作品誕生のいきさつ
本作『図書委員界』の原作者である生駒里奈が、元々古屋兎丸のファンだったことでYouTubeでの共演を果たし、本作のキャラクターたちの原案が誕生した。その後、古屋が「月刊コミックバンチ」の編集部を通じて、このキャラクターを使った作品を共作しないかと生駒に打診し、『図書委員界』の制作が決定したという経緯がある。
あらすじ
今村海の物語
クラスメイトの八神桃華たちからのいじめを苦に、今村海は自殺を考えていた。そんな海のポケットに、いつの間にか「どんな悩みでも解決します。放課後17時に日本文学の棚にお越しください。」と記された真っ黒い招待状が入っていた。新手のいじめを疑った海だったが、放課後に図書室へと向かう。そして図書室の地下の部屋で待っていたのは、図書委員界のメンバーたちだった。委員長から海の人生を物語にするという条件で、いじめの解決を打診された海は、いじめに立ち向かうことを決意する。そんな海に、委員長は魔法で学校主催のダンス大会を開催。個人戦に出場することになった海は、コンテンと共にダンスの練習を始める。
古崎圭介の物語
サッカー部の部長を務める古崎圭介は、友人たちから疎外されていると感じて学校をやめようと考えていた。いじめではないため、なかなか学校をやめたいと言い出せなかった圭介は、ある日、ポケットの中に「どんな悩みでも解決します。放課後17時に日本文学の棚にお越しください。」と記された真っ黒い招待状が入っていることに気づく。招待状に従って出向いた図書室の地下の部屋で、図書委員界のメンバーと出会った圭介は、これまでの人生やバスケットボール部の鶴巻優羽にコンプレックスを抱いていることを言い当てられ、激しく動揺する。委員長は圭介の人生をハッピーエンドにするためのアドバイザーとして、図書委員界のアポロとバンを圭介に同行させることにする。圭介はバスケットボールで優羽に勝つため、二人とバスケットボールの特訓を始めるが、やがて圭介の中で優羽との勝負に勝つよりも、アポロとバンとの友情を大切にしたいとの思いが強くなる。
登場人物・キャラクター
今村 海 (いまむら かい)
私立北上中学校に通う3年生の女子。黒髪のミディアムボブヘアにしている。幼少期からダンスを習っていたため、授業でダンスを披露したところ、八神桃華たちから嫉妬され、いじめを受けるようになった。桃華の指示でクラスメイト全員から無視され、最初は気丈に振る舞っていたが、いじめがエスカレートしたことで自殺を考えるようになる。なぜいじめられているか知らなかったが、図書委員界に招待されたことでいじめの原因を知った。委員長の提案で、再度いじめに立ち向かうことを決意する。委員長からは宮沢賢治の『よだかの星』のよだかに例えられた。
古崎 圭介 (こざき けいすけ)
私立綾杉学園中等部に通う3年生の男子。金髪をソフトモヒカンヘアにしている。小学生の頃からスポーツ万能で明るい性格だったことから、つねにクラスの中心的な存在だった。初等部からの内部進学生で1年生の時から校内で幅を利かせていたが、外部生の鶴巻優羽がバスケットボール部で注目を浴びるようになり、優羽をライバル視するようになった。恋人のカオリが優羽を気にするようになったことがきっかけで殴り合いのケンカに発展し、ボロ負けした末に友人たちから疎外されるようになった。学校をやめることも考えていたが、図書委員界と出会ったことで、アポロとバンの助けを借り、バスケットボールで優羽に勝ちたいと考えるようになる。委員長からは中島敦の『山月記』の李徴に例えられた。
委員長 (いいんちょう)
図書委員界で委員長を務める男子。「図」の字をデザイン化したエンブレムの付いた帽子を被り、眼鏡をかけている。古典小説に造詣が深く、図書委員界に招待した生徒の人生を既存の古典小説になぞらえるクセがある。魔法を得意としており、「ワザヤミメ・ツナワガ・タクアイザ・ダタバ・ワカマシミ」という呪文を唱えながら30センチ定規を振ることで、招待客の悩みを解決する一助となる出来事を起こすことができる。
コンテン
図書委員界に所属している女子。茶髪を前下がりボブヘアにしている。明るい性格で、話しかけやすい雰囲気を漂わせている。コンテンポラリーダンスを得意としているため、ダンスが得意な今村海と話が合う。
ユメカワ
図書委員界に所属している男子。肩まで伸びた外ハネの黒髪で、「図」の字をデザイン化したエンブレムの付いた帽子を斜めに被(かぶ)っている。女子とも男子ともつかない、中性的な言動を見せる。いつも絆創膏(ばんそうこう)を持ち歩いており、委員長をサポートしている。
アポロ
図書委員界に所属している男子。金髪ロングヘアにしている。正義感が強いため、いじめを嫌悪している。ケンカを得意としているため、なんでもケンカで解決しようとしたり、女子にもお構いなしに暴力を振るおうとする。また、考えるより行動するタイプで、論理立てて話すことが苦手。
バン
図書委員界に所属している男子。ボサボサとした黒髪短髪で、右頰に絆創膏を貼っている。コミュニケーション能力が高く、スポーツを得意としているため女子から非常にモテる。古崎圭介が鶴巻優羽にバスケットボール対決で勝つための特訓に、3か月近くも付き合った。
八神 桃華 (やがみ ももか)
私立北上中学校に通う3年生の女子。肩下までの金髪にパーマをかけている。今村海のクラスメイトで、海が授業のダンスで注目を浴びたことに嫉妬し、海をいじめるようになる。クラス全員に指示を出して無視したり、上履きや弁当に画鋲(がびょ)を入れたりのいじめを繰り返し、さらには八神桃華自身が海にいじめられている風に装うなど、狡猾(こうかつ)に振る舞う。
鶴巻 優羽 (つるまき ゆうは)
私立綾杉学園中等部に通う3年生の男子。古崎圭介がライバル視している。濃い色の茶髪をゆるい七三分けにしている。中学受験で私立綾杉学園中等部に進学した外部生で、最初は圭介から歯牙にもかけられていなかった。しかし、バスケットボール部で活躍するようになり、男女問わず注目されるようになった。
集団・組織
図書委員界 (としょいいんかい)
委員長がリーダーを務める集団。男子は学ランにハーフパンツ、女子はブレザーの制服を身につけている。悩みがある人物に「どんな悩みも解決します。放課後17時に日本文学の棚にお越しください」と書かれた招待状を送って接触を試みる。目的は金銭ではなく、招待客の物語を書く権利を得ること。委員長はハッピーエンドを好み、招待客がバッドエンドを迎えないように悩みを解決に導いていく。図書委員界のいる部屋は招待された人物だけが入ることができる移動図書館のようなもので、図書委員界のメンバーが部屋の外に出る際には、着ている服が招待客の通う学校の制服に変化する。
クレジット
- 原作
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生駒 里奈