シュトヘル

シュトヘル

13世紀初頭、大ハン(チンギス・カン)が大帝国を築かんとしていたころのモンゴルを舞台に、一人モンゴル軍に戦いを挑む女戦士シュトヘルと、滅亡しつつある国西夏の文字が記された玉音同を守る少年ユルールの旅を描いた歴史アクション漫画。過去と現代を繋ぐ「文字」をテーマにした作品。第16回手塚治虫文化賞新生賞受賞作。

正式名称
シュトヘル
ふりがな
しゅとへる
作者
ジャンル
アクション
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概要・あらすじ

13世紀初頭モンゴル。仲間をモンゴル軍の配下ツォグ族に皆殺しにされた女戦士シュトヘルは、仇である「虎の男」ハラバルを探しながらモンゴルの兵を殺して回っていた。ある日、彼女は西夏の文字をひとつ残らず消し去らんとするモンゴルから、西夏文字が記された玉音同を守るため旅をしていた少年ユルールと出会う。

ツォグ族を出奔したユルールハラバルの弟だと知ったシュトヘルは、ユルールと共にいればハラバルが現れると聞き、彼の旅に同行。はじめはユルールを餌にしか思っていなかったシュトヘルだが、文字を通じてユルールと心を通わせていく。その後、ハラバルに敗れ処刑されたシュトヘルだが、現代の男子高生須藤が憑依し蘇生。

再びユルールとの旅を続けていく。

登場人物・キャラクター

シュトヘル

赤髪の女戦士。元は西夏の兵士だったが、ハラバル率いるツォグ族に仲間を皆殺しにされ、復讐鬼へと変貌。シュトヘルは本名ではなく「悪霊」という意味の言葉。西夏軍にいたころは、「弱いのにピーピーうるさい」ことからウィソ(すずめ)と呼ばれていた。仲間の死体を餌をあさりに来た狼たちから守るなかで、獣の戦い方を身につけ、単身で十数名を相手取るほど戦闘力は高い。 武器は主に小型の鎌と剣を使用。また、狼のように敵の喉笛に食らいつくこともある。当初は復讐心しか持ち合わせていなかったが、ユルールとの出会いで変化していく。

須藤 (すどう)

現代の日本に生きる普通の男子高生。よく見る「奇妙な夢」に悩まされており、学校はサボり気味。鈴木さんと出会ったことがきっかけでシュトヘルの肉体に憑依。はじめは人を傷つけることにためらいがあったが、旅の途中狼とじゃれ合ううちに戦い方を覚える。スドーの人格が表に出ている間はシュトヘルは眠っているが、モンゴル兵と遭遇などするとシュトヘルが現出する。 無愛想なシュトヘルとは違い、人懐っこい性格。

ユルール

ツォグ族の少年で、ハラバルの弟。名は「祝福」という意味である。表向きはツォグ族族長の息子として育てられていたが、実はモンゴルに奪われた族長の妻玉花が大ハンに孕まされて生まれた子供である。そのため、渦を描いたような瞳という大ハンの血を引く者の特徴を受け継いでいる。西夏人である母から西夏文字を教わって育ち、勇猛な兄や父とは違い争いを好まぬ穏やかな性格である。 西夏の文明や文字を抹消せんとするモンゴルから西夏の文字を守るためツォグ族を出奔。ボルドゥとともに西夏文字が記された玉音同を守るため南宋へ向かう旅へと出る。ヤラルトゥという名の大鷲を連れている。

鈴木 (すずき)

外国から須藤の通う高校に転入してきた女子高生。須藤と同じように「奇妙な夢」に悩まされている。シュトヘルの記憶を共有する須藤と同じように、ユルールの記憶を共有している。ユルールに似た容姿をしている。

ハラバル

ツォグ族族長の息子で、ユルールの兄。母は西夏人の玉花。弓の名手であり、騎乗しながら一度に三本を射て遠方の敵を正確に仕留めるほどの使い手。愛馬三ツ目を駆り、単騎で敵陣を蹂躙する豪傑。その腕前から神箭手(メルゲン)と称されている。モンゴルに下ったツォグ族再興のため数々の武勲を上げており、シュトヘルの仲間を皆殺しにしたのもハラバルである。 争いごとを嫌うユルールの性格を認めており、一度は一族への裏切りを許した。だが、シュトヘルを助けるために自分に弓を引いてからは明確に敵として認識。その後ヴェロニカを通じて大ハンの命を受け、ユルールの首と玉音同を追うこととなる。 殺した敵兵の血で「虎の絵」を書くことから、「虎の男」とも呼ばれている。

ボルドゥ

ツォグ族で使用人として働いている西夏人の老人。ツォグ族に嫁いだ玉花の下男として共にやって来たが、実は玉音同を守るという命を西夏の番大学院院長のグルシャンから受けていた。ボルドゥという名もツォグ族から覚えがいいようにと、グルシャンから与えられたものである。 西夏の文字を守るため一族を裏切ったユルールを見込み、彼に玉音同を託し行動を共にする。針の達人で、打込んだ相手を昏倒させたり、治療に使っている。

アルファド

浅黒い肌のアラブ系男性。ユルールらを南宋まで運ぶ仕事を請け負った商人。人が受けたがらぬ危険な仕事を負うことから「ひとり星」の異名を持つ。十字軍の遠征で故郷を滅ばされたことから、人を縛る「物差し」を嫌い、「物差し」を持たぬ純粋な殺意の塊であるシュトヘルに執着している。

大ハン

モンゴルの王。本名はテムジン。周辺部族を征服し、さらなら勢力の拡大を目論んでいる。幼いころに西夏の物を盗みんだ咎で、背中に西夏文字で「西夏の奴隷」と焼き印を押された過去を持つ。そのため、西夏の文字を強く憎み、この世からひとつ残らず消し去らんとしている。モデルはチンギス・ハン。

ヴェロニカ

大ハンに仕える金髪碧眼の美女。元は教会で働くシスターだったが、村の外れに住みついたロマの女性シャキラと交流を持ったことで異教徒扱いされ監禁。暴徒と化した村人にシャキラは火刑に処され、自身も司教に凌辱され、背中に異教徒の焼き印を押されてしまう。その怨みで、大ハンに故郷であるヨーロッパまで攻め滅ぼしてもらうことを望んでおり、彼の手助けをしている。 また、大ハンの背中の焼き印を知る数少ない人物である。大ハンの敵を独自の思惑で排除しており、急速に頭角を現したハラバルを危険視している。医学の心得があり、メスなどの手術道具を常に持ち歩いている。

グルシャン

西夏番大学院(国立図書館)の院長。玉花の父で、ハラバルとユルールの祖父にあたる。玉音同を奪いに来たハラバルと交戦し、敗北する。文官でありながら武術にも長けており、分銅付きの棍を武器にハラバルを苦戦させた。

ジルグス

金国の将軍。老年でありながら、筋骨隆々の武人。金国まで攻めいらんとするモンゴルに危機感を覚え、ユルールの持つ玉音同を奪いモンゴルとの交渉を目論む。

メルミ

ナランにつき従う少女。大ハンに背いたため、ナランとトルイに皆殺しにされた部族の唯一の生き残り。部族に伝わる、動物を眠らせたり、動物だけに語りかけるホーミーを使うことが出来る。将来役に立つと判断したナランに拾われ、以降行動を共にしている。

ナラン

大ハンの息子。トルイとは双子の兄弟である。二人とも大ハンの後継者候補であったが、幼いころメルミの部族を殺した数を競わされ、トルイが勝利。トルイが正式な後継者となる。その後ナランは、トルイの「予備」とされ、存在を抹消される。大ハンの「渦を書いたような瞳」を受け継いでおり、端正な顔立ちだが享楽的性格で、残忍。 武術にも長けており、礫を放つ弓を主な武器としている。

場所

西夏

『シュトヘル』に登場する国。十一世紀、中国北西部にタングート族(チベット系)に建国され、西夏文字をはじめとした独自の文化を築いた。しかし、大ハン率いるモンゴル軍に侵略され、滅亡寸前である。西夏人は自国を大夏と称している。

その他キーワード

玉音同 (ぎょくおんどう)

『シュトヘル』に登場する宝物。西夏文字が刻まれた玉板。番大学院院長のグルシャンが娘・玉花に託し、ツォグ族の集落でボルドゥが隠し持っていた。これを守るため、ユルールの旅が始まった。

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