サラダ・ヴァイキング

サラダ・ヴァイキング

人類を食糧とするために地球にやって来た狩猟種族のレオガルズが、初めて食べた野菜の美味(おい)しさに感動し、一族の食糧問題を解決するために農業を始める姿を描いたバトルコメディ。集英社「少年ジャンプ+」2021年52号から掲載の作品。

正式名称
サラダ・ヴァイキング
ふりがな
さらだ ゔぁいきんぐ
作者
ジャンル
農業・漁業
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊5巻
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あらすじ

ヴァルマン族襲来

星を支配し、資源を喰(く)らい尽くすと別の星を侵略することを繰り返している宇宙最強の狩猟種族「ヴァルマン族」は、近隣の星を喰らい尽くしてしまい、深刻な食糧不足に陥っていた。そこでヴァルマン族は、次の獲物の候補の一つとして地球に目をつけ、レオガルズシドルドを調査員として送り込む。地球人に擬態し、地球に降り立って3日が過ぎ、レオガルズは人類を「毛量が少なく脆(もろ)い肉体のため加工しやすい食材」として認識する。衣服や言語の統率すらできていない人類は支配するのに好都合な種族で、数も繁殖力も問題なく、次の侵略地として地球が相応(ふさわ)しいとレオガルズは結論を出そうとしていた。そんな中、地球に降り立ってからいっさい食事を摂(と)っていなかったレオガルズは、空腹の限界を迎えつつあった。目の前に美味しそうな「肉」が大量にあるのに、仕事をサボって調査対象の食材をつまみ食いすることを、生真面目なレオガルズは躊躇(ちゅうちょ)していた。そんなレオガルズの足元に小型犬が駆け寄って来る。するとレオガルズは食欲に負け、その小型犬を捕食しようとするが、犬の飼い主である賀集夏樹に声をかけられて我に返る。その瞬間、レオガルズが抱えていた小型犬が粗相をしてしまい、レオガルズの服がオシッコまみれになってしまう。夏樹から服をクリーニングに出して返すと言われ、服を着替えたレオガルズは、お詫(わ)びとして彼女から食事に誘われる。レオガルズはレストランの席に着くも、食べたい「肉」が目の前の席にいるため、人間の料理は「家畜の餌」程度の認識だった。そして夏樹が注文したサラダが席に運ばれてくる。レオガルズは皿に「草」ばかりが盛られたことに屈辱を感じながらも夏樹に勧められるまま、サラダを口に入れるが、レオガルズは我慢できずに夏樹を捕食することを決意する。しかし、はじめて野菜を食したレオガルズは、その食感と野菜の美味しさに感動し、生態系の頂点に君臨する超狩猟民族としての価値観が崩れていくのを実感する。

調査報告前夜

害獣狩りの道中でウルルと遭遇したレオガルズシドルドは、調査報告会の日程が早まり、3日後であるとウルルから知らされる。野菜を食べるヴァルマン族は前代未聞で、異端分子である二人が処分されるのは明らかだった。そこでレオガルズは女王の妹、ウルルを懐柔するため、賀集夏樹と暮らす家にウルルを連れて帰る。子供が苦手なシドルドは透過の能力を使い、レオガルズに自らの命運を預けて姿をくらます。そんな中、気を利かせた夏樹が風呂を用意してウルルと共に風呂に入ってリラックスしていると、気の抜けたウルルの擬人化が一部解け、背中の羽根が出現してしまう。正体を隠しきれないと判断したレオガルズは夏樹に、自分たちがヴァルマン族であることや、地球侵略のため調査にやって来たことを打ち明ける。レオガルズは菜食となったことで、自らも抹殺対象であることを告げると、夏樹はレオガルズを助けるために行動を起こす。まずはウルルに地球の食べ物を認知してもらうために料理を振る舞う。するとウルルは、食後に出されたケーキを気に入り、原材料である小麦やサトウキビ、てんさいなどの野菜に興味を抱く。ウルルの懐柔に成功するが、ヴァルマン族は絶対的な利益を生む確証がないと地球を侵略することもわかっていた。夏樹は誰も死なせたくないという強い気持ちで、龍造にも相談したところ、食糧問題が原因なら美味(うま)いものを腹いっぱい食わせることで解決できるのではとシンプルな考えに行き着く。そして龍造が、村のみんなに呼びかけ自慢の食べ物を集めた集会を企画。調査報告会前日、村人たちは村のコミュニティハウスに集合していた。龍造から自国の食料問題を解決するため、日本へ調査に来た外国人として紹介された宇宙人三人組に対し、他所(よそ)者を嫌う黍滝アサヒから物言いが入る。するとレオガルズが頭を下げ、なんとかその場は和むものの、侵略対象の星の動物に頭を下げるレオガルズを見てシドルドは呆(あき)れる。そんな中、美味しい料理や食材は数えきれないほど並べられるが、調査の成果物に相応しいものとして、この村で造られた「日本酒」が満場一致で採択される。司会を務める龍造は、米の出来栄えや水の良質さを説くが、体質で好みが別れる酒に地球の運命を託すことを夏樹は問題視する。そこで龍造は「人生はギャンブルである」と力説し、村を挙げての大宴会が始まる。

登場人物・キャラクター

レオガルズ

ヴァルマン族の青年。人類を捕食するためにシドルドと共に地球へ調査員として派遣された。地球人に擬態した姿は、逆立てたピンク色の髪で額に十字傷がある。シドルドとは幼い頃から共に戦ってきた親友同士で、地球ではシドルドの弟という設定で暮らしている。一族の食糧問題に関して真剣に考えており、すぐに食料資源が枯渇してしまう狩猟よりも、半永久的に供給可能な自分たちで食料を作る農業に問題解決の希望を見出す。偶然出会った賀集夏樹から龍造を紹介され、現在は龍造の持ち家に夏樹と共に居を構えて農業を勉強中。強さでランク分けされるヴァルマン族の中でも、「一族の最高傑作」と評されるほどの戦闘能力を誇り、ランカー2位の実力者。ちなみにヴァルマン族の雄の中では最強のため、女王のマリアスタンの夫候補でもある。稲妻をあやつる特殊能力を持ち、戦闘時だけでなく幅広い活用ができるが、能力を制御することが難しい。地球にやって来てからは野菜が好きになり雑食となる。昆虫も「肉」と認識しているため食べることに抵抗がない。五感、特に嗅覚が異常に発達しており、一度覚えた匂いは距離が離れていても判別できる。周囲からは「レオ」という愛称で呼ばれている。

シドルド

ヴァルマン族の青年。人類を捕食するためにレオガルズと共に地球へ調査員として派遣された。地球人に擬態した姿は、黒髪ロングヘアのイケメン。レオガルズとは幼い頃から共に戦ってきた親友同士で、地球ではレオガルズの兄という設定で暮らしている。ヴァルマン族でも最上級のランカーという階級に属し、強力な戦闘力を誇る。生真面目で任務を忠実にこなすが、融通が利かないところがある。一見するとクールな印象を受けるが、見た目によらず動揺しやすくシドルド自身が納得いかないことには怒りをあらわにする。自らを透過させる特殊能力を持ち、隠密行動や相手に悟られず攻撃することを得意としている。子供が苦手で、ウルルと積極的にかかわろうとしない。地球にやって来てからは、豆腐や納豆などの豆を原材料とした食品が好物となる。泣き上戸で、酒を飲むと泣きながらウザ絡みする。少々天然気味で、女王のマリアスタンに納豆を献上したが、「腐った豆」と認識されて殺されかけたことがある。あまり絡みのない黍滝アサヒからも「たぶん馬鹿」と認識されている。周囲からは「シド」という愛称で呼ばれている。

賀集 夏樹 (かしゅう なつき)

龍造の孫娘。年齢は20歳。以前から農業に興味を持っていたが、レオガルズと知り合って龍造の畑で共に野菜を作り始めた。龍造の持ち家にレオガルズと共に暮らしている。健康的な体型でスタイル抜群なことから、出会った当初はレオガルズからは「食料」と見なされており、賀集夏樹自身は気づいていないが、ずっと捕食される危険と隣り合わせの環境にある。お人好しな性格でなんでも受け入れてしまうため、レオガルズたちが宇宙人だと知っても態度を変えることなく接している。野菜は好物ながら昆虫食には抵抗がある。バナナときゅうりが大好きな「ピース」という名前の小型犬を飼っている。当初はレオガルズを「畑のパートナー」だと思っていたが、次第に異性として意識するようになる。黍滝アサヒとは幼なじみで、好意を寄せられているが夏樹自身は気づいていない。

ウルル

ヴァルマン族の女王であるマリアスタンの妹。地球人に擬態した姿は、おかっぱ頭の小学生くらいの外見の女子。外傷を治癒する特殊能力を持っているが、無敵に近い強さを誇るヴァルマン族には不要な能力なため、一族の厄介者として扱われていた。地球では賀集夏樹をはじめ村人の優しさに触れ、よく笑いよくしゃべるようになる。性格も前向きになり、のちに地球の調査隊の隊長に志願し、レオガルズやシドルドを率いるようになる。夏樹を姉のように慕っており、よく二人で出かけている。地球に来てからの好物は、ケーキはじめとしたスイーツ類。夏樹からは「ウルルん」と呼ばれてかわいがられている。

龍造 (りゅうぞう)

賀集夏樹の祖父。ベテランの農業従事者で、年齢は76歳。夏樹から紹介されたレオガルズに畑を手伝うよう依頼し、彼が農業を学ぶきっかけを作った人物。皺(しわ)だらけの顔で日焼けしている。農業に造詣が深く、レオガルズからは「マスター」と呼ばれ尊敬されている。ビールや日本酒を好み、昼から飲むこともしばしばで、田んぼで駆除したイナゴを揚げたり佃煮(つくだに)にして酒のあてにしている。龍造が所有する畑の一部を夏樹に任せ、レオガルズと共に農業をやらせているほか、所有する空き家だった家に夏樹とレオガルズを住まわせている。おおらかな性格で、レオガルズたちが宇宙人だと知っても態度を変えることなく接している。

黍滝 アサヒ (きびたき あさひ)

黍滝農園の跡取り息子。年齢は20歳。近隣の不良グループのリーダー的な存在で、ロン毛で舌にピアスを付けている。村の大地主の家系で、絶対的な権力と圧倒的な財力を持っている。賀集夏樹とは幼なじみで、昔から思いを寄せているが告白には至っていない。実家も資産家ながら、黍滝アサヒ自身もスポーツジムを経営している。アスリートのような引き締まった身体で喧嘩(けんか)も非常に強い。「なにもない村だからこそ他所から奪う」という哲学を持っており、レオガルズからは生物的に「まともな人間」と評されている。仲間たちは見下しているが、みんなでバーベキューをしたり、田舎(いなか)ならではの遊びで盛り上がっている。のちにひょんなことからヴァルマン族の女王のマリアスタンと出会い、同居することになる。村の老人たちからは「坊ちゃん」と呼ばれている。

マリアスタン

ヴァルマン族の女王を務める女性。ヴァルマン族の頭脳にして絶対権力者として惑星侵略の指揮を執っている。炎をあやつる特殊能力を持ち、戦闘能力は一族最強である。次世代に強い子供を残すことを義務付けられており、夫の第一候補はレオガルズ。調査報告としてレオガルズとシドルド、ウルルから地球の酒を献上され、酒にハマって母船を抜け出し、単身地球へ酒を求めて乗り込んで来た。地球人に擬態した姿は、ショートカットの美女ながら舌はスプリットタンになっている。黍滝アサヒたちのバーベキューに参加し、酒を飲み尽くしてアサヒの家に居候することとなる。狩猟と戦闘指揮以外はいっさいやらないため、地球では飲んだくれのニートのような生活を送っている。出会った当初、マリアスタンの「一族の女王」という自己紹介により、アサヒの仲間たちからはどこかの暴走族の頭だと思われ、「文化を絶やさぬ粋な女」だとカンちがいされていた。ヴァルマン族たちからは「女王」と呼ばれて畏怖されており、地球では「マリア」と名乗っている。

虎次 (とらじ)

龍造の友達で、マタギを生業とする老齢な男性。年齢は76歳。ベテランのマタギで、近隣で害獣が出現すると依頼が殺到する。オオカミが絶滅して鹿が繁殖しすぎたため、現在は主に鹿を狩っている。仕留めた獲物は解体し、ジビエとして市場に卸している。地球の火器に興味を持ったシドルドに、銃の扱いや構造を教えている。

ザキドエル

ヴァルマン族の青年。地球人に擬態した姿は、短髪の筋骨隆々な体で左目には3本ラインの刺青(いれずみ)のような模様がある。戦闘狩猟民族であるヴァルマン族の中でも特に血の気が多く、ランカーという最上階級に属しながら、素行の悪さや度重なる命令違反で別の星に幽閉されていた。母船にマリアスタンが不在のスキを突いて幽閉先の星を抜け出し、レオガルズを倒して最強に近づくために地球にやって来るほど、強さに異常な執着を持つ。食べた鉄から武器や鎧(よろい)を生成する能力を持つ。コントロール不能な荒くれ者で、鉄を食べれば食べるほど強くなる危険人物。ただし、ザキドエル自身は鉄も肉も好きではなく、強くなるためと生命維持のための栄養摂取と割り切っているので食に対する喜びを知らない。周囲から名前を略して「ザキ」と呼ばれている。地球に来てからは、ほうれん草などの鉄分を多く含む野菜を好むようになる。

集団・組織

ヴァルマン族 (ゔぁるまんぞく)

星を狩って支配し、その星の動物を捕食する狩猟種族。宇宙でも最強クラスの戦闘能力を持っているが、個々の強さも相まって狩猟を生業としているため、文明レベルは人類よりも低い。ザキドエルのような例外を除けば、基本的に肉しか食べない。支配した星の資源を喰らい尽くし、新たな星を捕食し続けてきた歴史がある。女王のマリアスタンを頂点とし、統制の取れた軍隊のような行動で星を侵略する。女王をはじめとする「王家」は特別階級とされ、強さでランク分けされた階級が付けられている。一族の中でも上位12人は「ランカー」と呼ばれ、侵略候補の星の調査員はこのランカーの中から選ばれる。ランカーや王家の者は、固有の特殊能力と一騎当千の強さを誇る。地球の酒を飲むと、擬態した地球人の姿から元に戻れなくなる。現在では一族内での婚姻が一般的だが、大昔は異種族間でも交配していた。各々の腹の中に「虫」を飼っており、その虫のフェロモンで姿が変わっても相手を識別できる。

書誌情報

サラダ・ヴァイキング 5巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第2巻

(2022-07-04発行、 978-4088831855)

第3巻

(2022-12-02発行、 978-4088833972)

第4巻

(2023-04-04発行、 978-4088834672)

第5巻

(2023-06-02発行、 978-4088836188)

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