あらすじ
第1巻
高校2年生の戎皆人は進路に悩む日々を過ごしていたが、ある日、願いを叶えるアプリケーション「配神限定」の噂を聞く。戎は配神限定を起動してみたところ、謎の少女、流子が出現、彼女に警告される。配神限定は願いと引き換えに、人間を依代(よりしろ)として神々の戦いに巻き込む「だまし舟」だった。依代は10月いっぱい行われる「選別」という戦いを神の力を借りて生き残る必要があると、戎は教えられるも、その直後、クレジットカードの神の襲撃を受ける。クレジットカードの神は、戎のクラスの委員長を乗っ取っており、彼女をなんとか助けたいと思った戎は、流子に願いを告げ、彼女と戦い抜く覚悟を決める。流子と一神同体化し、クレジットカードの神の力を無効化した戎は辛うじて勝利を収める。しかし委員長は、戎をクレジットカードの神の攻撃からかばい死亡してしまう。悲しむ戎だったが、このような非道を行うハコフネ神議会を潰すことを誓う。戎たちの戦いぶりを見ていたログは、彼らのシステムにバグが発生していると認識し、それを修正するため戎を含む、いくつかの神々を倒せば特典を与えると宣言する。
第2巻
ハコフネ神議会によって、バグを起こした神々を倒した者には「選別ゲーム免除特典」が与えられることとなった。戎皆人と流子もその一組となっており、ゲームが始まって1週間、彼らは免除を求める者たちから執拗な襲撃を受けていた。そんな中、戎たちは同じくバグ持ちの花別と遭遇。ハコフネ神議会に敵意を燃やす彼女と共闘することとなる。流子が一時的に不調となるも、花別のアドバイスで事なきを得た戎たちは、休憩のため宿に泊まる。流子を休ませるため、一人で行動を開始した戎は、そこで合金の神(複製)と遭遇。戎はたった一人で戦うこととなるが、持ち前の機転を活かして合金の神(複製)の弱点を看破し、打ち倒すことに成功する。そして「選別」も2週間が経過した頃、戎は復帰した流子、花別と共に再び戦い始める。そんな中、彼らは新たな強敵である日本刀の神、火炎放射器の神と遭遇する。強敵二人のコンビネーションに翻弄されつつも、たまたま通りがかった黛涼介の力を借りて逆襲。戎たちは二人を撃退し、彼らは二人の神の末期の言葉から、この選別が「2回目」であることを知る。
第3巻
10月も終わりが近づき、「選別」の終了間近となってきたが、ここにきて人知れず暗躍していた複製の神によってハコフネ神議会は大混乱。複製の神が作り出した偽物の神々に、選別の参加者は次々倒されていく。戎皆人と流子は、花別と別行動を開始するも、合金の神(真)に襲われる花別を発見。彼女を助けるため、合金の神(真)に戦いを挑む。しかしその花別は、複製の神が作り出した偽物で、花別と信頼していた戎は不意打ちを受けて致命傷を受けてしまう。流子は戎の死に絶望するも、そこに本物の花別が駆け付け、黛涼介の力を借りることで辛うじて戎の命をつなぐことに成功する。そしてさらにログも合流。彼女から選別の真実と複製の神の暗躍を伝えられ、流子たちは選別を終わらせるため最後の戦いに挑む。
登場人物・キャラクター
戎 皆人 (えびす みなと)
高校2年生の男子高校生。年齢は17歳。黒髪の青年で、棒付きのキャンディーを好み、ヒマさえあればキャンディーをなめている。また考え事をする際にはキャンディーの包み紙を折り紙代わりにし、紙の船を折る癖を持つ。頭の回転が速く、要領のよい性格をしており、面倒ごとも飄々とした態度で乗り切る。また情に厚く、いじめに遭っていた委員長を助けたりもしている。将来の夢などはなく、流されるまま生きてきたが、ある日、配神限定のアプリケーションをダウンロードし、デスゲームに巻き込まれてしまう。訳のわからぬまま殺されかけるが、パートナーとなった流子を助けるため、彼女と契約する。願いは「あんた(流子)の願いを叶える」だったが、神の願いを叶えるのは配神限定の想定外の願いだったため、バグを引き起こしてしまう。
流子 (るこ)
八百万の神の一柱、水たまりを司る「水たまりの神」。少女の姿をしている。水色の髪をセミロングに整え、袖広の白い衣装を身にまとう。やさしく誠実な人柄で、配神限定のデスゲームにも否定的。当初は弱い力しか持たない自分一人で戦おうとしており、依代を巻き込むつもりはなかった。しかし依代となった戎皆人が自分のために願いを使ったことをきっかけにして、彼と共に戦うことを決意する。自らの肉体を水に変化させる「液状化」の能力を持ち、この能力を使うことで敵の能力を無効化することが可能。防御に秀でているが、攻撃力は低く、決定打に欠ける。当初は液状化の能力しか持っていなかったが、ほかの神々を倒すことで、磁気でカードをあやつる「分割」や、身体能力を強化する「増強」の能力を得ている。戎と一神同体化すると、バグのせいで流子の肉体をベースに、戎の意思が入り込むという、ほかの神々とは逆の状態となる。
花別 (はなわけ)
八百万の神の一柱、磁石の力を司る「磁石の神」。少女の姿をしている。キャスケット帽をかぶり、明るめの茶髪をショートカットに整えている。快活な性格をしており、一人称は「僕」で、語尾に「っス」と付けるしゃべり方をする。ハコフネ神議会を敵視しており、彼らに対抗するための協力者探しを行う。その一環で、戎皆人と流子を見つけ、彼らと行動を共にするようになる。依代は天降り(ダウンロード)直後にコンビ解消され、単独で行動していた。ハコフネ神議会のことをかなり深く知っている様子だが、配神限定に警告されてしゃべれずにいる。また依代とペアになっていないにもかかわらず、神の持つ力を無制限に行使するなど謎が多い人物。磁石の神であるため、磁力の力を自在にあやつる力を持つ。その強さはクレジットカードの神の力を遥かに上回り、分割の能力を事もなげに無効化するほど。また通信制限無制限のバグ持ちであるため、依代の力を使わずとも自在に能力を振るうことができる。このほか、ほかの神から得た能力として、周囲を凍らせる「凍結」、銃火器の弾を無補給で撃ち続ける「無制限銃撃」の能力を所持している。
黛 涼介 (まゆずみ りょうすけ)
タクシー運転手の男性。年齢は29歳。責任感が強く、面倒見のよい性格をしており、配神限定に巻き込まれたあと、自分にできることだからと食料や生活物資の配達を行っている。昔から何かと「当たり」を引く体質で、勘が当たることも多いが、当たり屋などのトラブルに巻き込まれる確率も高い、トラブル誘因体質。戎皆人たちと日本刀の神たちの戦いに遭遇し、流されるまま戎に協力した。神のダウンロードをしておらず、一人で活動していたが、模倣の神との戦いでは戎を助けるため花別と契約。「そいつ(戎)の周りの時間を止めろ」と願いを言い、戎の命を救った。その後は花別と一神同体化し、彼女の戦闘を助けている。
委員長 (いいんちょう)
高校2年生の女子高校生。ロングヘアで、眼鏡をかけている。戎皆人のクラスメイトで、クラスの委員長を務める。元々は家が少し裕福なこと以外は平凡な女子高校生だったが、学校の不良に目を付けられ、万引きの冤罪をかぶせられ、それをネタに脅迫されていた。周囲に相談もできず、いじめがエスカレートしていくうちに、偶然、インストールしていた配神限定のアプリケーションに救いを求める。願いは「助けてください」だったが、助け方を指定していなかったため、契約したクレジットカードの神は彼女をいじめていた不良を惨殺。目の前で不良が惨殺されたことに強い後ろめたさを感じ、同時にクレジットカードの神の行動に複雑な思いを抱くようになる。デスゲーム開始直後に、戎と遭遇。戎には以前、いじめから救ってもらったため、戦うのを拒否していたが、クレジットカードの神に一神同体化され、肉体を乗っ取られてしまう。敗北後は、戎をクレジットカードの神の攻撃からかばい、彼に感謝を告げて死亡した。
クレジットカードの神 (くれじっとかーどのかみ)
八百万の神の一柱、クレジットカード(磁気カード)の力を司る「クレジットカードの神」。男性の姿をしている。袖が異様なほど長いフード付きパーカーを羽織り、長いマフラーを身につけている。傲慢かつ自己中心的な性格をしており、依代である委員長も道具としか見なしていない。一神同体時も、委員長の体を乗っ取るようにして扱う。リスクを嫌い、デスゲームでは自分より弱い者を狙って攻撃を仕掛ける。磁気をあやつる能力を持ち、クレジットカードを磁気を使って高速で打ち出す「分割」という能力を持つ。分割は人体程度なら切り刻む高い威力を持ち、さらに長い袖の服を着ることで攻撃を見切られにくくしている。攻撃力は高いが、より強い磁力を使われると攻撃を無効化されるのが弱点。デスゲーム開始直後に、戎皆人と流子を襲う。分割の能力を駆使して追い詰めるが、その能力を見切られ敗北した。敗北後も不意打ちして戎を殺そうとするも、委員長に邪魔されて失敗。委員長が死んだことで、クレジットカードの神も失格となり死亡する。彼の分割の能力は流子に統合され、のちの戦いでも活躍している。
合金の神(複製) (ごうきんのかみ)
複製の神が作り出した合金の神(真)の複製品。本体と微妙に姿が違い、本体が髪をサイドテールにしているのに対し、ストレートロングに髪を伸ばしている。本体に比べ能力は劣化しているが、合金を自在にあやつることができ、花別に対抗するためアルミ合金を武器にして戦った。戎皆人に一度は倒されるが、戎と模倣の神との戦いで、再び模倣の神に作られ現れる。その際には花別の偽物も作られたうえに、数万体規模で展開したため、数で圧してほかの参加者を圧倒する。
日本刀の神 (にほんとうのかみ)
八百万の神の一柱、日本刀の力を司る「日本刀の神」。女性の姿をしている。黒い髪をポニーテールにセットし、巫女服を身にまとう。火炎放射器の神は姉で、コンビを組んで戦う。デスゲームへの参加は2回目で、前回も姉と共に戦い抜き、神々の戦い「選別」を生き残っている。実の姉妹にもかかわらず、「日本刀」と「火炎放射器」と共通点がない能力を司るなど謎が多く、これらの部分への言及は配神限定の警告対象となっている。能力は「高速切断」で、近づいた相手を問答無用で叩き斬る、高い戦闘能力を持つ。弾丸なども叩き斬るため、防御能力としても優秀。ただし日本刀を使わなければならないため、花別の磁力とはすこぶる相性が悪い。
火炎放射器の神 (かえんほうしゃきのかみ)
八百万の神の一柱、日本刀の力を司る「火炎放射器の神」。女性の姿をしている。セミロングヘアで、巫女服を身にまとう。日本刀の神は妹で、コンビを組んで戦う。デスゲームへの参加は2回目で、前回も妹と共に戦い抜き、神々の戦い「選別」を生き残っている。実の姉妹にもかかわらず、「日本刀」と「火炎放射器」と共通点がない能力を司るなど謎が多く、これらの部分への言及は配神限定の警告対象となっている。能力は「連続放射炎」で、強力な威力を持つ火炎放射器を無制限に打ちまくることができる。
合金の神(真) (ごうきんのかみ)
八百万の神の一柱、合金の力を司る「合金の神」。妙齢の美女の姿をしている。サイドテールの髪型で、右目部分に眼帯を付けている。複製品の合金の神(複製)と似ているが、雰囲気や姿に差異があるため区別は容易。冷静沈着な性格をしており、誰にでも敬語で話す上品な振る舞いをしている。「金属操作」と「合金化」の能力を持ち、飛んできた弾丸を生成し直して打ち返すなど、金属製の武器をあやつる者にとっては天敵にも等しい能力を持つ。また花別と同じく「通神無制限」のバグを持ち、能力を無制限に使用することが可能。複製の神との戦いでは、流子たちと共同戦線を張るも、複製品の攻撃を受けて死亡した。
ログ
戎皆人の前に姿を現した國ツ神(くにつかみ)の一柱。黒い髪を長く伸ばし、煽情的な服を着た美女の姿をしている。配神限定の管理を担当しており、その運営のため奔走している。戎と流子たちバグ組にも注意を払っており、彼らが自分の提案を跳ねのけた際には、バグ組を討伐した者に「選別ゲーム免除特典」を与えると宣言し、戦いを煽った。神々の戦い「選別」の後半では複製の神の暗躍にいち早く気づくも、すでに取り返しのつかない状況となっており敗走。命からがら戎たちに合流し、彼らに真実を伝えて選別を終わらせる方法を教える。
複製の神 (ふくせいのかみ)
八百万の神の一柱、複製の力を司る「複製の神」。ピンク色の髪をした少女の姿をしている。自分たちを騙し、良いようにあやつってきた國ツ神たちを強く憎んでおり、彼らに復讐するために暗躍している。そのため叶えたい願いは「逆襲」で、己の力を使い、デスゲームに混沌をもたらす。持っている能力は「複製(コピー)」で、対象の体の一部を取り込むことで、その対象の能力が使える複製品を作ることができる。複製品は本体に比べて能力が劣るが、同時に複数作ることが可能で、数の優位で戦うことが可能となっている。また複製の神はバグを持つ合金の神(真)を複製することで、配神限定のシステムを誤認させ、ハコフネ神議会にも混乱をもたらした。
集団・組織
ハコフネ神議会 (はこふねしんぎかい)
配神限定を運営する組織。八百万の神々の上位に位置する「國ツ神」、その中でも主だった者たちが中心となって運営している。「ハコフネ」と呼ばれる巨大な木造の宝船を本拠地としており、そのホログラムをデスゲーム会場の上空に浮かべている。多すぎる八百万の神々を、文字通り「選別」することを目的として、配神限定をばらまき、デスゲームを開催する。彼らの情報は機密情報扱いされており、八百万の神々は彼らのことを知りつつも配神限定に警告され、詳細を話すことができない。また國ツ神はゲームの管理は行っているが、参加は制限されている。そのため、國ツ神は八百万の神々をはるかに超える高い能力を持つが、基本的に自衛以外でその力を振るうことはできない。
その他キーワード
配神限定 (はいしんげんてい)
願いを叶えるアプリケーション。八百万の神々から使用者にピッタリな一柱が天降りされて、使用者の願いを叶えるとされる。誰にでも開けるアプリケーションではなく、選ばれた人間にしか使えない「願いを叶えるアプリ」として噂になっている。実は願いを叶える代償として、天降りした神々と契約し、「選別」と呼ばれる神々の戦いに参加しなければならない。選別は「神無月」とも呼ばれる10月いっぱい行われ、その中で生き残りをかけて戦うのがルールとなる。敵対する神を倒せば、限定的ながらその能力を得られる。ただし、所持する能力が増えれば増えるほど、処理が大きくなり、神に負担を掛けるデメリットが存在する。また配神限定は「配神者」と呼ばれるシステムによって管理されており、神々が必要以上に情報を漏らした場合は警告を行う。警告に従わなかった神は、処分対象となって殺される。配神限定には、一神同体化や能力の管理などさまざまな機能が存在する。また一度、天降りされたスマートフォンは性質が変化し、ふつうの方法では破壊できなくなる。
一神同体 (いっしんどうたい)
配神限定の機能の一つ。人間の体を「依代(よりしろ)」として、神と人間が融合する機能で、一神同体化することで神の能力の制限が取り払われる。通常は人間の体を神の意思が動かすようにプログラムされているが、一部の者たちはバグで逆に神の体に人間の意思が入り込む形になっている者たちがいる。一神同体化は、極端にダメージを受けて容量を大幅に消耗すると強制的に解除される。また「通信制限無制限」のバグを持っている者たちは、一神同体せずとも能力を無制限に使用することができる。
容量 (ようりょう)
八百万の神々に設定された制限。神々の活動限界を数値化して示したもので、これが尽きると神は敗北と見なされる。能力の使用や敵対者の攻撃を受けることで容量は減っていくが、体力と同じで休息すれば回復することができる。容量は個人差があり、一定ではない。また敵対者を倒せば倒すほど、容量は増えて神の力も強力となる。