名門!第三野球部

名門!第三野球部

高校野球の名門校で戦力外として扱われていたメンバーたちが、主力選手たちへの下剋上を目指して一致団結し、やがて甲子園制覇という悲願に突き進んでいく姿を描いたスポ根野球漫画。物語の後半では、プロ野球の架空球団を舞台に、選手と悪徳オーナーとの争いや、日本一への過酷なペナントレースを描く「飛翔編」が展開される。「週刊少年マガジン」1987年47号から1993年25号にかけて連載された作品。直接的な続編として『上を向いて歩こう』『復活!!第三野球部』の2作品がある。

正式名称
名門!第三野球部
ふりがな
めいもん だいさんやきゅうぶ
作者
ジャンル
野球
関連商品
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あらすじ

高校編(第1話~第184話)

甲子園の常連校として知られる桜高校において、戦力外同然の扱いを受ける第三野球部は、ある日、監督の鬼頭から解散を命じられてしまう。だが、一度も試合をすることなく退部したくないという檜あすなろら第三野球部メンバーの想いをきっかけに、勝ったら一軍昇格という条件のもと、第三野球部は一軍との試合を行うこととなった。あすなろの幼なじみの村下夕子や、元一軍選手の海堂タケシらとともに猛練習を重ね、成長を遂げる第三野球部のメンバーたち。一度は接戦の末に敗北を喫するが、その試合を観戦していた学生たちから大きな声援を受ける姿を見て、鬼頭は第三野球部の存続を認めることになる。それから第三野球部はさらなる猛特訓や練習試合を経て、一軍との再戦に臨むのだった。

飛翔編(第185話~第275話)

檜あすなろは、高校卒業後に千葉大学への進学を決めていたが、千葉マリンズのスカウトマンである小暮憲三と出会って、プロ野球の道を考えるようになっていく。小暮の説得を受け、球界を代表する強豪チームと戦ってみたいという想いが芽生えたあすなろは、プロ入りを決意する。しかし悪徳経営を行うオーナーの妨害によって、千葉マリンズのメンバーたちは、波乱に満ちたペナントレースを戦い抜くことを余儀なくされてしまう。

メディアミックス

TVアニメ

1988年10月22日から1989年9月29日にかけて、フジテレビ系列でTVアニメ版が放送された。キャラクターデザイン・総作画監督を金沢比呂司、音楽を本間勇輔が担当している。檜あすなろ役を菊池英博、村下夕子役を鶴ひろみ、海堂タケシ役を玄田哲章がそれぞれ務めた。

ゲーム

1989年8月8日、同名のファミリーコンピュータ用ゲームソフトがバンダイから発売された。ジャンルは野球。他のプレイヤーやCPUと対戦できるモードのほかに、原作のストーリーを再現したドラマティックモードが用意されている。

登場人物・キャラクター

檜 あすなろ

桜高校野球部の第三野球部に所属する少年。投手を務めている。当初は弱気ないじめられっ子気質で、一軍への昇格を諦めていたが、第三野球部の解散をかけた試合をきっかけに熱心に練習に打ち込んでいく。投手としては球種が少なく、変化球の質も決して一級品ではないが、投球回を重ねるにつれて球威が増すほどの、無尽蔵のスタミナを持つ。 弾丸ボールと呼ばれる特殊なストレートで、強打者を圧倒していく投球スタイルを身につける。バッティングに関してもしぶとさが売りで、一本足打法を活かした長打力もあり、5番打者としてクリーンアップの一角を担っている。「飛翔編」では大学進学を一度は決めるが、小暮憲三との出会いをきっかけに、セントラル・リーグの千葉マリンズに入団することを決意。 開幕から一軍入りし、投手としてだけでなく、代打や高校時代に未経験のショートなど、さまざまなポジションで八面六臂の活躍を見せていく。

村下 夕子 (むらした ゆうこ)

桜高校陸上部で将来を期待されていた少女。成績も優秀で、文武両道を地でいく人物。幼なじみである檜あすなろのために、第三野球部で活動を始めることになる。一軍との初対戦時には、ソフトボールの経験を活かして選手として参加。以降はマネージャーとして、あすなろと第三野球部を献身的に支えていく。

海堂 タケシ (かいどう たけし)

桜高校野球部の第三野球部で捕手を務める少年。2年生時に鬼頭を殴ってしまい、一軍から三軍に降格された。野球自体から遠ざかっていたが、檜あすなろのひたむきな姿勢に心を動かされ、監督兼選手として第三野球部への参加を決意する。もともとは一軍でも4番を務めていた強打者で、第三野球部においても不動の4番として活躍する。 ブランクを感じさせない野球センスで、一軍相手にもその長打力を遺憾なく発揮していた。

白石兄弟 (しらいしきょうだい)

桜高校野球部の第三野球部に所属する兄弟。兄が1番打者の遊撃手で、弟が2番打者の二塁手を務める。兄弟ともに、さまざまなバントを使い分ける技術と、100m11秒台の俊足を売りとする選手。小西カズオとは度々取っ組み合いの喧嘩をするため、犬猿の仲のように見えるものの、それは表面上の態度だけで、実際の関係は良好。

小西 カズオ (こにし かずお)

桜高校野球部の第三野球部で右翼手を務める少年。チームで最も三振が多いうえに足も遅いが、悪球に強いという長所があり、海堂タケシにも匹敵するほどの長打力を誇る。特に「デブ」という言葉に激しく反応した際は、怒りによって凄まじいパワーを発揮する場面も度々見られた。外野手に重要な強肩の持ち主でもあり、自らの鈍足を十分にカバーしている。

石井 幸司 (いしい こうじ)

桜高校野球部の第三野球部で三塁手を務める少年。守備力に定評がある一方で、バッティングセンスのなさに悩んでいる。銚子工業高校との練習試合までは、人生で一度もヒットを打ったことがなかった。のちに土屋秀夫から天秤打法を教わり、チームに欠かせないアベレージヒッターとして才能を開花する。

高橋 ひろし (たかはし ひろし)

桜高校野球部の第三野球部で中堅手を務める少年。身体能力や野球センスは決して優れていないものの、負傷よりもチームのために結果を残すことを優先する圧倒的な根性の持ち主。その気迫溢れるプレーで、チーム内でも「ガッツマン高橋」という異名で呼ばれるようになる。

斉藤 輪大 (さいとう りんだい)

桜高校野球部の第三野球部で一塁手を務める少年。語尾に「~だな」と付ける間延びした口調が特徴。住職の息子ということもあり、穏やかで落ち着いた性格。間の抜けた顔に見られることを極端に嫌い、そこを馬鹿にされると、性格と表情が一変する。チャンスに対して非常に強く、チームを度々救ってきたので、「史上最強の9番打者」「恐怖の9番打者」と評されるようになった。

田村 達郎 (たむら たつろう)

村下夕子の従兄弟の少年。銚子工業高校との練習試合前に、夕子の誘いで桜高校第三野球部に加入する。ナルシストな性格で、スライディングのように泥臭いプレーを嫌っていたが、第三野球部のメンバーたちに感化されて、内に秘めていた闘志を見せるようになっていく。元テニス部の経験を活かして、左右どちらでも同じようにバットを握るという特殊な打法で、スイッチヒッターとして活躍する。

京本 直哉 (きょうもと なおや)

桜高校野球部で一軍のエースとして君臨する少年。正確無比なコントロールのスライダーが最大の武器だが、その完璧すぎるコントロールが仇となり、田村達郎に攻略法を編み出されてしまう。控え投手として長い期間を過ごしていた経験もあり、エースであることに強い誇りを持っている。

桜井 哲也 (さくらい てつや)

桜高校野球部で一軍の正捕手を務める少年。もともとは控えの捕手だったが、田村達郎が一軍を去ったために正捕手へと昇格した。バッテリーを組む京本直哉を、プレーと精神面の両面で支えている。

工藤 (くどう)

桜高校野球部の一軍で、かつてエースを務めていた少年。海堂タケシとは甲子園でもバッテリーを組んでいたが、連投による無理がたたって肩を壊してしまい、野球部を去っていった。この出来事こそが、海堂と鬼頭の間に確執を生んだきっかけになっている。

鬼頭 (きとう)

桜高校野球部の監督を務める壮年の男性。桜高校を何度も甲子園出場に導いた名将として知られている。結果を残すことに徹底した冷徹な性格で、その成績に応じて岩田から多額の報酬を受け取っている。しかしそれにはやむない事情があり、何も知らなかった海堂タケシとは、考え方の相違から深い溝ができてしまった。

鬼頭 さゆり (きとう さゆり)

鬼頭の娘。とある難病を患っており、入院中の身である。鬼頭が大金を必要としている理由を、間接的にではあるが、海堂タケシに伝えた。病に負けない気丈な性格の持ち主で、迷いが生じた海堂に発破をかけることもある。

岩田 (いわた)

桜高校の理事長。学校を権力で牛耳る男性。野球部が甲子園で優勝することに強いこだわりを持っており、その目的のためならば手段を選ばない、高慢で身勝手な人物。甲子園優勝にこだわることは、高校時代の苦い経験に起因している。

中尾 康一 (なかお こういち)

海堂タケシが卒業した翌年、桜高校に入学して来た少年。中学時代には全国優勝を果たした学校で4番を務めていたが、その当時の先輩たちからいじめにあって、高校進学後は野球から離れようとしていた。

堀江 隆一 (ほりえ りゅういち)

海堂タケシが卒業した翌年、桜高校に入学して来た少年。運動も勉強も得意ではなかったが、甲子園での檜あすなろの活躍に心を打たれて、桜高校への進学を決意。猛勉強の末に見事合格した。入学後は野球部へ入り、主に控えの捕手を務めるようになる。

嵐 三郎 (あらし さぶろう)

海堂タケシが卒業した翌年、桜高校に入学して来た少年。強肩強打が自慢で、海堂に代わる正捕手として期待されていた。しかし、捕手として優秀な能力を持つ中尾康一が加入したことにより、さまざまなポジションを守ることになった。

奈保子 (なおこ)

桜高校に通う女生徒。第三野球部と一軍の試合を観戦した際に、小西が全力でプレーする姿に惹かれ、自ら想いを伝えて交際を始めることになる。試合の度に健気な声援を小西に送っており、彼が好プレーをするきっかけになっている。

桑本 聡 (くわもと さとし)

銚子工業高校野球部で、1年生ながら不動のエースを務める少年。190cm以上もある長身で、縦方向に強烈な変化を見せる「三階カーブ」を必殺の決め球として持つ。またバッティングセンスも非凡であり、打順では4番を務めている。登場時は才能だけでどうにかなるという考えで、練習もまともにしていなかった。第三野球部との練習試合を通して、野球に対して真摯に向き合うようになり、檜あすなろとは互いを認め合う関係になっていく。 細い枝のような体つきも、激しいトレーニングの末に見違えるほど筋骨隆々になり、変化球だけでなく豪速球で打者を圧倒するパワーピッチャーになった。「飛翔編」では、オーナーの策略によって千葉マリンズと契約を交わし、あすなろとはチームメイトとしてプロの世界でともに戦うことになる。

指宿 健二 (いぶすき けんじ)

銚子工業高校野球部で、キャプテンを務める少年。チャンスの場面に強いため、打順は主に4番を務めるが、桑本聡が4番を打つ際は3番に回ることもある。野球に対する情熱が非常に大きく、たとえ格下の相手であっても手を抜くことはなく、全力プレーを心がけている。海堂タケシとは同学年であり、互いの実力を認め合うライバルの関係。

志野塚 政志 (しのづか まさし)

銚子工業高校野球部で、遊撃手を務める少年。左右に自在に打ち分けられる広角打法によって、高い打率を誇っている。そのため打順は、2番または3番といった上位打線を務めている。

杉本 コウジ (すぎもと こうじ)

指宿健二の卒業後に、銚子工業高校野球部に入部した少年。もともとは相撲部だったが、桑本聡にスカウトされる形で入部することになる。相撲で鍛えた下半身により、桑本の豪速球や低めの弾も難なく捕球できる。

五十嵐 幸夫 (いがらし ゆきお)

黒潮商業高校野球部においてエースで4番、そしてキャプテンも務める少年。切れ味の鋭いシュートが決め球。勝利に対する執念がすさまじく、勝つためなら反則スレスレの手段もためらわずに行う。両親を事故で亡くしており、家計を支えるために水商売をしている姉と二人暮らしをしている。

土屋 秀夫 (つちや ひでお)

黒潮商業高校野球部で一塁手を務める少年。バットを頭上に構える「天秤打法」という独特の打法によって、公式戦の三振が0という驚異的な記録を残している。もともと運動に耐えないほどの虚弱体質だったが、弛まぬ努力を重ねてレギュラーを獲得した。

板垣 (いたがき)

黒潮商業高校野球部で監督を務める老齢の男性。鬼頭とは過去に対戦経験があり、トーナメントの組み合わせ抽選会で挨拶を交わしている。飄々としているが、観察眼に優れた戦略家で、対戦相手の弱点を突く戦法が得意。

小比類巻 一郎 (こひるいまき いちろう)

陸奥高校野球部でエースを務める少年。七色のションベンカーブと呼ばれる特殊なカーブを駆使して、強敵がひしめく甲子園を戦い抜いていく。チームで唯一の投手経験者ということもあり、決勝戦まで1人で全試合を延長戦まで含めて完投するという、檜あすなろに匹敵する驚異的なスタミナの持ち主。

桃井 (ももい)

陸奥高校野球部における唯一の3年生で、キャプテンを務める少年。本来は二塁手のレギュラーだが、アキレス腱の負傷により控えに回っている。甲子園決勝で初めて出場を果たし、檜あすなろからホームランを打つ活躍を見せた。

成田 (なりた)

陸奥高校野球部で二塁手を務める少年。本来は控えの選手だが、桃井の負傷によって甲子園でスタメンとして出場し、チームのピンチを打開するホームランも放つなど、高い長打力を持っている。

坂口 力也 (さかぐち りきや)

浅加学院野球部でエースを務める少年。鋭く落ちるフォークを決め球にしている。チームで一番の長打力も持っており、打順が最も多く回ってくるという理由で一番打者を務めている。桜高校野球部とは、甲子園予選の4回戦で激突した。

佐藤 (さとう)

浅加学院野球部で捕手を務める少年。坂口力也が投げるフォークをまともに捕球することができないぶん足で止めたり、負傷覚悟でデッドボールを選んだりといった、ガッツのあるプレーでチームに貢献する。

浜田 (はまだ)

道三高校野球部で監督を務める男性。策に長けた名将として知られているが、日本刀の刃を裸足で渡らせる危険な練習方法を行ったり、厳しい体罰で部員たちを支配したりと、その実は優れた指導者とは言い難い。

安部松 健 (あべまつ けん)

甲子園鹿児島代表の西郷高校野球部におけるエースの少年。大会No.1と称される投手で、バットに当てた後の手が痺れてしまうほど球威のある剛速球が最大の武器。バッターとしてもチームの4番を務める実力者で、檜あすなろから2打席連続でホームランを放った。

ラフ・エバート (らふえばーと)

アメリカ学生選抜において投打の主軸を担っており、大リーグからのドラフト1位指名が確実視されている少年。日本学生選抜との試合では、トルネード投法から繰り出す160km/hという豪速球で、完全試合寸前まで追い込んだ。また打者としても超一流の才能を持ち、アメリカ高校球界記録である98本のホームランを打っている。

ヘイグ・オコーナー (へいぐおこーなー)

アメリカ学生選抜で捕手を務めている少年。日本学生選抜との試合では第3戦から出場を果たした。圧倒的な身体能力の持ち主で、ホームベース上で海堂タケシとのクロスプレーを行った際も、びくともせず海堂を跳ね返している。また強靭な手首の強さから放たれるスナップスローは、白石兄弟の盗塁も容易に阻止するほど。出身は革命が起こったという東ヨーロッパのとある国。 革命の際に弾丸を受けた左腕の自由がきかないため、本来は右打者だが、左打席に立っている。革命で両親を失っているため、エレーザという妹が唯一の肉親。

エミリー

アメリカ人の少女。桑本聡とはペンフレンドの関係。ラフ・エバートとも顔見知りで、彼から執拗なアプローチを受けているが、エミリー本人はそのことを迷惑に感じている。

ジミー

野球が大好きなエミリーの弟。交通事故で足を悪くしてしまい、入院しながら車椅子での生活を送っている。手術すればほぼ確実に治るものの、もしも失敗すれば野球ができなくなってしまうため、手術を拒み続けている。桑本聡から、手術を受けるためにある提案を出される。

神 龍一 (じん りゅういち)

千葉マリンズで三塁手のレギュラーを務めている男性。かつては千葉マリンズにおける唯一の20勝投手で、打者としても25本のホームランを打つという主軸の選手だった。実は初登場時は、長い二軍暮らしで酒に溺れていた。しかし20年ぶりに一軍登録されたことと、新たに入団した檜あすなろや桑本聡らの熱意に心を動かされたことをきっかけに、本来の実力を発揮し始めて、不動の四番打者として千葉マリンズ躍進の原動力となる。

野森 (のもり)

千葉マリンズで一塁手を務めている男性。入団当初は捕手だったが、肩が弱く打撃センスに難があったため良い評価を得られずにいた。しかし神龍一の指導によってスイッチヒッターとして開花し、ポジションも一塁手にコンバートされることとなった。ID野球のためにデータを収集するのが趣味で、全球団の投手の配球パターンを完全に把握している。 この知識に加え、どんなギリギリのボール球も見極める選球眼と、優れた走塁技術により、弱い肩と打力のなさをカバーしている。盗塁を行う際はゴーグルを装着して、陸上選手のようにクラウチングスタイルをとるのが特徴。

チャーリー・ハーマー (ちゃーりーはーまー)

大リーグの「セントルイス・カージナルス」から、千葉マリンズに移籍して来た助っ人外国人の男性。ポジションは遊撃手。大リーグでは控えの選手だったことと打率が低かったことが重なり、日本球界で低い評価を受けていた。しかし守備に関しては非常に高い技術を持っていたおかげで、年俸は一流選手と遜色ないものだった。亡き祖父であるポール・浜田の「日本で野球をする」という夢を叶えるため、祖父の旧友、小暮憲三の誘いを受けて日本にやって来ることになる。 千葉マリンズでは、弱点でもあった守備の穴を埋めるだけでなく、ムードメーカーとしても活躍していく。

ポール・浜田 (ぽーるはまだ)

チャーリー・ハーマーの祖父で、故人。アマチュア野球の選手で、小暮憲三とも日本で野球をしようと約束していた。しかし第二次世界大戦の終戦間際に手榴弾の爆発に巻き込まれて肩を壊し、まともに野球ができなくなってしまった。ポール・浜田自身が息を引き取る際に、戦時中に自らの命を救ったボールとともに、日本で野球をするという夢をチャーリーに託している。

ジョージ・ベートーベン (じょーじべーとーべん)

オーナーがシーズン後半に急遽アメリカから呼び寄せた、助っ人外国人の男性。アメリカでは打率が低いうえに、気性が荒く試合を壊してしまっていた。それを利用して、ペナントレースで波に乗っている千葉マリンズの邪魔をする、というオーナーの思惑が隠されていた。千葉マリンズ入団直後は、優れたパワーと鋭いスイングを持つものの、極端に角度のあるスイングだったため、ボールにかすりもしなかった。 しかし母親の助言を受けてスイングを改善してからは、パワーを活かした打撃でチームに貢献するようになる。

若見 荘次 (わかみ そうじ)

千葉マリンズで遊撃手や左翼手を務める男性。檜あすなろが入団した当初は若手選手のリーダー格として、チーム腐敗の一員となっていた。小暮憲三が監督に就任した際には、やる気のなさを露呈して試合への出場機会を失うことになる。しかし前田宗一が仕組んだ八百長事件で、江口宏をかばうようになって以降、チームのために真面目に野球に取り組むようになっていく。

江口 宏 (えぐち ひろし)

千葉マリンズで左翼手のレギュラーを務める男性。親の借金を肩代わりしている事実を前田宗一につけこまれ、八百長に加担することになってしまう。その疑いを晴らすため、チームメイトや家族の応援に後押しされて、会心のサヨナラヒットを放つ。その試合後に八百長への加担を自白し、責任をとる形で現役を引退する。チームから去った後も、千葉マリンズのメンバーを気にかけて、さまざまな形でサポートしていく。

前田 宗一 (まえだ そういち)

檜あすなろが千葉マリンズに入団した当初、正捕手を務めていた男性。オーナーや黒姫達雄の指示によって、わざと相手打者が得意とするコースへリードし、チームを敗北へ導く要因となっていた。

月の屋 二郎 (つきのや じろう)

シーズンの後半に、千葉マリンズの一軍に昇格してきた中年男性。主力メンバーと入れ替わる形となった。20年間にわたって二軍ですら最低レベルの成績を残しており、口先だけのお調子者と思われていた。しかし、心理戦や頭脳戦に長けており、巧みなリードでチームを支えるようになる。

香川 (かがわ)

月の屋二郎と同じタイミングで、千葉マリンズの一軍に昇格した男性。もともとはドラフト1位の即戦力投手として活躍していた。無理な連投がたたって敗北したため、ボーナスがなくなった黒姫達雄により二軍へ落とされていた。その連投を行った試合の際、母親が危篤という電報が届いていたが、黒姫に握りつぶされていた。死に目に立ち会えなかったショックから、無口な性格になってしまった。

柏木 (かしわぎ)

シーズン後半に、オーナーの嫌がらせによって千葉マリンズに支配下登録された男性。球速は120km台と決して速くなく、気弱で、あがり症な性格のためインコース攻めもできず、打者を抑えることができないでいた。小暮憲三が「秘策」と称して焼酎を飲ませると性格が豹変し、強気な投球で見事にチームを勝利へ導くようになる。

小暮 憲三 (こぐれ けんぞう)

千葉マリンズのスカウトマンを務める老齢の男性。大学進学を検討していた檜あすなろが、千葉マリンズへの入団を決意するきっかけとなった人物でもある。のちに、調子を上げてきた千葉マリンズを最下位にするための策として、オーナーから監督への就任を命じられる。ところが、長年のスカウトで培った経験を活かし、選手を的確に起用しながらさらにチームを躍進させていく。

オーナー

千葉マリンズの球団オーナーを務める中年男性。球場跡地を利用してレジャーランドを作るために、球団の身売りを画策。あの手この手で千葉マリンズを低迷させようと暗躍する。

黒姫 達雄 (くろひめ たつお)

檜あすなろが千葉マリンズに入団した当初、一軍監督を務めていた男性。オーナーの子飼いといえる人物であり、千葉マリンズを最下位に導くための策を実行に移す役回りを果たしている。小暮憲三の監督就任後は、フロントの立場から現場への嫌がらせをするようになる。

別所 (べっしょ)

千葉マリンズの試合中継で、たびたび解説を務めている男性。千葉マリンズの選手やチームの成績に対し、ネガティブな予想をすることが多い。それが外れるたびに、自ら宣言した奇抜な髪型や格好で再登場している。

小池 (こいけ)

総理大臣の第一秘書。政界を裏から牛耳っている男性。政治資金を調達するために野球賭博に加担しており、オーナーを利用する形で協力関係にある。実は末期癌に体を蝕まれており、余命は幾ばくもない状態。

(うめ)

仕出し弁当屋に長年務めている老齢の女性。弁当屋には、プロ野球界を追放された桑本聡や、引退した江口宏が世話になっている。口が悪いがとても面倒見が良く、いつも桑本のことを気にかけている。「タカ夫」という桑本の大ファンである甥っ子がいる。

集団・組織

第三野球部 (だいさんやきゅうぶ)

桜高校野球部における第三軍の通称。試合に出ることすら許されない落ちこぼればかりで、球拾いや草むしりといった雑用を押し付けられていた。一軍昇格をかけた一軍との試合を契機として、檜あすなろを中心にチームの結束が高まっていき、野球へのひたむきな姿勢で、多くの人を魅了していくようになる。

日本学生選抜 (にほんがくせいせんばつ)

桜高校と陸奥高校のメンバーに、桑本聡が加わった日本人学生の選抜野球チーム。ハワイ遠征を行った際に、アメリカ学生選抜と3試合にわたって壮絶な戦いを繰り広げた。

アメリカ学生選抜 (あめりかがくせいせんばつ)

アメリカ人学生で構成された選抜野球チーム。ラフ・エバートやヘイグ・オコーナーなど、大リーグのスカウトが注目するほどの逸材が在籍している。

千葉マリンズ (ちばまりんず)

千葉県に本拠地を構えるセントラル・リーグのプロ野球チーム。「飛翔編」において、檜あすなろや桑本聡が入団することになる。球団の身売りを画策するオーナーの暗躍により、チーム成績は低迷を続けている。なお、「千葉ロッテマリーンズ」は雑誌連載当時まだ誕生しておらず、名称は似ているが無関係。

場所

桜高校 (さくらこうこう)

甲子園常連となっている名門野球部を有する高校。野球部は実力ごとに分けられており、一軍から三軍までがあるが、第三野球部に関しては事実上の戦力外とされている。試合が膠着状態になると使い始めるプッシュバント攻撃が伝家の宝刀とされており、その恐ろしさは全国にも知れ渡るほど。校名の由来は、長嶋茂雄の出身校である佐倉高校。

銚子工業高校 (ちょうしこうぎょうこうこう)

桜高校野球部と並び、千葉県における野球の名門と名高い高校。敗色濃厚な試合展開でも逆転勝ちを成し遂げることが多いため、「逆転の銚子工業」と呼ばれている。校名の由来は、1974年に甲子園制覇を果たした銚子商業高校。

黒潮商業高校 (くろしおしょうぎょうこうこう)

千葉県の高校で、野球部は強豪として知られている。だが、毎年甲子園出場を寸前のところで逃しているため「悲運の黒潮商業」と評されている。

陸奥高校 (むつこうこう)

青森県の高校。野球部は決して突出した実力ではないものの、どんな劣勢でも諦めずに、数々のピンチをしのぐ粘り強さを持っている。甲子園には青森県代表として出場し、幾度もの厳しい試合を乗り越えながら勝ち進んでいく。

その他キーワード

弾丸ボール (だんがんぼーる)

檜あすなろが投じるストレート。進行方向に対し逆回転する通常のストレートとは違い、拳銃から撃ち出された弾丸のような、特殊な横回転をするボール。そのため、バッターの手元に到達するまで球威が減衰しないという性質がある。あすなろのスタミナと相まって、試合後半になるほどその威力は際立っていく。

七色のションベンカーブ (なないろのしょんべんかーぶ)

小比類巻一郎が投じるカーブ。一見すると非常に緩やかで打ちごろの球に思われていたが、実はカーブの軌道は投げるたびにわずかに異なっており、打者に的を絞らせない性質を秘めている。田村達郎によって命名された。

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