デキる猫は今日も憂鬱

デキる猫は今日も憂鬱

山田ヒツジの代表作で、デビュー作『僕の後ろに魔女がいる』完結から約7年ぶりとなる連載作品。雪の降る冬の日、OLの福澤幸来が保護した小さな黒猫の諭吉が、成長するにつれて人間のように二足歩行するようになり、家事万能な「デキる猫」として幸来を支える姿を描いた物語。仕事はできるが私生活は混沌としている幸来と、人間社会に溶け込みながらも猫としての本質を持つ諭吉の対比的な関係性が物語の中心となっている。諭吉の手厚いケアにより幸来の生活は劇的に改善するが、周囲からは「完璧なOL」と誤解され、さまざまな騒動に巻き込まれていく。本作は、日常系とファンタジー要素を組み合わせた独自の世界観を持つショートコメディ4コマ。飼い主と猫の「主従逆転」の構図が特徴的で、諭吉の徹底して効率的な家事スキルと幸来の「ダメ人間」ぶりとの対比がコミカルに描かれる。巨大な猫が二足歩行し人間社会で活動することに違和感を覚えない世界観であり、諭吉は人語を理解するものの喋ることはできず、ボディランゲージや電子メールといった方法でコミュニケーションを図る。講談社「水曜日のシリウス」2018年8月22日から連載。また、同社「月刊少年シリウス」でも2021年12月号から連載。2020年に「全国書店員が選んだおすすめコミック2020」第11位、「次にくるマンガ大賞2020」Webマンガ部門第18位を獲得。テレビアニメが2023年7月から放送。作中に登場した料理のレシピ本が2022年6月に刊行された。

正式名称
デキる猫は今日も憂鬱
ふりがな
できるねこはきょうもゆううつ
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
レーベル
ワイドKC(講談社)
巻数
既刊12巻
関連商品
Amazon 楽天

作品の概要

基本情報

山田ヒツジの代表作で、デビュー作『僕の後ろに魔女がいる』完結から約7年ぶりとなる連載作品。

要旨と舞台設定

本作は現代日本を舞台に、仕事以外の生活能力が壊滅的なOLの福澤幸来と、幸来に拾われた家事万能の大型猫の諭吉による異色の共同生活を描いた物語。二足歩行が可能で人間社会に溶け込みながらも猫としての本質を持つ諭吉と、仕事はできるものの私生活が混沌としている幸来との対比的な関係性が、物語の中心となっている。

ストーリー展開

物語は雪の降る冬の日、OLの幸来が小さな黒猫を保護するところから始まる。命を救われた諭吉は、幸来に恩返しをしようと決意し、成長するにつれて人間のように二足歩行し、炊事・洗濯・掃除をこなす「デキる猫」となる。諭吉の手厚いケアにより幸来の生活は劇的に改善するが、周囲からは「完璧なOL」と誤解され、さまざまな騒動に巻き込まれていく。

ジャンル的特徴と位置づけ

本作は、日常系の要素とファンタジー要素を融合させたショートコメディ4コマ。一般的な飼い主と猫の関係が逆転しており、この「主従逆転」の構図がさまざまなユーモアを生み出している。

作品固有の表現技法と特徴

作品における表現の特徴として、諭吉の無言かつ徹底的に効率化した家事スキルと、幸来の「ダメ人間」ぶりとの対比がコミカルに描かれる。また、クマのような大きさにまで成長した猫が街中を歩き、スーパーで買い物をするという非現実的な状況が、あたかも日常の一部であるかのように描写される点も、本作の特色となっている。

世界観の構築と設定

本作の世界観は、巨大な猫が二足歩行し人間社会に溶け込み、違和感なく活動している設定となっている。一方、諭吉は人語を理解するものの喋ることはできず、ボディランゲージや電子メールといった方法でコミュニケーションを図る。また、近隣住民や職場の同僚との交流を通じて、諭吉と幸来の生活圏が徐々に広がっていく様子も描かれている。

連載状況

講談社「水曜日のシリウス」2018年8月22日から連載。また、同社「月刊少年シリウス」でも2021年12月号から連載。

受賞歴

2020年「全国書店員が選んだおすすめコミック2020」第11位。

2020年「次にくるマンガ大賞2020」Webマンガ部門第18位。

メディアミックス情報

テレビアニメ

2023年7月から9月までMBS、TBSほかにて放送。制作はGoHands。福澤幸来を石川由依、諭吉を安元洋貴が演じる。

関連書籍

『デキる猫は今日も憂鬱 公式レシピBOOK 諭吉ごはん』:2022年6月9日に講談社より刊行。

あらすじ

第1巻

昼休みにもかかわらず、必死でPCのキーボードを叩いていた福澤幸来は、後輩の柴咲ゆりに会社で婚活サイトを見ない方がいいと諭される。実際は、ふつうの猫が育つとどれほど大きくなるのかを調べていた幸来は慌てて弁解。話の流れで、幸来が猫を飼っていることを知ったゆりは青ざめた表情で、ペットを飼うと婚期が遅れると語り、軽率な行為だとため息をつくのだった。その日、仕事を終えていつもどおり夜遅くに帰宅した幸来を、幸来よりもはるかに巨体で二足歩行をする黒猫の諭吉が出迎える。幸来が会社で猫の大きさについて調べていたのは、そんな諭吉の成長ぶりに違和感を覚えていたためだった。そんなことは露知らず、新聞でプレミアムフライデーの存在を知った諭吉は、夕方から御馳走を用意して幸来を待っていた。幸来は、プレミアムフライデーなんて幻想だと諭吉に語りながら、大喜びで御馳走を平らげていく。諭吉はその後、おなか一杯になって睡魔に襲われる幸来を風呂場まで引きずっていくと、自分は水に濡れないように完全防備で、幸来にシャワーを浴びせ始める。(1缶め。ほか、12エピソード収録)

第2巻

ある日の仕事中、福澤幸来部長から、彼の幼い姪にして先日友達になった優芽の誕生日会の招待状を受け取る。合わせて、諭吉への招待状も預けられた幸来は、諭吉を人目にさらすことはできないと途方に暮れるが、家に帰って招待状を確認したところ、当日は仮装パーティーが行われることが発覚。それならばごまかしもきくかと、参加を決意する。そして迎えた当日。諭吉お手製の持ち寄り料理とプレゼントのぬいぐるみを持ち、これまた諭吉の手による仮装用衣装を身につけた幸来は、諭吉と共に地図を頼りに優芽の家へとたどり着く。だがそこは、幸来の家から目と鼻の先にあった。我に返った幸来は、近所で諭吉が原因の騒ぎを起こしたら、最悪引っ越しも視野に入れなければならないとおびえ始める。(13缶め。ほか、11エピソード収録)

第3巻

ある日の夜、福澤幸来の会社では、常務の呼びかけで急きょ飲み会が催されることとなった。幸来は部長と共に、常務のアルコールハラスメントの盾となって酒の相手を務めたにもかかわらず、顔色一つ変えずに涼しい表情で飲み会を乗り切り、ほかの社員たちから感謝と称賛の声を浴びる。だがその後、幸来は家へ帰り着くなりぐったりと倒れ込んでしまう。そんな彼女を迎えた諭吉は、しじみ汁を用意し、クレンジング、シャワー後のドライヤー、むくみ対策のルイボスティー、さらには全身マッサージで幸来をねぎらう。そのうちに眠ってしまった幸来に5分間のフェイスパックをし、革用消臭スプレーでパンプスとバッグを磨き上げ、服にスチームアイロンをかけ、目にホットアイマスクをかけてやったうえで枕元にスポーツドリンクを用意し、諭吉はようやく自身も眠りにつくのだった。そして翌朝、諭吉は胃の調子がよくないという幸来に、胃に優しいしじみ茶漬けを出す。こうして出社した幸来は、すさまじかった昨日の飲み会をまるで感じさせない、いつもと同じ颯爽とした姿で朝のあいさつを交わし、昨日のダメージが抜けきっていない柴咲ゆりを驚愕させる。(23缶め。ほか、15エピソード収録)

登場人物・キャラクター

福澤 幸来 (ふくざわ さく)

会社員の若い女性で、諭吉の飼い主。黒髪のロングヘアをポニーテールにし、仕事中はブルーライトカットの眼鏡を掛けている。その颯爽とした姿と着実な仕事ぶりから、周囲には「デキる女」と非常に高く評価されている。また、仕事絡みではどんなに飲んでも乱れたところをいっさい見せないため、常務のアルコールハラスメント対策要員として、ほかの一般社員からは重宝がられ、頼りにされている。一方で、家に帰ると一転して自堕落で家事はもちろん、服の脱ぎ着に至るまで、一から十まで諭吉に身の回りの世話をしてもらっている。どちらが飼い主でどちらがペットなのかまるでわからない状態で、会社での姿も、実はすべて諭吉の内助の功によるものである。自宅で晩酌するのが大好きだが、一日の酒量は諭吉に厳しく制限されている。意外にも武術に優れ、女性に絡んでいた暴漢を一撃で制圧して取り押さえるなど、いざというときにはすさまじい迫力を見せる。また、諭吉に抱きついて匂いを嗅いだだけで、諭吉の日中の行動を把握できるという特異な能力を持つ。今の会社に転職したばかりの頃は、いつも顔色が悪くオドオドしていたため、部長や尾代に心配されていたが、ある日を境に急に見違えるようなハイスペックキャリアウーマンに変貌したという過去がある。その理由は周囲からも大いなる謎とされているが、部長には福澤幸来が当時拾った子猫がなんらかの影響を与えているのではないかと推測されている。なお、幸来自身は、通常の猫とはかけ離れた諭吉の姿から、周囲にその存在がばれないように腐心しているものの、当の諭吉はいっさい意に介していない。

諭吉 (ゆきち)

福澤幸来が飼っている黒猫。二足歩行で、その身長は幸来よりも大きく、まるまると太っている。非常に賢く、幸来の家の家事を一手に担っており、かつてはゴミ屋敷のようだった幸来の家も、諭吉が来てからはきれいに片づけられている。記憶力もよく、TV番組で紹介している料理の非常に長いレシピも、簡単に暗記してしまうほど。また手先も器用で、洋裁からぬいぐるみ作り、さらには壁紙の張り替えやDIYによる家具の復活再利用まで器用にこなす。もともとは捨て猫で、当時はあくまでふつうの子猫だったが、幸来の家で生活するうちに3年ほどで現在のサイズとなった。家事などの技術も、すべてこの3年で覚えたものである。ふだん家事をする際にはエプロンを身につけているが、食材の買い物に出かける際は、店内に猫毛を落とさないためのマナーとして割烹着を着る。ちなみに水が苦手で、風呂掃除などの水仕事をする際には体を水に濡らさないよう、雨ガッパをフードまできっちり着込んだうえに、胴付長靴と自作の防水手袋を身につけて事に当たる徹底ぶり。ふだんは幸来に対して厳しく接しているが、単にツンデレなだけで、実際は幸来のことを誰よりも大事に思うと同時に心配もしている。幸来に頼られたりおだてられたりするのに弱く、その際には幸来に晩酌を許す形で気持ちを表すことが多い。また、初対面の人には人間サイズの巨大な猫ということで大いに驚かれるが、すべてにおいて優秀な能力を示すことからすぐにすんなり受け入れられるという、不思議なコミュニケーション能力を持つ。幸来が柴咲ゆりからもらってきた猫ちぐらがお気に入りで、寝るときにはヘルメットのように頭にかぶる。好物は猫用おやつの「ぢゅーる」。落ち込んだときには、預金通帳の残高を見て精神を安定させる癖がある。また、ウミウシ系アイドル「UMYU-Sea」の大ファンで、推しはゴマフビロードウミウシ。

柴咲 ゆり (しばさき ゆり)

福澤幸来と同じ会社の後輩の女性で、仁科理央のいとこ。ロングヘアをゆるく巻いた、マイペースな性格をしている。幸来とは協力して同じ仕事にあたることもあって親しく、彼女を強く慕っている。ある日、幸来が猫を飼っていることを知って猫ちぐらをプレゼントし、これが諭吉の大のお気に入りとなった。実は学生時代から電車の中で幸来を見かけており、素敵な社会人としてあこがれを抱いていた。その後、痴漢に遭ったところを幸来に助けてもらったことをきっかけに、彼女の名前と連絡先を聞き出し、お礼と称して食事に連れ出して勤務先を知り、幸来と同じ会社に就職したという経緯がある。ファザコンで、家事やお弁当作りなどを率先してやってくれて、包容力があって甘やかしてくれるという、まるで諭吉を人間にしたような男性が好み。ちなみに実家では猫を飼っているため、猫の飼い方について詳しい。

尾代 (おしろ)

福澤幸来と同じ会社の同僚の女性。淡い色のショートヘアを外はねボブにしている。幸来や後輩の柴咲ゆりと親しく、よく三人でいっしょにいる。会社には幸来よりも前から所属しており、3年前に転職してきたばかりの頃の幸来が、いつも顔色が悪くオドオドしていたために何かと心配して気にかけていた。ある日を境に溌剌として仕事にも腕を振るい始めた幸来を見て安心すると同時に、現在では彼女の会社での様子にある種の敬意も抱いている。

部長

福澤幸来の働く会社で部長を務める男性。年齢は32歳。本名は「織塚馨」で、無造作ショートヘアのクールなイケメン。幸来が入社して間もない頃、飲み屋で泥酔している幸来とばったり会い、散々な迷惑を掛けられながら彼女を家まで送ったことがある。その際に幸来のゴミ屋敷のような部屋と、まだふつうの猫サイズだった諭吉を目撃している。当時はいつも顔色が悪くオドオドしていた幸来のことを心配していたが、現在は非常に有能なキャリアウーマンになったと、彼女のことを高く評価している。酒が強く、常務のアルコールハラスメント対策要員として、ほかの一般社員からは幸来と並んで頼りにされている。部長本人は子供嫌いを公言しているが、なんだかんだで面倒見はいい。

優芽 (ゆめ)

部長の姪。年齢は3歳。淡い色でふわふわのロングヘアで、非常にかわいらしい顔立ちをしている。ふだんは部長の実家に預けられているが、たまたま部長の両親が不在だった時に、シッター役として部長に呼び出された福澤幸来と知り合う。素直で純粋な性格をしており、初対面時に幸来の容姿を褒め、幸来もそのかわいらしさに一撃で心をつかまれた。ウミウシ系アイドル「UMYU-Sea」の大ファンで、推しはイチゴミルクウミウシ。ちなみに部長の姉である母親は、優芽にそっくりな、まるで幼い少女のような外見をしている。

店長 (てんちょう)

諭吉がひいきにしているスーパーで店長を務める男性。短髪で眼鏡を掛けている。買い物に来る諭吉を見て客や店員の仁科理央が動揺していても、いっさい気にしていない。それどころか、仁科に着ぐるみ着用であることを注意するよううながされた時も、「今日こそ必ず言う」と意を決して諭吉に近づき、結果的に握手を求めるほどの度を越した猫好き。実は諭吉が来店した日は売り上げが非常に伸びるため、むしろ店員として雇いたいとすら考えている。

仁科 理央 (にしな りお)

諭吉がひいきにしているスーパーで働いている若い女性で、柴咲ゆりのいとこ。淡い色の髪を、ふんわりとしたボブヘアにしている。非常に口が悪く、特に店長に対して当たりがきつい。諭吉のことを「着ぐるみを着た変質者」と評してマークしていたが、夜道でしつこい元カレに絡まれていたところを諭吉と福澤幸来に助けてもらって以来、幸来にほのかな思いを抱き始める。同時に、考えを改めて諭吉への偏見を捨て、諭吉とも親しく付き合うようになる。

集団・組織

UMYU-Sea (うみゅうしー)

大人気のウミウシ系女性アイドルグループ。その名のとおり、それぞれのメンバーがウミウシを模した衣装を身につけており、メンバー名もウミウシの名前となっている。もともとは子供向け人気料理番組「Go! ウミウシ戦隊UMYU-Sea!!」の中で結成されたグループで、海の幸を使った料理を食べることでパワーアップし、地球侵略を企む宇宙モンスター「ガイライ獣」と戦うという設定がある。諭吉の推しはゴマフビロードウミウシ、優芽の推しはイチゴミルクウミウシ。

書誌情報

デキる猫は今日も憂鬱 12巻 講談社〈ワイドKC〉

第1巻

(2019-04-09発行、978-4065151730)

第2巻

(2019-09-09発行、978-4065169032)

第3巻

(2020-04-09発行、978-4065190500)

第4巻

(2020-12-09発行、978-4065215869)

第5巻

(2021-06-09発行、978-4065235140)

第6巻

(2022-06-09発行、978-4065280973)

第7巻

(2023-02-09発行、978-4065305683)

第8巻

(2023-08-08発行、978-4065325285)

第9巻

(2024-03-08発行、978-4065347881)

第10巻

(2024-09-09発行、978-4065367407)

第11巻

(2025-04-09発行、978-4065389737)

第12巻

(2025-11-07発行、978-4065413463)

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