滅びかけた世界で、カイナとリリハが出会う
本作の舞台は、文明が衰退し滅びゆく世界。降り続ける雪による「雪海」で地表は埋もれてしまっている。人々は、各地にそびえ立つ巨木「軌道樹」に天膜を張り、その上で生活していた。かつては多くの村が存在したが、軌道樹から得られる水が枯れはじめ、今はカイナが暮らす村だけが残されていた。雪海に人類はいないと思われていたが、ある日カイナは、浮遊虫という空中を浮かぶ虫を利用して登ってきたリリハという少女と出会う。彼女は、軌道樹の根本にある小国アトランドの王女であり、水を無限に生み出す賢者の存在を信じて天膜の上までやってきたという。しかし、賢者がいないことを知ったリリハは、他国との争いを抱えたアトランドに帰ることを決意。カイナは特殊な道具とロープを使い、リリハとともに雪海へと旅立った。
水を求めて侵略を続けるバルギア
雪海に覆われた地上では、人が住めるのは軌道樹の根本のわずかな場所しかない。雪海の国々は、軌道樹にすがりつくように存在し、そこから得られる少量の水に頼って生きている。そんな中、バルギアという強大な船団を持つ国が、近隣の国々を侵略し水を奪い始めた。バルギアの魔の手はアトランドにも及んでいた。バルギアの実体は移動要塞であり、元は枯れた軌道樹の民を救って回る船だったが、人が増えて膨れ上がり、国を侵略するようになったという。天膜から帰ってきたとたん、リリハは待ち伏せしていたバルギア軍に捕まり、アトランドとの交渉材料になってしまう。難を逃れたカイナは、アトランドでリリハの弟、ヤオナと出会い、リリハを助けるためにバルギアに潜入する。
カイナとリリハは大軌道樹を目指す
雪海での争いの原因は水不足である。カイナは天膜から巨大な軌道樹が見えていたことを思い出す。すべての人を養えるぐらいの「大軌道樹」があれば、争いは起こらない。アトランドの地下で、見かけた「大」という漢字が書かれた大きな旗が何か手がかりになるかもしれない。そう考えたカイナとリリハ、ヤオナは地下へ向かう。この世界の人間で文字を読める者はほとんどいない。カイナは村にいた「看板じい」という、謎の板「カンバン」を集める変わり者から文字を習っていたのだ。はたして、地下の旗には大軌道樹の文字があった。それが雪海の世界の地図だと知ったカイナたちは、大軌道樹を目指す決意をする。
登場人物・キャラクター
カイナ
巨木、軌道樹の上に広がる天膜の村で暮らしていた茶髪の少年。母はカイナが生まれてすぐに栄養不足で亡くなり、父は母のために大きな虫の卵を取りにいき、逆に食べられてしまった。天膜の村は高齢化が進んでいたため、若いカイナが虫の狩りを担当していた。「看板じい」と呼ばれる老人に教えられ、文字を読むことができる。ある日、天膜にやってきたリリハと出会い、下界である雪海へと降りる。
リリハ
軌道樹の根本にある1000人ほどの小国アトランドの王女。金髪の少女。水を無限に作れるという賢者の存在を信じ、天膜の上にやってきてカイナと出会う。無謀な面があるが、自己犠牲を厭(いと)わない気高さを持っている。自国のことはもちろん、雪海全体のことを考え、水不足の根本的な解決を望んでいる。
クレジット
- 原作
書誌情報
大雪海のカイナ 4巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2022-12-08発行、 978-4065300206)
第2巻
(2023-02-09発行、 978-4065307632)
第3巻
(2023-10-06発行、 978-4065334980)
第4巻
(2024-10-08発行、 978-4065370643)