テロール教授との出会い
地方出身者の佐藤光一は、あこがれの馬場大学に入学し、都会でのキャンパスライフに胸を躍らせていた。しかし、期待とは裏腹に、入学早々に怪しげなサークルに勧誘されるが、通りがかったティム・ローレンツ教授に救われる。そして、ティムに誘われるがままにゼミの新入生相談会に参加する。そこでティムは、自らの経験や研究分野について熱心に語り始める。その温和な人柄と「君なら、きっと変われる」という力強い言葉がきっかけで、佐藤はティムに傾倒していく。だが、講義が始まると、ティムはそれまでの穏やかな表情を一変させ、本性を現し、第一声で「大学生はテロリスト予備軍である」と言い放つ。その過激な発言に、学生たちは一様に驚愕するが、ティムが説くテロリズムに関する論理は、佐藤の心に深く響くものだった。そして、佐藤はティムのゼミ生たちと共に、彼が提唱する反テロリズム教育を学ぶことになる。
常識を覆すテロリズムに関する講義
本作は、世間で広く知られるテロの裏側に潜むさまざまな歪みを、「テロール教授」ことティム・ローレンツの講義という形で描き出す。その内容は、一般的なテロリズム解説とは一線を画すユニークなものだが、テロ思想への傾倒は決して異常者の行動ではなく、誰しもが些細なきっかけでテロリストの片棒を担ぐ可能性があることを示唆している。また、単行本のおまけページでは、ティムの講義内容をわかりやすくまとめたコーナーも設けられている。そんなティムの講義をサポートするのは、ティーチングアシスタントの川島倖子。倖子は丁寧な物腰でティムの言葉足らずな部分を補い、学生たちにその真意を伝えることで講義を円滑に進める役割を担っている。しかし、学生がいない場所では一転して奔放な一面を見せることもあり、時にはティムに辛辣なツッコミを入れたり、逆に彼に乗っかって楽しんだりしている。
テロール教授の教え子たち
ティム・ローレンツのゼミに集う学生たちは、個性豊かなメンバーが揃っている。まず、佐藤は地方出身者で、都会の大学生活にあこがれを抱きつつも、どこか浮足立った雰囲気を漂わせている。澤村香子は、思慮深く引っ込み思案な性格で、甘いものに目がない。秋川浩二は、思ったことを率直に口にするタイプだが正義感が非常に強い。村河順平は、父親がインターネットの影響で右翼的な思想に傾倒したため、複雑な家庭環境で育った。白川秀朗は、明るく楽天的な性格ながら、周囲を唸らせるような独創的な意見で周囲を唸らせることがある。彼らはそれぞれ異なる個性を持つものの、現代の日本人らしくテロリズムに対する知識は乏しいという共通点を持っていた。しかし、ティムの破天荒な講義を通して、世間の常識がいかに危ういバランスの上に成り立っているかを痛感し、次第にその特異な世界観に引き込まれていく。
登場人物・キャラクター
ティム・ローレンツ
馬場大学で政治学の教授を務めるアメリカ人の男性。金髪碧眼でがっしりとした体格の持ち主。生徒や関係者からは「テロール教授」と呼ばれることもある。衒学趣味の論理モンスターという一面を持ち、現代人の平和ボケを揶揄したり、常識にとらわれた意見に対しては挑発的な発言をいとわなかったりする。その言動は、時に慇懃無礼と受け取られることも多い。しかし、教え子たちへの愛情は本物であり、彼らが自分の意見を率直に表現することを何よりも喜び、発想の転換や多角的な視点を持つことの重要性を説き、生徒たちの自主性を育むことに情熱を注いでいる。一方で、体面を取り繕うことも得意で、学生やティーチングアシスタント、同僚以外の人々に対しては、つねに品行方正な教師として振る舞っている。好物はドーナツで、講義に持ち込むほどの熱中ぶり。嫌いなものは無能な人間。
佐藤 光一 (さとう こういち)
馬場大学に通う1年生の男子。良識的で気弱な性格ながらも、心の奥底では「変わりたい」という強い願望を秘めている。周囲への気配りを忘れない優しさを持ち、ティム・ローレンツのゼミでは中心的な存在として活躍し、ティムからも白河秀朗に次ぐ高い評価を受けている。入学当初は、周囲の状況や他者の言葉に流されやすい一面もあったが、ティムのゼミに参加してからは、彼の破天荒な発想や独特な理論に触発され、つねに常識を疑う姿勢を身につける。その後も佐藤光一自身の確固たる考えを形成するなど、さまざまな面で目覚ましい成長を遂げている。
クレジット
- 原作
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カルロ・ゼン
書誌情報
テロール教授の怪しい授業 4巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2018-12-21発行、978-4065139899)
第2巻
(2020-04-23発行、978-4065190258)
第3巻
(2021-05-21発行、978-4065231920)
第4巻
(2022-06-22発行、978-4065262535)







