あらすじ
第1巻
ブラック企業に勤めるクドウカズトは会社帰りの中、車で偶然、モンスターを轢き殺してしまう。動物を轢いたと勘違いするも、死骸は目の前で消え失せ、クドウは不思議な体験を疑問に思いつつも帰路につく。そして翌朝、クドウが目覚めると停電により、電化製品が使えなくなっていた。テレビもスマホも使えず、不審に思ったクドウが外を見ると、そこには昨日までとは一変した光景が広がっていた。想像の中にしかいないはずのモンスターが闊歩し、人々を襲い回っていたのだ。突飛な事態に現実逃避したクドウは、色々試行錯誤していくうち、ゲームのようなステータスが存在することに気づく。クドウは奇妙な世界になったことに戸惑いつつも、ゲームの要領で己のステータスを強化する。そして初のモンスターを倒したクドウは、そこでかわいがっていた近所の野良犬、モモと合流し、モモを仲間にする。生き残るためモンスターの徘徊する街を探索し始めるクドウは、自衛隊の救助隊を発見。自衛隊を様子見しに行くが、自衛隊はクドウの目の前でネームドモンスターのルーフェンに壊滅させられてしまう。
第2巻
クドウカズトはネームドモンスターのルーフェンという危険な存在から逃れるべく、正反対の方向に逃げる。道中、クドウはホームセンターで西野のグループが避難民を受け入れている姿を目撃する。ブラック企業でこき使われた経験から軽度の人間不信であるクドウは、彼らとかかわるのを恐れ、ホームセンターをあとにする。周囲の探索を始めたクドウは、そこでスライムを発見し、そのうちの1匹であるレッド・スライムに懐かれる。レッド・スライムは仲間になりたそうにクドウを見るも、クドウは仲間に入れるのを渋る。しかし、モモがレッド・スライムを気に入り、二人の健気な姿に根負けしたクドウは、レッド・スライムに「アカ」と名づけて仲間に加える。そして探索を続けていたクドウは、突然、メールを受け取る。メールはステータスを介したスキルで、送り主の一ノ瀬奈津はクドウに強い興味を持ち、仲間に加えてほしいというものだった。悩みつつもそのことは一旦保留し、クドウは探索を続行する。しかしほどなくしてクドウは、傷ついた西野たちを発見。西野たちはルーフェンに襲われ、命からがら逃げてきたのだ。西野たちを治療して逃げようとするクドウだったが、彼はそこでルーフェンと遭遇してしまう。
第3巻
ネームドモンスターのルーフェンと遭遇したクドウカズトは、己の持てる力をすべてぶつける。しかし、あらゆる攻撃が通じず、逃げることすら許さないルーフェンの力に絶望する。心が折れかけるクドウであったが、彼を守るために戦うモモの姿を見て奮起し、クドウは勇気を振り絞ってルーフェンと戦う。ルーフェンの弱点が水と見抜いたクドウはアイテムボックスの力を駆使して戦い、追い詰める。戦いに気づいた一ノ瀬奈津の援護もあり、クドウはルーフェンを遂に打ち倒すことに成功する。クドウは一ノ瀬に助けられた礼を言うと共に、彼女を仲間にすることを決める。一ノ瀬と合流したクドウであったが、彼らは間髪入れずシャドウ・ウルフの群れに襲われる。ルーフェンを倒したことで成長したクドウとモモは、新たなパーティメンバーを加えたこともあり、順調にシャドウ・ウルフを打ち倒していく。しかし、そこに群れの親玉であるダーク・ウルフが出現。偵察、不意打ちと今までのモンスターと違い、確かな知性を感じさせるダーク・ウルフの攻撃にクドウたちは苦戦するが、仲間たちと連携することで着実にダーク・ウルフを追い詰める。
登場人物・キャラクター
クドウ カズト
ブラック企業に勤める男性。年齢は21歳。平凡な顔立ちをした青年で、流されるままブラック企業で社畜として働いていた。ある日、突如モンスターが現れるようになり、車で現れたモンスターを轢き殺してしまう。最も早くモンスターを討伐したため、特典として成長が早くなる「早熟」のスキルを手に入れる。初期に選んだ職業は「密偵」で、「アイテムボックス」のスキルを習得する。モンスターがあふれる世界を生き残るべく行動を開始し、かわいがっていた近所の犬、モモをお供にし、探索を開始する。社畜となった経緯から自分の流されやすい性格を自覚しており、基本的に他者を信用せず、独力で行動している。しかし、ネームドモンスターのルーフェンとの戦いで、一ノ瀬奈津に助けられたのをきっかけにして、彼女を信用して行動を共にするようになる。早熟の効果で成長が早く、早々に密偵から上位職の「暗殺者」となり、ルーフェンとの戦い後はさらに上の職業である「忍者」となった。また第二職業に「狩人」、第三職業に「影法師」を選んで就いている。
モモ
柴犬のメス。年齢は3歳。クドウカズトの家の近所に住んでいる野良犬で、彼に懐いている。突如、モンスターが現れるようになってから、ネズミ型の小さなモンスターを倒し、その魔石を食らう。魔石を吸収した最初の存在であったため、特典のスキルを獲得している。またクドウと合流時、彼におねだりしてシャドウ・ウルフの魔石を食べたため、影をあやつるスキルを習得。戦闘時は影をあやつりクドウのサポートを務める。クドウと共に戦うことで順調に育ち、「暗殺犬」に進化。影をあやつる力は強くなり、影の中に隠れたりする能力を獲得している。また、ネームドモンスターのルーフェンの魔石を吸収したことで、ルーフェンが持っていた、敵を委縮させる「叫び」のスキルを習得している。面倒見のよい性格をしており、アカを気に入り、何かと気にかけている。
アカ
クドウカズトが仲間にしたレッド・スライム。年齢は人間換算で10歳程度。真っ赤な粘液状の体を持つモンスターで、なんでも食べて消化することができる。しゃべることはできないが、無邪気で好奇心旺盛な性格をしている。ゴミ捨て場でゴミを漁っていたところクドウと出会い、彼に懐いた。モモと仲がよく、当初はクドウに渋られ仲間扱いされなかったが、モモがミミックの魔石を与えることで、食べたものに変身する「擬態」のスキルを得て、そのがんばりを認められ仲間として迎えられる。また、その際にクドウに「アカ」と名づけられた。粘液状の体を持つため、物理攻撃には滅法強く、戦闘の際には防弾チョッキに擬態し、クドウの体を防御している。一方で、火や熱には弱いという弱点もある。
一ノ瀬 奈津 (いちのせ なつ)
引きこもりの女性。年齢は17歳。桃色の髪をセミロングに整えている。人と面と向かって接するだけで嘔吐するほどの極度の対人恐怖症で、引きこもり生活をしていた。モンスターが発生した当初も引きこもりだったため、現実と思わずに最初の職選択でも夢だと思って「引きこもり」というネタ職を選んだ。引きこもりの能力でランダムでアイテムが手に入る「ガチャ」の能力を得ており、その能力を使い狙撃手セットを入手。二つ目の職業に「狙撃手」を選び、その能力を駆使してモンスターを狩り続けていた。モンスターを狩っていたのは一種の現実逃避で、我に返ったあと、自分と同じように積極的にモンスターを狩るクドウカズトに興味を持つ。
葛城 三矢華 (かつらぎ さやか)
日本刀を持った女子高校生。髪をショートカットに整えた少女で、快活で無邪気な性格をしている。実家は剣道の道場をしており、モンスターがあふれるようになった当初、家に帰って逃げ回っているうちに、祖父が収集していた日本刀を発見。それを手に取って反撃し、クロと共にモンスターを打ち倒していた。高校時代のクドウカズトが実家の道場に通っていたため、彼と面識があり、兄のように慕っていた。モンスターがあふれるようになってから、ショッピングモールの探索中にクドウと再会する。
クロ
真っ黒な毛並みをした甲斐犬。葛城三矢華に飼われている。スキルを持っており、戦闘では葛城と共にモンスターと戦う。モンスターがあふれるようになってからは三矢華と行動を共にしており、ショッピングモールでの探索で、クドウカズトとモモに出会う。モモを一目見て気に入り、アプローチをするが、モモからは冷たくあしらわれて落ち込む。
西野 (にしの)
六花と行動を共にする男子高校生。利発そうな雰囲気を漂わせ、合理的で冷静沈着な性格をしている。突如、モンスターがあふれるようになってからは、仲間たちとチームを結成、チームのリーダーとして仲間を守るため奔走している。避難民を受け入れて助けているが、同時に仲間を守るためには冷徹な決断も行っており、ネームドモンスターのルーフェンと遭遇した際には、全滅を避けるため避難民を囮にして撤退するという決断を下している。戦闘の際には指揮を担当し、仲間を支援するスキルを使う。
六花 (りっか)
西野と行動を共にする女子高校生。長い髪をサイドアップテールにし、制服を着崩したギャル風ファッションをしている。突如、モンスターがあふれるようになってからは、西野の言葉に素直に従っており、彼からも強く信頼されている。「狂化」のスキルを使いこなすアタッカーで、西野のチームの主力的な存在。戦闘では両手に武器を持ち、二刀流で戦う。
ルーフェン
モンスターの中でも「ネームドモンスター」と呼ばれる、固有名を持つ特別な個体。赤銅色の肌をし、ヒゲを生やした大男のような姿をしている。種族はハイオークで、同系統の下位モンスターであるオークを率いる。筋骨隆々としたオークの中でも、ひと際大きく、たくましい体を持つ。剣や肉弾戦といった原始的な攻撃手段しか持たないが、それだけで銃で武装した自衛隊員を一方的に蹂躙するほど戦闘能力は高い。またパワフルな見た目に反して機敏で、数百メートルを一息で移動するほど跳躍力を持つ。当初は縄張りに侵入してきた人を優先して殺していたが、戦う人間の弱さに退屈を募らせ、強者を求め積極的に避難民を狩り始める。西野のグループを壊滅させ、その足でクドウカズトと遭遇、彼と戦う。重機すら片手で持ち上げる怪力に、生半可な攻撃を無効化する防御力、逃げることも許さない機動力、さらに切り札として戦闘能力を跳ね上げる「狂化」のスキルを持つという圧倒的なスペックを誇るが、実は水が弱点。水に触れるとダメージを受けて苦しむため、雨が降り始めると行動が制限される。クドウにその弱点を見抜かれ、クドウたちの攻撃を食らって死亡した。
ダーク・ウルフ
影をまとった黒い狼のモンスター。群れを率いる特別な個体で、同系統の下位モンスター、シャドウ・ウルフ、レッサー・ウルフを率いる。モンスターの中でもかなり賢い部類で、配下のモンスターを偵察に向かわせたり、不利を悟ると撤退したり、場当たり的な行動を取ることが多いモンスターの中でも珍しく戦術的な行動を取る。高いレベルの「操影」のスキルを持ち、影をあやつって攻撃、防御を行う。モモと同じく影の中に潜って隠れることのほか、対象を影の中に引きずりこむこともできる。
その他キーワード
職業 (じょぶ)
モンスターが現れるようになってから、突如使えるようになったシステム。ステータス画面から選択することができ、職業に就くことでその職業に応じた能力値が上がり、スキルを習得することができる。職業にはレベルが存在し、次のレベルと同数の「JP」を使って成長させることができる。ステータスを使った人間は初めに「第一職業」を選べる。選べる職業はそれまでその人間が行動してきた結果が反映され、なんの職業が選べるかは個々人によって違う。また第一職業で選んだ職業をレベル10まで上げることで、「派生職」と「上位職」を得ることが可能。派生職は新たに選べる職業で、JPを2払うことで「第二職業」として習得できる。また第一職業を育てていくことで派生職は再び習得することができ、さらに習得した場合、「第三職業」「第四職業」となる。上位職は第一職業で選んだ職業がより上位の職業へ変化したもので、レベル10の職業にJPを3支払うことで変化させることできる。上位職もレベルを10まで上げればさらなる上位職へと変化させることができるが、上位職になればなるほど変化させる際のJPも増える。また派生職もレベルを上げれば上位職へと変化させることができる。
ステータス
モンスターが現れるようになってから、突如使えるようになったシステム。「ステータス」と念じると、空中に半透明のウィンドウが浮かび上がり、使用者の各情報の詳細を参照することができる。ステータスの項目は「名前」「レベル」「職業」「スキル」といった基本的な情報に、「HP」「MP」「力」「耐久」「敏捷」「器用」「魔力」「対魔力」といった基本的な能力を数値化したものが存在する。またスキルを成長させるのに必要な「SP(スキルポイント)」、職業を成長させるのに必要な「JP(ジョブポイント)」の確認とそれらの振り分けをすることができる。ステータスはモンスターを倒すことで経験値を得て、レベルアップすることで成長させるというゲーム的なシステムとなっており、これらには「カオス・フロンティア」と呼ばれる謎の存在がかかわっているとされる。
スキル
モンスターが現れるようになってから、突如使えるようになったシステム。いわゆるゲーム的な魔法や技に該当し、習得することで戦闘能力を上げたり、さまざまな技能を習得したりすることができる。スキルは「SP(スキルポイント)」と呼ばれるポイントを割り振って習得、成長させることが可能。またモンスターもスキルを持っていることがあり、スキルを持つモンスターの魔石を取り込めば、そのモンスターの持つスキルを習得することができる。ただし人間にとって魔石はただの石と同じで、まともに食べて取り込むことはできないため、実質的に魔石の取り込みができるのは動物やモンスターのみとなっている。
アイテムボックス
スキルの一種。アイテムの収納・取り出しを可能とするスキルで、アイテムはいずこかの異空間に収納され、いつでも取り出すことができる。クドウカズトが密偵の職業に就いて習得した。収納されたアイテムはリスト化されて表示されるため、アイテムの管理は容易。ただし初期の機能では基本的にアイテムの収納と取り出ししかできず、収納したアイテムの保存機能などはない。ほかのスキルと同じく、SPを支払うことで成長させることができ、保存機能を始めとしたさまざまな機能を拡張することができる。また収納できるのは、自分の所有物か誰にも所有されていないアイテムのみで、他人の所有物や生物を収納することはできない。基本的に収納に役立つ便利スキルだが、クドウは大型のアイテムを収納して、相手にぶつけて攻撃するという攻撃スキルのような使い方もしている。
モンスター
突如世界に現れるようになった怪物。ゴブリンやオークといった空想上の存在が突如、現実世界に現れ、人々を無差別に襲い、破壊行動を行っている。モンスターが現れるようになった原因や目的は不明。モンスターにはさまざまな種類が存在し、中には知能が高いモンスターも存在する。またモンスターの中にはルーフェンのように「ネームドモンスター」と呼ばれる、固有の名前を持つ個体が存在し、それらは基本的にモンスターの中でも強力で特別な個体となっている。基本的に人類に敵対し、出会い次第戦闘となるが、中にはアカのように人類に友好的な個体もわずかながら存在する。モンスターは「魔石」と呼ばれる石を体内に持っており、倒されたら必ず魔石を落とす。また魔石は同時に急所でもあり、生きたままの状態で魔石を取り外すとモンスターは死亡する。モンスターを倒すと経験値を獲得することができ、これによって人間はステータスを成長させることができる。
クレジット
- 原作
-
よっしゃあっ!
- キャラクター原案
-
こるせ
書誌情報
モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 11巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスUP!〉
第1巻
(2019-02-22発行、 978-4757560048)
第8巻
(2022-10-06発行、 978-4757581777)
第9巻
(2023-04-07発行、 978-4757585027)
第10巻
(2023-10-06発行、 978-4757588233)
第11巻
(2024-06-07発行、 978-4757592254)