概要・あらすじ
瓦木叶は、みんなにちやほやされることが大好きな女子高生。彼女はある朝、玄関に飾られた見慣れない絵を発見する。それは、叶の母が親戚からもらってきたもので、天才絵師、葛飾北斎の筆によるものだった。趣味が悪い、と心のなかでつぶやきながら登校する叶。今日は、音楽か美術の授業を選択する日であった。美術が不得手な叶は、音楽を選ぼうとするが、「絵で賞をもらってそう」というクラスメイトの言葉に、つい見栄を張ってしまう。小学校のときに先生に認められ、海外の個展にいったことがあるとホラ話を展開した叶は、美術の授業を選択する羽目に陥った。意気消沈して帰宅した叶は、今日の失敗は、玄関先の北斎の絵のせいだと言って、絵を額から外した。すると、そこから丸坊主の小さなおじいさんが現れて、叶の指に嚙み付いた。彼は自らを「卍」と名乗った。卍は北斎の画号である。それは死んでも絵を描き続けたいと願った北斎のおばけだった。叶は卍のことを気味が悪いとは思ったが、彼女の悩みは明日の美術である。卍のことは無視して、叶はさっさと寝てしまう。卍は叶の体を借りて、絵を描きたいと考え、彼女の頭に近づいた。すると、卍の体は叶に吸い込まれるように消えていた。叶が寝ている間は、その体を乗っ取ることができるのだ。翌々日の朝、目覚めた叶は、墨汁だらけになった部屋に驚く。天井を見ると、そこには鬼気迫るタッチの獣が描かれていた。彼女が寝ている間に、卍が描いたのだ。卍は、これから叶の代わりに自分が絵を描くことを宣言する。そして満足できる絵が描けたら成仏するという。叶はその絵を見て、卍を利用しようと考えた。こうして計算高い女子高生と、天才絵師のお化けの二人三脚が始まった。
登場人物・キャラクター
瓦木 叶 (かわらぎ かのう)
計算高い女子高生。勉強もスポーツも得意な優等生だが、唯一の弱点は美術。お姫様カットが特徴。美しく健康に老いるための努力を生きがいとし、皆にちやほやされることを無常の喜びとする。ある日、葛飾北斎のお化け・卍に取り憑かれ、彼の絵の才能を利用することを思いつく。
卍 (まんじ)
江戸時代後期の天才浮世絵師。死んでからも絵を描き続けたいという思いが叶い、お化けとして現代に蘇る。小ネズミほどの大きさで、頭は禿げており、着物を着ている。その姿は、瓦木叶にしか見えない。叶が寝ている間だけ、彼女の体を借りて絵を描きまくる。同名の実在人物がモデル。