧に読み取り、あらゆる攻撃を見切って的確に弱点を突くことができる。その戦闘力は班内でも群を抜いており、敵対組織「世界の眼」の殺し屋集団を単独で無力化するほどの実力を誇る。窮地に陥っても決して弱音を吐かず、仲間をつねに思いやる優しさと、ピンチをチャンスに変える機転を兼ね備えた頼れるリーダーであり、部下の経からも厚く信頼されている。一方で、お茶目で悪戯好きな一面もあり、妹の奏や同僚たちからたしなめられることもある。また、善自身も能力者であるため、同じ「サイコアイズ」を持つ者たちの生きづらさを深く理解し、彼らを救うことを自らの使命と考えている。しかし、その胸には、かつての戦いで「世界の眼」に殺された弟のシュンの仇を討つという個人的な思いも秘めている。
書誌情報
サイコアイズ 4巻 小学館〈サンデーうぇぶりコミックス〉
第1巻
(2025-01-10発行、978-4098537815)
第2巻
(2025-04-11発行、978-4098540532)
第3巻
(2025-07-11発行、978-4098541881)
第4巻
(2025-09-11発行、978-4098542338)







