概要・あらすじ
魔導師の一族に生まれたチキタ・グーグーは、赤ん坊の頃に家族全員を殺されてしまった。彼は、妖怪にとって極めて苦く不味いという体質のために助かったのだ。少年となったチキタのもとに遠縁だと名乗るラー・ラム・デラルが現れる。ラーこそがチキタの家族を皆殺しにした妖(あやかし)であり、「不味い人間は百年大切に飼育するとたいそう美味になる」という噂を信じて、飼育するためにやってきたのだった。
登場人物・キャラクター
チキタ・グーグー (ちきたぐーぐー)
長い髪を後ろでまとめた少年。周囲から「まじない師か占い師かお祓い師かなんか」と呼ばれる「妖しい屋」の名門・グーグー家の血を引いている。赤ん坊の頃、家族は人喰いの妖(あやかし)・ラー・ラム・デラルに食べられ、その後はハイカの家で育てられ、家業に関する知識はなかった。人を食べる妖にとっては、死ぬほど苦くてまずいという体質を持ち、妖達の間ではこうした人間は100年経つと、この上ない美味になるという噂がある。 これを知ったラーは、100年間大事に育てて食べようと彼のもとに現れ、共に暮らすようになった。その後、たどたどしくもお札を作るようになり、魔導師として暮らすようになる。優しく穏やかな気性で、ラーとは本当の家族のように暮らし、お互いに大切な存在と思っているが、一方で家族の仇であり、人喰いということに対して複雑な気持ちを抱いている。 ある時から身体の成長が止まり、ラーとの出会いから7年経っても少年の姿のままだが、その間魔導師として様々な出会いと別れ、戦いを経験する。
ラー・ラム・デラル (らーらむでらる)
人喰いの妖(あやかし)。髪の長い中性的で端正な姿で現れるが、老若男女から動物まで様々な姿に変化する。この術によって人間を騙し、餌としていた。どの姿であっても、額に紋が刻まれている。チキタ・グーグーが赤ん坊の頃、彼の家族をみんな食べてしまったが、チキタだけは、死ぬほど苦くてまずいため食べられなかった。妖達の間では、こうした人間は100年経つとこの上ない美味になるという噂があり、これを知って100年間大事に育てて食べようと、チキタのもとに現れ、共に暮らすようになった。 当初はあくまで食料となるチキタを守ることが目的だったが、いつしかお互いに大切な存在と思うようになった。同時に、食料としか見ていなかった人間と深い交流を持つことで、戸惑いを覚えるようになる。
クリップ
杖を携えた髪の長い少年で、「人喰い」と名乗る。 チキタ・グーグーとラー・ラム・デラルの前に現れる。ラーに対して、チキタを100年生かすことに協力しようと申し出て、しばらく一緒に過ごす。感情を表に出さず、本心を語らない。妖(あやかし)ではなく人間だが、少年の姿のまま300年以上生きている。元は人里離れた険しい山の中の一軒家に住んでいた。 長く続いた戦のせいで食べる物がなく、辺りに転がっていた兵士の死体を食べるようになった。だが、そのことがばれて人々から迫害され、死のうとして森の中に入った際に、妖のオルグと出会う。チキタ同様に人喰いの妖にとっては苦くてまずい体質の持ち主で、オルグも彼を100年育てようとしていた。
オルグ
全身が黒くイタチのような姿をした妖(あやかし)。リスのような尾が二本ある。身体は小さいが強い力を持ち、大妖怪と呼ばれている。クリップと共にチキタ・グーグーとラー・ラム・デラルの前に現れた時は、クリップの持つ杖の飾りになっていた。元々は人喰いで、クリップが100年経つと美味になると聞き、彼と共に過ごしていた。 しかし、100年経っても食べようとせず、そのうちに綿のように軽くなってしまった。
ニッケル・シャンシャン (にっけるしゃんしゃん)
魔導師シャンシャン族の一員。巻き毛で端正な顔立ちをしている。母シータをラー・ラム・デラルに殺され、ラーとチキタ・グーグーに恨みを持っていた。シャンシャン族は一夫多妻制で、跡継ぎ候補となる子供達が沢山いたが、その中でも特に優秀だった。一方、母シータがライバルとなる他の母親や子供達を次々に殺しており、恨みを買われていた。 自らの身体の秘密が一族に知られて、跡継ぎになれないことが分かると、蹂躙されて村を追い出されてしまう。その後チキタとラーのもとに身を寄せ、ハイカの世話になりながら、チキタの魔導師としての仕事を手伝うようになる。
サデュース・ザイセル (さでゅーすざいせる)
魔導師の一族ザイセル一族の1人。美貌の女性。住んでいた土地では何者かの手によって全員が絶えてしまったが、父親と共に旅に出ていて命拾いした。この事件の後に故郷は「髑髏(どくろ)の土地」と呼ばれている。事件の首謀者とされているクリップを追っている。クリップがモロン朝廷に匿われているという情報を得て、朝廷からの誘いに乗って皇帝ペトラス・モロンの居城を訪れる。 同じく朝廷に招聘されていたチキタ・グーグーやバランス・シャンシャン達と行動を共にする。
バランス・シャンシャン (ばらんすしゃんしゃん)
魔導師の一族・シャンシャン族の1人。褐色の肌の若い男性。ニッケル・シャンシャン、キサス・シャンシャンの異母弟。ニッケルやキサスらは跡継ぎの座を巡ってしのぎを削っていたが、自身は跡継ぎへの執着はあまりない。チキタ・グーグーを「チキタの兄貴」と呼んで慕っている。普段は細い目をして飄々としているが、危機が迫ると目が開き戦闘態勢に入って強力な術を使う。 また危機を察知する能力が高い。モロン朝廷の皇帝ペトラス・モロン、ラー・ラム・デラル、サデュース・ザイセルと共にモロン朝廷に向かう。後にサデュースと共に行動することが多くなり、彼女に惹かれていく。
ダムダム・グーグー (だむだむぐーぐー)
グーグー族の人物で、チキタ・グーグーの500年程前の先祖。妖(あやかし)作りの不世出の天才と呼ばれていたが、ある日行方知れずとなり、そのまま二度と帰らなかったとされている。シャルボンヌ、ギスチョなどを作った。
パイエ
巻き毛の髪を二つ結びにした少女。盗賊と売春婦の間に出来た娘で、自分も売春をして過ごしてきた。サデュース・ザイセルの亡くなった兄・クラフトとは幼馴染だった。善悪の意識がなく、何の葛藤もなく売春や殺人をしてきた。また、痛みを感じないという特性を持っている。一方、天才的に頭が良く、妖術や様々な妖しいことに関する知識を身に付けた。 このため、周囲からは避けられて育った。 モロン朝廷の皇帝・ペトラス・モロンのための長生き研究会に属し、ペトラスに組みしないサデュースやバランス・シャンシャンを嫌っている。後に、ある人物に頼んで妖(あやかし)となり、チキタ・グーグー、ラー・ラム・デラル、サデュース、バランス達の前に立ちはだかる。
ハイカ
中華風の服を着た少女。幼い頃一人ぼっちになったチキタ・グーグーが彼女の家で育てられた。チキタがラー・ラム・デラルと暮らすようになってからも、時々彼らの家に遊びに来る。チキタに親戚がいると思い込んで単純に喜び、ラーを「ラー兄さん」と呼んでいる。明るく世話好きで、チキタにとっては姉のような存在。
カナヤン
緑色の身体に赤い目をした妖怪。身の丈4~5メートルある巨大な身体で、人間を食べる。ラー・ラム・デラルとは旧知の仲。ハイカを食べようとして止めに入ったチキタ・グーグーを舐め、あまりの苦さに命を失った。その後、ラーの夢に現れるようになる。
シャルボンヌ
身体中に水玉模様の入った熊。人間の汗や垢が混じった布が大好物で、特に下着が大好き。元はサーカスで飼われていたが、人気がなくなり身体に水玉を入れられた。しかし水玉を描いたペンキの毒で、段々と弱っていって山の中に捨てられ、ある人物によって妖(あやかし)にされた。こうした経緯をチキタ・グーグーは夢で見てから、ラー・ラム・デラルは熊の姿をするようになった。
シータ
魔導師の一族・シャンシャン族の女性でニッケル・シャンシャンの母。ラー・ラム・デラルの「毒抜き」によって容姿が磨かれてきたチキタ・グーグーのもとに現れ、その秘密を聞き出そうとする。その後チキタを殺そうとして、逆にラーに殺されてしまった。ニッケルを溺愛し、シャンシャン一族の跡継ぎにするために、ライバルの子供達やその母を大勢殺した。
キサス・シャンシャン (きさすしゃんしゃん)
魔導師の一族・シャンシャン一族の一員。ニッケル・シャンシャンの異母兄弟で、一族の跡継ぎ候補としてのライバル同士。ニッケルとその母シータに、仲の良かった同母弟チグル・シャンシャンを殺され、ニッケルに激しく憎んでいる。しかし同時に優秀なニッケルに対して憧れと尊敬も抱いている。ニッケルが自分の秘密を一族に知られ迫害されて村を飛び出すと、その後を追ってチキタ・グーグー達のもとに現れる。
ギスチョ
人喰いの妖。長い髪に一つ目の姿をしている。キサス・シャンシャンによって、魂だけの状態となっていたチキタ・グーグーの前に現れる。元は人間で、母親によって死体を与えられて生き延びていた。人間に対して激しい憎しみを抱いている。
ぺトラス・モロン (ぺとらすもろん)
チキタ・グーグー達が住む土地を治めるモロン朝廷の皇帝。長い白鬚を生やした善良そうな老人。90歳の高齢ながら、いまだ政務に没頭している。年老いて自らの経験が無に帰することを恐れ、寿命を延ばす方法を得たいと考えている。彼のために妖しい稼業の者達が集まり、長生き研究会が組織されている。チキタも長生きの研究をさせようと招聘した。
チャック・シャンシャン (ちゃっくしゃんしゃん)
魔導師の一族・シャンシャン族の少年。バランス・シャンシャンの同母弟。兄バランスと共にモロン朝廷の皇帝・ペトラス・モロンの居城に招聘された。ペトラスに心酔し、彼のためにつくそうと居城に留まり、長生きの研究の手伝いをしている。このためバランスは帰ることができず、後に訪れたチキタ・グーグーと出会うことになった。
チョロル
身体にブチのある猫のような姿の妖(あやかし)。かつて人喰いの妖・オルグと共にクリップを食べようとして、余りの苦さとまずさのために死んでしまった。その後やはりチキタ・グーグーを食べようとして命を失ったカナヤンと共に、ラー・ラム・デラルの夢に出てくるようになった。
クラフト
眼鏡をかけた男子。サデュース・ザイセルの兄。本編では既に死亡しており、回想に登場する。兄弟の中でも大人しく目立たない存在だった。チキタ・グーグー達の宿敵・パイエと幼馴染で、彼女にどんどん惹かれていった。後に住んでいた土地で、何者かの手によって人々が絶えてしまった際に命を落とした。