フィーメンニンは謳う

フィーメンニンは謳う

日々忙しく生活にゆとりのなかった少女が、1人の妖精を保護し、妖精の世界へと赴く。次々にやってくる敵から妖精を守り、妖精の世界を魔の力から守るために戦うファンタジー。平成2年「花とゆめ」9号から平成3年23号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
フィーメンニンは謳う
ふりがな
ふぃーめんにんはうたう
作者
ジャンル
エルフ・オーク
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概要・あらすじ

勉強や、生活のためのアルバイトに忙しい日々を送っている奨学生リーナは、いつも勉強でトップの成績を収めている同級生ユリウスに過剰なライバル心を抱いていた。そんなある日、彼女は花畑の脇道で小さな女の子ミルッヒを保護する。それからというもの、リーナの周りでは不思議な事ばかりが起き始める。困ったリーナは、ミルッヒを警察に引き渡そうとするが、その子はリーナ以外の誰の目にも見えていないことが判明するのだった。

そんな折、ミルッヒを探しに来たという妖精シルヴィが突然現れる。彼は、ミルッヒが妖精界の姫だと説明し、妖精界へ連れて帰ろうとするが、シルヴィの信ぴょう性に欠ける言動に、リーナはミルッヒを引き渡すことができずにいた。

その時、偶然通りかかったユリウスに、ミルッヒの姿が見えていることが発覚。リーナは不本意にもユリウスを巻き込み、ミルッヒの行く末を見守るためにシルヴィと共に妖精界へと旅立つ決意をするのだった。

登場人物・キャラクター

リーナ

勉強とアルバイトに忙しい奨学生。いつもぎゅっとひっつめたヘアスタイルは彼女の余裕のない精神状態を表している。非現実的なことは信じないタイプだが、ある日女の子を保護し、妖精界へと向かうことになる。

ユリウス・ブランデッド (ゆりうすぶらんでっど)

リーナと同じ学校に通っている同級生の男子。いつもテストではトップをとっていて、リーナからは必要以上に敵視されている。花や生き物など自然を愛する一方で、人一倍不器用なうえ感情表現が苦手。密かにリーナを大切に思っている。

シルヴィ

妖精族の森と花園を守護する、森の人と呼ばれる一族の青年。女王を守るために、人間界にいる聖なる乙女を必要としてやってきた。美しい見た目とは裏腹に言動には多少荒っぽいところがあるが、基本的には心根の優しい人。

ミルッヒ

500年に一度生まれるという妖精族の女王。妖精界のピンチを救うため、より精神的に強い女王に育つ必要があった。はじめは言葉を発することもできないが、次第にリーナからいろいろな感情を吸収し、成長、変化が現れる。名前はリーナがつけたもので、ドイツ語でミルクの意味を持つ。

ラミアドナ

金と赤の瞳を持つ魔物の女王。自分の瞳と同じ赤い色の花を嫌う。もともと日の光に弱く、常に薄暗い部屋で過ごしていた。特殊な力を持っており、他人には見えないものが見えることから、家族からも恐れられていた。周りの者の心の醜さを知った彼女は、そんな彼らを魔術を使ってすべて魔物に変え、自らも魔と化してしまう。

フェロール

ラミアドナの腹心。ラミアドナが魔になる前から家に仕える使用人だった。常にラミアドナを想い、周りが彼女を恐れようとも、フェロールだけは変わらずに接してきた。そんなラミアドナの術により、彼も魔となる。そして彼女のそばに仕え、ラミアドナの思うがままに行動している。

オージーン

妖精族以外で地図球を作ることができる唯一の人で魔術師。女好きである。リーナたちがラミアドナに追われていることを知り、無償での協力を申し出る。

ファー

いい男が大好きな妖精の女の子。商人に捕らえられ売られていたところをリーナたちに助けられてから、行動を共にすることになる。彼女のおかげで、ミルッヒが何者なのか、リーナが本当の状況を知るきっかけとなる。

ロルフ

ユリウスの父親。妻エミーリアが姿を消してからというもの、その寂しさ故に酒をあおるようになり、荒んだ生活を送るうちに、周囲に対して疑心暗鬼になっていく。

エミール

リーナの父親で、エミーリアの兄である。体が弱く、床に臥せていることが多い。とある事情により、晩年は笑顔をなくしてしまった。その後に短い生涯を終える。

エミーリア

ユリウスの母親で、エミールの妹である。2人目の子供を身ごもっていたが、体に負担がかかり衰弱していたため、とある場所へ姿を隠す。

おばあさん

妖精界でお菓子の家に住んでいる魔女。おじいさんを亡くしてから、素直になれない性格が災いして、誰にも相手にされなくなってしまった。その寂しさから魔女になってしまったが、実際はただ誰かに相手をしてほしかっただけの心の優しい老人である。

イバラ姫 (いばらひめ)

嫌なことばかりの毎日に嫌気がさし、すべてを忘れるまで永遠に眠っていたいと思っている女性。毒を持つイバラを操り、近づく者を攻撃する。その毒にやられた者は、死なずに何百年でもただひたすらに眠り続け、年をとっていくのだという。

エリサ

森の中で倒れていたところをリーナたちによって助けられた女性。王様のフィアンセだが、6番目の兄に密かに想いを寄せている。王様との賭けにより、言葉を話さずに棘のある草で編み物を続けている。

王様 (おうさま)

エリサに賭けをもちかけ、結婚を申し込んだ男性。ラミアドナに永遠の命をもらうために、自ら魔物となり、魔物を妖精界にはびこらせるために尽力する。

ビー

ラミアドナに仕える魔物。もとはラミアドナがフェロールからプレゼントされた子猿だった。魔になる術により、彼もまた魔を帯びた者に変わってしまった。しかし心はもとのまま残っており、ミルッヒとも仲良くなっていく。

ドラゾー・ドラリン (どらぞーどらりん)

妖精界で「虫」と呼ばれる生き物。ドラゾーはドラゴンと象を合わせたような、ドラリンはドラゴンとキリンを合わせたような見た目である。どちらも花が大好物で、花の匂いに惹かれて動く性質を持っている。

場所

妖精界 (ようせいかい)

花園を中心に成り立っている妖精の住む世界で、もともとミルッヒはこの世界の住人。ところどころ人間界と接点があり、互いの世界に影響しあっている。

花園 (はなぞの)

妖精界の中心であり常に移動している聖地。聖なる力、命の源である花園が存在する限り、妖精界は善い生命で満ち溢れるとされている。しかし、接点を持つ人間界からの悪い影響により、数年前から花園の花が枯れ始めている。

その他キーワード

フィーメンニン

グリム兄弟が、民話を収集して童話集を作った時に、たくさんの昔話を聞かせて協力したとされるおばあさんのこと。総じて、おとぎ話を聞かせてくれる人のことをいう。

妖精族 (ようせいぞく)

妖精界にある森に囲まれた花園で暮らし、その花園の花から生まれるという一族。そして花を守り育て、女王の誕生を待つ。空の中を瞬き1つのうちに跳ぶことができる。

地図球 (ちずきゅう)

森の人が作ったお守りと呼び合って、現在位置と目的地を示す地図のようなもの。シルヴィが持っていて、一行はこれを頼りに目的地へと向かうことになる。

森の人 (もりのひと)

花園を取り囲む森に住む者。妖精の花園と森を守る番人たる一族。彼らが作るお守りは、様々な効力を持っており、地図球に反応するのもその機能の1つである。

妖精族の女王 (ようせいぞくのじょおう)

500年に一度花園の中心にある純白の蕾から生まれる。聖なる乙女たちの善き心、慈しむ心、清らかな心を読み取り、記憶して育っていく。子供の姿から通常100日前後で完全に成長を遂げる。その瞬間には世界中を包み込む光を放ち、世界の悲しみ苦しみをすべて幸福に変え、魔物をすべて一瞬で消し飛ばしてしまうと言われている。

聖なる乙女 (せいなるおとめ)

妖精族の中でも最も清らかであると言われている存在。彼女らが、生まれたばかりの女王を清く、善く、穢れなく育て、完全な成長へと導く。しかし花園の花が枯れ始めていることの影響で、現在は女王を育てる力が失われている。

成長する石 (せいちょうするいし)

魔であるラミアドナの弱点になる聖なる光の塊。これのおかげで、オージーンは以前ラミアドナから逃げることができた。この石が熟すには通常10年の歳月を要するが、この石の未来を引き寄せることで1か月程度に早めることが可能。しかしその場合は、代償としてこの石が熟した時、誰かの過去を目の前に引き戻すことになるという。

バラ

ラミアドナの城の周りにたくさん咲いている花。ラミアドナはこれを通して世界中の漂う邪気や魔を吸い取り、自分の養分にしている。言わばラミアドナの体の一部である。

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