図書館の大魔術師

図書館の大魔術師

書物が重要な役割を果たす世界が舞台。世界の中心をなす大図書館の司書として活躍することになる、少年のシオ=フミスの成長を描くファンタジー。講談社「good!アフタヌーン」2017年12号から連載の作品。「全国書店員が選んだおすすめコミック2021」で第9位に選出。

正式名称
図書館の大魔術師
ふりがな
としょかんのだいまじゅつし
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

第一章「少年の旅立ち」(第1巻~第3巻)

アムンの村に住む混血児の少年であるシオ=フミスは、その特異な外見から村の鼻つまみ者であり、村の図書館にも入れてもらうことができなかった。シオは幼なじみの少女で図書館の館長を務めるオセ=メネスの娘である、サキヤ=メネスから貸してもらった本「シャグラザットの冒険」の登場人物にあこがれ、自分の前に物語の主人公が現れてくれないかと思っていた。そんな中、シオの友人となったカフナセドナ=ブルゥは、誰もが「自分の物語」の主人公なのだと、シオに語る。魔術書が暴走する事件でセドナの大切な本を守ったシオは、その後セドナの導きに従い、自らもカフナを目指すようになる。そして7年後、シオが司書試験に旅立つ日がやって来た。道中、いくつかの事件に巻き込まれながらも、シオは同じくカフナを目指すミホナ=クォアハウアルフ=トラロケや、稀少な小型動物のウイラと出会う。司書試験の日、ぎりぎりでアフツァックに辿り着いたシオは、さっそく中央圕で司書試験に臨み、第1次試験の筆記、第2次試験の面接を突破する。そして第3次試験の実技ではオウガナチカ=クアパンと同じ班になり、課題として与えられた本の素性を明らかにすることに挑む。この試験は、実はどういう結果であっても不合格を言い渡されるというものだったが、シオたちは協力し合って、みごとに本の素性を突き止めることに成功する。後日、アムンの村に帰っていたシオのもとに合格の通知が届き、シオは再び中央圕に向かって旅立つことになる。

登場人物・キャラクター

シオ=フミス

この世界でも非常に珍しい、ホピ族とヒューロン族の混血の少年。苔のような緑の目、金色の髪、白い肌、そしてホピ族の最大の特徴である長い耳を持つ。また、額にはX字型の傷痕がある。13歳で司書試験を受けるまで、アムンの村で学校に通いながらガナン=キアシトのもとで石工として働いていたため、体力と身体能力は人一倍自信がある。水のマナを体内にため込む体質で、潜在的には強大な魔術師になれる可能性を秘めているが、まだそれをコントロールするための知識や技術は身につけていない。幼い頃はその容姿から「耳長」と呼ばれ、村人から忌み嫌われていた。

ティファ=フミス

シオ=フミスの9歳年上の姉。9歳の時、旅路の果てにアムンの村に辿り着き、暮らし始めた。村人からは異民族の子供を育てる変人として認識されている。ティファ=フミス自身は文字の読み書きはできないが、シオを学校に通わせて教育を受けさせるため、身を粉にして働いている。

サキヤ=メネス

シオ=フミスの1歳年上の幼なじみの少女で、オセ=メネスの娘。シオに思いを寄せており、オセの方針によって図書館に入館させてもらえないシオのために、こっそり手引きして本を貸していた。「ケコ」という名の、サルのような生き物をペットにしている。

オセ=メネス

アムンの村の図書館の館長を務める中年男性。ひどく欲深い人物で、名誉欲から図書館を運営しているが、根っからの悪人というわけでもない。当初は混血児であるシオ=フミスを侮蔑し、図書館に立ち入ることを禁じていた。娘のサキヤ=メネスのことを溺愛している。

ククオ

一角獣(フェリオナ)という種族の獣。最大で体長4メートル、体重350キロまで成長する獰猛(どうもう)な種族で、高い知能を持ち、また群れを作らずに単独で生活する。人には懐かないとされていたが、アムンの村のはずれに棲むククオはシオ=フミスと仲がいい。

セドナ=ブルゥ

四人のカフナの一人であるラコタ族の男性。シオ=フミスが6歳の時にアムンの村にやって来た。年齢はシオより11歳年上。その当時は守護室期待の若手といわれていた。シオと出会って友人となり、その人格形成に大きな影響を及ぼし、またシオに将来カフナになるようにと強く勧めた。「風の魔術師」と呼ばれる、空気中のマナと協力して大気をあやつる術者であり、守護室でも敵なしといわれるほど凄腕の大気使い。

ピピリ=ピルベリィ

四人のカフナの一人であるココパ族の女性。シオ=フミスが6歳の時にアムンの村にやって来た。年齢はシオより16歳年上だが、ココパ族の特徴として体は妖精のように小さく、また背中に羽根がある。修復室所属で、修復の技術はピカイチといわれる。

アンズ=カヴィシマフ

四人のカフナの一人で、遠征隊のリーダーを務めていた女性。シオ=フミスが6歳の時にアムンの村にやって来た。年齢はシオより27歳年上。当時六児の母であり、いつもにこやかに笑顔を振りまいている。だが、彼女のことをよく知る者は、怒らせると怖いと口をそろえる。

ナナコ=ワトル

四人のカフナの一人である女性。シオ=フミスが6歳の時にアムンの村にやって来た。年齢はシオより11歳年上。その当時は本を愛する文学少女で、愛想が悪いのが玉に瑕といわれていた。本に対する愛と修復に関する熱意は本物。

ガナン=キアシト

アムンの村のガナン石工業の親方を務める老人。カフナを目指す6歳のシオ=フミスを、学費の工面のために石工として雇った。また13歳になったシオが、司書試験のためにアフツァックに向かう際は、旅人たちのリーダーを務めた。酒が大好き。

ミホナ=クォアハウ

アトラトナン大陸のヒューロン自治区にある噴火口の町、イツァムナー出身のヒューロン族の少女。シオ=フミスと同い年。頭はいいが少々見栄っ張りな性格で、天然気味なところがある。カフナを目指しており、司書試験に向かう途中のシオと出会ってアフツァックまで同行する。

アルフ=トラロケ

アトラトナン大陸のヒューロン自治区にある水車の街、エスプレオ出身の少年。シオ=フミスと同い年。頭脳明晰ながら、背が非常に低い。アルフ=トラロケ自身は、子供に見られる方が気楽でいいと気にしておらず、将来は背が高くなるものだと考えている。

サラ=セイ=ソン

司書試験でシオ=フミスと出会ったカドー族の少女。第2次試験の集団面接でシオといっしょだった。雷のマナの体質で、魔術に興味があり、魔術師になりたいという理由からカフナを目指している。カドー族の風習でつねに仮面をかぶっており、素顔は見せない。

ナチカ=クアパン

司書試験でシオ=フミスと出会った少女。シオより2歳年上。高慢な性格ながら、過度の心配性でもある。第3次試験の実技試験において、シオ、オウガと同じ班になった。語学力は三人の中で最も優れており、班のリーダーを務めた。

オウガ

司書試験でシオ=フミスと出会った、クリーク族とヒューロン族の混血の少女。出身はクリーク自治区であるため、ヒューロン語は苦手としている。クリーク族の特徴として、耳は獣に似ている。第3次試験の実技試験において、シオ、ナチカ=クアパンと同じ班になった。

ウイラ

双尾(フルア)と呼ばれる、尻尾が二つあるネズミのような希少種族。生まれつき体毛に色がなく、目が赤い白皮個体(シトラルポル)という珍しい生き物。水車の街、エスプレオでシオ=フミスと出会い、飼われるようになった。元の素性は不明だが、砂漠の魔術師によって獣の体に封じ込められた存在であり、シオには秘密にしているが言葉を話すことができる。

コマコ=カウリケ

アフツァックの街角で、司書試験が終わったあとのシオ=フミスと出会った老婆。シオの前では初め素性を隠していたが、その正体は七人の魔術師の一人である「圕の大魔術師」。中央圕総代の地位にあるが、実務には携わっておらず、人事にも政治にもかかわっていない。

集団・組織

カフナ

本の都、アフツァックの中央圕の司書たちを指す呼称。「カフナ」という言葉は「英知の専門家」という意味を持つ。アトラトナン大陸において女性でも就くことのできる数少ない職業の一つであるため、圧倒的に女性が多く、男女比率は1対9。魔術師であることが必須というわけではないが、カフナには魔術師である者が多くいる。

場所

アフツァック

中央圕があるアトラトナン大陸の中央に位置する大都市。通称「本の都」で、住宅地区や田園地区などがある。七つの自治区の境界線が交わる地にあり、大陸で流通する本はすべてこの街から各自治区へと出荷される。「アフツァック」は「地平線」という意味で、平坦で広大な平野が広がっていることに由来する。

中央圕 (ちゅうおうとしょかん)

アフツァックにある巨大な図書館。本を貸し出すだけでなく、あらゆる書を保管し、あらゆる敵から守ることを目的としている。12の「室」と呼ばれる部署を持ち、それぞれに数多くのカフナが所属している。複数の建物から構成されており、総本部があるのはバウアトゥン城で、そのほかにアフツァック第一図書館、アフツァック博物館、アフツァック美術館なども中央圕の一部である。正門を入ってすぐのところには巨大な「七人の魔術師」の像がある。すべてのカフナたちの頂点に君臨しているのは創設者でもある「圕の大魔術師」コマコ=カウリケだが、実務上の最高責任者は総務室室長が務める。

アムンの村

シオ=フミスたちが暮らしているヒューロン族の村。遠くからでも見える巨木が目印。オセ=メネスが館長を務める、アムン図書館という小さな図書館がある。村と呼ばれてはいるが多くの産業があり、それなりに栄えている。村のはずれには貧民街があり、シオとティファ=フミスはそこで暮らしている。

その他キーワード

ヒューロン族

アトラトナン大陸で第一の勢力を誇る民族。もともとは内陸部で暮らす目立たない民族だったが、「ニガヨモギの使者」と呼ばれる大災厄に際して比較的被害が少なかったため、以来大きな勢力を持つようになった。耳の形は丸く、肌の色が浅黒いのが特徴。ヒューロン族は、ラコタ族、ホピ族、カドー族、ココパ族、クリーク族、セラーノ族ら特領七民族の筆頭を務める。

七人の魔術師

かつて「ニガヨモギの使者」と呼ばれる災厄を退けた、偉大なる七人の大魔術師。ヒューロン族、ラコタ族、ホピ族、カドー族、ココパ族、クリーク族、セラーノ族ら七つの民族から一人ずつが参加している。ホピ族出身の魔術師は「理(ことわり)の大魔術師」と呼ばれ、唯一ニガヨモギの使者との戦いの中で殉職している。コマコ=カウリケなど何人かはまだ存命である。

シャグラザットの冒険

シオ=フミスがサキヤ=メネスの手引きでアムン図書館から借りていた本。アトラトナン大陸で流行している、正義の海賊の物語。シャグラザットという海賊が世界を手に入れるという目的のために海を渡り、島々で困難を乗り越え、新しい仲間を加えてまた旅に出る、というストーリーからなる。

黒の書

かつて民族大戦と呼ばれる大戦争を引き起こした本。魔術書ではない通常の出版物だが、その内容は民族浄化に関するもので、当時一人の政治指導者に重大な影響を与え、ヒューロン族によるホピ族の大虐殺という事態を引き起こした。この黒の書の存在がきっかけとなって、中央圕や圕法などは作られた。

魔術書

かつて民族大戦の最中に多数作られた、魔術師の魔力を閉じ込めた本。現在は圕法によって製造が禁止されており、また中央圕が回収を進めているため、稀少価値が高い。本の傷みが進むと魔力が漏れ出して暴走事故を起こすため、ただ所持しているだけでも危険な書物。

司書試験

カフナになるための試験。アトラトナン大陸中から受験生が中央圕を訪れるが、非常に難関で狭き門となっている。受験生は毎年800人以上おり、合格して見習いになれるのはそのうち20数名程度。試験は3次試験まであり、それぞれ筆記や面接、実技の試験がある。このうち、最も過酷なのは3日間にわたって続く筆記試験で、通称「悪夢の筆記試験」と呼ばれている。

書誌情報

図書館の大魔術師 8巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第1巻

(2018-04-06発行、 978-4065112434)

第2巻

(2018-11-07発行、 978-4065135662)

第3巻

(2019-08-07発行、 978-4065167366)

第4巻

(2020-06-05発行、 978-4065194713)

第5巻

(2021-06-07発行、 978-4065235232)

第6巻

(2022-06-07発行、 978-4065281987)

第7巻

(2023-06-07発行、 978-4065317990)

第8巻

(2024-06-06発行、 978-4065357569)

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