タイムパラドクスゴーストライター

本作は、新人漫画家が週刊連載を掴み取るまでの苦闘を描いた物語であり、タイムマシンを通じて未来と交流するというSF要素が巧みに織り込まれている。主人公の哲平は、プロの漫画家を目指しているものの、新作ネームが通らず、連載デビューへの道は遠のいている。担当編集者から何度もダメ出しを受け、夢をあきらめかけていた時、落雷と共に自宅の電子レンジに10年後の「週刊少年ジャンプ」が届く。巻頭を飾る新連載「ホワイトナイト」の圧倒的な面白さに衝撃を受けた哲平は、この出来事を夢だと思い込み、記憶を頼りにホワイトナイトのネームを描き上げる。

哲平が編集部に持ち込んだ漫画「ホワイトナイト」は、編集長から絶賛され、瞬く間に連載が決定した。しかし、その後もタイムマシンと化した電子レンジから未来の「週刊少年ジャンプ」が届く。哲平は、自分のアイデアだと思っていた作品が実は盗作であることに気づき、衝撃とショックを受ける。新しい担当に連載の辞退を申し出るが、未来から名作を奪ってしまった罪悪感と責任感から、未来と現在をつなぐゴーストライターとして、「ホワイトナイト」を描き続けることを決意する。その後、「ホワイトナイト」の本来の作者である藍野伊月と出会った哲平は、まだネーム段階の「ホワイトナイト」を盗み見され、盗作を疑われてしまう。10年早く「ホワイトナイト」を発表したことで、世界線が二つに分かれたことを知った哲平は、謝罪と共にタイムマシンや未来の「週刊少年ジャンプ」について説明するが、伊月はそれを信じようとしない。結局、似たような思想から偶然内容が重なったと自己補完した伊月は、連載を哲平に託し、いつか「ホワイトナイト」を超える名作を作ると宣言する。

哲平の「ホワイトナイト」はアニメ化も決まり、順調に連載を続けていた。しかし、突然未来からの「週刊少年ジャンプ」の転送が途絶え、次号には作者のアイノイツキの訃報が掲載されていた。さらに、タイムマシンからは「ホワイトナイトの連載を続け、イツキを救って欲しい」という謎のメッセージが届く。もし連載を止めてしまえば、この世界線のイツキも死んでしまうと考えた哲平は、未来の「週刊少年ジャンプ」に頼らず、自らの力で「ホワイトナイト」を描き続けることが、イツキを救う唯一の道だと奮起する。