概要・あらすじ
駿河藩の藩主、徳川忠長が催した御前試合。ふつうの御前試合は木剣で行われるところを、忠長の意向で真剣での立ち会いを命じられた。その試合には仕官を願う多くの武芸者が集った。その第1試合。
片方は片腕の剣士藤木源之助、そして相手は盲目で片足が不自由な剣士、伊良子清玄。異様な2人の試合に観客は息を呑んだ。2人がかつて所属していた剣法、虎眼流一門における壮絶な過去や因縁が描かれていく。
登場人物・キャラクター
藤木 源之助 (ふじき げんのすけ)
虎眼流の師範代。ストイックに剣を追求する強い意志を持つ。農民の子であった自分を拾った虎眼に忠誠を誓っている。刀無しでも拳で相手を制圧可能なほどの身体能力を持つ。伊良子との対決で片腕を失うも、鍛錬で腕力をさらに鍛え、復讐のために御前試合に挑む。
岩本 虎眼 (いわもと こがん)
虎眼流開祖。刀の握りを変え、到達距離を伸ばす「流れ」や高弟以外は見ることのかなわぬ秘剣「流れ星」などの様々な秘技を操る「濃尾無双」と呼ばれた剣豪。老いた現在はほとんどの時間、自分が誰かも定かではない「曖昧」な状態で、時折正気に戻る。
岩本 三重 (いわもと みえ)
虎眼の娘。虎眼殺害の仇である清玄を心から憎み、藤木を助け付き添いながらも、しかし一時は思いを寄せていたこともあり、複雑な感情を抱いている。
牛股 権左衛門 (うしまた ごんざえもん)
虎眼流道場では虎眼に次ぐ腕前を持つ師範。巨大な木剣「かじき」を軽々と振り回せるほどの巨漢だが、以前虎眼に口を刀で切り裂かれている。
いく
虎眼の妾。彼女と関わったものはすべて不幸になると噂されている。不義密通のため、伊良子とともに放逐される。盲目の伊良子の杖となって虎眼流への復讐を支えている。
伊良子 清玄 (いらこ せいげん)
異常な出世欲、上昇志向を持った天才剣士。虎眼流でも出世し、秘技をものにし跡目候補となる。しかし、虎眼の愛妾いくとの不義密通により、仕置きとして盲目となる。復讐に燃え、必殺技「無明逆流れ」を編みだし、虎眼流門下生を次々と殺害していく。 藤木の仇討を片腕を切断して破るが、御前試合で再戦する。
徳川 忠長 (とくがわ ただなが)
時の将軍、徳川家光の実弟。駿河大納言で、将軍の跡目争いに敗れたため、密かに幕府転覆を狙っている。残虐な性格。前代未聞の真剣での御前試合を開催する。