あらすじ
魔獣と一進一退の戦闘を繰り広げる冒険者のアルヴィンは、突然背後からヒーラーのカーラから声をかけられる。アルヴィンはカーラに体力の回復魔法をお願いすると、カーラからは人に助けを求めるなら跪(ひざまず)いて額と両手を大地につけるべきだと、土下座を要求されてしまう。アルヴィンが助けてくれたら一つだけ言うことを聞くとカーラに提案すると、彼女は自分とパーティーを組んでほしいと返答する。カーラの要求を受け入れたアルヴィンは改めて体力の回復をお願いするが、アルヴィンの大声に驚いたカーラは間違って「300メートル離れたら死亡する」という呪いをかけてしまうのだった。(第1話「遭遇」)
ある日、アルヴィンとカーラは倒れていたゾンビのゾビ太を助ける。意識を取り戻したゾビ太からネクロマンサーに魅了された仲間の救出を依頼された二人は、ゾンビが集まる墓地へと向かう。墓地にいたネクロマンサーのマリア・デスフレイムにアルヴィンが事情を説明していると、マリアを心配したゾンビたちが集まってきて一触即発の危機を迎える。アルヴィンはカーラを守るためにゾンビたちの前に立ちはだかるが、カーラの無礼な一言を聞いてゾンビ側に味方する。(第17話「ネクロマンサー」)
各地を旅して街に戻ったアルヴィンとカーラは、自分たちの冒険者ランクの更新するために冒険者ギルドを訪れる。前回の測定ではカーラは星1~5のうち星3で、アルヴィンはランク測定紙に描かれた魔法陣が反応しなかったため、星0という結果だった。しかし今回の旅ではゴーレム、サイクロプス、ソンビ、メデューサなど凶悪な魔物と戦いながらも生き残ったため、アルヴィンは周囲から高ランクが期待された。はやる気持ちを抑えてアルヴィンが魔法陣に血判を押すと、衝撃的な結果が表れるのだった。(第27話「冒険者ランク」)
冒険者ギルド長のフォークスに呼び出されたアルヴィンとカーラは、ギルド長室で北の山に棲(す)みついたブラック暗黒ダークネス四天王の調査を依頼される。アルヴィンたちは四天王のアジトを見つけて中に入ると、四天王の一人であるゲイリッジに襲われる。ゲイリッジは本気を出すために自分の拘束している鎖を引きちぎろうと力を込めるも失敗。そんなゲイリッジの様子を見たカーラは、ゲイリッジに強烈な一撃を加えるのだった。(第35話「四天王」)
メディア化
テレビアニメ
2022年4月から、本作『このヒーラー、めんどくさい』のテレビアニメ版『このヒーラー、めんどくさい』がAT-XやTOKYO MX、インターネット配信ほかで放映された。制作は寿門堂が担当している。キャストは、アルヴィンを佐藤拓也、カーラを大西亜玖璃、オルテガイアを泊明日菜、マリア・デスフレイムを早見沙織が演じている。
登場人物・キャラクター
アルヴィン
冒険者の男性。戦闘では戦士として前衛を担当している。年齢は30歳。プレートアーマーを着ているため防御力は高いものの、攻撃力は低い。駆け出し冒険者ということもあり、周囲からは「歩くお荷物」とも呼ばれている。生真面目な性格で面倒見が非常にいい。魔獣との戦闘中に声をかけてきたヒーラーのカーラに、体力の回復魔法を頼むものの、誤って「カーラから300メートル離れたら死亡する」という呪いをかけられてしまう。戦闘後はカーラとパーティーを組んで行動を共にするようになるが、カーラの慇懃(いんぎん)無礼な言動や破天荒な行動に振り回され続けている。
カーラ
冒険者でダークエルフの女性。年齢は72歳ながら、人間に換算すると14歳〜15歳の少女の見た目をしている。聖職者の神官でヒーラーのため、回復魔法をはじめとしたさまざまな魔法が使える。物怖(ものお)じせずに思ったことをすぐに口にする正直な性格だが、空気が読めないところがあるため無自覚のまま相手を煽(あお)ってしまう。そのため、周囲からは「災厄地雷ヒーラー」と呼ばれており、ずっとパーティーが組めずにいた。一人で魔獣と戦っているアルヴィンに声をかけ、体力の回復魔法を頼まれるものの「自分から300メートル離れたら死亡する」という呪いをアルヴィンにかけてしまったことで、結果強制的に初めてのパーティーをアルヴィンと組むこととなる。アルヴィンに対しては、戦力としては心許(こころもと)ないと思いながらも、いっしょにいると楽しいと感じている。
オルテガイア
アルヴィンとカーラが冒険中に出会ったキノコ型の魔物。年齢は100歳前後で、柄の部分に目や口があり、さらに両手と両足も生えている。牢屋(ろうや)の鉄格子を曲げられるほどの腕力を誇り、発剄(はっけい)などの武術も使える。カーラから魔法をかけられたことで二人と知り合い、冒険に同行する。
ゾビ太 (ぞびた)
ゾンビ系ダンスサークル「ビー・ゾンビシャス」のリーダーを務める男性型のゾンビ。仲間のゾンビがネクロマンサーのマリア・デスフレイムのダンスに魅了されてサークルから去ってしまったため、マリアに逆恨みして復讐(ふくしゅう)を誓うが途中で倒れてしまう。自分を助けてくれたアルヴィンとカーラに運命を感じ、自分の代わりに復讐してほしいと依頼する。
マリア・デスフレイム
ネクロマンサーを生業としている女性。穏やかで優しい性格をしている。ダンスを得意としており、ゾンビ系ダンスサークル「ビー・ゾンビシャス」の所属する多くのゾンビから慕われている。幽体離脱して遊んでいたら魂のまま迷子になった妹のエリーを探しており、魂が集まりやすい墓地を巡っている。
メデューサ
伝説の怪物と恐れられている魔物。宝石のように輝く目で見た対象を石にする能力を持ち、多くの街や村を恐怖に陥れたことで長いあいだその力を封印されていた。カーラが占いの時に投げた水晶玉により、封印していた女神像が壊れたことで復活する。何度も石化してもすぐに元に戻るアルヴィンを見て、自分のアイデンティティを失って落ち込む。その後カーラに励まされ、いっしょにスイーツを食べる仲となる。
ドリアード
メデューサが封印されていた森の管理者を務める木の精霊。メデューサが復活したことを感じ取って姿を現し、復活させたアルヴィンとカーラにメデューサ退治を命じる。ふだんは目を閉じているが、性的に興奮すると大きく目を見開く。
ゲイリッジ
ブラック暗黒ダークネス四天王を務めるオーガの男性。「剛力王」の異名を持つ。やせ細った貧弱な体格ながら力が強く、ふだんは上半身や両腕を鎖で拘束して力を抑制している。好戦的な性格で、弱い相手に対しても全力で戦う。
ルフラン
ブラック暗黒ダークネス四天王を務める獣人の女性。「疾風」の異名を持つ。四天王一のスピードを誇り、自分のスピードに絶対の自信を持っている。しかし頭が悪いため、カーラのブラフにすぐに騙(だま)されて勝手に負けを認めてしまう。
マックジャック
ブラック暗黒ダークネス四天王を務める魔物。「謀略の道化師」の異名を持つ。肉体的な能力は四天王で最弱ながら、頭脳明晰(めいせき)で参謀役を担っている。情報を集めるためにアジトに乗り込んで来たアルヴィンを捕らえ、アルヴィンを人質にカーラとクイズで対決した。
集団・組織
ブラック暗黒ダークネス四天王
北の山に棲みついている魔物の集団。「BAD四天王」とも名乗っている。四天王ながら構成メンバーはゲイリッジ、ルフラン、マックジャックの三人しかいないため、四人目はゲイリッジ、ルフラン、マックジャックが日替わりの当番制で担当している。自己主張が非常に強く、アジトの入り口には大きな看板を掲げている。
書誌情報
このヒーラー、めんどくさい 8巻 KADOKAWA〈MFC〉
第6巻
(2023-01-23発行、 978-4046818003)
第7巻
(2023-10-20発行、 978-4046829429)
第8巻
(2024-09-21発行、 978-4046839466)