犬狼伝説

犬狼伝説

第二次世界大戦がドイツ・イタリアと日本・イギリスで争われ、日本がドイツに敗れて占領統治された過去がある改変世界での物語。日本の国家警察である「首都圏治安警察機構(通称、首都警)」に属する、「特殊武装機動警備大隊(略して特機隊)」は、高度経済成長の落とし子として生まれた反政府主義過激派集団の鎮圧を目的として、ドイツで開発された特殊強化装甲服を身に着け機関銃で武装した警官によって構成される警備部隊である。しかし、その強力な武装火力と「立ち塞がる者あらば、これを撃て」という強硬な方針は、民衆や自治警察、首都警察の別派閥から危険視され疎まれ、部隊は謀略・政略や過激派の破壊工作などによって衰亡・消失していくこととなる。本作品はそのような「滅び」の様相を描いたバトルアクション警察ドラマコミックである。1990年に一度終了して一冊単行本が出た後、1999年に『犬狼伝説完結編』が執筆・連載され刊行された(本作品と同じ設定で『人狼』という長編アニメが作られ、上映されたことに連動する)。藤原カムイが描く漫画作品はこれで終わっているが、藤原のチーフ・アシスタントであった杉浦守が作画を担当した『犬狼伝説紅い足痕』と『ケルベロス×立喰師腹腹時計の少女』という漫画作品が存在している(両方とも原作は押井守)。この特殊強化装甲服の秀逸なデザインは人気を呼び、最初の漫画単行本が刊行された後も様々な実写作品や小説が生み出され、それらは特機隊の俗称「地獄の番犬ケルベロス」から「ケルベロス・サーガ」と呼ばれている。すべての元は、原作者の押井守が演出を担当したTVアニメ『うる星やつら』でメガネというキャラクターが何度か身につけたプロテクトスーツである。これが発展してメガネの声優千葉繁が主演する実写映画『紅い眼鏡』(監督押井守)の冒頭に登場した、出渕裕がデザインした特殊強化装甲服となり、この特殊強化装甲服の魅力を全面に押し出した『紅い眼鏡』前日譚の漫画作品企画が立てられ、最終的に本作品が作られた。

正式名称
犬狼伝説
ふりがな
けんろうでんせつ
作画
原作
ジャンル
警察官・刑事・検察官
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
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概要・あらすじ

第二次世界大戦が独・伊の枢軸と日・英同盟で争われ、日本がドイツに敗れて占領統治された過去がある改変世界、国際社会への復帰を急ぐ日本政府は「高度経済成長」の名のもとに強引な政策を実施し、成果は上がったものの大量の失業者の発生と組織的凶悪犯罪の増加、そして過激派集団(「セクト」)の生成へとつながった。

このような状況に対応すべく、政府は強力な武装を持った警察組織として「首都圏治安警察機構(通称、首都警)」を作りだし、ドイツで開発された特殊強化装甲服を身にまとい機関銃で武装した警官を隊員とする「特殊武装機動警備大隊(略して特機隊)」を設立した。セクトと特機隊の、市街における衝突・抗争は次第にエスカレートし、世論から非難を受けるに至り、特機隊はその地位を失いつつあった。

特機隊の隊長で武闘派である巽志朗は隊の存続のために様々な策を講じるが、自治警察や首都警内部の別組織である公安部の謀略・政略、さらに過激派の破壊工作などによって特機隊は追い詰められていく。

これと同時にセクト側の派閥争いと、失脚した武闘派メンバーの結末も描かれ、すべてに決着がつく『犬狼伝説完結編』へと続いていくこととなる。

登場人物・キャラクター

巽 志朗 (たつみ しろう)

首都警の警備部に所属する特機隊の隊長。首都警警視正。42歳の中年男性。鋭い目つきをしており、頭頂部と側頭部が盛り上がったオールバックの髪型で、口ヒゲを生やしている。特機隊創設以来の指揮官で、自衛隊教導団出身。武闘派で、「立ち塞がる者あらば、これを撃て」という強硬な方針を特機隊に与えた人間である。 孤立無援の状態に陥っている特機隊をなんとか存続させようといろいろ画策したが、多方面からの妨害や謀略のため、行き詰まる。自分が「犬」であることを認識しており、また他の「犬」である人間にも強いシンパシーを抱く。『犬狼伝説完結編』では、最後に思い切った行動に出る。この作品において「主人公」は個人ではなく、特機隊そのものであると思われるが、それを象徴する人物として巽志朗を挙げた。

半田 元 (はんだ はじめ)

首都警の警備部に所属する特機隊の副隊長。39歳の中年男性。つり上がった三白眼で、非常に短いクルーカットの髪型をしている。出動中の隊の指揮は、ほとんど半田がとっている模様。隊長の巽志朗とは自衛隊教導団の頃から、上司と部下の関係。「人狼」と呼ばれる、対敵諜報組織も指揮していると言われる(人狼という言葉が作中に出現するのは、『犬狼伝説完結編』)。

安仁屋 勲 (あにや いさお)

首都警の警備部部長。首都警警視長。42歳の中年男性。スキンヘッドで目付きが鋭く、右の頬に大きなほくろがある。病床にある本部長の中野宗一の代行をしていて、実質的には安仁屋が首都警を主導している。中野と同じく検察庁出身。「政界への野心を燃やす天才的策謀家」と、『犬狼伝説完結編』の巻末の解説に記述されている。

室戸 文明 (むろと ぶんめい)

首都警の公安部部長。首都警警視正。42歳の中年男性。でっぷりと太った大柄な体格をしており、ウエーブのかかった髪型でいつもサングラスをかけている。公安部は彼が掌握している。警視庁公安部出身で、部下にも警視庁出身者が多い。巽志朗と特機隊の攻撃的な行動のおかげで、首都警そのものが無くなってしまうのを恐れ、特機隊の武装解除に向けて政治工作を行う。 「旧内務省復活を目論む冷徹な政治主義者」と、『犬狼伝説完結編』の巻末の解説に記述されている。

都々目 紅一 (とどめ こういち)

特機隊第一中隊の第一突入小隊に所属する青年。いつもサングラスをかけている。突入小隊は前衛部隊であり、「ケルベロス」の名で呼ばれるのは、この突入隊員のみである。都々目紅一、鳥部蒼一郎、鷲尾翠の三人は第一突入小隊に属しており、「悪魔の三人組」と呼ばれている。『犬狼伝説』ではACT.1とACT.4に登場。 『犬狼伝説完結編』では最終章ACT.8に登場、重要な役割を演じる。実写映画『紅い眼鏡』の主人公で『ケルベロス-地獄の番犬』にも登場する。

鳥部 蒼一郎 (とりべ そういちろう)

特機隊第一中隊の第一突入小隊に所属する青年。タレ気味だが鋭い目をしている。機関銃MG34を愛用する。都々目紅一、鳥部蒼一郎、鷲尾翠の三人は第一突入小隊に属しており、「悪魔の三人組」と呼ばれている。都々目紅一と同じく『犬狼伝説』ではACT.1とACT.4に登場し、『犬狼伝説完結編』では最終章ACT.8に登場する。

鷲尾 翠 (わしお みどり)

特機隊第一中隊の第一突入小隊に所属する若い女性。セミロングの髪型で、一重まぶたの美人。狙撃の名人で、モーゼル・ミリタリー拳銃にストックを付けて、狙撃に使用する。都々目紅一、鳥部蒼一郎、鷲尾翠の三人は第一突入小隊に属しており、「悪魔の三人組」と呼ばれている。『犬狼伝説』ではACT.1とACT.4に登場し、『犬狼伝説完結編』ではACT.5と最終章ACT.8に登場する。 実写映画『紅い眼鏡』にも登場した(こちらの役名は鷲尾みどり)。

乾 亮 (いぬい とおる)

特機隊第一中隊の第二突入小隊に所属する青年。警視庁の機動隊の突入小隊から、志願して特機隊に入隊した。重装甲を身につける隊員の集団戦闘では、相互信頼が必要とされるが、彼は頑なに他の隊員に心を開かなかった。副隊長の半田元は、乾を不適任とするが、隊長の巽志朗は彼に「捨て犬の目」を見て、自分自身も「犬」と思うがゆえシンパシーを感じ、突入隊員に据え置くことを命じる。 『犬狼伝説』のACT.1に登場。

紀州 八郎 (きしゅう はちろう)

特機隊航空小隊に所属するパイロットの青年。和歌山県出身の29歳。非常に小型で、並列交差回転式のローターを持ったヘリコプター、Fa-330(フォッケアゲハリス-330)で警戒・偵察任務を行う。自衛隊の払い下げであり、「骨董品」と笑われているFa-330を操縦し、警視庁の新鋭小型ヘリFi-282(フレットナー-282)を上回る高機動を示すなど、操縦の腕は良い。 いつもは、新木場の東京ヘリポートに同居している小隊基地にいる。塗装工をやりながら夜間の航空学校に通っていた過去がある。特機隊隊長の巽志朗が配備しようとした、双軸二重反転ローターの大型戦術輸送ヘリコプター、Fa-666ヤクトハウンド(フォッケアゲハリス-666)のパイロットになることを夢見ている。 『犬狼伝説』ACT.2、『犬狼伝説完結編』最終章ACT.8に登場する。

草場 (くさば)

特機隊航空小隊整備士の中年男。いつも白いツナギを着ている。紀州八郎と仲が良く、小隊基地の整備場ではしょっちゅう話をしていた。紀州に隠し事をしており、ある行動後に「裏切御免!……と言っても許しちゃくれないだろうな」という黒澤明の『隠し砦の三悪人』中の名セリフを混ぜた言葉を残して逃走する。 『犬狼伝説』ACT.2に登場。

藤原 和也 (ふじわら かずや)

ベルリン行きのルフトハンザ機をハイジャックした、メンバーのリーダー。28歳の青年。長めのウエーブした髪型で、前髪で右目を隠している。犯行声明で「四季協会」という組織名を名乗るが、じつは過激派集団セクトの内部抗争ではじき出された武闘派グループであることが特機隊公安局の室戸文明より報告される。 特機隊隊長の巽志朗は藤原に自分と同じ「死に場所を求める犬」の匂いを感じ取り、副隊長の半田元に彼の処置を命じた。『犬狼伝説』ACT.4に登場。

集団・組織

特機隊 (とっきたい)

『犬狼伝説』に登場する集団。国家公安委員会に直属する首都圏治安警察機構(通称、首都警)の警備部に属する「特殊武装機動警備大隊」、略して「特機隊」。大隊本部に属する3つの中隊の中の突入隊員は、ドイツで開発された92年式特殊強化装甲服と機関銃MG34をはじめとする重火器で武装している。 突入隊員は「三頭犬」のエンブレムを身に着けており、そのため特機隊突入部隊の俗称は、「地獄の番犬ケルベロス」である。日本政府の強引な経済政策によって増大・エスカレートした組織的凶悪犯罪や過激派集団のテロ活動に対抗するために設立された。第二次世界大戦で、日本がドイツに負けた改変世界の物語なので、武器のほとんどがドイツ製もしくはドイツの設計を日本で製作したものとなっている。 その強力な武装火力ゆえに民衆や自治警察、さらに首都警の別派閥から疎まれ、衰亡・消失していく運命を背負うこととなった。「三頭犬」のエンブレム・デザインは、アニメーター・イラストレーターの高田明美である。

その他キーワード

92年式特殊強化装甲服 (きゅうじゅうにねんしきとくしゅきょうかそうこうふく)

ドイツ軍が第二次大戦中に開発・使用した強化装甲服を元に作られた。赤いガラスの暗視装置が付いたガスマスクで顔面を覆い、全身マットブラック一色の威圧的な形態である。第二次世界大戦で、日本がドイツに負けた改変世界の物語なので、外見は第二次世界大戦のドイツ兵が重武装したように見える。 「動甲冑」の一種で、簡単なパワーアシスト機構はあるものの、パワードスーツではなく、着用して行動するにはそれなりの体力が必要である。運動性保持を優先されたこともあり、完全な防弾・防爆圧とはいえないので、作戦活動中は練度の高いチームワークで、お互いの死角や弱所を補いあう必要がある。機関銃MG34の弾倉はバックパックに配置されており、左腕の下をくぐらせたベルトで給弾する。 『犬狼伝説完結編』では自衛隊が使用するプロテクトギアも登場する。押井守の小説『ケルベロス鋼鉄の猟犬』では、プロテクトギアは第二次世界大戦中のスターリングラードで凄惨な戦闘を行なったことになっている。(ちなみにこの作中ではヒトラーは1941年7月に暗殺されている)。 プロテクトギアのデザインは、メカ・デザイナーで現在はアニメ監督も務める出渕裕による。

Fa-666ヤクトハウンド (えふえーろくろくろくやくとはうんど)

『犬狼伝説』に登場する架空兵器。特機隊隊長の巽志朗が特機隊航空小隊に配備しようとした、双軸二重反転ローターの大型戦術輸送ヘリコプター。第二次世界大戦のドイツ軍の急降下爆撃機スツーカを大型化し、主翼の端に大型のローターをつけたような形をしている。実験機1機が試験的に運用されるが、計画は頓挫する。 デザインは、メカ・デザイナーで現在はアニメ監督も務める出渕裕による。

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