概要・あらすじ
山村で退屈を感じつつ、穏やかに暮らしていたカズチは、神託によって神都を守る神防人に選ばれる。神防人を輩出した村は税が減免されることもありカズチは神防人として神都に赴く。しかし、神都ではカズチの想像とは違い、マガツモノと呼ばれる異形の怪物との戦いが繰り広げられており、カズチも一兵卒として軍に組み込まれる。
極秘任務で神都とマガツモノの生息範囲であるマガツクニの境目である千引きの門を越えマガツクニへと足を踏み入れたカズチは、そこでマガツモノのなかでもとりわけ特異なヒトマガツと接触する。やがてカズチは肉体を失ったヒトマガツと意識を共有するようになり、マガツモノの正体や、かつて世界が滅亡しかけた人類とマガツモノの戦いの歴史などについて知るため、ヒトマガツと共に、最初にマガツモノが現れたとされるツクバの山を目指す。
登場人物・キャラクター
カズチ
神託によって神都を守る神防人に選ばれた少年。神都へと赴き、人類の最終防衛線である千引きの門をめぐる戦いへと身を投じる。幼少時より仇敵と教え込まれていたマガツモノに対しても理解を示し、無害なマガツモノは極力殺したくないと考える優しい性格の持ち主。人に囚われていたヒトマガツに情けをかけたことにより、解き放たれたヒトマガツと意識を共有するようになる。 これによりマガツモノへの偏見を失った彼は、同胞との再会を願うヒトマガツとともにマガツクニを探索し、やがて、初めてマガツモノが現れたとされるツクバの山へと足を踏み入れる。そこで彼は人とマガツモノの戦いの全てを知り、マガツモノは人類の生み出した“穢れ”であること、また自分の記憶が兵士になる際に埋め込まれた偽物であることを知って絶望するが、心を通わせたヒトマガツと共にすべてのマガツモノを停止させ、戦いを終わらせる。
イヅノ
千引きの門で軍務にあたる女性軍人。階級は少佐。高級軍人の出で、人とマガツモノの戦いについてわずかに知っている人物。ヒトマガツと融和し、世界の真実を求めるようになったカズチになかばさらわれるようにマガツクニへと連れ出され、行動を共にする。勇敢、豪胆な性格をしており、マガツクニへ無理やり連れだされた時も、それを功績をあげる好機と考えていた。
ヤヒコ
カズチと同じ隊の一員。はっきりしないことが嫌いな性分で、含みを持たせた言い方をする人間に食ってかかることが多い。マガツモノへの敵意は強くカズチと共にヒトマガツの回収を命じられた時は、自分が助かるためにヒトマガツの抹殺を口にした。カズチがマガツクニへと逐電した際は、連帯責任を避けるため他の隊員と共に不承不承彼を追う。
ヒトマガツ
マガツモノの生息域であるマガツクニに住む神都からは反逆分子とされている人間たちに囚われていたマガツモノ。その目に感情を読み取ったカズチにケガを治してもらったことで彼と通じ合い、肉体を失ったヒトマガツは「同胞と再会する」、カズチは「世界の真実を知る」という目的のために共闘する。 ツクバの山においてカズチと融合し、世界を滅ぼさんとするマガツモノたちを停止させた。
カガセオ
人の世を捨てマガツモノの地であるマガツクニに住んでいる集団の頭目。神都の人間からは反逆者と見られている。全身に隈取のような模様を入れた姿をしておりカズチと同様にマガツモノと交感することができる。マガツクニの地下に眠っていた巨大なマガツモノ、テツマガツを制御し、彼らの一族に伝わる“大裁き”と呼ばれる破滅の時を回避しようとしていた。
ククリ
ツクバの山に住む、自分たちを高天原の民と呼ぶ一族の女性。世間ではすでに失われた高度な科学技術を持っているが、マガツモノと人類の戦いの真実を知り、また、あまりに閉鎖的な高天原の民に失望し、その状況を打開してくれる存在の到来を密かに待ち望んでいた。
ヤゴコロ
高天原の民を指導している存在。民からは神格化された尊敬を集めているが、実体は生きた人間の脳を利用して動く生体コンピュータで、その中枢にはククリの想い人であるアチの体が使用されている。ヒトマガツの持つ交感能力により暴走を起こし崩壊・死亡するが、最期に人としての意識を取り戻し、崩れゆく高天原にククリと2人残る。
タニグク
神都にてマガツモノとの戦いにあたる軍人。マガツモノの抹殺を最優先と考える冷酷な性格をしており、兵士の命を軽んじた振る舞いや言動を繰り返す。名家のコネクションで自分の上官となったイヅノを快く思っておらず、彼女にヒトマガツ捕獲作戦失敗による損害の責任を押し付け、権限を奪う。
サキクニ婆 (さきくにばあ)
カガセオが身を寄せている一族の長老。具体的な年齢は明らかにされていないが、周囲の人間の口ぶりから100歳を越えていると思われる。人間とマガツモノの戦いの真実を知る人物の1人。人類がマガツモノによって生存か滅亡かを決められる“大裁き”の時が来ると思っており、マガツモノと交感できるカガセオに期待を寄せている。
フツヌシ
高天原の民の長老にあたる人物。ヤゴコロを絶対視しており、その判断を盲目的に受け入れ、またそれを他の民にも強要する。ヒトマガツによってヤゴコロが暴走してカズチ達の抹殺を命じた際は、それまで客人として扱っていた彼らを即座に殺そうとした。
サルタ
マガツクニに住み着いている一団を率いている老人。本来ならば反逆者と見なされる立場だが、軍の人間ともつながりを持っており、車輛の横流しを受けている。再び黄泉比良坂が開かれたことによるテツマガツ復活の予兆を感じとりサキクニ婆に真実を明かすよう求める。
その他キーワード
マガツモノ
『マガツクニ風土記』に登場する用語。千引きの門を超えた先にあるマガツクニに住む人類の天敵とされる存在。かつて黄泉比良坂より現れ、人類を追い詰めたが、英雄に率いられた人類の反撃にあい黄泉比良坂の向こうに追い返されたと言われている。しかし実際は現在も大小さまざまなマガツモノが生息しており、人類と戦いを繰り広げている。 その大きさや外見、知能によっていくつかの種類にランク分けされており、なかでも“テツマガツ”と呼ばれるものが目覚めれば対抗手段はないとされている。
神降り (かみくだり)
『マガツクニ風土記』に登場する用語。神防人の兵士たちが恐怖や怒りなどによって、己の力を解放すること。これによって元が一般人であっても強靭な兵士となりマガツモノに対抗することが可能になる。技術によって神降りをおこなうのが通例となっていたが、もともとシャーマン的な踊りの才能を持っていたカズチは初めてマガツモノの襲撃を受けた際、自分でも気づかないままに神降りを発動させた。
黄泉比良坂 (よもつひらさか)
『マガツクニ風土記』に登場する用語。人のいる世界とマガツモノの住まう世界をつなげる時空の歪み。かつて、ここからマガツモノが襲来したことにより、人類は滅亡寸前まで追い詰められ、やがて反撃に転じてマガツモノを黄泉比良坂へ追い返したとされている。しかし、黄泉比良坂の実体は、かつて人類の作り出した“穢れ”と呼ばれるものを彼方の世界に追いやるために作られた巨大な装置であり、その結果マガツモノをこの世界へと呼び寄せることになってしまっていた。
クレジット
- 原作
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