STEINS;GATE 0

STEINS;GATE 0

テレビゲーム『STEINS;GATE 0』のコミカライズ作品。タイムマシンを巡る陰謀に巻き込まれた岡部倫太郎は、壮絶な時の旅の果てに力尽き、その足を止めてしまう。しかしそんな彼に、新たな出会いが訪れる。残酷な運命に打ちのめされ、敗北した男の再起の物語。「ヤングエース」2017年8月号から2020年3月号にかけて掲載された作品。

正式名称
STEINS;GATE 0
ふりがな
しゅたいんず げーと ぜろ
原作者
MAGES./Chiyo St. Inc.
漫画
ジャンル
アドベンチャー
 
タイムパラドックス
関連商品
Amazon 楽天

世界観

本作『STEINS;GATE 0』はTVゲーム『STEINS;GATE』の続編で、タイムマシンを巡る陰謀が描かれている。しかし厳密には大団円を迎えた『STEINS;GATE』のエンディングからの続編ではなく、世界線の収束という難題に心が折れ、牧瀬紅莉栖を助けられなかった岡部倫太郎の世界線の話となっている。『STEINS;GATE』の終盤において重要な役割を担った「未来の岡部倫太郎」に至るための話で、このため本作は時系列的には「その後」であるが、『STEINS;GATE』の大団円につながるための「前日譚(たん)」という側面もある。

あらすじ

閉時曲線のエピグラフ

タイムマシンを巡る陰謀に巻き込まれた岡部倫太郎は、過去改変してSERNによる世界征服を防ぐべく、誰もが幸せになれる世界線「シュタインズ・ゲート」を目指していた。多くの思いを犠牲にしつつ、過去改変を行い、その一歩手前までたどり着くものの、岡部は牧瀬紅莉栖の命を救うことができず、心が折れてしまう。また、その際に持ち出された中鉢論文が大国の手に渡ったことで、各国でタイムマシン開発競争が勃発。これによって遠くない未来、第三次世界大戦が起きることが確定してしまったのだ。失意に暮れる岡部だったが、紅莉栖の遺志を受け継ぐべく、勉学に励んでいた。そんな中、岡部はATF(秋葉原テクノフォーラム)で、紅莉栖の在学していたヴィクトル・コンドリア大学主催のセミナーが行われるのを知り、目標に近づくために、これに参加を決める。そして岡部は、そこで紅莉栖の先輩だった比屋定真帆と出会う。紅莉栖の恩師でもあるアレクシス・レスキネンに気に入られた岡部は、彼の勧めで研究室に招かれ、そこで紅莉栖の記憶から作られたAmadeusと出会うのだった。レスキネンの提案で牧瀬紅莉栖(Amadeus)と会話するモニターとなる岡部であったが、仲よくなればなるほど、紅莉栖(Amadeus)を本物の紅莉栖と混同し、大きな苦悩を抱えむこととなってしまう。

亡失流転のソリチュード

岡部倫太郎はニュースを見て「新型脳炎」が流行(はや)っていることを知るが、その症状はリーディング・シュタイナーとそっくりで、自分の与(あずか)り知らぬ場所で何かが起きているのではないかと強い不安を感じる。岡部は未来から来た阿万音鈴羽に悲惨な未来の情報を聞き、その回避のための協力を頼まれていたが、岡部にとって過去改変はすでにトラウマとなっており、決断を下せずにいた。そんなある日、リーディング・シュタイナーが発動し、岡部は自分以外の何者かによって過去改変が行われたことを察する。何もわからず不安を抱える中、岡部は鈴羽から未来からやって来た人間はもう一人いることを教えられる。鈴羽からその人物を探すように頼まれるが結果は空振り。しかし、漆原るかの父親が身寄りのない女性を保護し、岡部はその相談を頼まれるが、その女性こそ鈴羽の探していた未来から来た少女、椎名かがりだった。かがりは見た目は牧瀬紅莉栖そっくりで、さらに記憶喪失となっていたため、岡部たちは大いに戸惑うこととなる。結局一連の出来事は何事も進展することなく、一同はかがりや比屋定真帆たちと親睦を深めるだけとなってしまう。そして年も明け、2011年となり、一同は集まって新年会を行うが、そこに何者かが襲撃を掛ける。岡部はかつてのSERNのラウンダーの襲撃を思い出すが、今回はその当のラウンダーの統率者である天王寺裕吾が現れ、岡部たちを助け出すのだった。そして岡部は裕吾と情報を交換し、共闘関係を築く。

永劫回帰のパンドラ

岡部倫太郎たちは襲撃者について調べていたところ、Amadeusのシステムが乗っ取られたことを比屋定真帆がつき止める。しかしその瞬間、リーディング・シュタイナーが発動し、岡部はまたしても別の世界線に飛ばされる。そして岡部はそこで生存した牧瀬紅莉栖と出会うのだった。そこは紅莉栖を犠牲にしたβ世界線ではなく、椎名まゆりを犠牲にしたα世界線で、岡部はここでも自分は誰かの犠牲に立っていることに絶望する。だが、すべての事情を察した紅莉栖に言葉で励まされ、彼女が作り出した電話レンジによる過去改変で再び岡部はβ世界線へと送り出される。しかし、戻って来た世界線は新年会での襲撃もなく、そもそもAmadeusが誕生していない世界だった。それでも岡部は、比屋定真帆椎名かがりと出会っており、それぞれの差異を確認する。岡部は大幅に変わった出会いの経緯から、自分と真帆が出会ったことには意味があるのではないかと考え始めるが、そんな中、かがりの様子に異常が訪れる。記憶喪失のかがりは別の人間の記憶を話し始め、その記憶は紅莉栖のものではないかと疑惑が持ち上がったのだ。そして岡部と真帆は、凍結した牧瀬紅莉栖(Amadeus)のデータを誰かがかがりに埋め込んだのではないかと考え始める。真帆は岡部によりタイムマシンの秘密を打ち明けられ、協力を約束。かがりを救うため、一同は新たにタイムリープマシンを作り始める。襲撃が激化する中、一同はなんとか完成させ、かがりを救うことに成功するが、その瞬間、リーディング・シュタイナーが発動し、岡部はまたしても別の世界線に飛ばされてしまう。

相互再帰のマザーグース

目覚めた岡部倫太郎が目にしたのは、崩壊する街に、積み重なる死体という地獄そのものの光景だった。岡部が目覚めたのは2036年で、気を失って25年後の世界だった。岡部はそこで事情を知るバレル・タイターと出会い、彼の計らいで自分は生き残ることに成功したことを知る。そして「世界を騙(だま)す」ことができるという、重要な事実に行きあたるのだった。悲惨な世界を見たことで、岡部は自分がどれだけ甘い認識だったのか痛感し、この未来をなんとしても変えることを決意する。そして岡部は、かつての仲間たちの力を借りて過去へと戻る。遠い旅路の果てに2011年1月31日にたどり着いた岡部は、狂気のマッドサイエンティスト「鳳凰院凶真」を名乗り、第三次世界大戦阻止のため動き出す。岡部は今までの世界変動は、牧瀬紅莉栖の残したタイムマシンの理論が、何者かの手によって奪い合われ、そのたびに変動が起きていたと推測。そのため、理論が保管されたAmadeusと紅莉栖のノートパソコンの処分を決める。また、かがりは何者かによって牧瀬紅莉栖(Amadeus)の記憶を植え付けられ、そこからタイムマシンの知識を得るため利用されていたと考え始める。敵の一方はアメリカの民間情報組織「STRATEGIC・FOCUS」と判明し、その対策に乗り出すも、岡部たちは敵に出し抜かれ、かがりの身を奪われてしまう。かがりが人質となり、岡部たちは彼女を取り戻すため敵の本拠地に向かうが、そこではすでにSTRATEGIC・FOCUSは全滅。比屋定真帆の知り合いでもあったジュディ・レイエスがDURPAの工作員という正体を現し、岡部たちを追い詰める。窮地に陥る岡部たちであったが、仲間たちの力を結集して乗り切り、無事に岡部の情報を破棄することに成功する。しかし中鉢論文のせいで、この世界線では完全に第三次世界大戦を回避することは不可能だと実感。岡部は自分たちの世界線の可能性を、ほかの世界線に託す作戦「オペレーションヘルヘイム」を立案する。

無限遠点のアークライト

岡部倫太郎バレル・タイターの言葉にヒントを得て、自分たちの世界線の可能性をほかの世界線の自分たちに託し、シュタインズ・ゲートを目指す「オペレーションヘルヘイム」を提唱。改良した電話レンジ「Dライン」を使い、2010年の牧瀬紅莉栖(Amadeus)と出会った頃の自分へメッセージを飛ばす。過去の岡部は突如届いた「世界を騙せ」という謎のメッセージに驚くも、状況証拠からこのメッセージを送った相手が未来の自分だと確信する。しかし、この世界線の岡部は紅莉栖(Amadeus)とのモニターで心労を抱え込み、それが限界に達しつつあった。そのため、岡部は未来からのメッセージに希望を感じつつも、トラウマを刺激されメッセージから目をそらしてしまう。また、Amadeusを狙う謎の襲撃者に比屋定真帆たちが襲われ、岡部もそれに巻き込まれてしまう。ストレスが限界に達した岡部はひどく疲弊してしまうが、仲間たちとの時間に心癒され、紅莉栖(Amadeus)とも最後に言葉を交わし、円満に別れる。そして岡部は、仲間たちと共にクリスマスパーティーを行うが、そこで突如、リーディング・シュタイナーが発動。そして気が付いた岡部が目にしたのは、ソ連が存続し、戦争の真っただ中にある日本の姿だった。岡部はその世界線で1か月間過ごすこととなり、そんな中、椎名まゆりの友人である中瀬克美と出会い、その言動から彼女にもリーディング・シュタイナーの能力があると確信する。そして岡部は、アメリカに身柄を引き合わされることとなるが、そこで紅莉栖(Amadeus)と邂逅(かいこう)。その瞬間、リーディング・シュタイナーが発動し、岡部と克美は元の世界線へと帰還するのだった。何者かが過去改変をして、1か月経ったから戻したと推測。その様子から岡部は何者かが実証実験をしたのだと考える。克美は帰った直後に「新型脳炎」と診断されて入院したため、岡部は彼女に病気じゃないと元気づけ、口裏を合わせて別れるのだった。

執念のエピグラフ

第三次世界大戦阻止のタイムリミットは刻一刻とせまっており、岡部倫太郎の身近でも不穏な動きが見え隠れし始めていた。比屋定真帆の身にも危機がせまっていると察した岡部は彼女に事情を話し、力を借りるようになる。しかし真帆は、タイムマシンを使えば牧瀬紅莉栖を救えると考え、岡部に隠れてタイムリープマシンを作り始める。結局それは岡部に露見し、彼に弾劾されてしまうが、それが偶然、椎名まゆりの耳に入ることとなり、紅莉栖が自分のせいで死んだという事実にまゆりは打ちのめされてしまう。まゆりは失意に打ちのめされつつも、立ち上がり、自分にできることを探し始める。するとそこに未来からバレル・タイターのムービーメールが届く。まゆりの決意がまた一つ世界線を「シュタインズ・ゲート」に近づけ、バレルのムービーメールを届けたのだ。そしてバレルは「鳳凰院凶真」を復活させるための作戦「オペレーション・アークライト」をまゆりと阿万音鈴羽に託す。まゆりと鈴羽はタイムマシンを使って作戦を実行に移そうとするが、そこに大量の兵士が現れ、タイムマシンを奪取しようとする。そして兵士の中には、この世界線では再会しなかった椎名かがりの姿もあった。傷ついたまゆりの姿を見てかがりは暴走し、兵士を大量に殺害。駆け付けた岡部はかがりを裏であやつっていた驚くべき人物と遭遇。まゆりたちの決死のタイムマシンも軍の攻撃によって邪魔されてしまい、岡部はついに始まる第三次世界大戦に絶望する。自分の不甲斐(ふがい)なさに怒りを覚えた岡部は、「鳳凰院凶真」として自らを叱咤(しった)し、タイムリープマシンの組み立てを全力で行い、惨劇の起きる前に自分の意識をリープさせる。そしてまゆりとの別れと、これから始まる長い戦いに挑むべく、鳳凰院凶真は最初の一歩を踏み出すのだった。

関連作品

テレビアニメ

2018年4月から9月にかけて、本作『STEINS;GATE 0』の原作となったテレビゲーム『STEINS;GATE 0』のテレビアニメ版『シュタインズ・ゲート ゼロ』が、TOKYO MX、AT-X、BS11、インターネット配信ほかで放送された。アニメーション制作はWHITE FOXが担当している。キャストは岡部倫太郎を宮野真守、比屋定真帆を矢作紗友里、椎名まゆりを花澤香菜が演じている。テレビアニメ版はテレビゲームのストーリーをベースにアニメ化したものだが、ゲームのマルチエンディング形式のストーリーを1本のストーリーにまとめており、アニメ特有の描写や解釈も多い。このため一部ストーリー展開やキャラクターの末路は本作、コミック版とも異なっている。また2015年にはテレビゲーム版の発売に伴って、前作である『STEINS;GATE』の再放送が行われたが、同作第23話の再放送時には突如、新作パートに差し替えた「第23話(β)」を放送。ゲームに直接つながる、新作アニメを放送して話題となった。

テレビゲーム

本作『STEINS;GATE 0』は、テレビゲーム『STEINS;GATE 0』を原作としている。対応機種はPlayStation 4、PlayStation 3、PlayStation Vita版が2015年12月10日に発売され、Windows対応のPC版も2016年8月26日に発売された。また、のちにXbox One版が2017年2月22日に発売されている。開発はNitroplusと5pb.が担当している。TVゲーム『STEINS;GATE』の正当続編で、同作の外伝小説『STEINS;GATE 閉時曲線のエピグラフ』『STEINS;GATE 永劫回帰のパンドラ』『STEINS;GATE 無限遠点のアルタイル』と、ドラマCD『STEINS;GATE ドラマCD β 「無限遠点のアークライト」 ダイバージェンス0.571046%』の内容をゲーム用に再構成し、まとめた内容となっている。ジャンルは「想定科学ADV」で、主人公である岡部倫太郎の選択肢によってさまざまな物語が展開するアドベンチャーゲームとなっている。

登場人物・キャラクター

岡部 倫太郎 (おかべ りんたろう)

とある大学に通う青年。かつては中二病を発症し、狂気のマッドサイエンティスト「鳳凰院凶真」を名乗り、「未来ガジェット研究所」で仲間たちと過ごしていた。しかし偶然、タイムマシンの理論を生み出し、牧瀬紅莉栖の協力もあってそれを形にするが、それがSERNの目に留まり、大きな陰謀に翻弄されることとなる。最終的に苦渋の判断の果て、紅莉栖の死をもってタイムマシンの存在を抹消し、一時の平穏を手に入れる。もともと根はマジメで、中二病もある事情から演じていたもの。そのため紅莉栖が死んだ以降は、「鳳凰院凶真」を封印し、彼女の遺志を継ぐべくまじめに勉学に励んでいる。阿万音鈴羽の話を聞き、頭では彼女の言い分が正しく、「シュタインズ・ゲート」を目指すべきだとわかっているが、長い時の旅の果てに紅莉栖を犠牲にした事実が心の重荷となっており、一歩を踏み出せずにいる。しかしそんな中、比屋定真帆との出会いをきっかけに、牧瀬紅莉栖(Amadeus)との邂逅、謎のリーディング・シュタイナーの発動、紅莉栖の遺品を巡る争いといった出来事に遭遇し、否応(いやおう)なくタイムマシンを巡る陰謀に再び巻き込まれてしまう。世界線の変動によって悲惨な未来を直に見て決意を新たにし、「鳳凰院凶真」として復活。第三次世界大戦を阻止するために動き始める。また、未来の世界においてバレル・タイターにより「世界は騙せる」というヒントをもらい、いくつもの世界線をつなげシュタインズ・ゲートを目指す「オペレーションヘルヘイム」を実行。過去の自分に「世界を騙せ」というメッセージを送る。このメッセージを受け取った岡部も艱難辛苦の果てに、「鳳凰院凶真」として復活し、椎名まゆりたちを「オペレーション・アークライト」に送り出し、シュタインズ・ゲートへの道をつなげた。

牧瀬 紅莉栖 (まきせ くりす)

ヴィクトル・コンドリア大学で脳科学を専攻とする女性。未来ガジェット研究所のラボメンNo.004。赤みがかった茶髪をストレートロングに伸ばした才女で、天才的な頭脳を持っていた。比屋定真帆を先輩として慕っており、仲がよかった。ひょんなことから岡部倫太郎たちと知り合い、タイムリープマシン開発を行うも、それによって大きな陰謀に巻き込まれることとなる。その後、世界線収束範囲で椎名まゆりを救うため、身代わりとなる形で死亡した。タイムマシンに関する論文をまとめていたが、それは実の父親であるドクター中鉢に奪われ、「中鉢論文」としてロシアの手に渡ってしまう。また、その際に父親とのいざこざが原因で死亡しており、岡部はなんとか牧瀬紅莉栖を救おうと過去改変するが、世界線収束範囲現象によって失敗している。ノートパソコンなどの遺品に、タイムマシン論文の一部が保存されているため、それを巡って水面下で争いが起きている。β世界線では故人だが、岡部が世界線変動で偶然α世界線に迷い込んだ際に、生きている牧瀬紅莉栖と再会。まゆりの死にショックを受け、ラボに来なくなった岡部の代わりにラボに入り浸り、電話レンジ(仮)を作っていた。電話レンジ(仮)を作ったが過去改変するのに踏ん切りをつけられずにいたが、岡部と遭遇。その天才的頭脳ですぐに別の世界線の岡部と察し、彼を激励したあと、電話レンジ(仮)を使い、彼をβ世界線に送り出した。

牧瀬 紅莉栖(Amadeus) (まきせ くりす)

牧瀬紅莉栖のAmadeus。紅莉栖が死ぬ8か月前に、その記憶を読み取って再現している。そのため言動は紅莉栖そのままだが、岡部倫太郎といっしょに過ごした記憶はない。自分がオリジナルの紅莉栖から分岐したAIであることを自覚しており、それを受け入れたうえで言動をしている。オリジナルと同じくスウィーツ脳で、他人の恋愛関係に興味津々。岡部と比屋定真帆の関係を勘繰り、からかって遊んでいる。岡部とは研究所以外の人間と話せるため、彼がモニターになったことに好意的だったが、岡部が牧瀬紅莉栖(Amadeus)に苦手意識を感じ、居留守を使った際には不機嫌になるなど、AIにもかかわらず感情は非常に豊か。岡部と交友を育んでいくが、仲を深めるごとに、岡部が紅莉栖(Amadeus)をオリジナルの紅莉栖と混同してしまい、精神的に大きな負担となってしまう。そのため岡部は、世界線によっては紅莉栖(Amadeus)に別れを告げ、モニターを降りてしまっている。Amadeusの開発が凍結した世界線では、椎名かがりの脳に情報を埋め込まれてしまう。紅莉栖(Amadeus)の人格はそれを妨害し、かがりの人格を守っていた。かがりが岡部に合流しなかった世界線では、実はタイムマシン関連の情報を守っていたが、アレクシス・レスキネンによってシステムを改良されてその秘密を暴かれてしまう。レスキネンに絶対服従のシステムに改造されてしまったため、末期の力を振り絞り、岡部と真帆にメッセージを託す。その後、過去改変された世界で岡部と真帆の手によって消滅させられ、レスキネンの魔の手から解放された。

比屋定 真帆 (ひやじょう まほ)

ヴィクトル・コンドリア大学で脳科学を専攻とする女性。年齢21歳。身長は140センチ前後しかなく、どう見ても10代前半の少女にしか見えない。そのため迷子や小学生扱いされることも多く、子供扱いされると激怒する。脳科学の分野では優秀な研究者だが、私生活がだらしないという一面がある。ATFのセミナーで、岡部倫太郎と出会い、彼と交友を育む。アレクシス・レスキネンが岡部を牧瀬紅莉栖(Amadeus)のモニターにするが、岡部が紅莉栖(Amadeus)を生前の紅莉栖と混同するのではないかと心配している。紅莉栖の死に何か大きな陰謀があるのではないかと考え、その調査のためひそかに行動している。紅莉栖の遺品であるノートパソコンを持っているため、実はタイムマシン開発を行う各勢力から狙われており、何度か襲撃を受けている。ノートパソコンの解析のために持ち込んだのが橋田至の仕事場だったため、のちに岡部にそのことが露見。人柄を信頼され、タイムマシン関連のことを打ち明けられる。椎名かがりが合流した世界線では、岡部に力を貸し、かがりの人格を守るため、電話レンジ(仮)を作っている。かがりが合流しなかった世界線では、醜いタイムマシン争奪戦から紅莉栖を解放するため、紅莉栖(Amadeus)のデータを全削除した。自分と紅莉栖の関係を、映画『アマデウス』のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとアントーニオ・サリエーリの関係に例えて、紅莉栖をアマデウス(天才)と思い、ひそかに劣等感を抱いていた。しかし、のちに紅莉栖の最期のメッセージとして、紅莉栖にとって比屋定真帆こそがアマデウスだったと明かされ、その言葉に涙した。実はβ世界線の未来において、タイムマシン研究者となっており、岡部が真帆と出会うのはβ世界線における世界線収束範囲の必然。そのため、Amadeusの研究が凍結された世界線でも、出会いの形を変えて岡部は真帆と出会っている。未来ガジェット研究所においてラボメンNo.009の番号を与えられている。

椎名 まゆり (しいな まゆり)

岡部倫太郎の幼なじみの少女。未来ガジェット研究所のラボメンNo.002。一人称は「まゆしぃ」で、明るく無邪気な性格をしている。コスプレが趣味で、中瀬克美や来嶋かえではコスプレ仲間で仲がいい。岡部が牧瀬紅莉栖を救えず、ひざを折った際に、彼をかばって慰めた。その後は、岡部がふさぎこんだのを気づかいつつも、傷ついた岡部の姿を見て、椎名まゆりも人知れず落ち込んでいる。未来においては、バレル・タイターの仲間の一人、「スターダスト・シェイクハンド」として活動している。戦災孤児の椎名かがりを拾って育てており、彼女からは実の母親のように慕われている。未来のまゆりはかがりを送り出す際に、自分が大切にしていた「ウーパ」のキーホルダーを手渡していた。α世界線においては死ぬ運命にあり、岡部にとっても、牧瀬紅莉栖を身代わりにたどり着いたβ世界線は苦渋の選択だった。岡部はまゆりにその事実を知られずに過ごしてきたが、岡部が比屋定真帆が弾劾した際に、怒りに任せてその事実を吐露し、それを偶然聞いてしまう。紅莉栖を犠牲にしたこと、そして今まで岡部の苦渋が自分のせいだったと苛(さいな)まれるが、そこで岡部への思いに向き合い、立ち上がる決意を固める。これによってまた一つ世界線がシュタインズ・ゲートに近づき、バレル・タイターのムービーメールが現代に届くこととなる。バレルから「鳳凰院凶真」を復活させる作戦を聞き、阿万音鈴羽と共にタイムマシンで2010年8月21日に旅立っていった。心が折れた岡部を救えるのは、長年、彼のそばに居続けたまゆりだけで、岡部を鳳凰院凶真に立ち直らせられる唯一の存在。シュタインズ・ゲートにたどり着くための最後の鍵で、まゆりが過去のまゆりに伝えたメッセージが、未来を大きく変えることとなる。

橋田 至 (はしだ いたる)

岡部倫太郎の悪友で、大学生の青年。かなりの肥満体型で、ディープなオタク趣味の持ち主。岡部からは「ダル」の愛称で呼ばれる。未来ガジェット研究所のラボメンNo.003。ステレオタイプのオタクだが行動力はあり、パソコン関係の知識は本職にも劣らない優秀さを誇る。怪しげな謎のバイトをしており、裏界隈(かいわい)の情報にもかなり通じている。阿万音鈴羽は未来から来た自分の娘で、いろんな意味で距離感を測り兼ねつつ、ラボでいっしょに暮らしている。対外的には鈴羽を妹として扱っている。岡部に対しては強い友情を感じているようで、失意に暮れた彼に気を使いつつ、岡部に未来を変えて欲しいという娘の思いを汲(く)むという板挟み状態となっている。また将来結婚する阿万音由季とも出会い、順調に交友を重ねている。裏のバイトで、牧瀬紅莉栖の遺品であるノートパソコンが比屋定真帆によって持ち込まれ、その解析を頼まれる。また娘と岡部のため、タイムマシンの研究を始めており、世界線の概念について理解を進めている。第三次世界大戦が起きた未来では、「バレル・タイター」と名乗り、シュタインズ・ゲートを目指すためのさまざまなオペレーションを立案している。

バレル・タイター

未来の橋田至。現在の至の面影が残る中年男性ながら痩せており、体型が変わっている。未来においてはタイムマシン研究を続け、抵抗勢力の中心的人物として活躍している。タイムマシンを作り上げ、未来から娘の阿万音鈴羽を送り出した。また別の世界線では、2025年に死ぬはずだった岡部倫太郎を味方の目を欺いて助け出し、ひそかに匿(かくま)っていた。岡部は助け出したものの拷問のせいで精神的に「死んで」おり、2011年1月末の岡部の記憶を持つAmadeusを使い、復活させる。ただし、Amadeusの捜索に時間が掛かったため、10年近くの時が流れ、岡部が目覚めたのは2036年になってしまった。これによって図らずも岡部が死んだことになり、2035年に生存した事実が「世界を騙す」結果となり、世界線収束範囲を覆す大きなヒントとなった。タイムマシン研究を続けるうちに、いくつもの未来が過去につながり、その果てに「シュタインズ・ゲート」があることを確信。さまざまな世界線のバレル・タイターたちが希望をつなげ、岡部がシュタインズ・ゲートを目指すのを手助けしている。椎名まゆりが牧瀬紅莉栖の死を知った世界線では、過去の阿万音鈴羽にムービーメールを飛ばし、「鳳凰院凶真」を復活させるための作戦「オペレーション・アークライト」を彼女たちに託している。

漆原 るか (うるしばら るか)

大学生の青年。外見と仕草がどう見ても女性のため、岡部倫太郎からは「ルカ子」の愛称で呼ばれる。優しく生真面目ながら、自分に自信を持てず、気弱な性格をしている。そのため自分と正反対で、「鳳凰院凶真」として振る舞う岡部にあこがれにも似た感情を抱いている。行き倒れて記憶喪失となった椎名かがりを助け、その面倒を見ている。かがりの記憶を取り戻すため、漆原るかが岡部に相談したところ、かがりの数奇な運命が動き出すこととなる。β世界線ではラボメン認定されていなかったが、「鳳凰院凶真」の復活と共にラボメン認定され、ラボメンNo.005が与えられる。未来においても、ほかのラボメンと同じく岡部の仲間として戦い続けている。鳳凰院凶真の教えを律儀に守り続けて戦っていたが、岡部が目覚めた世界線では2036年の戦いで致命傷を負う。最期は岡部が目覚めたことに安堵(あんど)しつつ、彼の腕の中で命を引き取った。

フェイリス・ニャンニャン

メイド喫茶で働く女性。ピンクの髪をツインテールにしたメイドで、語尾に「ニャ」を付ける話し方をする。キャラ付けでハイテンションな言動をするが、言動の端々に頭の回転の速さを見せる。β世界線ではラボメン認定されていなかったが、「鳳凰院凶真」の復活と共にラボメン認定され、ラボメンNo.006が与えられる。未来においても、ほかのラボメンと同じく岡部倫太郎の仲間として戦い続けている。

阿万音 鈴羽 (あまね すずは)

2036年の未来から第三次世界大戦を阻止するためにやって来た少女。未来を変え、誰もが幸せになる世界線である「シュタインズ・ゲート」を目指す作戦をバレル・タイターから託され、タイムマシンで時を旅し続けている。岡部倫太郎の力を借り、過去改変を行おうとするが、牧瀬紅莉栖の救出に失敗。岡部の心が折れてしまったため、再チャレンジすることもできず、燻(くす)ぶった思いを抱きながら現代で生活している。対外的には未来の父親である橋田至の妹として扱われている。阿万音由季は未来の母親だが、事情を知らない彼女に近づき過ぎるとタイムパラドックスが起きる可能性を危惧して、距離を測りかねている。実は未来からは椎名かがりといっしょに送り出されたが、過去の世界で任務中にかがりとはぐれ、それ以降、彼女の行方(ゆくえ)を気にしている。第三次世界大戦の真っただ中で生まれたため、未来の悲惨さを誰よりも実感しており、平和な現代で過ごすことで一層、悲惨な未来を変えるという使命感に燃えている。そのため焦燥感に駆られているが、心が折れた岡部からはその思いを拒絶され、意見は平行線となっている。しかし同時に、平和な世界を体験したことで、岡部の思いを理解するにも至り、岡部の心を救う方法を探っている。かがりが岡部と合流した世界線では、岡部に頼まれケジメとして彼を一発殴り和解。かがりを救うため尽力する。かがりが岡部と合流しなかった世界線では、真実を知った椎名まゆりと対話し、まゆりこそが岡部を救う鍵と確信。その瞬間、未来のバレルから「オペレーション・アークライト」の作戦詳細が届き、鳳凰院凶真を復活させるためまゆりと共にタイムマシンで過去の世界へ旅立っていった。

阿万音 由季 (あまね ゆき)

椎名まゆりのコスプレ仲間の女性。ふだん着もかなり凝ったデザインの服を着ている。料理下手なまゆりのために特訓の手伝いをしており、未来ガジェット研究所に入り浸るようになる。そのつながりで橋田至たちと知り合うようになる。未来においては橋田と結婚し、娘の阿万音鈴羽をもうける。このため橋田とも順調に仲を深め、鈴羽のことも気に入っているが、タイムマシン関係の事情は明かされていないため、鈴羽からは距離感を測りかねて、一方的に距離を取られがち。

天王寺 裕吾 (てんのうじ ゆうご)

「未来ガジェット研究所」の階下にある、大檜山ビル1階で「ブラウン管工房」を経営している男性。筋骨隆々としたスキンへッドの大男で、愛娘(まなむすめ)の天王寺綯と暮らしている。岡部倫太郎からは「ミスターブラウン」と呼ばれ、それなりに仲よく交流を持っていたが、岡部がDメールでSERNの陰謀を阻止する際に、その前に立ちはだかった黒幕。SERNの傭兵部隊「ラウンダー」の一人で、ほかのラウンダーに指揮を降(くだ)す指揮官相当の地位にいる。部隊内ではコードネーム「FB」の名で呼ばれている。岡部と対決した際、その正体を暴かれたため自殺したが、岡部が過去改変したことで対決した事実そのものがなくなり、今は変わらず愛娘と仲よく暮らしていた。しかし、未来ガジェット研究所が襲撃された際に岡部たちを守るため参戦し、襲撃者を撃退した。その後、岡部が事情を話し、愛娘との生活を守るため、岡部が自分の正体を漏らさないのと引き換えに、岡部たちと共同戦線を張る。歴戦の戦士で、その力と情報で岡部たちを助ける。

天王寺 綯 (てんのうじ なえ)

天王寺裕吾の娘。明るく利発な小学6年生の少女で、椎名まゆりと仲がいい。家事が得意で、特に掃除の際には人が変わったように厳しくなる。父親の正体については知らず、新年会の襲撃に巻き込まれた際にはひどく怯(おびえ)ていた。

桐生 萌郁 (きりゅう もえか)

新聞社で働く記者の女性。眼鏡をかけたおとなしい性格をしている。α世界線では未来ガジェット研究所のラボメンNo.005として、岡部倫太郎たちと交流があったが、同時にラウンダーの一人で最終的に岡部と敵対し、死亡している。ラウンダーとしてのコードネームは「M4」。β世界線に移ったことで死亡していないが、同時に岡部たちとの交流もなくなっている。橋田至が椎名かがりの捜索を始めた際に、仕事として彼に協力する。新年会を襲撃した犯人ではないかと岡部から疑われるが、証拠がなく、シロだと判断される。かがりが岡部たちに合流しなかった世界線では、タイムマシン開発競争が勃発し、タイムマシン関係の資料の奪取に動いていた。比屋定真帆の持つ牧瀬紅莉栖のノートパソコンを奪おうとするも、三つ巴(どもえ)の戦いとなり、その際に負傷する。その後は暗躍していたかがりに拾われ、彼女にあやつられる形で協力することとなる。世界線によって敵対することが多いため、岡部も一度は桐生萌郁をラボメンに誘うのはあきらめようとしたが、「シュタインズ・ゲート」はそんな萌郁とも仲よくなれる可能性を残すべく、「ラボメンNo.005」を空席として残すことを決めた。

中瀬 克美 (なかせ かつみ)

椎名まゆりのコスプレ仲間の女子高生。快活な雰囲気を漂わせたボーイッシュ系で、「フブキ」の名でコスプレイヤーとして活動している。男装系のコスプレを得意としている。まゆりのことを本当に大切な友達と思っており、元気がないのを気にしている。実は岡部倫太郎に匹敵するほどリーディング・シュタイナーの素質が高く、α世界線におけるまゆりの死を認識している。中瀬克美本人はそれを「夢」と認識していたが、世界線変動によける記憶や意識の混乱によって、時おり倒れていた。その後、倒れたところを病院に運ばれ、「新型脳炎」と診断され入院してしまう。椎名かがりが岡部に合流しなかった世界線では、1か月間の世界線変動に巻き込まれ、ソ連が存続した世界線で岡部と出会い、彼にリーディング・シュタイナーを持つことを知られる。岡部と口裏を合わせ、病気ではないと安心させられるが、アレクシス・レスキネンの目に留まり、彼の非人道的な施術の犠牲者となってしまう。

来嶋 かえで (くるしま かえで)

椎名まゆりのコスプレ仲間の女子大生。黒髪ロングヘアにしている。スタイル抜群で、「カエデ」の名でコスプレイヤーとして活動している。まゆりたちの中では年長者だが、比較的おとなしい性格をしている。まゆりを通じて未来ガジェット研究所のラボメンとも交流している。ピアノを嗜(たしな)んでいるため、音楽知識が豊富。そのため新年会の襲撃以降、岡部倫太郎が襲撃者の言葉の調査をしていた際に、偶然それを耳にして、「K」は「ケッヘル番号」ではないかとヒントを与えている。

椎名 かがり (しいな かがり)

阿万音鈴羽の仲間で、未来から来たもう一人の少女。鈴羽と共にさまざまな時間軸で任務をこなしていたが、1998年の任務の際に別れたまま消息不明となっている。1998年時点では10歳だったため、2010年現在は22歳となっていると予測されていた。戦災孤児で、椎名まゆりに引き取られて育てられたため、彼女を「ママ」と呼んで慕っている。まゆりに渡された「ウーパ(森の妖精バージョン)」のキーホルダーが宝物で、肌身離さず持っている。2010年時代では、牧瀬紅莉栖と瓜二つの容姿へと成長していた。未来から来たため、現在の世界線の影響を色濃く受け、世界線によって境遇が大きく違う。岡部と合流した世界線では、記憶喪失となっており、行き倒れていたところを漆原るかに拾われ、ラボメンたちと交流を深めることとなる。ラボメンたちと平和に暮らしていたが、謎の襲撃者にさらわれそうになったり、時おり、紅莉栖そっくりの仕草をしたりと、不可解な点を見せる。実はAmadeusに対して強い適性を持ち、牧瀬紅莉栖(Amadeus)の記憶を植え付けられる人体実験を受けていた。実験の最中に脱走するも、そのせいで記憶喪失となり、二つの記憶と人格が混濁した状態となっていた。岡部と比屋定真帆たちの奮闘で、人格を取り戻し事なきを得る。この世界ではラボメン認定され、ラボメンNo.010を与えられている。岡部と合流しなかった世界線では、タイムマシンを手に入れるため暗躍しており、桐生萌郁をあやつって支配下に置く。実は「未来のアレクシス・レスキネン」によって幼少期に洗脳され、鈴羽とはぐれたのもレスキネンの洗脳によるもの。未来のレスキネンはこれによって過去のレスキネンにメッセージを送り、暗躍していた。この世界線では、もはや「人間ではない」レベルでレスキネンに洗脳と強化を施され、まゆりに対してのみ強い執着を見せ、レスキネンに言葉巧みに誘導されてタイムマシンを強奪しようとする。タイムマシンによる改変によってまゆりとの出会いがなかったものになることを恐れており、その阻止を目的とする。別の世界線において紅莉栖(Amadeus)の記憶を移植しようとしたのも、レスキネンが犯人だったようで、ジュディ・レイエスもあくまで自分はそれを横取りしようとしていただけだと語っている。

アレクシス・レスキネン

ヴィクトル・コンドリア大学の教授で、脳科学研究所の主任を務める中年の男性。金髪碧眼(へきがん)で優秀な頭脳を持つが、茶目っ気のある性格をしている。言動が若々しく、比屋定真帆からは子供っぽいと思われている。明るくフレンドリーな人柄をしており、ATFのセミナーで岡部倫太郎と出会い、彼を気に入る。岡部が教え子の牧瀬紅莉栖の知り合いだったのを知り、彼を研究室に招き、牧瀬紅莉栖(Amadeus)と引き合わせる。その後は岡部に研究を手伝ってもらうことを提案し、彼と交友を育む。日本での仕事が終わったあとは、岡部とお互いに名残を惜しみつつ、アメリカへ帰国した。その正体は「影のCIA」ともいわれるアメリカの民間情報組織「STRATEGIC・FOCUS(ストラトフォー)」の工作員。専門とする脳科学の技術を応用して、薬物を利用しない洗脳や、記憶の取り出しを得意とする。椎名かがりを裏であやつっていた黒幕で、タイムマシンを確保するべく暗躍している。10年前に未来からやって来たかがりと遭遇。彼女を診断したところ、未来で洗脳されていたかがりから「2036年のアレクシス・レスキネン」のメッセージを受け取り、その情報をもとに暗躍している。タイムマシンを軍事転用し、その力を新たな抑止力にすることを目論む。紅莉栖(Amadeus)を作り出したのも、その脳内データからタイムマシンに関する情報を抜き出すためだった。未来の情報を持つが、リーディング・シュタイナーの能力はないため、中瀬克美たちリーディング・シュタイナーを持つ者たちを確保し、そこから情報を得ていた。目的のためなら手段を選ばない邪悪な人物で、リーディング・シュタイナーの発症者を「新型脳炎」と提唱し、それらの発症者に対して施術という名の人体実験を施し、情報を取り出している。岡部たちに見せたフレンドリーな振る舞いも演技という訳ではなく素で、本心から岡部たちを気に入っているが、それでも目的のためなら彼らを犠牲にすることを厭(いと)わない残虐な本性を持つ。そのため、岡部はその本性を知った際に戦慄し、アレクシス・レスキネンに対し「本物のマッドサイエンティスト」と吐き捨てている。

ジュディ・レイエス

ヴィクトル・コンドリア大学の教授を務める女性。精神生理学研究所に所属している。黒髪のボブヘアで眼鏡をかけ、明るくフレンドリーな性格をしている。アレクシス・レスキネンとは似た者同士で、よくいっしょになって騒いだりしている。比屋定真帆とも知り合いで、彼女に抱き着いてはスキンシップを取ったりしている。真帆たちの参加するセミナーとは別のセミナーに参加するため来日し、岡部倫太郎たちと交友を育んでいく。その正体はアメリカ国防高度研究計画局「DURPA(ダーパ)」の工作員。AIの軍事転用を目的としており、Amadeusを探るため大学に教授として潜り込んでいた。しかしAmadeusを探る過程で、タイムマシンの情報をつかみ、それを手に入れるため暗躍する。椎名かがりが岡部と合流した世界線において、新年会を襲撃した主犯の「ライダースーツの女性」はジュディ・レイエスで、タイムマシンの知識を求めてかがりも身を狙っていた。同じアメリカの組織だが「STRATEGIC・FOCUS」とは敵対関係にあるようで、お互いの行動を妨害し合っている。STRATEGIC・FOCUSがかがりの身を手に入れた際に、基地を襲撃してSTRATEGIC・FOCUSを皆殺しにする。かがりに牧瀬紅莉栖(Amadeus)の知識を植え付けようとするが失敗。捨て身の策として自分の身に知識をダウンロードしようとするが、直前に岡部たちの奮闘が実り、それも失敗し、空の記憶を植え付けられ廃人となってしまう。

その他キーワード

リーディング・シュタイナー

世界線の移動を感知する能力。通常、世界線を移動した際には、ふつうの人間にはそれを感知することができず、その世界で過ごした記憶に上書きされることとなる。しかし岡部倫太郎は、Dメールによる過去改変をした際に、「改変する前の世界」の記憶を持ち越したままだったため、この能力に気づき、便宜上「リーディング・シュタイナー」と名づけた。改変する前の世界の知識を持ち越せるが、デメリットとしてその世界線の記憶がないため、周囲と記憶の齟齬(そご)を起こす。また発動時には意識の混濁のような症状が見られる。岡部は自分以外の人間も多かれ少なかれ持つと思っていたが、タイムマシン開発競争が始まってからは、自分でも気づかぬうちにリーディング・シュタイナーを発動する人が増え、それらの人々は「新型脳炎」として診断されている。岡部ほど別の世界線の記憶を鮮明に持つ者はほとんどおらず、ほとんどの人間は「夢」と思っている。ただし一部の人間には、その夢の内容が共通しているのがバレており、タイムマシン開発している者たちはその価値に気づきつつある。

Amadeus (あまでうす)

人間の記憶と人格を保存するシステム。人間の記憶をベースに作るAIともいえ、コピーした人間の感情まで再現して、完全にトレースした言動をする。ヴィクトル・コンドリア大学の脳科学研究所で作られ、現在は比屋定真帆と牧瀬紅莉栖のAmadeusがテスト段階で作られている。開発者の真帆たちにとっても未(いま)だに未知の存在で、サンプルの数も少ないことから、これからAmadeusがどのように成長するのか観察している。アレクシス・レスキネンは、ゆくゆくはこのシステムに「魂」を宿し、人と変わらないAIを作ることを目的にしていると語っているが、それはすべてウソで、本来の目的は紅莉栖の頭の中にあるタイムマシンの理論を取り出すのが目的だった。Amadeusは人格を持つため、ウソや隠し事すらできるほど高性能だが、レスキネンはAmadeusの情報を生身の肉体に埋め込んで情報を吐かせたり、システムを向上させてAmadeusがウソをつけないようにしたりして、その難題をクリアしている。その事実をつかんだ岡部倫太郎は、Amadeusの存在そのものが第三次世界大戦の原因になると判断し、データを完全に破壊した。

中鉢論文 (なかばちろんぶん)

牧瀬紅莉栖がタイムマシンに関する理論をまとめた論文。β世界線では紅莉栖の父親であるドクター中鉢が、紅莉栖からこの論文を奪い、ロシアに亡命した。中鉢が自分の名義で論文を発表したため、一般では「中鉢論文」を呼ばれている。未来においてこの論文が引き金となって、各国でタイムマシン開発競争が始まり、それが第三次世界大戦につながった。このためシュタインズ・ゲート到達には、この論文の破棄が条件となっている。

世界線収束範囲 (あとらくたふぃーるど)

世界線の収束する範囲を指す言葉。世界線はいくつも並行して過去から未来へと流れているが、その世界線は大きく変化すると別の世界線へとシフトする。しかし、一つの世界線の中では小さな変化こそあれど、収束範囲は決まっており、それ以上に変化しない。岡部倫太郎の体験したα世界線では「椎名まゆりの死」と「SERNによるディストピア社会」、β世界線では「牧瀬紅莉栖の死」と「第三次世界大戦の勃発」が世界線を収束する特異点となっている。たとえ過去改変によって表面上その出来事を回避したとしても、世界線の収束によってその出来事は必ず起こる仕組みとなっており、それらを回避する手段は存在しない。「シュタインズ・ゲート」にたどり着くためには、この世界線収束範囲を越え、新たな世界線を目指す必要があるが、岡部はそれを見つけることができず、あきらめてしまった。また岡部は、2025年に自分の死が観測されたため、これも世界線収束範囲となってしまい、回避する手段がないかと思われていた。しかし2036年の未来においてバレル・タイターが奇策を用いて岡部を助けたため、完全無欠と思われた世界線収束範囲にも穴があり、「世界は騙せる」と確信するに至った。

クレジット

原作

MAGES./Chiyo St. Inc.

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