土曜ワイド殺人事件

土曜ワイド殺人事件

テレビの2時間ものサスペンスドラマを題材にした、1話完結形式のパロディ作品。サスペンスドラマに多く登場するシチュエーションや演出にならった表現が数多く見られる。全体の構成もTVドラマの形式に添っているため、本編の前に予告編が入ることもある。ストーリーやキャラクターは完全にオリジナルで、サスペンスドラマの特定の作品に対するパロディはほとんどない。「少年キャプテン」1995年2月号から1997年2月号に不定期に掲載され、コミックス刊行にあたり描き下ろしのエピソードと作者2名による対談記事が加えられている。

正式名称
土曜ワイド殺人事件
ふりがな
どようわいどさつじんじけん
作者
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

田淵A子は漫画家の尾日間奈良木テヨネのもとで、本番原稿への消しゴムかけをする日が来ることを夢見ながら、アシスタント見習いの雑用係として働いていた。仕事が一段落したある日、A子は、テヨネとチーフアシスタントの琴下麗子とともに、群馬県谷川温泉の旅館への接待旅行に招待される。この旅行で相次ぐ事件に巻き込まれてしまうことを、A子たちはまだ知らない。

登場人物・キャラクター

田淵 A子 (たぶち えーこ)

快活で夢見がちな性格の17歳の少女。漫画家の尾日間奈良木テヨネのもとで、アシスタント見習いとして働いている。テヨネや、アシスタントの先輩である琴下麗子と行動をともにするうちに、さまざまな事件に巻き込まれていく。料理が苦手でご飯を焦がすこともたびたびあるが、テヨネには、一応徐々に上達はしていると認められている。 アフリカで産まれ育ったために、10キロ先の人物を見分けられるほど視力が良い。田淵A子もこの視力の良さを自覚しており、履歴書にも欠かさず記入している。のちに家政婦や、列車の車内販売員などに転職する。

尾日間奈良木 テヨネ (おひまならき てよね)

超人気漫画家として活動する男性で、たくさんのアシスタントを雇っている。やや切れ長の目と、ウェーブのかかった髪が西洋風な雰囲気の二枚目。女性の前では気障な言動をする癖がある。少年漫画雑誌編集長の段田山に招待されて群馬県谷川温泉の旅館への接待旅行に出掛けるが、旅先の旅館で仕事をさせられることになってしまう。段田山とは漫画家デビュー以来の長い付き合い。

琴下 麗子 (ことしも れいこ)

漫画家・尾日間奈良木テヨネのチーフアシスタントを務める若い女性。ワンレングスのロングヘアで、派手な印象の美人。露出度の高い身体にぴったりした服装を好む。テヨネが田渕A子の失敗をフォローするのを見てイライラしたり、旅館でテヨネと一緒に風呂に入ろうとしたりと、テヨネに気がある素振りを見せている。A子や段田山のことを見下しているところがあり、2人を根っからのドレイと評した。 どんな状況にいても、いつも強気の姿勢を崩さない。

段田山 (だんだやま)

少年漫画雑誌「少年カピトン」の編集長で、尾日間奈良木テヨネの担当を務める男性。群馬県谷川温泉への接待旅行を企画し、テヨネとスタッフたちを招待した。やや太っていて暑がりで、いつも額に汗をかいている。テヨネを漫画家デビューへと導いた恩人だが、テヨネに対してはいつも腰の低い態度で接している。そのため、田渕A子には卑屈っぽくて好きになれないと思われている。 ご飯のおこげに目がなく、A子の作ったおこげが食べたいと、強くA子に迫った過去がある。

田子 二毛作 (たご にもさく)

群馬県谷川温泉近辺を管轄する、谷川署所属の刑事。事件現場で犯人に対し怒りの言葉をもらすような、正義感あふれる中年男性。本人の真剣さに反して、庶民的ないでたちと言動により、何かとコミカルな雰囲気を漂わせていることが多い。旅館で事件が起こるたびに事件現場に出動し、部下の土手村とはしばしば行動をともにしている。

土手村 (どてむら)

群馬県谷川温泉近辺を管轄する、谷川署所属の刑事。熱血漢の若い男性。上司の田子二毛作と事件現場でしばしば行動をともにする。事件の捜査中に自動車にはね飛ばされたり、訪問先の建物に軽飛行機が墜落したりといった、危険なトラブルに遭うことが多い。そのため、時間が経つにつれてケガが増えていくが、それでも仕事に穴を空けることはない。

異臭院 薫 (いしゅういん かおる)

群馬県警の警部。群馬県警始まって以来の異才と評され、「前橋のシャーロックホームズ」の異名を持つ男性。冷静で理路整然とした話し方をする。発生した連続殺人事件において、群馬県警本部が捜査班の指揮を執らせるために現場に送り込んだ人物で、事件の真相を一番早く見抜き、田子二毛作と土手村に重要なヒントを与えた。なお、異臭院薫の周囲にはいつもハエが飛んでおり、薫自身の姿がはっきりと描かれることはない。

氷漬けの男 (こおりづけのおとこ)

群馬県谷川岳・一の倉沢で登山隊に発見された、ベレー帽をかぶった遭難者の男性。漫画制作の道具とともに、万年雪に埋まり冷凍保存されたようになっていた。死んでから10年経っていると推定されたにも関わらず、遺体の状態が非常に良くほとんど腐敗が進んでいない。身元の特定を目的として、発見地の郷土資料館でこの男をテーマとした展示会が開かれる。

鰐渕 馬七 (わにぶち ばなな)

群馬県の飛び地の離島、甘蕉鰐島にある洋館に住む老人。田渕A子を家政婦として雇っていた。ある夜、風呂場での爆発事故により急死してしまう。跡取りや妻がおらず、妹の大竜黒子とも疎遠であったため、遺産相続に関わる遺言状を作って顧問弁護士の火水木金土に託していた。

火水木 金土 (かみずき かねと)

鰐渕馬七の顧問弁護士を務める初老の男性。生前、馬七から遺言状を託され、馬七の死後に甘蕉鰐島に相続関係者を集めた。穏やかに他人に接し、あまり感情を表に出さない。甘蕉鰐島に隠された秘密があることに気付いて執事の吉田に問いただすなど、観察力の鋭さを持つ人物。

吉田 (よしだ)

鰐渕馬七の執事で、初老の男性。生前は馬七のダジャレに即座に答え、馬七の死後も来訪者の食事の準備をするなど、真面目に執事の役目を果たした。鰐渕家に長い間務めていることから、甘蕉鰐島と鰐渕家について、近親者も知らない事情を多く知っている。

大竜 黒子 (だいりゅう くろこ)

鰐渕馬七の妹。馬七とは別々に暮らし、疎遠にしていたが、火水木金土から呼び出しを受けて、甘蕉鰐島にやって来た。甘蕉鰐島に集められた関係者の前で、自分が馬七の唯一の肉親であると強く主張し、遺産を受け継ぐ権利は自分と夫と息子のぴろしにあると金土に詰め寄った。興奮すると、大きな頭が風船のように膨張する。

ぴろし

大竜黒子の息子。ロングヘアに長いベスト、ベルボトムのスボンというヒッピー風のスタイルで、いつもニヤニヤ笑っているおちゃらけた雰囲気の男性。火水木金土から呼び出しを受けて、甘蕉鰐島にやって来た。遺言書の内容によらず、鰐渕馬七の残した遺産を確実に手に入れようと、大竜黒子とその夫と組んで、一策を講じる。

(おっと)

大竜黒子の夫。見た目も性格も地味な印象の男性。火水木金土から呼び出しを受けて、甘蕉鰐島にやって来た。発言も行動も押し出しの強い黒子の陰に隠れて、存在感もかなり薄い。鰐渕馬七の遺産が手に入らない可能性が高いことを知ってからはすぐに島から帰ろうとしたが、黒子に責められて島に留まった。

有井 鯨太 (ありい げいた)

甘蕉鰐島に住む以前に、鰐渕馬七が愛人に産ませた子供だと名乗る男性。婚約者の斑野ひも子とともに甘蕉鰐島にやって来た。有井鯨太は出生証明書を持参して自分が馬七の実子だと主張するが、大竜黒子にはウソつきと言われ疑われる。馬七の残した遺産を手にするため、ひも子と手を組んで田渕A子を事故死にみせかけて殺害しようとするが失敗に終わる。

斑野 ひも子 (まだらの ひもこ)

有井鯨太の婚約者の女性。二又に分かれた舌をちろちろと出しながら話し、外見もヘビに似ている。鰐渕馬七の残した遺産欲しさに、鯨太とともに甘蕉鰐島へとやって来た。鯨太と手を組んで田渕A子を事故死にみせかけて殺害しようとするが失敗に終わる。

ターザン風の男 (たーざんふうのおとこ)

殺人事件の疑いで捜査中の鰐渕馬七の洋館に、高らかな雄叫びをあげて飛び込んで来た男性。植物のつるにつかまり、窓を蹴破って現れた。アニマル柄の腰巻のみをまとった筋肉質のたくましい体は、まさにターザンそのもので、相棒の猿を連れている。田渕A子が甘蕉鰐島に来た時から好きだったと話し、A子にプロポーズしてくる。

キヨ

鰐渕家のメイド頭で、田渕A子の先輩にあたる女性。とても大柄で、普通の部屋では頭が天井についてしまうほど背が高い。その大きな身体の割には草むらから突然現れたりしてA子を驚かせる神出鬼没の人物。制服のブラウスのサイズが合わず、ボタンが閉まらずにちぎれ飛んでいるが、本人はそのことを気に留めていない。鰐渕家に勤めて長く、かなり昔に起きた出来事も知っている。

風呂に浮く男 (ふろにうくおとこ)

群馬環状温泉特急「たにがわ」の露天風呂で、うつ伏せに浮いたままで死んでいた男性。列車専属の医師である湯当直志益に死亡の診断を受けるまで、乗客たちに放置されていた。遺留品にはスボンが見当たらず、下着のままで列車内を歩き回っていたと見られている。

車掌 (しゃしょう)

群馬環状温泉特急「たにがわ」の車掌の男性。全身から明るく和やかなムードを放ち、周囲を和ませる。接客態度も堅苦しくなく、乗客にまじって温泉につかり雑談をするようなスタイル。ちなみに車掌の帽子と蝶ネクタイは、入浴時でも着用したままで外さない。

赤城山 名月 (あかぎやま めいげつ)

群馬県知事の男性。群馬環状温泉特急「たにがわ」の開通式でテープカットをした際、切ったはずのテープがつながる手品を披露した。その見事さはのちに乗客たちの話題に上るほどだった。次の手品は大脱出を披露するのではないかと乗客たちに噂されている。「たにがわ」に乗車中に、行方をくらませた。

鎌尾 拓三 (かまお たくぞう)

群馬環状温泉特急「たにがわ」の機関士。業務中に何者かに襲われて死亡し、すり替わられていた。普段から業務により全身がススで汚れたままだったために本来の顔を知られておらず、死体を見た誰もが鎌尾拓三だと気づくことはなかった。そのため彼の死体は、しばらく身元不明とされていた。

湯当直 志益 (ゆあたりなお します)

群馬環状温泉特急「たにがわ」の列車専属医師で、乗客とともに列車に乗り込み、乗客に何かあった場合に備えている。風呂に浮く男の死亡確認をした。シュノーケルをつけて温泉の湯の中に潜水し、遺体に直接触れずに診断するという技を持つ。

場所

甘蕉鰐島 (ばななわにとう)

群馬県の飛び地の離島。実在の群馬県は海に面してはいないが、作中では群馬県の沖、東方10キロほどの位置にある。島には南洋植物の花が咲き乱れ、ワニが放し飼いになっている他、近辺の海には守り神のタコがいるなど、豊かな自然に恵まれている。島に近づく時は船の上でタイコを叩き続けてその音でタコを遠ざけないと、船が襲われてしまうので注意が必要。

群馬環状温泉特急「たにがわ」 (ぐんまかんじょうおんせんとっきゅうたにがわ)

一両を丸ごと浴室にした車両編成が特徴の温泉列車で、主に群馬県内を運行している。乗車中は自由に入浴してよく、何度も温泉に入り寛ぐ乗客もいる。最後尾の車両には露天風呂があり、見晴らしはとても良い。昔ながらの機関車による編成で運行され、トンネルで窓を開けると黒い煙が車内に流れ込んでしまう。浴場は混浴。

SHARE
EC
Amazon
logo