あらすじ
転生先は闇
とある日本人の青年は、妹に頼まれて女性向けの恋愛シミュレーションゲーム、いわゆる「乙女ゲー」の全クリアを目指してプレイしていた。ゲームをプレイしていたため疲れが溜まっていた青年は、そのまま外出しようとしたところ、階段から足を踏み外してそのまま帰らぬ人となってしまう。そして青年は気が付けば、異世界で少年、リオン・フォウ・バルトファルトに生まれ変わっており、リオンはその世界が前世でプレイしていた乙女ゲーの世界であると知り、愕然(がくぜん)とする。異世界は女尊男卑なうえに、バルトファルト家は辺境の貧乏貴族で、家は正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトに牛耳られていた。バルトファルト家の三男であるリオンはゾラにとって邪魔者で、ゾラはリオンを変態貴族に金で売ったうえで、戦場に放り出して亡き者にする計画を立てていた。命の危機を感じたリオンは一念発起し、自由を手にするため冒険者となる。小舟一つで大空に乗り出し、リオンはゲーム時代の知識に賭けて、一攫(いっかく)千金を狙ったのだ。そしてリオンは賭けに打ち勝ち、小さな浮島を発見し、遺跡で眠っていた古代の宇宙船を発掘する。しかし、その宇宙船のAIはリオンを敵視しており、彼に襲い掛かる。リオンは破れかぶれになりつつも、AIと戦う。リオンに興味を覚えたAIは彼を治療し、マスターとして認めるのだった。そしてリオンはAIに「ルクシオン」と名づけ、彼の力を借りて凱旋(がいせん)し、ゾラに大金を手渡すことでつかの間の自由を手にする。しかしリオンの冒険は大手柄となってホルファート王国に報告され、リオンは男爵の地位に就くこととなる。貴族の当主となれば国へ貢献せねばならないため、リオンは新たな苦労を抱え込むこととなる。
決戦前夜
リオン・フォウ・バルトファルトは当主として学園の「上級クラス」に入学することとなったが、この学園は「乙女ゲー」の舞台であるのと同時に、貴族として結婚相手を探す社交場でもあった。ゾラ・フィア・バルトファルトのような女性だけは嫌だと感じたリオンは、なんとしてでも学園で良縁を手にしようと考える。だが、女尊男卑は学園の女子にまで浸透しており、リオンは散々な目に遭う。そんな中、リオンはゲームの主人公であったオリヴィアを発見。孤立し、様子のおかしいオリヴィアと交友を持つようになる。また、ゲームでは主人公に対立する悪役令嬢であったアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブも、話してみれば意外にも話のわかる人物で、アンジェリカとオリヴィアを引き合わせることで、オリヴィアの境遇も改善される。しかしアンジェリカは、王太子であるユリウス・ラファ・ホルファートの婚約者であったが、ユリウスは子爵家令嬢であるマリエ・フォウ・ラーファンに好意を抱き、アンジェリカとマリエは対立する。その対立は徐々に大きなものとなり、周囲に波紋を生んでいくが、マリエはさらに有力貴族のジルク・フィア・マーモリア、ブラッド・フォウ・フィールド、グレッグ・フォウ・セバーグ、クリス・フィア・アークライトまで籠絡して、逆ハーレムを形成してしまう。リオンはマリエが手を出しているのが、ゲームの攻略対象者ばかりであることから、彼女への疑念を深める。また事ここに至り、アンジェリカは不貞を働くマリエを糾弾し、決闘を申し込む。しかしユリウスはマリエに味方し、アンジェリカは衆人環視のもと孤立してしまう。その姿を見たリオンは堪忍袋の緒が切れ、アンジェリカの決闘の代理人に名乗りを上げる。
愚か者たち
学園でも女子に虐げられ続け、貴族社会の負の面ばかりを目にしてきたリオン・フォウ・バルトファルトは、マリエ・フォウ・ラーファンたちへの嫌悪がトドメとなってついに堪忍袋の緒が切れ、勢いのままアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブに味方をすることを決める。決闘はユリウス・ラファ・ホルファートをはじめとした逆ハーレムメンバー五人対リオンとなったが、リオンは不敵な笑みを浮かべて、それを受け入れる。決闘は「鎧」と呼ばれるロボットを使って行われるが、リオンはルクシオンが製造した「アロガンツ」を使い、その圧倒的な性能差で五人を叩(たた)きのめす。そしてリオンはユリウスを公然の場で徹底的に糾弾し、学園中から嫌われたうえで姿をくらます。リオンのことを心配するオリヴィアだったが、リオンは最初から学園生活に嫌気が差しており、そのまま退学するつもりだった。そしてリオンは、アンジェリカの実家であるレッドグレイブ公爵家に後始末を頼み、実家に戻る。リオンは重すぎる貴族の地位も学園生活も捨て去り、自由になったと喜ぶが、そのリオンの態度を潔いと感じた貴族たちは、リオンが我が身を顧みずに王太子に諫言(かんげん)した忠臣として出世させてしまう。その結果、リオンはつかの間の自由と再び決別し、騎士として叙勲され、学園に舞い戻ることなったのだ。一方、ユリウスたちは今回の一件で実家から廃嫡され、勘当される形で追い出されてしまう。マリエは無職となった五人を養う羽目となり、その事実に愕然とするのだった。
亀裂
リオン・フォウ・バルトファルト、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブ、オリヴィアの三人は決闘騒ぎを機になかよくなり、学園祭でもいっしょに出しものをしていた。また、マリエ・フォウ・ラーファンは文無しとなった五人を養うため、金稼ぎに精を出すこととなり、ホストまがいの喫茶店やバイクレースに参加していた。しかし、バイクレースに参加していたジルク・フィア・マーモリアは、相手チームの妨害に遭って大ケガを負ってしまう。実は妨害してきたのはジルクの元婚約者であるクラリス・フィア・アトリーの取り巻きで、ひどい振り方をしたジルクへの報復だった。リオンもクラリスの言い分に共感していたが、ジルクが欠席すると大会を主催する側であるアンジェリカの評判も下がってしまうため、リオンは渋々ジルクの代役を申し出る。そしてリオンはバイクレースに勝つも、リオンもジルクの態度に怒り、勝者の特権を使ってジルクにクラリスに詫(わ)びを入れさせにいく。これによってリオンもクラリスと和解し、学園祭は騒々しくも過ぎ去っていくが、学園祭でも学園が女尊男卑と権謀術数うず巻く場所であることは変わらなかった。リオンは学園祭の最中、半ばだまし討ちに近い形で、カーラ・フォウ・ウェインから空賊退治の依頼を引き受けることとなり、学園祭終了後赴くことを約束する。また、アンジェリカとオリヴィアは身分の差を乗り越え、学園祭を通じてどんどん絆を深めていっていた。しかしオリヴィアは、カーラの裏で暗躍するステファニー・フォウ・オフリーに目を付けられ、彼女の悪意にさらされることで、身分の差を実感。アンジェリカやリオンとの絆(きずな)に亀裂が入り、オリヴィアは孤独の中、深く落ち込むこととなる。
空賊退治
リオン・フォウ・バルトファルトはカーラ・フォウ・ウェインとの約束を守るべく、彼女の実家の領地に赴く。オリヴィアのほかに、ブラッド・フォウ・フィールド、グレッグ・フォウ・セバーグも同行することとなり、道中は賑(にぎ)やかなものとなる。そして空賊と裏でつながっていたステファニー・フォウ・オフリーの思惑どおり、リオンたちは襲われることとなるが、リオンはあっさりこれを返り討ちにする。カーラとステファニーの罠(わな)を打ち破り、逆にそれを利用して己の利益とするのだった。ホクホク顔だったリオンだったが、あまりに鮮やかに事件を解決したリオンに、オリヴィアは身分の差を実感し、彼の存在を拒絶してしまう。オリヴィアの姿を見て、リオンは自分がオリヴィアを守っていたつもりが、ただ単に過保護になっていたに過ぎなかったことを実感。自分はこの世界にとって異物で、その他大勢の「モブ」の一部でしかないと悟る。そしてリオンは、捕まえた空賊たちから情報を聞き出し、彼らの本拠地を強襲。半ば八つ当たり気味に彼らを倒し、ステファニーたちが空賊とつながっている証拠を王都に提出するのだった。また、リオンは空賊退治の手柄をブラッドとグレッグに押し付けることで、彼らの勘当を解く。リオンからの心意気に感謝したブラッドとグレッグはささやかな返礼をするが、それによってリオンはさらに出世してしまい、ますます貴族としての責務に苦しむこととなる。また一方、オリヴィアは己の行いを悔いてリオンに謝罪しに向かうが、リオンは「モブ」の自分にオリヴィアは相応(ふさわ)しくないと考え拒絶。二人の関係はますますこじれたものになってしまう。
聖女の力
リオン・フォウ・バルトファルトたちはぎくしゃくとした関係のまま、修学旅行の季節を迎える。修学旅行は3グループに別れて行われるが、リオンはアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブ、オリヴィア、さらにクリス・フィア・アークライトまで混ざったメンバーで旅行に赴くこととなる。なんだかんだで旅行を満喫していたリオンたちであったが、客船で航行中、突如として魔物の群れに襲われる。リオンはその状況がゲーム時代に覚えがあり、すぐさま隣国であるファンオース公国による侵略であると察する。客船であるため、学生たちは即座に降伏。アンジェリカは自ら人質になることで学生たちを救おうとするが、リオンはこれに反対する。しかし、学生たちは我が身かわいさからリオンを暴行して牢(ろう)に押し込め、アンジェリカはファンオース公国に囚われてしまう。さらにファンオース公国は約束をさらさら守る気がなく、ファンオース公国の王女であるヘルトルーデ・セラ・ファンオースは学生たちの皆殺しを宣言し、それをもってホルファート王国へと宣戦布告することを決める。絶望に暮れる学生たちの中、クリスは牢につながれたリオンに協力を要請。牢から解放されたリオンは、敵を前にうなだれる学生たちを臆病者と罵り、学生たちの反骨精神に火を点ける。そしてリオンは逃げるのではなく、学生たちが船を守るあいだに敵の本陣を突っ切って、アンジェリカの奪還とヘルトルーデを人質にする作戦を立案する。リオンはエアバイクで戦場を突っ切っていくが、船は敵に囲まれ、敵の攻撃にさらされてしまう。最早、船の命運は風前の灯火(ともしび)かと思われたが、そこでオリヴィアは聖女の力を覚醒。その力で船を守り、リオンがアンジェリカを救うための血路を開くのだった。
友達
リオン・フォウ・バルトファルトは魔物たちの中を突っ切り、ついに敵の本陣にたどり着く。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブを救い、ヘルトルーデ・セラ・ファンオースの身柄と、魔物をあやつる「魔笛」を回収したリオンは、そのまま船に帰還する。ヘルトルーデを人質にしたことで戦いは終結したかに思われたが、公国の伯爵であるゲラットは己の失態を隠すべく、ヘルトルーデは死んだと宣言。そのまま戦争を続行する。リオン、アンジェリカ、オリヴィアはそれぞれ死力を尽くして戦い、戦いの中で思いを確かめ合うことで、身分の差と言う溝を乗り越え、確かな絆で結ばれる。そして彼らが奮闘することで、ルクシオンの本体が到着し、戦場の敵を一掃する。リオンもアロガンツを使って残党と戦うが、そこに公国最強の騎士、バンデル・ヒム・ゼンデンが現れる。リオンはアロガンツと互角以上に戦うバンデルに苦戦するも、奇策を用いてこれを打ち破る。公国は万策尽きるが、ゲラットはそれでも往生際が悪く、魔物たちを暴走させることで敵味方すべてを滅ぼそうとする。しかしそれすらもルクシオンの力によってあっさり潰され、公国は完敗。リオンは公国の装備をすべて奪い、彼らを放逐するのだった。そしてリオンは、今度はクリスに手柄を押し付けるも、リオンの勇姿を知る者たちは彼を援助した結果、リオンはさらに出世し、子爵の地位に就くのだった。
関連作品
小説
本作『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』は、三嶋与夢の小説『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』を原作としている。イラストは孟達が担当している。三嶋与夢が「小説家になろう」に投稿した作品で、マイクロマガジン社「GCノベルズ」から刊行された。書籍版は「小説家になろう」に投稿されたweb版と一部内容が異なっており、書籍版でのみの独自展開も存在する。
テレビアニメ
2022年4月から6月にかけて、原作小説『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』のテレビアニメ版『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』が、AT-X、BS日テレ、TOKYO MX、インターネット配信ほかで放送された。制作はスタジオENGIが担当している。キャストは、リオン・フォウ・バルトファルトを大塚剛央、ルクシオンを石田彰、オリヴィアを市ノ瀬加那、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブをファイルーズあいが演じている。
登場人物・キャラクター
リオン・フォウ・バルトファルト
バルトファルト男爵家の三男の少年。前世の記憶があり、前世では日本人の青年だった。妹に弱みを握られ、無理やり「乙女ゲー」のクリアを強要されていた。ゲーム攻略に疲労困憊(こんぱい)の中、階段を踏み外して死亡した。今世の5歳で記憶を取り戻し、この世界が前世で死ぬ直前までやっていた乙女ゲーであると知り、絶望する。貴族とは名ばかりの貧乏貴族なうえに、家は父親の正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトに牛耳られている。ゾラにとって側室の子である自分は目障りだと自覚しており、そのうち利用されて謀殺されると察している。平穏な生活を求めており、日々の忙しさからゲーム知識の無双も当初は考えていなかったが、15歳になってゾラがいよいよ動き出したため、ゲーム知識を使って賭けに出ることを決意。冒険の果てにルクシオンを発掘し、ゾラに財宝の一部を渡したことで鼻を明かした。つかの間の自由を手にするが、発掘した財宝と浮島がリオン・フォウ・バルトファルトが予想していたよりも大発見だったため、王宮にそれが評価され男爵家当主となる。父親のバルカス・フォウ・バルトファルトから独立した形となり、リオンのバルトファルト家はバルトファルト本家とは別の扱いとなる。金に汚く、人をののしるのが大好きだが、基本的に陰謀が裏目に出る星の下に生まれており、リオンの成すことは自らの意図とは逆の結果につながることが多い。中途半端に出世した方が貴族としての責務や貢献度が重くなるため、リオンはそのせいで学園の上級クラスに通い、婚活しなければならなくなった。乙女ゲーの舞台となった学園で、主人公たちと同時期に入学する。ゲームの展開がどうなるか注目していたが、オリヴィアの様子がおかしいことに気づき、彼女と交友を持つようになる。オリヴィアの立場を乗っ取ったマリエ・フォウ・ラーファンを怪しんでおり、マリエに対して既視感と嫌悪感を感じている。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの決闘騒ぎで、婚活と学園での生活に我慢の限界が訪れ、嫌いな奴らをぶん殴るためにアンジェリカの代理人に申し出る。その後、アロガンツの力で決闘は勝つが、学園中から嫌われ者となる。本人はそのまま退学するつもりだったが、後始末のための宮廷工作が裏目に出て、出世したうえで学園に戻る羽目になる。
ルクシオン
旧人類が作った宇宙船の人工知能。宙に浮く野球ボールサイズのロボットで、丸い筐体(きょうたい)の真ん中に赤いレンズが目のようにはまっている。魔法を使う「新人類」とは敵対しており、本体の宇宙船も現在の技術体系とはまったくの別物だった。新人類の殲滅(せんめつ)を目的としているが、過去の戦いで旧人類は敗北したため、現在は辺境の離れ浮島で本体と共に待機していた。リオン・フォウ・バルトファルトはゲーム時代に同じ宇宙船を課金アイテムとして購入していたため、その情報をもとにして発掘。新人類殲滅を目的とするAIと戦うも、「日本語」を読めるリオンに興味を覚える。リオンが完全に新人類であれば殺すつもりだったが、その身には旧人類の血も流れているのを知り、己のマスターとして認める。その際にリオンから「ルクシオン」と名づけられた。AIながらリオンの行動に皮肉を返すなど感情表現が豊かで、彼の無茶ぶりに応えていく唯一無二の相棒となっていく。非常に高性能で、宇宙船自体の性能もさることながら、搭載した作業ロボットを使うことで建設や開拓も可能。また、ゲーム時代の「補給不要」という設定が、現実ではあらゆる物質から補給物質を作れるようになっているため、その気になれば石から黄金すら作れる。このあまりの高性能っぷりからリオンはルクシオンの存在を隠すため、偽装船として「パルトナー」を用意し、ルクシオンを使い魔として扱うようにしている。
オリヴィア
学園に通う平民の少女。「乙女ゲー」の本来の主人公で、愛称は「リビア」。純真でひたむきな性格で、外見は亜麻色の髪をボブヘアにしている。素朴な雰囲気を漂わせている。平民にもかかわらずに才能を認められ、「特待生」として貴族専用の学園の「上級クラス」に入学するが、そのせいで学園内での身分の差に苦労することとなる。リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に入学した。ゲームでは若干天然の入った言動だったため、プレイヤーからの評価は「あざとい」「脳内お花畑」だが、女尊男卑な世界観でひどい女性を見続けたため、リオンが実際に会った際には「ものすごい良い子」と感動している。ゲーム自体が恋愛シミュレーションゲームでありながら、冒険や戦争要素を盛り込んでいるため、主人公のオリヴィアは魔法においてとんでもない才能を秘めているとされる。単純に強いだけではなく、ゲームをクリアしたリオンによると、オリヴィアは「聖女」の血と力を受け継いでおり、最終的にその力は世界の命運すら左右するとのこと。ゲームの流れでは攻略対象の男子たちとなかよくなっていくが、マリエ・フォウ・ラーファンがその流れを強引に奪い取ったため、誰ともなかよくなれず孤立してしまう。そんな中、リオンと知り合い、彼から1年の女子のリーダー的存在である、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブにあいさつ回りに行くように助言を受ける。これによってリオンやアンジェリカと交友を持つようになり、環境が改善される。決闘騒ぎでも最後までアンジェリカの味方をしたため、以降は彼女と深い交友を持つようになり、お互いを無二の存在と認めていく。しかし、学園祭において本物の貴族の悪意に触れ、身分の差を実感する。それまでリオンが手助けしてきたが、これが結果的に成長の機会を奪うという裏目に出て、精神的に大きく疲弊してしまう。だが、ファンオース公国との戦いで、人質に取られたアンジェリカを助けるため奮戦。その戦いで「聖女」としての力の片りんを覚醒させた。また、リオンとの関係に向き合って己の思いを彼に告白し、深い絆で結ばれる。
アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブ
レッドグレイブ公爵家の令嬢。長く伸ばした金髪を夜会巻きにし、輝くような美貌を持つ。愛称は「アンジェ」。「乙女ゲー」には主人公であるオリヴィアと敵対する「悪役令嬢」として登場しており、その苛烈な物言いで主人公たちを苦しめたが、最終的に主人公に敗北して実家から放逐された。リオン・フォウ・バルトファルトと同じ時期に、学園に入学する。実は女尊男卑に染まった貴族女性の中ではかなりの良識人。直情過ぎるきらいはあるものの、貴族社会の常識を説いているだけで、ゲーム時代はそれが主人公視点では苛烈に見えていたという不幸なすれ違いの結果だった。ただし、直情過ぎる部分は自分でも欠点と思っており、家族からも貴族に向かないと思われている。リオンのアドバイスを受け、オリヴィアがあいさつに来たため、彼女とも良好な関係を築き、ゲーム時代のような敵対関係にはならなかった。しかし、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブ自身の婚約者であるユリウス・ラファ・ホルファートにアプローチするマリエ・フォウ・ラーファンは激しく糾弾し、敵対関係となっていく。マリエが五股をして逆ハーレムを作ったことで我慢の限界に達し、彼女に決闘を申し込む。だが、ユリウスがマリエの肩を持ったため、取り巻きすらも見限って孤立無援となってしまう。ゲーム時代は決闘においてルール破りに等しい行為を行ったうえで敗北したため、実家からも見捨てられ、最終的に辺境の誰とも知らぬ男に押し付けられたとされる。しかしリオンは、この決闘に代理人として名乗りを上げて、ユリウスたちを倒した。その後、ユリウスと正式に決別するも、決闘騒ぎのせいで実家は大きく力を落とし、その影響を大きく受けることとなる。決闘騒ぎでも最後まで味方してくれたリオン、オリヴィアには身分を超えた友情を抱いている。ファンオース公国との戦いでは残っていた取り巻きにすら裏切られ、公国に囚われ人質となってしまう。だが、特攻してきたリオンに救われ、彼らと戦う意思を固めたことで、炎の魔法に目覚める。リオンを一人の異性として意識している。
マリエ・フォウ・ラーファン
ラーファン子爵令嬢。足元近くまで金髪を伸ばした美少女。小柄でスレンダーな体型のため、年齢より幼く見えるが、小悪魔的な雰囲気を漂わせている。「乙女ゲー」には登場しなかったイレギュラーな存在で、リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に学園に入学。オリヴィアの立場を乗っ取り、ユリウス・ラファ・ホルファートたち攻略対象の男子を次々と籠絡していく。その様子からリオンは、自分と同じく転生者だと推測している。ゲーム主人公のオリヴィアほどではないが、回復魔法を使えるなど才能は豊か。外面はいいが自己中で、最終的に五股をして逆ハーレムを完成させ、有力貴族の恋人たちの力で左うちわな生活を夢見る。猫被(かぶ)りがうまいため、その本性は恋人たちに気づかれておらず、不貞を糾弾したアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブを逆に追い詰め、宿願成就一歩手前までいく。しかし、リオンに恋人たちを叩(たた)きのめされ、決闘は敗北。恋人たちはそれでも自分といっしょにいてくれることを選んだが、そのせいで恋人たちは実家からも見限られ、甲斐性(かいしょう)なしなのに恋人を五人も抱えるという自業自得な結末に陥る。その後は恋人たちを養うため、あの手この手でお金稼ぎをしている。その正体は転生者で、リオンの前世での実妹。お互いに既視感と嫌悪感を感じているのはこのせいで、お互いの正体にあと一歩までせまりつつも、気づかずにいる。また、実は前世でゲームを兄にクリアさせていたため、ゲームの知識は虫食い状態で、中途半端な知識でゲームに介入し続けた結果、大きな混乱をもたらしていく。前世でも猫被りがうまく、表面上は優等生で通していたが、兄に無理難題を押し付けたり、人を騙(だま)したりと、本性は自己中。前世の彼氏のトラウマから、ギャンブルと借金が大嫌い。しかし、今世の家族はロクでなしなうえに、借金まみれなため、逆ハーレムを夢見たのはそんな生活から脱出したいのも動機の一つとなっていた。決闘後もゲーム知識を使って一発逆転を狙っており、「聖女」の宝を手にして、教会に自分が聖女であると認めさせる。ただし、これはリオンからはまともなゲーム知識があれば絶対にしない悪手とされており、この件でリオンとの対立は決定的なものとなる。
ユリウス・ラファ・ホルファート
ホルファート王国の王太子。深い紺色の髪と瞳を持つ貴公子で、尊大な雰囲気を漂わせている。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人で、ゲーム時代は俺様キャラのイケメンという設定だった。現実となっても次元が違うと表現されるほどの美形で、女尊男卑の世界においてなお、女性から羨望の目で見られるほどの地位に就いている。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブと婚約しており、彼女たちと同時期に学園に入学する。ゲームでは進め方によってオリヴィアと交友を深め、彼女を自分の唯一の理解者として好意を抱くようになる。しかし、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではオリヴィアではなくマリエに傾倒していく。ゲームでは味方にすれば、主人公を王太子の立場で助けてくれる心強い存在だが、実はかなりの世間知らず。ユリウス・ラファ・ホルファート自身も宮廷料理よりも下町の串焼きが好きなど感性が庶民に近く、王族としての生活に嫌気が差しているため、貴族としての常識にも疎い。アンジェリカに叱責されるのも、貴族としての常識を無視して俺様キャラと権力でゴリ押ししているからで、芯の部分はかなり幼稚。アンジェリカとの婚約を解消してまでマリエを求めるが、このせいで国内の権力バランスも崩れ、多くの人がその被害を被ることとなる。マリエとアンジェリカの決闘でマリエの代理人となり、リオン・フォウ・バルトファルトと戦った際に、それらの矛盾や迷惑を指摘されたうえで、ボコボコにされて敗北する。決闘後はアンジェリカと婚約解消し、王族からも見限られて廃嫡されるも、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエへの好意は変わらずにいる。生活能力は皆無なため予想外のトラブルを引き起こすことが多く、ほかのメンバーと併せて「5馬鹿」とリオンに呼ばれている。決闘でマリエとの関係を諦めるように言われたにもかかわらず、屁理屈(へりくつ)を付けてマリエといっしょにいるため、母親のミレーヌ・ラファ・ホルファートからも激怒され、マリエに近づかないように言われている。そのためマリエに変装して会いにいくことを考えるが、当のミレーヌに変装道具の予算申請をしたため、あまりの間抜けさにミレーヌも頭を抱えている。
ジルク・フィア・マーモリア
マーモリア子爵家の子息。ユリウス・ラファ・ホルファートの乳兄弟。深緑色の髪を長く伸ばし、やわらかな表情をした青年。王族の親衛隊に所属しており、ユリウスの腹心として活動する。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人で、ゲーム時代はミステリアスなキャラという設定だった。リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に学園に入学する。ゲームでは進め方によってオリヴィアと交友を深め、彼女に好意を抱くようになる。しかし、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではオリヴィアではなくマリエに傾倒していく。マリエとアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの決闘でマリエの代理人となり、リオンと戦う。目的のためなら手段を選ばない腹黒な一面があり、リオンが強敵だと察した際には、ワナや脅迫によって彼を抹殺しようとした。だが逆に、その脅迫の証拠をつかまれたうえで、リオンにボコボコに倒された。決闘後は実家からも見限られて廃嫡されるも、マリエへの愛は変わらず、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエとの関係を続けている。世間知らずで、生活能力は皆無なため予想外のトラブルを引き起こすことが多く、ほかのメンバーと併せて「5馬鹿」とリオンに呼ばれている。5馬鹿の中では権謀術数に長(た)け、投資や芸術にも明るいが、致命的なまでに実務経験がないため、詐欺師にいいカモとして騙されることが多い。金銭的なトラブルを5馬鹿の中でも最悪レベルで引き起こすため、マリエからも疫病神扱いされている。あまり自分のことを語らずミステリアスな雰囲気を漂わせているが、実は物事を勝手に自分で判断して自己完結する癖があり、一番大事なことを口に出さない。クラリス・フィア・アトリーと婚約していたが、手紙で一方的に婚約解消した挙句に、「会わない方がいい」と勝手に判断し、彼女たちの呼びかけにもいっさい反応しなかった。このため、クラリスたちからはひどく恨まれている。のちにバイクレースに参加した際に、クラリスの取り巻きにラフプレイで大ケガを負わされるが、事情を知ったリオンからも自業自得と思われている。
ブラッド・フォウ・フィールド
フィールド辺境伯の子息。紫色の髪を長く伸ばした貴公子で、自信に満ちあふれた雰囲気を漂わせている。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人で、ゲーム時代はナルシストなキャラという設定だった。リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に学園に入学する。ゲームでは進め方によってオリヴィアと交友を深め、彼女に好意を抱くようになる。しかし、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではオリヴィアではなくマリエに傾倒していく。マリエとアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの決闘でマリエの代理人となる。リオンと真っ先に戦い、敗れ去った。魔法を得意とするが、肉弾戦が苦手で打たれ弱い。その割に目立ちたがり屋で、敵にツッコミがちという困った癖があり、リオンはゲーム時代にツッコむたびに死ぬブラッド・フォウ・フィールドに散々恨みを募らせていた。決闘後は実家からも見限られて廃嫡されるも、マリエへの愛は変わらず、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエとの関係を続けている。世間知らずで、生活能力は皆無なため予想外のトラブルを引き起こすことが多く、ほかのメンバーと併せて「5馬鹿」とリオンに呼ばれている。実は意外と努力家で、自分が弱いのを自覚しており、隠れて剣の訓練もしている。世間知らずで、現実が見えていない5馬鹿の中では、唯一、自分の欠点に素直に向き合っているため、リオンからは5馬鹿の中では一番マシと思われている。ステファニー・フォウ・オフリーは元婚約者だったが、廃嫡騒ぎで婚約解消している。だが、オフリー伯爵家はもともと評判が悪かったため、本人も実家も婚約解消できるいい口実ができたと思い、気にしていない。しかしカーラ・フォウ・ウェインが、ステファニーの寄子であるため、婚約解消の件を持ち出され、空賊退治に巻き込まれることとなる。空賊退治では戦場に迷い込んだオリヴィアを大ケガを負いながらも助けた。その後、リオンに空賊退治の手柄を譲られ、実家からの勘当も解かれるが、リオンに男として敵(かな)わなかったことを実感。彼を超えることを誓うと共に、礼として実家に口利きを頼み、リオンの出世を助けた。
グレッグ・フォウ・セバーグ
セバーグ伯爵家の子息。赤い髪を短く刈り込んだ体育会系男子で、ワイルドな風貌をしている。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人で、リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に学園に入学する。ゲームでは進め方によってオリヴィアと交友を深め、彼女に好意を抱くようになる。しかし、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではオリヴィアではなくマリエに傾倒していく。マリエとアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの決闘でマリエの代理人となり、リオンと戦い敗れ去った。決闘後は実家からも見限られて廃嫡されるも、マリエへの愛は変わらず、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエとの関係を続けている。世間知らずで、生活能力は皆無なため予想外のトラブルを引き起こすことが多く、ほかのメンバーと併せて「5馬鹿」とリオンに呼ばれている。見た目どおりに身体能力は高く、戦闘能力は高いが、自分の才能に胡坐(あぐら)をかいて、戦いの準備の重要性を理解できていない。適当な旧式装備を持ち出して戦うため、その高い実力を活かしきれず、リオンはゲーム時代、弱い装備を身につけたまま死ぬグレッグ・フォウ・セバーグに散々文句を言っていた。決闘でも旧式の鎧で参加したため、リオンにバカにされている。決闘後は実家からも見限られて廃嫡されるも、マリエへの愛は変わらず、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエとの関係を続けている。ブラッド・フォウ・フィールドの空賊退治に付き合い、リオンと行動を共にするが、そこで使用人がいなければ満足に戦支度すらできないことを突きつけられ、戦力外通告される。その戦いで自分の不甲斐(ふがい)なさを痛感してリオンに頭を下げ、空賊から鹵獲(ろかく)した鎧を借りて戦った。この出来事で改心し、リオンを騎士として尊敬するようになり、彼の指摘を素直に受け入れて戦い方を改善していく。その後、リオンに空賊退治の手柄を譲られ、実家からの勘当も解かれるが、リオンに男として敵わなかったことを実感。彼を超えることを誓うと共に、礼として実家に口利きを頼み、リオンの出世を助けた。廃嫡前は婚約者がいたが、政略結婚で年に数回しか顔を合わせたことがない。
クリス・フィア・アークライト
アークライト伯爵家の子息。水色の髪をたなびかせ、眼鏡をかけている。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人で、リオン・フォウ・バルトファルトと同時期に学園に入学する。ゲームでは進め方によってオリヴィアと交友を深め、彼女に好意を抱くようになる。しかし、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではオリヴィアではなくマリエに傾倒していく。マリエとアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの決闘でマリエの代理人となり、リオンと戦い敗れ去った。決闘後は実家からも見限られて廃嫡されるも、マリエへの愛は変わらず、ほかの逆ハーレムメンバーたちと共にマリエとの関係を続けている。世間知らずで、生活能力は皆無なため予想外のトラブルを引き起こすことが多く、ほかのメンバーと併せて「5馬鹿」とリオンに呼ばれている。実家は王族に剣を教える指南役で、父親は「剣聖」と呼ばれるほどの剣の使い手。クリス・フィア・アークライト自身もスゴ腕の剣士だが、クリスは自らの剣に誇りを持ちつつも、父親に敵わないことにコンプレックスを抱いている。そのため戦いでは剣で戦うことに執着し、それ以外の手段を決して使おうとしない。リオンも決闘時、まともに戦えば苦戦するため、遠距離攻撃で一方的に叩きのめしている。決闘後も得意の剣でリオンを叩きのめそうとしたため、リオンからは自分の苦手を克服しようとするブラッド・フォウ・フィールドの方がマシと評価を下されている。修学旅行ではリオンと同じグループだったため、ファンオース公国の襲撃に巻き込まれる。学生たちを守るため、一人立ち上がるが、あくまで一人で戦おうとした自分に対し、学生たちを決起させたリオンを見て器の違いを見せつけられる。剣の腕は確かで、公国との戦いではボロボロになりつつも最後まで戦い抜いたため、リオンからもその技量の高さを驚愕(きょうがく)された。戦いのあとにリオンに手柄を譲られ、実家から勘当を解かれるが、クリスはそれよりもリオンをライバルとして認め、リオンを超えることに注力するようになる。
カイル
マリエ・フォウ・ラーファンの専属使用人を務める少年。種族はハーフエルフで、幼い容貌をしている。「乙女ゲー」時代の攻略対象の一人だが、隠しキャラ的な立ち位置で、ツンツンとした弟系キャラという設定だった。少々毒舌だが、攻略対象者の中では一番まともな人物。マリエの本性を知っており、「5馬鹿」と違って安易にマリエを全肯定せず、ふつうに注意したり、フォローしたりしている。マリエの使用人であるため、身の回りの世話をしているが、マリエからの無茶ぶりが過ぎる場合は、さすがに仕事を拒否している。なんだかんだ面倒見がよく、5馬鹿が廃嫡され、生活費にも苦しむようになってもマリエを見捨てずに付き合っている。
カーラ・フォウ・ウェイン
ウェイン準男爵家の令嬢。ステファニー・フォウ・オフリーの取り巻きの一人。深い藍色の髪をロングヘアにした少女で、スレンダーな体型をしている。次女であるため学園の普通クラスに通っている。外面はいいが、性格は悪いという、女尊男卑社会においては典型的な貴族女性で、オリヴィアに親身な顔で接近する。この際に、貴族社会に疎いオリヴィアを騙して言質を取ることで、リオン・フォウ・バルトファルトに強引に空賊退治を依頼する。用済みになったオリヴィアに対しては、平民だからと見下して接するようになり、学園祭終了後はステファニーに命じられて彼女の部屋を荒らし回った。リオンには実家の空賊退治を依頼したが、これも大ウソで、空賊と裏でつながっているステファニーがリオンを騙し討ちする計画を立てていた。また、ステファニーの元婚約者のブラッド・フォウ・フィールドも空賊退治に巻き込み、ステファニーは気に入らない人間をまとめて一掃するつもりでいた。しかし空賊は、リオンがあっさり返り討ちにしたが、実家は空賊退治のことを知らなかったため、リオンに知らせを受けた実家からも糾弾されてしまう。その後、自分を守るはずだったステファニーも、空賊とのつながりが暴露されて実家がお取りつぶしとなり、孤立無援となる。実家からもほかの貴族からも見捨てられたが、見せしめとして学園を辞めることも許されず、学園中のさらし者となる日々を送ることとなる。実はステファニーに脅されて悪事に加担しているうちに、彼女らに染まっただけで、根は良識人。のちに孤立して疲弊していたところを、聖女に認定されたマリエ・フォウ・ラーファンに拾われる。マリエはリオンへの意趣返しになるかもという軽い気持ちだったが、カーラ・フォウ・ウェインは深く感謝し、彼女の取り巻きの一人となった。
ミレーヌ・ラファ・ホルファート
ホルファート王国の王妃で、ユリウス・ラファ・ホルファートの母親。透き通るような銀髪を長く伸ばした妙齢の美女で、一児の母にもかかわらず非常に若々しい容姿をしている。ゲームではアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブと共にオリヴィアと敵対したが、マリエ・フォウ・ラーファンが主人公の立場を乗っ取ったため、現実ではバカなマネをした息子と、マリエを敵視している。また事情を理解しているが、息子を決闘で負かしたリオン・フォウ・バルトファルトにも親として思うところがあり、お忍びで学園祭を訪れ、彼をからかって意趣返しするつもりでいた。だが、ちょうどリオンがトラブルに見舞われているところに遭遇したため、王家の威光を利用された挙句に、逆にリオンにからかわれるという結末に陥った。30代だがどう見ても20代前半にしか見えず、雰囲気が非常にかわいらしい。リオンの好みにドストライクな見た目と性格らしく、リオンはミレーヌ・ラファ・ホルファートが王妃であることを気づいたうえで、ナンパしている。王との関係は冷え切っていることもあり、ミレーヌはリオンのナンパに満更でもない様子で、その後も何かと気にかけている。息子のユリウスと違い、政治家としても優秀な人物。女尊男卑社会の裏事情を知っており、必要なことだと理解しつつも、学園の歪(ゆが)んだ有様には眉をしかめている。ユリウスのことは親の欲目もあって優秀だと思いたがっているが、ユリウスが王宮から抜け出すために、王宮に変装道具の予算申請をしにきた際にはさすがに絶句し、頭を抱えた。
師匠 (ししょう)
学園でマナーを教えている教師で、モノクルをつけた初老の紳士。本名は不明。ひねくれ者のリオン・フォウ・バルトファルトが純粋に尊敬し、裏表なく接する数少ない人物。リオンは初めてマナーの授業を受けた際に感動し、それからは「師匠」と呼んで慕っている。そのお茶の腕前はかなりのもので、リオンは師匠の影響でお茶が趣味となり、のちに茶狂いになるほど。貴族の中でもかなり特殊な立ち位置にいるようで、時おり姿を現してはリオンの難しい立場を理解し、彼に行く道を指し示している。決闘騒ぎでも、周囲の空気に流されず、あくまで紳士的にリオンに接している。
クラリス・フィア・アトリー
アトリー伯爵家の令嬢。学園ではリオン・フォウ・バルトファルトたちの一つ上の先輩。オレンジ色の髪を長く伸ばし、スラリとした体型で背が高く、制服を着崩してギャルっぽい。専属使用人を侍(はべ)らし、いかにも遊び人の雰囲気を漂わせている。ジルク・フィア・マーモリアの元婚約者。実は女尊男卑が染みついた貴族社会の中では、かなり真っ当な人物で、かつては平民や下級貴族にも分け隔てなく接し、彼らの支援もしていた。しかし、ジルクのことを本当に愛していたのに、手紙で一方的に振られたことで、ジルクへの怒りと悲しみで人が変わったようになる。夜遊びに呆(ほう)けるのも、音沙汰ないジルクが自分を心配してくれるかもしれないと一縷(いちる)の望みにかけているもので、本心から遊んでいるわけではない。もともとかなり面倒見のよい性格をしていたため、部下たちの忠誠心は高く、彼女の取り巻きや使用人は率先してジルクに報復行為を行っている。事情を知っているリオンからもジルクが悪いと断言され、むしろ心情的には共感されている。しかし、成り行きからバイクレースでリオンと対立。取り巻きはリオンに敗北するも、リオンが勝者の特権を使ってジルクに謝罪させにいったことで、過去の失恋を吹っ切り、リオンとも和解する。もともと夜遊びしていたのは性に合わず、かなり無理をしていたようで、その後は元の優等生然とした姿に戻っている。リオンには深く感謝しており、父親に掛け合ったことでリオンの出世を手助けしている。リオンに好意を抱いており、彼のお茶会にも顔を出している。実は部下たちからは男女問わず慕われているが、半ば偶像化されているため、周囲に異性として見る人がいないという不憫(ふびん)な境遇に陥っている。
ダン・フィア・エルガー
クラリス・フィア・アトリーの取り巻きの一人で、大柄な体型の男性。黒い髪を短く切りそろえ、前髪に赤いメッシュを入れている。不良っぽい格好をしているが、体育会系のまじめな性格で、主人のクラリスに強い忠誠心を抱いている。実家は宮廷貴族だが、末席で爵位すら持っていない零細貴族。そのため夢も持てずにいたが、エアバイクに触れることで才能を開花させる。クラリスにその才能を見出され、彼女に支援されることで、メキメキとその実力を伸ばしていく。エアバイク乗りとしての技量は学園でも屈指のもので、卒業後はエアバイクを使った仕事に就くことが決まっている。このためクラリスには多大な恩を抱いており、クラリスがジルク・フィア・マーモリアに振られたのを知った際には、ジルクに頭を下げ、クラリスに会いにいくように頼んでいる。しかし、ジルクがこれを拒否したため、主人を裏切ったジルクに強い恨みを抱いている。クラリスが豹変した際も、ほかの取り巻きと話し合って、クラリスが悪目立ちしないように自分からイメチェンし、現在の不良っぽい格好となった。ただほかの取り巻きが無理して不良っぽい格好をして浮いているのに対し、ダン・フィア・エルガーだけは不良っぽい格好が似合い過ぎたため、仲間たちからもドン引きされている。バイクレースで仲間がジルクをラフプレイでボコボコにしたあと、ジルクの代理となったリオン・フォウ・バルトファルトと対決する。巻き込まれたリオンには悪いと思いつつも、バイクレースでは手加減抜きで戦い、敗北した。立場上敵対したがリオンのことは気に入っており、実はアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブとマリエ・フォウ・ラーファンの決闘騒ぎの際に、リオンに賭けて、それなりに儲(もう)けている。そのため賭けに勝った謝礼として、バイクレースのあとにエアバイクの故障で空中に放り出されたリオンを助けている。バイクレースで暴力を振るったため処分を受けるのも覚悟のうえだったが、リオンとクラリスが和解したため、お咎(とが)めなしとなった。
ディアドリー・フォウ・ローズブレイド
ローズブレイド伯爵家の令嬢。学園ではリオン・フォウ・バルトファルトたちの一つ上の先輩。金髪を縦ロールにセットした絵に描いたような貴族令嬢で、高圧的な性格をしている。修学旅行ではリオン・フォウ・バルトファルトたちと同じグループになり、ファンオース公国の襲撃に巻き込まれる。もともと女王様気質で、反骨精神の塊のような存在だったため、リオンの挑発に真っ先にかみつき、結果的に彼の扇動を手助けした。ただし、その出来事で自分になびかないリオンに目を付け、それからは彼を屈服させるのを目的にアプローチをかけるようになる。リオンの主催しているお茶会にも時々参加している。風をあやつる魔法を得意とし、大きな竜巻を生み出して敵を切り刻むことができる。しかしなぜか、ディアドリー・フォウ・ローズブレイドの魔法はバラの香りがするらしく、魔法を使ったあとはいい香りが周囲に充満する。
ダニエル・フォウ・ダーランド
学園の上級クラスに通う男子。リオン・フォウ・バルトファルトの友人。褐色の肌と、恵まれた体格を誇る。リオンと同じタイミングで入学し、交友を深めていく。婚活を有利に運ぶための田舎貴族のグループに所属しているが、リオンと同じくなかなか良縁に恵まれず、女性不信になりかけている。最近では女子は、性格さえよければ外見は二の次と考えるようになり、性格のいいぽっちゃり系の女子を狙っている。貴族だが学園のヒエラルキーの中では底辺に位置し、決闘騒ぎの際には王子の取り巻きに命令され、リオンの部屋を荒らして嫌がらせをした。リオンも彼の立場ではそうしなければ実家を巻き込んで大きな被害を被ったと理解しており、恨みにも思っていない。そのため決闘騒ぎ後、レイモンド・フォウ・アーキンと共に正式にリオンに嫌がらせを謝罪したのもあり、両者は和解している。修学旅行終了後は、リオンがファンオース公国の飛行船を拿捕(だほ)してきたため、彼の甘言に乗せられて飛行船をもらう。リオンは飛行船を手に入れた貴族が、メンテナンスを自分が運営する工場で行うことで、将来的に儲けを回収するつもりと説明したが、実態は飛行船のメンテナンス体制を自分に依存させ、さらに契約で縛ることで決して裏切れないようにする企みだった。このため徐々に外堀を埋められ、実質的にリオンの取り巻きのような存在となりつつある。
レイモンド・フォウ・アーキン
学園の上級クラスに通う男子。リオン・フォウ・バルトファルトの友人。おかっぱ頭をした少年で、眼鏡をかけている。小柄な体型もあって中性的な雰囲気を漂わせている。リオンと同じタイミングで入学し、交友を深めていく。婚活を有利に運ぶための田舎貴族のグループに所属しているが、リオンと同じくなかなか良縁に恵まれず、女性不信になりかけている。最近では性格の悪い女生徒に幻滅し、学園の女性教師に羨望のまなざしを向け始めている。貴族だが学園のヒエラルキーの中では底辺に位置し、決闘騒ぎの際には王子の取り巻きに命令され、リオンの部屋を荒らして嫌がらせをした。リオンも彼らの立場ではそうしなければ実家を巻き込んで大きな被害を被ったと理解しており、恨みにも思っていない。そのため決闘騒ぎのあと、ダニエル・フォウ・ダーランドと共に正式にリオンに嫌がらせを謝罪したのもあり、両者は和解している。修学旅行終了後は、リオンがファンオース公国の飛行船を拿捕してきたため、彼の甘言に乗せられて飛行船をもらう。リオンは飛行船を手に入れた貴族がメンテナンスを自分が運営する工場で行うことで、将来的に儲けを回収するつもりと説明したが、実態は飛行船のメンテナンス体制を自分に依存させ、さらに契約で縛ることで決して裏切れないようにする企みだった。このため徐々に外堀を埋められ、実質的にリオンの取り巻きのような存在となりつつある。
バルカス・フォウ・バルトファルト
バルトファルト男爵家の現当主で、リオン・フォウ・バルトファルトの父親。貴族ながら、素朴な性格の中年男性で、本人もふだんは外で野良作業をしているため、野暮ったい服装でいることが多い。妻が二人おり、正妻はゾラ・フィア・バルトファルトで、側室はリュース・フォウ・バルトファルト。リオンはリュースとのあいだにできた2番目の子となっている。バルトファルト家はもともとは、辺境に領地を持つ準男爵家だったが、先祖代々領地を少しずつ開拓していったことで、先代当主の時に男爵に陞爵(しょうしゃく)する。しかし爵位は上がったが、貴族としての規模は未(いま)だに準男爵家レベルであるため、国への貢献が重荷になっており、実態は辺境の貧乏貴族となっている。貴族としての体面を保つため、ゾラと結婚したが、ゾラの実家の方が家の格が上なのもあって、ゾラに逆らうことはできない。そのため苦々しく思いながらも、家はゾラに牛耳られている。都会暮らしを好むゾラとその子供たちがあまりバルトファルト家に近づかないのもあり、ふだんはリュースとその子供たちとなかよく暮らしている。リオンの無茶ぶりの被害を受けるため心労が絶えないが、それでもリオンが出世した際には我がことのように喜んでいる。リオンは女性のおっぱいが大好きだが、バルカス・フォウ・バルトファルトはお尻派で、リオンに熱弁してリュースに締め上げられている。
リュース・フォウ・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの側室で、リオン・フォウ・バルトファルトの実母。やさしくも芯の強い肝っ玉母さんで、リオンにも母親として愛情を注いでいる。バルトファルト家の中では、正妻のゾラ・フィア・バルトファルトの存在があるため立場が弱く、ゾラからは冷たく扱われている。娘のジェナ・フォウ・バルトファルトとフィンリー・フォウ・バルトファルトは女尊男卑文化に染まっているが、もともと夫と共に平民に混ざって働いているため、女尊男卑文化に染まっておらず、まっとうな価値観を持っている。
ニックス・フォウ・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの息子で、リオン・フォウ・バルトファルトの兄。母親は側室のリュース・フォウ・バルトファルトで、リュースの子の中では長男だが、バルトファルト男爵家の長男は、正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトの息子のルトアートであるため、異母弟のニックス・フォウ・バルトファルトはバルトファルト家の次男として扱われている。リオンの二つ年上で、学園に通っているが当主ではないため普通クラスに入っている。リオンたちと同じく学園では非常に婚活に苦労しており、愚痴をつづった手紙をリオンに送っている。ゾラがリオンにお見合い話を持っていった際には、学園で情報を集めてリオンを助けており、ゾラのバックにいる淑女の森が危険な組織であることを忠告した。リオンが偉くなっていくことに思うところはあるが、なんだかんだで兄として彼を手助けしている。
コリン・フォウ・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの息子で、リオン・フォウ・バルトファルトの弟。母親は側室のリュース・フォウ・バルトファルトで、リュースの子の中では三男だが、バルトファルト男爵家の長男は、正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトの息子のルトアートであるため、異母弟のコリン・フォウ・バルトファルトはバルトファルト家の四男として扱われている。リオンの六つ年下。リオンによく似た容姿を持つ黒髪の少年で、幼さもあって無邪気な性格をしている。貴族の常識や女尊男卑にはまったく染まっておらず、よくも悪くも子供らしくのんきに過ごしている。リオンからは弟として大事にされており、自分が逃げればお見合い話がそのままコリンに行くことと知った際には激怒し、弟を守るため財宝探しの旅に出ることを決意した。
ジェナ・フォウ・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの息女で、リオン・フォウ・バルトファルトの姉。母親は側室のリュース・フォウ・バルトファルトで、リュースの子の中では長女だが、正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトが娘を生んでいるため、異母妹のジェナ・フォウ・バルトファルトはバルトファルト家の次女として扱われている。茶色がかった髪をポニーテールにした少女で、苛烈で高慢な性格をしている。専属使用人のミオルを溺愛しており、典型的な女尊男卑に染まったわがまま女であるため、実の弟のリオンからも「地雷」として扱われている。リオンの一つ年上で、学園にも上級クラスに通っている。一方で世渡り上手なところもあり、女子の事情には詳しいため、リオンが孤立したオリヴィアの件で相談した際には、適切なアドバイスを送っている。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブとマリエ・フォウ・ラーファンの決闘騒ぎでは、ジルク・フィア・マーモリアに脅され、リオンの機体であるアロガンツに爆弾を仕掛けた。アロガンツの性能のお陰で事なきを得たが、リオンからは脅されたのを差し引いても恨みに思われている。都会暮らしにあこがれ、実家を田舎と嫌っており、金持ちの貴族と結婚して都会で贅沢(ぜいたく)暮らしをするのが夢。高望みしているうえに、友達の意中の相手を口説くという悪癖があり、その性格の悪さから婚活に苦労している。
フィンリー・フォウ・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの息女で、リオン・フォウ・バルトファルトの妹。母親は側室のリュース・フォウ・バルトファルトで、リュースの子の中では次女だが、正妻であるゾラ・フィア・バルトファルトが娘を生んでいるため、異母妹のフィンリー・フォウ・バルトファルトはバルトファルト家では三女として扱われている。髪をショートボブにした少女で、眠たげな眼をしている。姉のジェナ・フォウ・バルトファルトほどではないが女尊男卑文化に染まっており、男に対して口が悪く、リオンに対してもわがまま放題な言動をする。ただまだ学園に通っていないため、貴族社会の常識には疎い。
ヴィンス・ラファ・レッドグレイブ
レッドグレイブ公爵家の現当主を務める男性。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの父親。ヒゲを生やした老人で、厳格な性格をしている。娘のアンジェリカを優秀と認めつつも、その直情的な性格は貴族に向かないと叱っている。アンジェリカの決闘騒ぎのせいで、アンジェリカとユリウス・ラファ・ホルファートの婚約が解消され、公爵家の影響力は地に堕(お)ちる。そのため、対抗派閥であるフランプトン侯爵家派閥の動きを抑えきれなくなっている。一方で、ユリウスのあまりの考えなしの行動に頭を痛め、ユリウスに娘は相応(ふさわ)しくないと考えている。そのため、リオン・フォウ・バルトファルトがユリウスを叩き潰したのは、自分の地位も名誉も捨て主人を諫(いさ)めた忠臣と見ている。決闘後、リオンが資金を持参して自分に宮廷工作をお願いしたため、公爵家として彼の決闘の後始末を行った。ただし、リオンが渡した資金が多かったためか、リオンはこのせいで地位を返上するつもりが、出世してしまう。貴族社会では大きく力を落としているが、同時にホルファート王国の王家や他国につながる他家に見切りをつけ始めており、公爵家として独自に動き出している。
ギルバート・ラファ・レッドグレイブ
アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの兄。髪を長く伸ばした偉丈夫で、冷静沈着な性格をしている。父親のヴィンス・ラファ・レッドグレイブと共に公爵家を取り仕切っている。アンジェリカとは正反対な性格で、感情をあまり表に出すことはないが、アンジェリカのことを大切に思っている。アンジェリカが平民のオリヴィアとなかよくするのも好ましく思っているが、一方で悩ましい思いを抱いている。
バーナード・フィア・アトリー
アトリー伯爵家の当主を務める男性。クラリス・フィア・アトリーの父親。王宮で大臣として働いている。貴族の中では常識人で、ジルク・フィア・マーモリアと婚約解消したあと、人が変わってしまった娘のことを心配している。そのためクラリスが立ち直った際には、きっかけを作ってくれたリオンに感謝し、彼にエアバイクを送っている。また宮廷内でも尽力し、リオンの出世を助けている。
ゾラ・フィア・バルトファルト
バルカス・フォウ・バルトファルトの正妻。宝石やドレスで着飾った中年女性で、男を見下す高慢な性格をしている。実家がバルトファルト家よりも格が上なため、実質的にバルトファルト家を取り仕切っている。自分の子で長男のルトアートを溺愛し、側室であるリュース・フォウ・バルトファルトの子供たちにはいっさいの情を抱いていない。「男は奴隷同然」と考える貴族女性の組織「淑女の森」に所属しており、その組織の力を使って、リオン・フォウ・バルトファルトにお見合い話を持ち込む。しかし実はそのお見合いは、変態趣味を持つ婦人に男をあてがう人身売買同然のものや、結婚したあとに夫を戦場に送り込んで遺族年金をもらうなど、ロクでもないものばかり。リオンに弟のコリン・フォウ・バルトファルトを人質に取ってまで言うことを聞かせようとせまったが、一念発起したリオンが大冒険の末、財宝を見つけたことで失敗に終わる。当初はリオンから財宝をすべて奪おうとしたが、リオンは法律を盾にこれを拒絶したため、悔しがりながらも手を引いた。リオンたちには横暴に接しているが、自分より身分の上の者には弱く、その後もリオンたちにたびたび嫌がらせをしていた。だが、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブにはしおらしい態度を見せ、決闘騒ぎのあとに彼女がバルトファルト家に滞在することを知った際には、すぐさま踵(きびす)を返し、彼女がいるあいだ領地に近づこうとしなかった。
ステファニー・フォウ・オフリー
オフリー伯爵家の令嬢。編んだ金髪をリボンで結いつける独特な髪形の少女で、鋭い目つきをしている。「乙女ゲー」では主人公のオリヴィアと敵対する「悪役令嬢」として登場していた。リオン・フォウ・バルトファルトはアンジェリカ・ラファ・レッドグレイブと同じく「実はいい人」を期待していたが、正真正銘の悪党。平民や男を見下し、取り巻きたちを使って学園で好き放題過ごしている。また実家はもともと商人で、オフリー伯爵家の当主が先代だった頃に、法の網をかいぐくって乗っ取った経緯がある。そのため現在のオフリー伯爵家は、貴族社会からも非常に評判が悪い。一方で、この経緯からオフリー伯爵家は名門貴族としての血を欲しており、ステファニー・フォウ・オフリーとブラッド・フォウ・フィールドを婚約させた。本来であれば実現しない政略結婚だったが、フィールド辺境伯が隣接するファンオース公国との外交という難しい条件を出し、オフリー伯爵家がみごとこの条件をクリアしたため、婚約が相成った。決闘騒ぎではマリエ・フォウ・ラーファンに賭けていたため、結果的に大損。さらにこの騒ぎが原因でブラッドとも婚約解消となったため、リオンとアンジェリカを敵視している。学園祭では報復としてリオンの出し物を滅茶苦茶にするが、ミレーヌ・ラファ・ホルファートがたまたまその場に居合わせたため、リオンがミレーヌを大義名分に使い、逆に仕返しをされ痛い目に見る。しかしその後も、リオンたちに嫌がらせをたびたび行い、特にアンジェリカと仲のいいオリヴィアは彼女の悪意にさらされ、大きな心の傷を負ってしまう。取り巻きの一人であるカーラ・フォウ・ウェインに命じて、リオンたちをワナにはめて、空賊に襲わせようとするも、返り討ちに遭う。それどころかリオンによって空賊とつながっている証拠を王宮に提出され、オフリー伯爵家は取り潰しとなる。フランプトン侯爵家の派閥に所属していたが、派閥からもあっさり見捨てられ、すべてを失って破滅した。
ヘルトルーデ・セラ・ファンオース
ファンオース公国の第一王女。流れるような黒髪と赤い瞳が特徴的な少女。表情が乏しく、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。「乙女ゲー」では「ラスボス」として登場している。「魔笛」を使うことで魔物の軍勢を自在にあやつることができ、その力でホルファート王国と敵対する。ゲーム時代は終盤の「3年目」に本格的に動き出すが、現実では1年目の修学旅行の時期に動き出し、リオン・フォウ・バルトファルトたちの乗る客船を襲撃する。アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブの取り巻きを懐柔したことで内情と客船の位置を把握しており、不意打ちによって戦意を挫(くじ)き、彼らを降伏させてアンジェリカを人質にする。アンジェリカは自らの身と引き換えに客船の学生を助けようとしたが、公国側は皆殺しを決定した。戦局を優位に運んでいたが、リオンが学生たちを奮起させたせいで、彼らの思わぬ抵抗に手間取る。そのあいだにリオンが本陣を奇襲し、無力化される。アンジェリカも救出され、今度は自分がホルファート王国の捕虜となった。捕虜となったあとも、戦意は衰えることなく、自らの犠牲も省みず王国を倒そうとするが、リオンによってすべての手札をつぶされ完敗する。しかし実は宣戦布告前に、王国の一部の勢力とすでに癒着しており、彼らに手を回してもらい、敗戦処理はかなり手ぬるいものとなる。名目上は人質扱いだが、堂々と王国に居座って王国転覆を目的に暗躍している。王国に居座った際には、リオンたちとも交友を持つようになる。無表情だが、本当は非常に感情豊かな人物。プライドが高く、人前ではあまり表情を崩さないが、ヘルトルーデ・セラ・ファンオース自身の貧乳っぷりをひそかに気にしていたり、パルトナーの内部で迷子になった際には半泣きになりながら出口を探したりと、人目のない場所では表情をコロコロ変える。また公国も元は王国の一部だったため、冒険者にあこがれる文化もいっしょで、遺跡探索を明日に控えた時は楽しみにしていた。
ゲラット
ファンオース公国の子爵家当主で、大きなカイゼル髭(ひげ)を整えた中年男性。物腰は丁寧ながら底意地が悪い性格で、他者を見下し、いたぶることを好む。公国がホルファート王国を襲撃した際に、占拠した客船に乗り込み、アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブを人質としてさらっていった。また、アンジェリカが人質になることを反対したリオン・フォウ・バルトファルトを、学生たちに命じていたぶっている。アンジェリカは学生の助命と引き換えに人質となったが、その約束もさらさら守る気がなく、徹頭徹尾、優位な立場で彼らの心を弄んでいたぶった。しかしその後、本陣に乗り込んできたリオンに叩きのめされ、ルクシオンによって自慢の髭を永久脱毛される。気が付いた時には王女のヘルトルーデ・セラ・ファンオースがさらわれていたため、このままでは勝って当たり前の戦いで敗北した無能として歴史に名が残ると焦り、すぐさま王女が死んだと偽の発表をし、己の失態を隠そうとした。しかし、部下たちは王女が生きているのを知っていたため、この誤報で公国の艦隊は混乱し、王女を守るため味方の艦隊が敵の盾となる混沌とした状況を作り出した。切り札であるバンデル・ヒム・ゼンデンすら出撃させて汚名を返上しようとするが、バンデルすら負けてしまったため、最後は魔笛のコピーアイテムを使い、敵味方すべてを葬ることで、ゲラット自身の命ともども、失態の証拠も隠滅しようとする。しかし、リオンによってその目論見もつぶされ、捕虜として捕まった。ゲラットの無茶苦茶な命令に部下たちはかなり鬱憤が溜まっていたようで、リオンが捕まえに行った際には、すでに部下たちにボコボコにされ、簀巻(すま)きにされていた。戦闘後はリオンと交渉しようとするも、公国の装備を問答無用に根こそぎ奪われたうえで、浮島に放逐された。
バンデル・ヒム・ゼンデン
ファンオース公国の子爵家当主で、黒い甲冑(かっちゅう)を身にまとった初老の男性。眼光が鋭く、老いを感じさせない精悍(せいかん)な体つきをしている。「黒騎士」の異名を持つ公国最強の騎士で、異名通りの専用の黒い鎧を乗騎とする。20年以上前の戦いですでに最強と名高い公国の騎士で、剣聖であるアークライト伯爵家の現当主ですら勝てなかった人物。「乙女ゲー」にも敵キャラとして登場しており、リオン・フォウ・バルトファルトは黒騎士のことを、接近戦ではクリス・フィア・アークライト以上に強く、遠距離戦ではブラッド・フォウ・フィールド以上に強いという、存在するだけでゲームの難易度が上昇する「公式チート」と評している。ホルファート王国への奇襲に参加。王女のヘルトルーデ・セラ・ファンオースへの忠誠心が強く、彼女がさらわれた際には、その奪還に真っ先に駆け付け、リオンのアロガンツと戦っている。鎧の性能はアロガンツが圧倒的に上だが、パイロットの操縦技量はバンデル・ヒム・ゼンデンの方が圧倒的に高く、リオンとの戦いでは終始優位に立った。鎧の持つ大剣は「アダマティアス」と呼ばれる特殊金属で、アロガンツの装甲すら打ち破ることが可能。リオンを後一歩まで追い詰めるが、リオンの奇策に敗れ去った。死を覚悟するが、リオンが殺さず放置したため、生き恥をさらしたと激怒。リオンを「外道」とののしり、王国への憎しみを募らせる。
場所
ホルファート王国 (ほるふぁーとおうこく)
「乙女ゲー」の舞台となった国。リオン・フォウ・バルトファルトたちが暮らしている。「浮島」と呼ばれる空に浮いた島を領地とする王政国家で、王都は「大陸」と呼ばれる巨大な浮島の中心に存在する。また王国にはいくつもの浮島が存在し、それぞれの浮島を辺境貴族が開拓して、版図を広げている。人々は空を飛ぶ「飛行船」で浮島を行き来しているが、嵐や魔物、空賊の存在もあって、船での旅は危険ととなり合わせとなっている。ホルファート王国は王と貴族に治められた国だが、もともと冒険者が興した国とされるため、「冒険者」が公的な職業として認められているのが特徴。貴族の中にも冒険者にあこがれる者が多く、王国には冒険者が見つけた財宝は所有権を認める法律もあるほか、新しく領土になる浮島を見つければ新たに貴族に認められる場合もある。一方で、冒険者が認められる華やかな面に反し、国内は「女尊男卑」の文化が根差しており、男性の立場が非常に弱い。王侯貴族以外の貴族では、男性が女性のご機嫌取りを伺うのが常識となっている。貴族社会では適齢期を過ぎても男性が独身でいたり、女性から離縁されたら、悪評が立ってまともに領地運営すらできなくなるほど、女性の立場が強い。実は女尊男卑文化は王宮によって意図的に作られたもの。大昔に時の大公が王宮を裏切って独立し、ファンオース公国を興し、王国と公国は戦争に突入した。王国は戦争自体には勝利したが、この出来事がトラウマとなり地方貴族の力を削(そ)ぐことを決定する。この際に作られたのが「女性優遇」の風潮で、女性に贅沢をさせることで経済を回し、王都に人と金を集める仕組みを作った。また下級貴族に負担を強いることで、将来的に下級貴族の経済的自滅を狙っており、増えすぎた貴族を振るいにかけ、中央集権化を進めるつもりでいた。この企みは王宮の予想以上にうまくいき、女性優遇が行き過ぎて女尊男卑となったのが真実だった。一部の貴族にはこの事実が知らされており、上級貴族になればなるほどまともな女性が多いのもこのせい。ただうまく行き過ぎた結果、地方領主の王宮への忠誠は失われ、国としてのまとまりは失われつつある。
学園 (がくえん)
ホルファート王国の貴族たちが通う学校。「乙女ゲー」にも登場し、ゲームの舞台となった。学園には上級貴族や貴族の次期当主、令嬢が通う「上級クラス」と、騎士爵や準男爵家といった「騎士家」の人間や、貴族の次男以下が通う「普通クラス」が存在する。貴族として礼儀作法や社交を学ぶ場であるが、ホルファート王国は冒険者が興した国であるため、冒険者としての教育と実技があるのが特徴。このため学園に通う男子も女子もそれなりに戦闘ができる者が多い。学園は貴族にとって結婚相手を探す場でもあり、貴族はある程度釣り合った伴侶がいなければ悪評が立ち、学園を卒業するまでに結婚相手がいない場合、その後の人生は露骨に出世や就職に響くこととなる。ただし、ホルファート王国には女尊男卑の文化が根付いているため、婚活では基本的に女性が優位で、男性は苦労することとなる。特に男爵以上、伯爵以下あたりの貴族は女尊男卑が一番激しく、逆にある程度爵位が上か下になるとまともな人が多い傾向にある。オリヴィアは平民だが、人材発掘を目的として平民を受け入れるテストケースとして、特別に上級クラスに入学している。
ファンオース公国 (ふぁんおーすこうこく)
ホルファート王国の隣国にある公国。「乙女ゲー」においては、ゲーム終盤に王国を攻めて来る敵として描かれていた。大昔はホルファート王国の一部で、時の大公が治めていたが、大公が王宮を裏切って独立を宣言し、初代公王となった。このため王国とは不倶(ふぐ)戴天の仲で、現在もお互いを敵視し、20年前にも大きな戦いを引き起こしている。ブラッド・フォウ・フィールドの実家であるフィールド辺境伯は、公国と隣接しているため、王国にとって非常に重要な防衛拠点として扱われている。実は現在の公王はすでに謀殺されており、公国は事情を何も知らない王女が担がれ、貴族たちに牛耳られている。貴族たちによって王国への復讐心が煽(あお)られ、公国の者は王国に対して好戦的な者が多い。
その他キーワード
鎧 (よろい)
魔法で動く人型兵器。全高はおおよそ3メートル超ほどで、装着者の魔力を動力源にして稼働するロボットのようなものとなっている。また空も飛べるため、浮島の防衛に用いられることも多い。ホルファート王国では機動力と攻撃力に重きをおく設計をしており、スマートな外見をした高機動型の鎧がスタンダートになっている。そのため防御力に重きをおく鈍重な見た目をした鎧は、役に立たない旧式品として見られている。ルクシオンは鎧を模してアロガンツを作ったが、見た目が鎧と似ているが、中身は科学技術を使ったまったくの別物となっている。
ロストアイテム
遺跡で発見される希少なアイテム。「乙女ゲー」では「課金アイテム」として存在し、隔絶した性能を持っていた。ルクシオンによればかつてこの世界は、科学技術を持つ「旧人類」と、魔法技術を持つ「新人類」が戦争をしており、戦争は新人類が勝ちこそしたものの、ほぼ同士討ちの形となり、両者の文明は衰退していったと語っている。ロストアイテムはこの時代に作られたアイテムで、現代よりはるかに進んだ文明によって作られたため、現在でも再現不可能な強力な効果を持つものが多い。現在のホルファート王国は、新人類の系譜に連なるため、旧人類の遺産であるルクシオンは明らかに異質で、リオン・フォウ・バルトファルトは魔法によるものとその存在を誤魔化して使っている。魔法技術によって作られた新人類側の強力なロストアイテムも存在する。ただし、ロストアイテムは貴重で強力なものが多いが、必ずしもすべてのアイテムが強いわけではない。
パルトナー
リオン・フォウ・バルトファルトが所有する飛行船。リオンは飛行船のロストアイテム「ルクシオン」を手に入れたことで成り上がったが、それが有名になり過ぎたため、多くの人々がルクシオンに関心を寄せることとなってしまう。ルクシオンの本体は宇宙船で、世界観から明らかに浮いたデザインであるため、リオンは貴族たちに不審を持たれぬように急遽(きゅうきょ)、ルクシオンの代わりとなる飛行船、パルトナーを建造した。全長700メートルとかなり大型の飛行船で、見た目は王国の船に合わせたデザインにしている。ルクシオンはかなり力を入れて作ったようで、完成した際には自慢げにその性能を説明している。ルクシオン本体には劣るものの、その戦闘能力や航空速度は高く、ファンオース公国との戦いでは射程外から一方的に公国の船を攻撃している。船の内部はかなり広いが、作業ロボットが操縦や整備をしており、ほとんど人手を使わずに運用することができる。
シュヴェールト
リオン・フォウ・バルトファルトの所有するエアバイク。リオンがクラリス・フィア・アトリーの悩みを解決したことで、彼女の父親であるバーナード・フィア・アトリーが感激し、礼としてリオンに贈った。もともとルクシオンが感心するほど丁寧に造られた逸品だったが、ルクシオンの手によって戦闘もできる高性能機へと改造されている。「シュヴェールト」の名もルクシオンが付けたもので、意味は「カジキマグロ」。エアバイクは飛行船に比べて小さいため、魚にたとえられることが多く、ルクシオンはエアバイクの本体のシルエットがカジキマグロに似ていたため、この名を付けた。また、ルクシオンはリオンが気に入らないだろうと察し、名前の意味が「剣」だとウソを付いている。
アロガンツ
リオン・フォウ・バルトファルト専用の鎧。ゲーム時代にも課金アイテムとして存在していが、リオンはルクシオンに製作してもらい入手する。対外的にはリオンが冒険で手に入れたロストアイテムとして扱っている。現在の鎧に比べ、ずんぐりむっくりとした体型をした黒い機体で、背中に装備を格納した大型のコンテナを背負っている。現在の鎧は技術革新と共に、機動性を上げるべくスマートな外見になっているため、アロガンツはその見た目から旧式の鎧と思われることが多い。しかし実態は、現在の鎧とはまったく別の技術体系で作られているため、従来の鎧を歯牙にもかけない高い性能を誇る。パワーも装甲も高性能だが、コンテナも推進機として使えるため、機動力も高い。掌(てのひら)からエネルギーを衝撃として叩きつける「インパクト」と呼ばれる機能もあり、これは出力調整することで対象を殺さず、鎧だけを破壊することも可能。
聖女 (せいじょ)
ホルファート王国において伝説に語られる存在。王国の建国にもかかわった女性で、強力な回復魔法や守りの魔法が使えたとされる。その存在は現在では失われ、神殿に彼女にゆかりのある「聖女の杖」が祀(まつ)られるだけとなっている。ゲームではオリヴィアが最終的にその力を認められ「聖女」と認定されるが、マリエ・フォウ・ラーファンは同じ回復魔法の使い手であることとゲーム知識を使って、オリヴィアになり代わって聖女に認定される。聖女に縁のあるアイテムは「聖女の杖」のほかに、「聖なる首飾り」と「聖なる腕輪」が存在するが、この二つは現在では行方(ゆくえ)不明となっている。マリエは聖なる腕輪をダンジョンで回収し、これを利用して、教会に自分を聖女として認めさせた。聖なる首飾りは持ち主の手を転々として渡り、現在は空賊の手に渡っていたが、リオン・フォウ・バルトファルトが空賊を退治して回収した。しかし、リオンが首飾りを持っていることが漏れ、教会に回収された。
専属使用人 (せんぞくしようにん)
ホルファート王国の貴族女性が雇う専属の使用人。実態は金で買う愛人のようなもので、若く容姿が整った男性しか存在しない。また、亜人は王国内での立場が低いうえに、人間とのあいだに子供を作ることができないため、亜人が専属使用人となることが多い。亜人の専属使用人は奴隷のようなものだが、女尊男卑のホルファート王国では女性に気に入られる方が待遇がよくなるため、専属使用人の中には下手(へた)な下級貴族の男性よりもいい暮らしをしている者もいる。
魔笛 (まてき)
ファンオース公国に伝わる特殊なアイテム。黒いフルートのような横笛で、その独特の音色で魔物を呼び寄せ、使役することができる。現所有者は第一王女のヘルトルーデ・セラ・ファンオースで、ヘルトルーデは空を埋め尽くすほどの数の魔物をあやつることができる。公国の持つロストアイテムのようなもので、現在の公国も笛の再現はできていないが、その力を研究して一部の力を模倣したアイテムを作り出している。魔笛の模倣品は魔物を引き寄せる力だけは本物を超えているが、魔物をあやつる力の模倣はできなかったため、強いモンスターを大量に誘き出して暴走させるだけの自爆アイテムとなっている。
クレジット
- 原作
-
三嶋 与夢
- キャラクター原案
-
孟達
書誌情報
乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 12巻 KADOKAWA〈ドラゴンコミックスエイジ〉
第1巻
(2019-06-08発行、 978-4040732046)
第2巻
(2019-09-09発行、 978-4040733210)
第3巻
(2020-04-09発行、 978-4040736136)
第4巻
(2020-08-07発行、 978-4040737706)
第5巻
(2020-12-09発行、 978-4040739014)
第6巻
(2021-07-09発行、 978-4040741710)
第7巻
(2022-01-08発行、 978-4040743844)
第8巻
(2022-05-09発行、 978-4040745282)
第9巻
(2022-10-07発行、 978-4040747149)
第10巻
(2023-04-07発行、 978-4040749341)
第11巻
(2023-09-08発行、 978-4040751245)
第12巻
(2024-04-09発行、 978-4040754079)