夢見が丘ワンダーランド

夢見が丘ワンダーランド

増田英二の『実は私は』『週刊少年ハチ』に次ぐ連載作品。UFOが不時着したことをきっかけに常識が崩れ、なんでも願いが叶うワンダーランドと化した日本を舞台に、中学生の小平小太郎や人間の姿になったタンジョウヅルのターニャをはじめとするさまざまな登場人物の自由な生き様を、オムニバス形式で描いたワンダーランド・コメディ。この世界では、なんでも願いが叶うことによって引き起こされる奇妙な現象や、それを享受する人々の日常がコミカルに表現されている。一方で、一見楽しそうに見える人々の裏には歪んだ願いが潜んでおり、それが周囲の人々に危険をもたらすなど、シリアスな展開が見どころになっている。秋田書店「別冊少年チャンピオン」2020年9月号から2022年1月号にかけて掲載の作品。

正式名称
夢見が丘ワンダーランド
ふりがな
ゆめみがおかわんだーらんど
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
ファンタジー
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願いが叶うワンダーランドへの変貌

本作の舞台である日本は、七夕の日にUFOが落下したことをきっかけに、願いが実現するワンダーランドへと変貌を遂げる。この世界では、「空を飛びたい」と願えば、実際に空を飛ぶことが可能になったり、「家事を楽に進めたい」と願えば、頭と手が三つに増えて作業が容易になるなど、常識を超えた願いが実現する。ただし、他者の記憶や過去を操作したり、他人を意のままにあやつるような願いや、過去に戻って特定の分野で一番になるといった、他者に影響を及ぼす願いは叶えられないとされている。なお、住民たちはこの世界が一夜にしてワンダーランドに変わったことに対して特に違和感を抱いておらず、その変化に疑問を持つのは小太郎や木五倍子教授といった一部の人々に限られている。

ワンダーランド化した日本の日常

本作では、ワンダーランドと化した日本で生活する人々の非常識な日常が描かれている。現実主義者の小太郎は、周囲に馴染めずにいたが、密かに思いを寄せていた女性「アコギさん」に気持ちを伝えるため、ワンダーランドの特性を活用し、次第にこの世界に親しみを抱くようになる。また、高校生の中山下たかしに助けられたタンチョウヅルのターニャは、ワンダーランドの影響で人間の姿を手に入れ、恩返しのためにたかしと共同生活を始める。さらに、食いしん坊の女子高校生、卯月律や、ヒーローを目指すタカ、ナナミ、ハカセの三人組、表向きはつねにいがみ合っているが、実は両思いの春島冬太と氷室炎華など、さまざまなキャラクターが登場する。彼らはワンダーランドの特異な状況に翻弄されながらも、充実した日々を送る様子が見どころとなっている。

ワンダーランドに潜む闇

初恋の相手であるアコギさんとの交流を通じて、ワンダーランドに対して前向きな感情を抱くようになった小太郎は、ワンダーランドを研究している木五倍子教授とその助手である紅音クレアに協力することになる。しかし、クレアは恋心を抱く木五倍子教授のために過剰な行動を取るようになり、小太郎は不安を覚える。さらに、木五倍子教授がクレアの願いによって生み出された「ドッペルゲンガー」と呼ばれる模造体の一つであることが示唆される。そんな中、小太郎は偶然出会った「悪魔」を自称する少女から、ワンダーランドは願いが具現化するだけでなく、そこに住む人々の思いの強さによって変化する世界であることを教えられる。ワンダーランドの真実とクレアの過去を知った小太郎は、かつて彼女によって過去を暴かれたクコと共に、クレアを絶望から救い出し、彼女の本当の望みを理解しようと行動を起こす。

登場人物・キャラクター

小平 小太郎 (こだいら こたろう)

とある中学校に通う3年生の男子。大好きだった兄に対して暴言を吐いてしまったことが心の中に重くのしかかり、自己主張を抑える現実主義的で内向的な性格に変わってしまった。世界がワンダーランドに変わっても「何でも願いが叶う」という状況に懐疑的で、その恩恵を受け入れようとは思っていない。しかし、初恋の相手であるアコギさんとの交流を通じて、自分の本心を伝えることの大切さに気づき、ワンダーランドに対して好意的な感情を抱くようになる。その後も細かいことが気になる癖は変わっていないものの、以前とは打って変わって明るい性格になった。さらに、木五倍子教授やクレアのワンダーランドの研究への協力、そして「悪魔」と名乗る少女との出会いを経て、やがてワンダーランドに隠された秘密の核心にせまっていく。

ターニャ

人間の姿をしたメスのタンチョウヅル。ロシア出身で、越冬のために日本を訪れた際にケガをしてしまい、たかしに助けられる。それ以来、ロシアに帰ることなく日本での生活を続けていたが、世界がワンダーランド化した影響により人間の姿を手に入れたことで、恩返しの名のもとにたかしの住む恩返荘を訪れ、共同生活を始めることになる。いたずら好きで嫉妬深い性格で、人間として得た知識を活かしてたかしをからかったり、自らのスペースを作ってのんびりと過ごしている。そのため、恩返しに対する熱意はあまり高く見えないが、内心ではたかしに深く感謝しており、次第に彼を恩人としてだけでなく、一人の人間としても慕うようになる。

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