概要・あらすじ
18世紀のフランス、ルイ15世の治世。「詩人」と呼ばれる謎の能力を持った勢力により、人々が次々に殺されるという事件が起きていた。魔物と化し乙女の血を収集する「詩人」の前に、シュバリエ・スフィンクスと名乗る剣を持った女性が現れ、これを撃ち滅ぼす。「詩人」を狩ることを使命とする彼女の正体は、パリ市警に務めるデオン・ド・ボーモンの肉体に降りた彼の実姉リア・ド・ボーモンの霊だった。
登場人物・キャラクター
デオン・ド・ボーモン (でおんどぼーもん)
表向きはパリ市警に勤める良家の青年。本業はルイ15世直属の王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)の一員で、「詩人」と呼ばれる異能力者を狩ることを役目としている。「詩人」との戦いにおいては、ウィッグやドレスを身につけた女装の儀式によって実姉リア・ド・ボーモンの霊を降ろして戦う。「詩人」との戦いや調査の間は居なくなってしまうため、パリ市警局長であるサルバドールにはサボり癖のあるだらしない男だと思われている。 射撃が不得手。同名の実在人物デオン・ド・ボーモンがモデルとなっている。
リア・ド・ボーモン (りあどぼーもん)
「詩人」を狩る女騎士。デオン・ド・ボーモンの実姉。生前は王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)の暗号解読及び秘密外交を担当し、大きな功績を残していた。「詩人」に関係する何者かによってすでに殺害されている。弟デオンの肉体を借りて「詩人」と戦う際は、「シュバリエ・スフィンクス」を名乗る。自らが殺された経緯を記憶しておらず、その探求も目的のひとつとなっている。 生まれつき「勝利の塔」の第四位階「神智者(ネツアク)」の詩人であり、戦いのうちに位階をあげていくが、本人は勝利の塔を登ることを良しとしていない。デオンと合わせて「運命の輪」の詩情を持つ。「導きの獣」は猫の姿のネル。トートの剣を持って戦う。
ロビン
デオン・ド・ボーモンの少年従士。忠誠心はあるが口が悪く、デオンへの物言いは敬意こそあるが容赦ない侮蔑が含まれている。リア・ド・ボーモンの生前は彼女に仕え、王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)との連絡員をしていた。ガーゴイルを加工して作った「詩人」殺しの銃弾でシュバリエ・スフィンクスの戦いを援護する。 元の名は「フランソワ・ドゥ・ロベスピエール」だったが、リアから「ロビン」という名を与えられて以降は、それ以外の名を名乗るつもりはない。
ソフィア
ルイ15世と愛妾ポンパドール夫人の間に生まれた幼い娘。「詩人」が現れるたびに身体に鏡文字の「革命の詩」が浮かび上がり、そのたびに喋ることのできる言葉を失っていった。現在では「PALMS」の一語しか話すことができない。アルファベットの書かれた積み木を持っており、それを並べて意志を伝えることができる。
ダグラス・マッケンジー (だぐらすまっけんじー)
王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)の一員。ロシアとの秘密外交を担当していた。強面の大男。詩人ではないため、「詩人」との戦いにおいては、法王の祝福を受けた巨大な馬上槍を用いる。
ジャン・ル・ロン・ダランベール (じゃんるろんだらんべーる)
王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)の一員。解析官。詩を封じる力を持つ。占星術師の父親から詩を受け継ぎ、「ノストラダムス三世」と呼ばれているが、本人はこれからは科学こそが新しい信仰だと思っている。同名の実在人物ジャン・ル・ロン・ダランベールがモデルとなっている。
ポンパドール夫人 (ぽんぱどーるふじん)
ルイ15世の愛妾。ソフィアの母親。国政に力を振るう有能な人物。頭がよく、問題処理能力に優れている。ソフィアの身に革命の詩が浮き出る症状を知り、サン・ジェルマン伯爵に助けを求めてしまう。同名の実在人物ポンパドール夫人がモデルとなっている。
ルイ15世 (るいじゅうごせい)
フランスの王。ジャン・ル・ロン・ダランベールには「オヤジ」と呼ばれているが若々しい青年のような容姿。戦争を憎み、国政を愛妾のひとりポンパドール夫人に任せている。自らは王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)を率い、秘密外交と「詩人」の掃討を主眼に動いている。ポンパドール夫人との間に生まれた娘ソフィアを溺愛している。 同名の実在人物ルイ15世がモデルとなっている。
ネル
シュバリエ・スフィンクスの「導きの獣」。猫の姿をしている。生前の名はエレネアーレ・ド・ボーモンで、リア・ド・ボーモンの従姉。王の機密局(ル・スクレ・デュ・ロワ)に属する占術師で、「詩人」だった。死後も「導きの獣」としてこの世に留まり、リアのために力を使う。
サン・ジェルマン (さんじぇるまん)
流浪の錬金術師。千年以上の時を生きている。伯爵の爵位を持つ。以前はトルコで将軍位についていたこともある模様。ポンパドール夫人に呼び寄せられ、娘ソフィアの肉体に浮かぶ革命詩についての相談を受け、ソフィアの魂と詩情を「カスパーの鏡剣」に封印する。影法師とは異なる視点から「詩人」の選良を行い、エマに「導きの獣」を与えた。
影法師 (ろーぶる)
「詩人」たちを導く謎の存在。目覚めていない「詩人」を目覚めさせ、目覚めた者には勝利の塔の位階をさらに高く登らせるための示唆を行う。影から現れ、変幻自在に動く。「詩人」を狩るシュバリエ・スフィンクスとは敵対関係にある。同様に「詩人」に「導きの獣」を与えるサン・ジェルマン伯爵とも敵対している様子。
アルマン
楽団指揮者の「詩人」。「勝利者の塔」の第三位階「実践者」であり、楽団の者をも第一位階、第二位階の「詩人」へと目覚めさせ、彼らを率いて人々を襲わせていた。シュバリエ・スフィンクスと戦い、リア・ド・ボーモンが霊体であることに気づく。
エマ&アンジェ
双子の少女の「詩人」。「勝利者の塔」の第五位階「練達者」であり、普通の人間や「詩人」を「黒化(二グレド)」してガーゴイル化した下僕にすることができる。また、円環詩の密室空間に対象者を閉じ込める能力を持つ。シュバリエ・スフィンクスに敗れ、アンジェは死亡。エマはサン・ジェルマン伯爵によってアンジェを「導きの獣」とした「塔」の詩情を持つ詩人へと変貌させられ、サン・ジェルマン伯爵を師と呼ぶようになる。
マスペロ
元瀉血医の小男。「勝利者の塔」の第六位階「略奪者」の「詩人」。鼠の群れを操り、ジャン・ル・ロン・ダランベールと変身前のデオン・ド・ボーモンを苦しめる。
サルバドール
パリ市警局長。ごく普通の人間で、「詩人」のことは何も知らないため、「詩人」関連の事件が起きるたびに居なくなるデオン・ド・ボーモンをサボり癖のある怠け者だと思っている。
その他キーワード
詩人 (しじん)
「詩情」に目覚め「勝利の塔」位階を登り始めた人間、あるいは生まれつき位階を持つ人間を指す。その本人が持つ詩情に即した能力を持っていることが多い。詩情の象徴である単語はアナグラムによる変容が可能で、そのバリエーションに応じた能力をも生み出す。
勝利の塔 (しょうりのとう)
「詩人」が登るべき十の位階。カバラにおける「生命の樹」の意匠を持って表される。判明している位階の名は第一位階「熱心者(マルクト)」、第二位階「理論者(イエソド)」、第三位階「実践者(ホド)」、第四位階「神智者(ネツアク)」、第五位階「練成者(テイファレット)」、第六位階「略奪者(ゲブラー)」、第七位階「免債者(ケセド)」まで。 より高位の「詩人」を殺すなどで位階をあげることができる。入り口には「HOMMES∴OPTARE(人の願い)」の文字があり、到達地点には「PSALMS(詩篇)」の文字がある。
導きの獣 (あばおあくー)
高位階の「詩人」が共に戦うべく従える獣。「勝利の塔」においては最下段に棲む不可視の獣とされ、塔の頂点で至上の真理を得るため位階を登る者に付き従うとされる。「詩人」に付く導きの獣は、詩人の魂と結びつきのある者の魂が変容したものであることが肝要。
クレジット
- 原作
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沖方 丁