概要・あらすじ
音成町で中古レコード屋を営むPUNKはトラックにはねられ、吹き飛ばされて飛び込んでしまった部屋で、そこに住むPOPと出会う。彼女によれば、右手が「探さないで下さい」と書置きを残して家出をしてしまったのだという。事情を聞いたPUNKは、右手の行方を追うために彼女と共に行動することとなる。こうして町で巻き起こるさまざまな事件やトラブルを解決するために奔走していくうち、PUNKはやがてこの世界をひっくり返してしまうような大きな災厄に巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
PUNK (ぱんく)
中古レコード屋の店主の女性。鶏冠のようなモヒカンヘアーで襟足だけ伸ばして三つ編みに束ねた特徴的な髪形をしている。タンクトップにデニムの短パンという、かなり露出の激しい出で立ち。感情の起伏も激しく、人を怒鳴りつけたり大声を上げることが多い。しかし、身近で事件やトラブルがあると文句を言いつつも手助けをしてしまう、優しく責任感のある一面も持っている。 牛乳が好物で、牛乳を飲むと酔っ払ってしまうという変わった体質。
POP (ぽっぷ)
ロングヘアーに花柄のロングスカート、白いノースリーブという女の子らしい恰好をした少女。右手に「探さないで下さい」という書置きを残して家出をされてしまい困っていたところを、偶然部屋に飛び込んできたPUNKと出会い、右手の捜索を手伝ってもらうことになる。
BLUES (ぶるーす)
冴えない顔をした恰幅の良い中年男性。寝癖のようにボサボサとした短髪と無精髭、着崩れしたよれよれのスーツを着ている。大きく分厚い唇と覇気の無い目が特徴的。いつの頃からか百貨店のエレベーターで暮らしている。当然職には就いておらず、常に炬燵の中に入ってテレビを見ながらミカンを食べてはタバコを燻らせている。
ユッキー
制服を着た女子高校生。肩まで伸びた黒いセミロングヘアーに前髪をヘアピンで留めておでこを見せた髪形が特徴。偶然見つけた中古レコード屋で、内田百閒の小説に登場するサラサーテのツィゴネルワイゼンのプレミアのついたレコードを見つけ、昼寝の真っ最中だった店主のPUNKに値段を交渉し、破格の値段で購入することに成功する。
TECHNO (てくの)
面長で眼鏡をかけた作業着姿の男性。平穏に繰り返されていたこの世界の一日が突然止まった原因を知っていると思われる人物。ループが止まり、時間が動き出した事に気づいたPUNKから追い掛けられている。テレビやポスターの中に自由自在に出入りしてPUNKから逃げ回っている。
スージー
3ヵ月前に確認された音成町での異常をナンシーと共に調査しに来た女性。ナンシーと同じく金髪に黒いサングラスと黒い口紅、黒いボディラインがはっきりと見える戦闘服のようなスーツを着ているが、体型はやせ型でショートカットの髪を右から左に分けている。手のひらを合わせることで空中にモニター画面を開き、対象の人や物を検索、調査、追跡する能力を持っている。
ナンシー
3ヵ月前に確認された音成町での異常をスージーと共に調査しに来た女性。スージーと同じく金髪に黒いサングラスと黒い口紅、黒いボディラインがはっきりと見える戦闘服のようなスーツを着ているが、体型は肥満型で髪の毛を旋毛の辺りでひとつに束ねている。機械の扱いが得意らしく、車の運転も銃の扱いも主にナンシーが担当している。
ジョージ
ウェスタンな衣装を着た男性。もみあげが長く、テンガロンハットを被ってアコースティックギターを持ち歩いている。列車のトラブル中に出会ったPUNKに一目惚れをし、後を追っかけ回している。山本幸子の息子でカントリーミュージックが好き。
COUNTRY (かんとりー)
列車を停止させる原因を作った牛。列車を乗っ取り、PUNKたちの行く手を妨害している。PUNKによれば元々は人の姿をしていたらしく、人間の言葉をしゃべることができる。
山本 幸子 (やまもと さちこ)
音成町で居酒屋「おとなり」の女将をしている女性。肥満体型で黒髪を頭頂部でお団子状に束ね、もみあげを長く伸ばしてカールさせている。ジョージの母親で音成町で行われるのど自慢大会に出場するのを楽しみにしている。
CLASSIC (くらしっく)
生体ステルスという異名を持つ男。山本幸子がのど自慢大会に出場するのを阻止するために、暗殺しようと謀っている。眼鏡をかけており、背が低く痩せ型で、ややおでこが後退している。実はPUNK以外で唯一、全編に渡って登場しているが、地味な風貌で非常に存在感が薄いため気づかれていない。
場所
音成町 (おとなりちょう)
四方を山に囲まれた地方のベッドタウンで、過去に発生した宇宙の時間を巻き戻すビッグバウンドによって生まれた虚構の町で、町の人々は同じ一日を何度も繰り返している。
その他キーワード
ビッグバウンド
一日が何度も繰り返し続ける、本作『RECORD』の世界における時間は、レコードの円盤のように回り続け、町の人たちはレコードプレイヤーの針のようにその時間を知覚している。だがごく稀にその針がレコード盤から弾け、同じ場所を回ってしまうことがあり、その時間の繰り返しは町の人々から「針飛び」と呼ばれている。音成町で起こる「針飛び」はこの世界の時間を宇宙の始まりにまで巻き戻してしまうビッグバウンドを引き起こし、宇宙創成まで時間が巻き戻ってしまうことがわかっており、物語の重要なファクターのひとつとなっている。
乳製品 (にゅうせいひん)
エピソード「COUNTRY」で牛を運搬している様子が描かれたり、エピソード「ENKA」で登場する居酒屋「おとなり」でも音成名物として「牛乳鍋」が出されたりと、乳製品が登場する機会が多い。音成町の特産物として知られ、銘酒「乳搾り」やその酒粕から作った「音成饅頭」「牛乳飴」などさまざまな商品があり、音成町の重要な財源となっている。
クレジット
- 原作協力
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中島直俊