ナイトメア・ファンク

新米刑事の日和は人が殺される予知夢を見る能力を持ち、死んでいく人たちを一人でも多く助けるために刑事を志した。しかし、これまで助けることができた被害者は一人もおらず、周囲からは殺人現場に必ず居合わせることから「死神」と揶揄（やゆ）され笑い者になっている。日和はその日も僅かの差で女性を助けられず、とうとう服務規定違反で査問会にかけられることになる。その夜、日和は男性が狙撃されて死ぬ予知夢を見て、今度こそ助けるべく男性の行方を探る。運よく男性を見つけた日和は彼に忠告し、初めて予知夢で殺される被害者を助けることに成功する。しかし、命を救った男性は灰田という殺し屋で、日和の予知夢に興味を抱いた灰田は半ば強引に、彼女の「人助け」を協力することになる。ちなみに日和が予知夢を見た最初の被害者は、彼女の父親で名警部をして知られる来栖将馬だった。

灰田は表向きは民間調査会社に勤務しているが、裏では諜報（ちょうほう）や暗殺を請け負う「PA(パーフェクト・ワールド)社」に所属していた元エージェント。組織でも屈指の実力を誇る灰田だったが、ある出来事をきっかけに組織を脱走する。差し向けられる追手を撃退するために、日和の予知夢を見る能力が役立つと考え、彼女に「人助け」の協力を持ちかける。当初、日和は犯罪者の灰田の申し出を一蹴するも、手段を選んでいては助けられる命も助けられないと悟り、彼とバディを組むことになる。予知夢は見知らぬ人が、見知らぬ場所で死ぬことが多く、手がかりが少ない中、被害を阻止するためにスゴ腕エージェントの情報収集能力は欠かせないものとなり、日和の人助けの日々は一変する。

新米刑事の日和と殺し屋の灰田は、バディを組んで事件を未然に防いでいくが、PA社の追っ手に次第に追い込まれていく。そしてPA社の魔の手は遂に日和の日常生活にまで忍び寄り、二人は否応なく巨悪との対峙（たいじ）を余儀なくされる。そして日和は、これまで見知らぬ人を助けるために使っていた予知夢を、自分たちの危機を回避するために利用する。しかしそれは同時に、PA社に日和の特異性がバレることと同義であり、さらに日和は「自分以外の誰か」が「自分と同じ未来」を見ていることに気づく。PA社が裏で世界を支配するまで巨大化した真相が明らかになり、灰田の秘めたる過去が日和の予知夢でつながり、二人の運命は大きく動き出す。