概要・あらすじ
16歳の青山万里子は、借金返済の代わりに、ずっと年上の青山俊と結婚した。幸せな新婚旅行中に、俊は駆け落ち。青山万里子は持ち前の明るさと、周囲の人の支えで、パリに向かう。ところがパリについた途端、バッグをすられ、大事な俊の指輪を失ってしまう。オリエント急行で出会ったインド人の青年ニーラムと、バッグを盗んで指輪を売ってしまった少女ジャンヌと共に、指輪奪還作戦を決行。
登場人物・キャラクター
青山 万里子 (あおやま まりこ)
おてんばで、気の強い元気いっぱいの16歳の少女。父の残した借金の返済の代わりに、青山俊の嫁になった。子供扱いされるのを嫌い、しっかり物事をこなす。うじうじ考えるのが嫌いな、前向きな性格。フランス語とドイツ語を話せる。幼い頃から俊の知り合いで、ほのかな憧れを抱いていた。オリエント急行では青山俊の友人たちとも親しくするよう努めていたが、俊が消えてからは怒りを爆発させ、本来ののびのびとした性格でアリス・マクドラウドをはじめとした女性たちと接するようになる。 ニーラムには、誤ってファーストキスを奪われて以来距離を置いていたが、俊のトラブルの際に助けようとしてくれたことに恩義を感じはじめる。 パリに着いてからはジャンヌに、俊の指輪の入ったバッグをすられて探しまわるハメになる。パリでニーラムと合流した後、彼が兄を殺そうとしているのを見て止めに入る。どこへ行っても日本人女性としての誇りと自らの正義を貫いている。
青山 俊 (あおやま しゅん)
実業家。青山万里子の夫。万里子の父の借金の返済の代わりに、彼女をめとった。新婚旅行の際、彼女の母親に「清いままお帰しする」と誓っている。オリエント急行に乗った後、友人たちの手を借りて、死を装って姿を消す手伝いをしてもらい、かつて出会った異国の女性と駆け落ちをする。
エドワード・ペイトン
イギリス・ドーチェスター出身。青山俊の仕事仲間。丸メガネで、笑顔の紳士。オリエント急行で、青山俊が姿をくらます手伝いをするも、青山万里子の境遇を見て後悔する。パリについてからは、万里子とニーラムを守るために、あちこちを駆けまわる。
ニーラム・マタ・シン・パテル
エドワード・ペイトンと共に行動する、真面目だが天然で、子供っぽい奔放なインド人の青年。お化けが苦手。ずっと青山万里子に興味を持ち続けている。正体は、西インド・ベジャラート州の藩王国第二王子。万里子のファーストキスを奪い、その後、夫を失った万里子に「私のものになれ」と囁き、彼女を驚かせる。 青山俊が消えた後、彼女を守ろうと奔走し続ける。パリで万里子が、すられたバッグに入っていた俊の指輪を取り戻そうと走り回っているのを発見、ジャンヌと手を組んで、万里子の指輪を詐欺で取り返す。パリでは母を殺した異母兄パドマを殺すのが目的。復讐が最大の目標だったにもかかわらず、正義感が強く、騙されても信じようとし続ける万里子の姿に、心が揺らぐ。
パドマ
ニーラムの異母兄。西インドのベジャラート州の藩王国の第一王子。麻薬で支配する第一王妃の実母クリシュナを殺害しようとしたところ、誤って異母弟のニーラムの生母マヤを殺害。インドを出てパリに住み着いた。アヘンのせいで、正気の時とそうでない時の波がある。
アリス・マクドラウド
イギリス軍少佐のヴィクター・マクドラウドの妹。16歳。オリエント急行内で傷心の青山万里子のことを気遣い、親しい仲になる。兄のことを慕っているが、隠し事が発覚したときに、列車の上に乗って飛び降りようとした。
アルトマン子爵夫人 (あるとまんししゃくふじん)
オリエント急行で一緒になった、ドイツ貴族の老女。甥が大戦後の日本に収容されていたため、出国を青山俊が世話したことで知り合う。日本はまだ後進国で、その差別の中で一等の事業をする青山俊はしたたかだ、と見抜く。青山万里子には非常に厳しい物言いをするが、深く彼女のことを思いやっている発言が多い。
エミール・デュピュイ
青山俊の友人で、フランスの外交官。俊が決闘のふりをすることで、エミールと妻のレティシアが結婚をするきっかけとなったため、親しい仲になった。青山俊が姿をくらます手伝いをし、妻に激しく叱咤される。
ジャンヌ・ドーデ
青山万里子がパリに着いてすぐ、青山俊の姉に届ける指輪が入ったバッグを盗んだ女スリ。16歳。万里子を陥れて、一度は警察に捕まえさせてしまう。その後も万里子の指輪を売ってしまうなど軽率な行動が多い。明るい楽天家で、20歳上の日本人・玲司と結婚していた未亡人。 パリを嫌っていた万里子と話しているうちに親しくなり、パリの街を案内し、楽しませる。ウォーレンに売ってしまった指輪を取り戻すため、ニーラムと詐欺を働く。
ウォーレン・ネス
パリに住む新進気鋭の画家きどりの男。米国の資産家のボンクラ息子。22歳。米国人芸術家グループの画家や詩人、写真家などのパトロンとして出資している。青山万里子からジャンヌが盗んだ俊の指輪を20フランで買い、取り戻しに来た万里子に20万フランで返すと言い返した。 指輪を取り戻すためにニーラムとジャンヌが組んだ詐欺に引っかかる。本心は、純粋にジャンヌのような女性を美しく描きたいだけで純朴。
ハロルド
パリでウォーレン・ネスに借財をしている画家。ウォーレンの財力と人の良さを利用して金を借りている。ウォーレンの絵画技術はあてにしていない。
リディ・マラルメ
パリに住む女性。アメリカの出身。故クリスタの姉。ニーラムには「変わり者」と呼ばれている。行き倒れていた青山万里子とニーラムを救う。男子禁制のレズビアンサロンを経営している。
クリスタ
リディ・マラルメの妹。アメリカ東部の出身。敬虔な人々が住まう街で、同性愛者であることを隠しており、婚姻が決まった年に自害した。
ジュリア
パドマのそばをうろつく、メガネに長髪の謎の女性。
青山 富喜子 (あおやま ふきこ)
フランスに住む青山俊の姉で、青山万里子の義姉にあたる。保守的な母に反発して、家を出た奔放な女性。ぽっちゃりしており体格がいい。
ジジ
ジュリアがニーラムを監禁していたときに見張りにつかせていた少女。パリの駅で置き引きをして警察に追われた際、パドマに助けられ、今は彼のもとで働いている。