マクロスΔ外伝 マクロスE

マクロスΔ外伝 マクロスE

TVアニメ『マクロスΔ』を原作とするコミカライズ作品。宇宙の移民惑星を主な舞台に、金城カイトとピリカ・ポリワノフの活躍や、イワン・ツァーリを交えた三角関係を描くSF作品。時系列は『マクロスΔ』本編よりも数年前で、舞台や登場人物も異なっている。「マガジンスペシャル」2016年6号から2017年2号にかけて連載された。

正式名称
マクロスΔ外伝 マクロスE
ふりがな
まくろすでるたがいでん まくろすえくすとら
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
KCデラックス 週刊少年マガジン(講談社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

西暦2062年の宇宙。銀河各地で種族を問わず発生したヴァールシンドロームが、人類のあいだで深刻な問題となっていた。移民惑星の一つピプレでも、寒冷地に棲む大型生物がこの病気を発症し、凶暴化した状態で温暖な地域に進出し始めていた。そんな中、ピプレの警備を担当する星間複合企業体ケイオスは、「歌」によるヴァール鎮静化実験を立案。ピプレ中央基地の可変戦闘機部隊「エコー小隊」の新米パイロットとなった金城カイトは、アイドルグループ「スローンズ」のメンバーであるピリカ・ポリワノフ達の護衛を務める事になる。ピリカの大ファンでもあるカイトは、彼女の前で見栄をはってしまうものの、危険な戦場で真剣に歌う彼女を見て心を打たれる。自分の小ささを恥ずかしく思ったカイトは、自身を偽る事をやめて彼女を守るのにふさわしい男になる事を決意する。こうしてカイトとピリカは、人類の存亡が懸かった新たな戦いに身を投じていく。その一方で、謎の科学者であるイワン・ツァーリの暗躍が始まっていた。

第2巻

プロジェクト・スローンズの任務を進める中で、ヴァールシンドロームで暴走した鰻蟲は、意図的に人類のもとに誘導されていた事が判明する。そんな中、ピリカ・ポリワノフイワン・ツァーリと再会し、金城カイトはイワンがピリカの父親である事を知る。さらに鰻蟲暴走の原因がイワンにあった事を知ったカイト達は、ヴァール化した生物による宇宙征服を目論むイワンを止めるため、彼と戦闘を開始する。超時空生物バジュラをあやつり、ピリカを連れ去ろうとするイワンから、カイトは何とかピリカを守り抜くが、プロジェクト・スローンズに重要なレドームを奪われ、ピリカとエコー小隊メンバーが負傷してしまう。そんな中、レドームを解析し、ヴァール鎮静化の秘密を知ったイワンは、自分の歌にヴァール活性化の力があると知り、さらなるヴァール化を起こすため、恐るべき計画を実行に移す。イワンは超時空要塞マクロスEを乗っ取り、鰻蟲をあやつって首都を襲撃。カイトとピリカはイワンを止めるため、そしてそれぞれの因縁に決着をつけるため、空前絶後のラストステージに挑むのだった。

登場人物・キャラクター

金城 カイト (きんじょう かいと)

ケイオスのピプレ支部エコー小隊に入隊した、新人パイロットの青年。パイロットとしての資質に優れており、天才パイロットを自称している。就職活動に失敗して仕方なくケイオスに入社したが、元は芸能事務所への就職を目指していた。このためケイオスのパイロットとしての意欲は低く、遅刻や欠勤などを繰り返し、ブリーフィングもよくサボっている。 アイドルグループ「スローンズ」、とりわけピリカ・ポリワノフの大ファンでもある、重度のアイドルオタク。当初はピリカに好かれようと見栄をはっていたが、ピリカの姿勢や歌に心を打たれ、彼女の護衛にふさわしい本当の天才パイロットを目指すようになる。スローンズメンバーの護衛としてプロジェクト・スローンズに参加し、ピリカとの関係を深める中で、パイロットとしてだけでなく、人間として徐々に成長していく。 スローンズの護衛になってからもアイドルオタク活動には熱心に取り組んでおり、その中でイワン・ツァーリと出会い、互いの正体を知らぬままなかよくなる。イワンと再会し正体や目的を知ったあとは、彼を止めるために戦うようになる。

ピリカ・ポリワノフ (ぴりかぽりわのふ)

アイドルグループ「スローンズ」のメンバーの少女。ボーカルとギターを担当している。プロジェクト・スローンズで金城カイトに出会い、彼の機体に搭乗しコンビを組む。ライブなどのステージ上ではアイドルの顔をしているが、ステージを降りた途端、ファン相手でも無愛想になる「塩対応アイドル」として知られている。しかし、歌とそれによる任務には強い熱意を抱いており、任務中に危険な状況でも大胆な行動を取る事がある。 幼い頃に父親のイワン・ツァーリに捨てられた過去を持ち、母親の葬儀にも帰らなかった彼を恨んでいる。しかし、イワンとの思い出は大切に思っており、唯一の肉親でもあるイワンには未練がある。またイワンに自分の存在を認めさせるために、歌手として有名になって、自分の歌を銀河中に広める事を目指している。 イワンとの再会後はカイトと共にイワンと敵対し、父親の野望を止めるために戦うようになる。イメージカラーがピンクであるため、ピリカ・ポリワノフのファンは「ピンキー」と呼ばれている。実はピーナッツアレルギー。出店で売られている小型鰻蟲の「グソクン」がお気に入りで、ペットにして連れ歩いている。

イワン・ツァーリ (いわんつぁーり)

アイドルグループ「スローンズ」のライブで、金城カイトが出会った謎の男性。ピリカ・ポリワノフのファンで、彼女のプライベート情報や生まれた時間など、普通のファンでは知らないような情報を知っている。正体はピリカの父親で、生物学を研究するマッドサイエンティストであり、国家転覆を狙うテロリストでもある。科学者として活動する時は仮面をかぶっており、同じ研究チームの部下達からは「主任」と呼ばれている。 もともとは生物とのコミュニケーションについて研究をしていたが、音波で生物兵器をあやつる実験や、ヴァールシンドロームで暴走した生物をあやつる研究に没頭していく。さらにはあやつった生物を怪獣兵器として使い、銀河の支配者になろうとしている。 昔は家族思いの父親で幼いピリカからも尊敬されていたが、妻子を捨てて家を出て行ったため、ピリカには恨まれている。しかしピリカの事は娘として愛しており、ピリカのファンのふりをして彼女の活動を見守っていた。その中でカイトと知り合い、互いの正体を知らないままなかよくなるが、互いの正体がわかったあとは敵対するようになる。

ゾフィーティア・エルロ (ぞふぃーてぃあえるろ)

エコー小隊の女性パイロットで、隊長を務めている。厳しい性格だが面倒見がいい。よく遅刻や違反行為をする新人の金城カイトには手を焼いている。カイトに対して厳しい態度を取る事もあるが、彼のパイロットとしての資質は高く評価している。

ジョナ・ゴールド (じょなごーるど)

ケイオスのピプレ支部フォックス小隊の隊長を務める男性。エコー小隊隊長のゾフィーティア・エルロと仲がよく、互いに任務で協力する事が多い。よくコーヒー牛乳を飲んでいる。

エルマ

ケイオスのピプレ支部に協力している生物学者の女性。頭にバンダナを巻き、首元にはヘビのような生物を乗せている。「銀河クジラの回遊と生涯」など有名な論文も発表している。主に原生生物のヴァールシンドローム発症現象について研究している。同じく生物研究者であるイワン・ツァーリの悪評も知っている。昔は歌手を目指していた。

鷲崎 (わしざき)

エコー小隊のパイロットを務めている黒髪の青年。金城カイトよりも年下だが、小隊のパイロットとしては先輩にあたる。意識が高くまじめな性格。昔はハッカーをしていたため捕まった事がある不良で、少年教化院に収監されていた。18歳の頃に卒院し、その後エコー小隊に入隊した。

ブラウ・ブルーム (ぶらうぶるーむ)

アイドルグループ「スローンズ」のメンバーの少女。ボーカルとドラムを担当している。明るく元気な、スローンズのムードメーカー的存在。しかしプロジェクトスローンズの任務の中で、戦場に出て歌う事には恐怖心を抱いている。歌にフォールド波を持つためアイドルにスカウトされたが、実際の活動内容は危険な任務も多いため、理想と現実の違いに悩むようになる。 このような悩みからスランプに陥り、ヴァールシンドロームを活性化させるほどのマイナスのフォールド波を発してしまう状態になってしまう。これによる失敗で自信をなくしていたが、仲間やファンの存在で自信とやる気を取り戻す。

シノブ・バンバー (しのぶばんばー)

アイドルグループ「スローンズ」のメンバーの女性。年齢は18歳。ボーカルとキーボードを担当している。冷静沈着な性格で、メンバーのフォローに回る優秀さを持つ。長い黒髪の大人びた雰囲気を持ち、ダンスが得意。実は忍者の血を引いており、圧倒的な身体能力を持つ。

キロコ

イワン・ツァーリの研究チームに所属している科学者の男性。イワンの研究や思想に心酔しており、彼を銀河の君主とするために全力で協力している。

ユリヤ

イワン・ツァーリの研究チームに所属している科学者の女性。一流のピアニストで歌手でもある。

ラムラ・サイード (らむらさいーど)

星間大企業「イプシロン財団」に所属する男性。グリーゼ星系を担当している。ヴァールシンドロームのコントロールに関する情報を得るため、イワン・ツァーリと裏で手を組み、出資や自治政府への隠蔽工作などによって、イワンの研究を支援している。

集団・組織

エコー小隊 (えこーしょうたい)

ケイオスが惑星ピプレに設けたサービス拠点、ケイオス・ピプレ支部に属する、可変戦闘機部隊。金城カイトが新入パイロットとして入隊した。ゾフィーティア・エルロが隊長を務める。同じくピプレ支部の可変戦闘機部隊である「フォックス小隊」「ゴルフ小隊」とは、共に任務にあたったり、協力し合ったりする事が多い。

スローンズ

売り出し中のインディーズ・アイドルグループ。メンバーはピリカ・ポリワノフ、シノブ・バンバー、ブラウ・ブルームの三人。普通のアイドル活動のほか、プロジェクト・スローンズの要として任務に参加している。主にヴァールシンドロームを鎮静化する歌の力で、ヴァール化した生物を鎮静化させる活動を行っている。

ゼルガル重工 (ぜるがるじゅうこう)

星間大企業「イプシロン財団」傘下の民間企業。イワン・ツァーリを主任とする研究チームが裏で取引をしている大企業でもある。イワンの生物を音波であやつる研究に協力し、出資している。軍事産業への影響力が強く、惑星ピプレのインフラの要ともなっているため、自治政府もうかつに手を出せない。

場所

ピプレ

金城カイト達が住む、銀河辺境の移民惑星。2062年に入植15周年を迎えている。自転と公転の関係で惑星の片面が太陽に照らされているため、砂漠地帯の「熱極」、人類が住む「温暖地帯」、原生生物が棲む「寒冷地帯」に大きく分かれている。寒冷地には鰻蟲などの原生生物が棲んでいるが、ヴァールシンドロームの影響で人類の住む温暖地帯まで侵入する事がある。 のちに鰻蟲の暴走は、ヴァールだけでなくイワン・ツァーリによる誘導音波が原因である事が判明する。

マクロスE (まくろすえくすとら)

惑星ピプレにある超時空要塞(マクロス艦)。初代超時空要塞マクロス「SDF-1マクロス」の完全コピーであり、余剰空間には民間人用市街も形成されていた。人類がピプレに宇宙移民航海する際に使用されて以来動いた事はなく、移民後は発電施設として登録され、実質的に廃艦処分済みとなっていた。ピプレへの移民直後、通信には強力なフォールド波が必要であったため、フォールドアンプと似たような装置「超長距離フォールド通信モジュール」を搭載している。 また強力なピンポイントバリアの展開も可能で、それを腕部分に集束させる事で強力な攻撃もできる。イワン・ツァーリがイプシロン財団経由でピプレ自治政府から買い取り、首都襲撃のために再び動き出す。

その他キーワード

プロジェクト・スローンズ (ぷろじぇくとすろーんず)

歌声にフォールド波を含むスローンズメンバーの歌によって、ヴァールシンドロームを発症した生物を鎮静化させる計画。ケイオスによって立案された。またスローンズを危険から守るため、エコー小隊をはじめとする惑星ピプレの可変戦闘機部隊も参加し、メンバーの護衛にあたっている。

フォールドアンプ

歌に含まれるフォールド波を増幅できる特殊な構造のアンプ。プロジェクト・スローンズではスローンズの歌を増幅させ、ヴァールシンドローム鎮静化効果を高めるために使用されている。

鰻蟲 (うなむし)

惑星ピプレに棲息する、巨大原生生物の総称。巨大な怪物のような姿をしている。本来は寒冷地帯にのみ棲息しており、人類が住む温暖地帯では生きられないが、ヴァールシンドロームの影響で暴走し温暖地帯にまで進撃する事がある。鰻蟲の中でも、超小型で温暖地域でも生息できる「コウテイグソクムシ」は、「グソクン」と呼ばれ、ペットや食料として親しまれている。 また祭などの際は、「グソクンすくい」の出店もある。

ピンポイントバリア

時空のひずみを利用して作られた、小径のバリア。不安定なため防御力の及ぶ範囲が狭く、名前の通りピンポイントを守るためのバリアとなっている。

レドーム

全方位を監視できるレーダーが搭載された、特殊なドーム。可変戦闘機の機体によっては、ドーム内に歌を増幅させる機構が搭載されており、アイドルステージ(ライブドーム)としても使用できる。プロジェクト・スローンズにおいてもスローンズのアイドルステージとして使用され、プロジェクトにおいて重要なドームとなっている。

バジュラ

銀河の彼方に万古より棲むとされる、伝説の宇宙生物(超時空生命体)。イワン・ツァーリによって半サイボーグ化され、彼にあやつられた状態でピリカ・ポリワノフを襲う。2059年に人類とバジュラが遭遇した際に、苛烈な生存戦争に発展した。しかし当時のスーパーアイドル「シェリル・ノーム」と「ランカ・リー」の歌によって鎮静化し、バジュラは銀河を去っていった。 フォールド波を使い、空気がない宇宙でも会話をする事ができる。

クレジット

監修

原案

「マクロスΔ」より

書誌情報

マクロスΔ外伝 マクロスE 2巻 講談社〈KCデラックス 週刊少年マガジン〉

第2巻

(2017-03-09発行、 978-4063931600)

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