トラウマ量子結晶

時任春人は中学生の頃、SF小説に心酔するあまり周囲から孤立し、友人もいなかった。それから3年後、春人は茂木高校の進学クラスに入学したものの、相変わらず友人に恵まれない高校生活を送っていた。そんな中、春人は学園内でたびたび時間が止まるような奇妙な感覚に襲われる。薄気味悪さを感じながらも、思わず時間停止中にとなりの席の女子生徒の下着を覗こうとする。しかし、そこに現れた逆崎久遠に厳しく叱責されてしまう。春人と同様に止まった時間の中で行動できる久遠は、春人の行動を非難し、時間停止が「コーアクジャル」という存在によって引き起こされる悪影響であること、そしてそれに対抗するための仲間を集めていることを告げる。戦うことに興味を持った春人は、久遠から「量子結晶時計」と呼ばれる時計型のツールを授かり、襲ってきたコーアクジャルを打ち倒すことに成功する。こうしてオラクルとコーアクジャルの存在を知った春人は、久遠をはじめとした仲間たちと共に、コーアクジャルとの戦いに身を投じていく。

特殊な資質を持つ者のみが、量子結晶時計を変形させて武器や装具を具現化することができる。この具現化された武装は「オラクル」と呼ばれる。春人と共に「コーアクジャル」と戦うオラクルの使い手たちは、いずれも茂木高校の生徒または教師であり、春人に負けず劣らずの変人ばかり。例えば、2年生の馬場和成は、脚力を増強する具足型オラクル「戦則闘技」を使いこなしているが、高校生でありながら掛け算すらできず、学力に問題を抱えている。同じく2年生の姫岸リコは、巨大な槍を具現化するオラクル「闘槍連撃」を使用するが、幼い頃から武道一筋で育ってきた影響で、かわいいものを身につけようとすると拒絶反応を示し、頭部から出血して周囲を驚かせてしまう。このように、オラクルの使い手たちが変わり者であるのは、彼らが使用するオラクルが「ネガティブオラクル」と呼ばれ、人間としての欠陥が多いほど力を増す特性を持っているためだと考えられている。

「コーアクジャル」は、時間を食べる特異な存在。メカニカルな外見を持ち、身体の一部には時計のような模様が埋め込まれている。特定のコーアクジャルが時間を食べると、その個体が倒されるまで時間が停止し、すべての物体が静止してしまう。しかし、オラクルを具現化できる資質を持つ人間は、止まった時間の中を自由に行動することができ、オラクルを使ってコーアクジャルを倒すことも可能。コーアクジャルには、人の頭ほどの大きさの小型のものから、茂木高校の校舎と同じくらいの巨大なものまで、さまざまなサイズが存在するが、その大きさと戦闘力が必ずしも比例するわけではない。その正体は、春人たちのグループとは異なる集団に属するオラクルの使い手によって創り出された、生物兵器に近い存在。強力なコーアクジャルであるアセンブラが春人に倒されたことをきっかけに、その創造者である集団は本格的に春人とその仲間たちを倒すために動き出す。