あらすじ
第1巻
女子高校生の石薙慶は、補導員や児童福祉司としても働いている。その一環で、父親から虐待を受けている少女の安住可憐と接触した慶は、彼女と付き合うこととなった。性欲と播種に特化した化け物の播種体と、死と破壊に特化した化け物の死殺体に変貌する可能性のある「撃鉄持ち」と呼ばれる存在である慶は、自分自身の存在理由を自問しながら生きていた。誰よりも撃鉄持ちとしての自覚を持つ神籬真由美の助言を得てそのヒントを探っていた慶だったが、そんな中、可憐は父親である安住広志の借金のカタにと、闇金融のデリカファイナンスに拉致されてしまう。
登場人物・キャラクター
石薙 慶 (いしなぎ けい)
警視庁生活安全部少年育成課特殊少年対策係の補導員兼児童福祉司を務める女子高校生。石薙鯨二郎の娘として暮らしているが、血のつながりはない。肩の辺りで外に跳ねた黒髪をカチューシャでまとめているが、三つ編みにしている左もみあげだけが白い。神籬真由美から贈られたアンダーリムのスクエアタイプの眼鏡をかけている。播種体による「E5号事件」によって生まれた撃鉄持ち。ごくふつうの人間として暮らしていたが、親友と思っていた真由美に犯された際、撃鉄持ちであることを自覚した。安住可憐の監視役でもあり、父親である安住広志から虐待されている可憐の深層意識を性的衝動に導くため、恋人となって性交している。
神籬 真由美 (ひもろぎ まゆみ)
石薙慶の幼なじみの女子高校生。ウエーブがかった真っ白い髪をうなじでまとめている。慶と同様のアンダーリムのスクエアタイプの眼鏡をかけている。播種体による「E5号事件」によって生まれた撃鉄持ち。神籬真尋の娘だが、なぜか真尋には従者のように振る舞われている。幼い頃から撃鉄持ちの自覚があったため、撃鉄持ちの特性を誰よりも理解し、巧みにあやつっている。高校生になってからは慶にも撃鉄持ちとしての自覚をうながし、深層意識を性的衝動に導くため、縛り上げて強姦した。
安住 可憐 (あずみ かれん)
水無月可絃が播種体に変貌した「E6号事件」によって生まれた撃鉄持ちの小学生の少女。長い黒髪で、前髪も顔を隠すように伸ばしている。石薙慶と付き合ってからは、フルフレームのスクエアタイプの眼鏡をかけている。安住加奈子と播種体になった可絃とのあいだに産まれた子供であり、安住広志の継子。加奈子と非常によく似ていることが広志の加虐心を刺激し、暴力やネグレクトなどの虐待を受けている。補導員兼児童福祉司としての慶と出会い、口説かれる形で付き合っている。また、その日のうちに性交して撃鉄持ちであることを自覚している。広志の借金のカタにと、デリカファイナンスから狙われている。
南 樹 (みなみ いつき)
水無月可絃が播種体に変貌した「E6号事件」によって生まれた撃鉄持ちの小学生の少年。アンダーリムのオーバルタイプの眼鏡をかけている。八二分けにした黒髪で、左側の生え際から一部分だけ髪が白い。榊祐実と播種体になった可絃が性交し、可絃が息絶える寸前に宿した卵から産まれた。南薫の義子として生活している。神籬真由美を非常に慕っており、真由美が石薙慶を犯した場面に立ち会い、録画していた。産まれてからずっと、誰かに対する罪悪感のようなものを心の中に持ち続けている。安住可憐に対して庇護欲に似た感情を抱いているが、南樹自身もこの感情の正体がわかっていない。
南 薫 (みなみ かおる)
警視庁生活安全部少年育成課特殊少年対策係の室長を務める男性。顎が突出した四角く大きい顔で、襟足の長い黒髪をオールバックのポンパドールにしている。南樹とは血のつながりのない父親。榊祐実から樹を託された当初は戸惑いもあったと話しているが、現在はふつうの父親と変わらない感情で樹のことを愛している。
神籬 真尋 (ひもろぎ まひろ)
大企業や行政ともつながりのある旧家、神籬家の二十九代目家長を務める女性。播種体による「E5号事件」によって神籬真由美を妊娠、出産した。真由美に対してはふつうの子供と変わらない愛情を注ぎつつ、なぜか従者のように振る舞っている。石薙鯨二郎に対しては鼻持ちならないと感じている。
榊 祐実 (さかき ますさね)
警視庁生活安全部少年育成課特殊少年対策係の基礎を築いた女性。水無月可絃が播種体に変貌した「E6号事件」では、可絃の性欲を全身で受け止め、枯死させた。またその際、可絃の腹部に卵があることに気づき、人知れず保護して孵化させた。その卵から産まれたのが南樹である。撃鉄持ちを一種の病気ととらえ、保護を前提とした法整備を進めていた。しかし10年ほど前、南薫に樹を託し、戸籍や痕跡すらも消して行方不明となった。
安住 広志 (あずみ ひろし)
安住可憐とは血のつながりのない父親。安住加奈子の夫で、水無月可絃の義兄でもある。可絃が播種体に変貌した「E6号事件」で、加奈子が可絃の性衝動を自ら受け入れた場面を目撃した。その一件を未だに許すことができず、怒りを募らせている。しかし、加奈子が死去したことから怒りのやり場をなくし、酒に溺れてデリカファイナンスに借金を繰り返すようになる。可憐に対して虐待を続けている。
石薙 鯨二郎 (いしなぎ げいじろう)
石薙慶とは血のつながりのない父親。播種体による被害者家族に対するカウンセラーを行う、被害者相談員(ヴィクティムカウンセラー)を務めている。また石薙鯨二郎自身も、播種体による「E5号事件」によって妻が妊娠させられた被害者でもある。その妻は慶を出産すると同時に死去した。安住広志にカウンセリングを行っているが、それとは別に怪しげな勧誘も行っている。神籬真尋に対しては毛嫌いしている。
安住 加奈子 (あずみ かなこ)
安住広志の妻で、水無月可絃の姉。長い黒髪をポニーテールにまとめ、フルフレームのスクエアタイプの眼鏡をかけている。可絃が播種体に変貌した「E6号事件」において、可絃の性衝動を自ら受け入れ、安住可憐を妊娠、出産した。可憐を出産してから死亡している。
水無月 可絃 (みなづき かいと)
安住加奈子の弟で、安住広志の義理の弟。安住可憐と南樹の実の父親でもある。なんらかのきっかけで播種体となった撃鉄持ち。もともとは黒髪に学生服を着用した少年だったが、播種体となってからは髪が白くなり、加奈子や広志、榊祐実と性交に及んだ。加奈子の腹には可憐を妊娠させ、祐実との性交の直後、息絶える寸前に自分の腹部に樹が宿った卵を孕んだ。
集団・組織
デリカファイナンス
広域暴力団の下部組織として結成された闇金融業者。もともとは暴力団のAV撮影を担う一部門でしかなかったが、現在は本家である暴力団組織も扱いあぐねるほどに先鋭化し、ヤクザ社会の者すら人面獣心の鬼畜たちの集団と評されている。負債者から人材を選定し、AV撮影に人身売買、臓器売買を行っている。
その他キーワード
播種体 (えろしす)
撃鉄持ちが成長の過程で変化する怪物の一種。性交と播種に特化して男女の見境なく襲い、犯すとされている。水無月可絃が変化し、安住加奈子や安住広志、榊祐実と性交に及んだ。播種体との性交で子供を出産する確率は極めて低く、ほとんどが胚芽期で死亡する。欲動のままに活動するため、やがてカロリーを使い果たし、膠原組織が融解する形で枯死する。また、一度播種体に変化してしまうと二度と人間の姿には戻ることができない。
死殺体 (たなとしす)
撃鉄持ちが成長の過程で変化する怪物の一種。死と破壊に特化して敵味方の見境なく壊し、殺すとされている。過去の大量殺人事件のいくつかは死殺体によるものだが、記録が改竄されているため、一般人はその事実を知らされていない。欲動のままに活動するため、やがてカロリーを使い果たして枯死する。また、一度変化してしまうと二度と人間の姿には戻ることができない。
撃鉄持ち (はんまーほるだー)
規格外の意思力と、特異な身体能力を秘めるヒトの希少個体。「陰獣」とも呼ばれている。発達の過程で播種体や死殺体に変化することがあるため、慎重に保護および管理される存在として扱われている。感度の大小はあるが撃鉄持ち同士は五感以外で知覚することができ、国内において現在六体が撃鉄持ちとして認定されている。また、一般へのミーム汚染を予防する見地から、撃鉄持ちの存在はそれ自体が秘匿されている。身体構造を意識的に変化させられる特性があり、知識、素材、栄養さえあれば地球上の生物にできることをすべて模倣することが可能。自我があやうくなると肉体が暴走し、深層意識があふれ出して播種体か死殺体になるとされている。しかし特性上外見が微妙に安定しないため、顔の印象を大きく左右する眼鏡などをかけて「自分は自分である」という意識を強く持つように警告されている。撃鉄持ちは無自覚なまま暴走を起こさぬよう、撃鉄持ちであるという自覚をうながす段階で性交させられる。その結果、比較的被害が穏やかな播種体へと意識を誘導する方針が取られている。