人の顔を持つ動物「ジンメン」
本作は人の顔を持つ動物が人間を襲い始めるパニックアニマルホラー。動物園にいる動物、ペットとして売られている動物、身勝手な実験に利用される動物が人の顔を持つ「ジンメン」になり、同時に人間の知能と感情も手に入れ、自分たちを弄んだ人間たちに復讐(ふくしゅう)を誓う。そしてジンメンたちは感染したように増加し、人類を着実に追い詰めていく。人とジンメンの生存競争という形を取りつつ、動物好きの主人公、神宮マサトが双方の狭間(はざま)で揺れる姿を描いている。
人間に襲いかかるジンメンたち
主人公のマサトは動物好きの青年で、幼い頃は不二のサファリパークに通いつめていた。飼育員の中野ともなかよくなり、象の「ハナコ」とは心を通わせていた。しかし、引っ越してから7年ぶりにサファリパークを訪れると、すっかりサファリパークの雰囲気が変わっており、違和感を覚える。ハナコと再会した翌日、再びサファリパークを訪れると静けさが漂い、誰もいなかった。そしてマサトが目にしたのは、「ジンメン」と化したハナコの変わり果てた姿だった。傷ついた中野を助け出し、何とかジンメンから逃れたマサトだが、ジンメンはサファリパークから逃げ出し町の人間たちを襲い始めていた。
人間と動物の立場が逆転
ジンメンたちはもともとの動物の習性と身体能力に加え、人間の狡猾(こうかつ)さを身につけているため、人間よりも遥(はる)かに強い。さらにジンメンたちは一致団結して「動物公国」を作り、独立を宣言する。ジンメンたちの引き起こした謎の災害により、サファリパーク周辺は謎の大規模陥没が発生し、陸の孤島と化した動物公国では着々とジンメンたちが人間を追い詰めていく。また人間を殺すだけではなく、日々進化するジンメンたちは人間を奴隷や家畜として扱うようになり、人間と動物の立場が逆転していく。一方、動物公国に取り残された人間たちは、ただジンメンたちの危機におびえるばかりで、人間同士のいざこざも起こり始める。マサトたちも人間たちから手痛い裏切りに遭い、不信を募らせていく。こうしてマサトたちはさまざまな脅威に立ち向かいながら、動物公国からの脱出を目指す。
登場人物・キャラクター
神宮 マサト (じんぐう まさと)
どんな動物とも心を通わせることのできる高校生。年齢は16歳。両親の仕事の都合で7年間地元を離れていたが、高校進学を機に地元に戻って来た。幼い頃から「不二サファリワールド」に通っており、動物に懐かれる不思議な能力を持ち、動物の言葉を理解することができる。親友だった象のハナヨと再会するため、不二サファリワールドの近くで一人暮らしを始めた。人間の顔を持つ「ジンメン」になった動物たちが人間の言葉を理解していることや、人語をしゃべることにいち早く気づき、その原因の究明を図ろうとしている。ジンメンによる独立国家を自称する動物公国に取り残された際にも、希望を捨てず活路を見出そうとしていた。また、ジンメンになった動物たちは何者かの意思に従って行動していると考えており、その支配から動物たちを解放しようとしている。
翠川 ヒトミ (みどりかわ ひとみ)
神宮マサトの幼なじみの高校生。年齢は16歳。小学校の頃はベリーショートヘアで勝ち気な性格だったが、マサトと再会した時はスタイル抜群で、物腰も柔らかくなっていた。マサトとデートで不二サファリワールドを訪れた際、ジンメン化した動物たちに襲われてしまい、その後はマサトと行動を共にするようになる。人間をすぐに信用してしまうお人好しなところがあり、マサトを窮地に陥れた人間をも仲間に引き入れてしまう。ジンメンが増えるにつれマサトが人間不信になっていくことを不審に思っており、状況を観察している。