クーの世界

クーの世界

兄を亡くした少女れねいが夢の中で、兄とそっくりの青年クーと共に異世界を旅するファンタジー作品。デビュー作『拡散』が難解だと親族に言われた作者が、姪や友人の子供たちにも読んでもらえるものを描こうと決意し生み出された。そのため少女が主人公であり、異世界の奇妙でかわいい生き物が多数登場し、童話のような寓話性に満ちている。二部構成。

正式名称
クーの世界
ふりがな
くーのせかい
作者
ジャンル
アドベンチャー
 
ファンタジー
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概要・あらすじ

中学生の女の子れねいは、兄を事故で亡くして心に傷を負っていた。入学式の前日、れねいは夢で不思議な世界へと降り立つ。そこで兄と瓜二つの青年と出会う。彼は自分をクーと呼び、れねいのことは知らないという。自分のことを知らなくても、たとえ夢の中であっても、兄とまたいっしょに居られるのでれねいは嬉しくなる。

この「クーの世界」を訪れる夢をなぜか毎晩見るようになり、れねいはこの世界での本当の家を探してクーたちと旅に出る。奇妙奇天烈な旅を続けるうちに、クーの世界と現実の世界は奇妙に浸食し入り混じるようになってくる。旅を通してれねいは成長し、第一部は幕を閉じる。第二部はれねいが中学1年生の終わりごろから始まる。

クーの世界の夢を見なくなって久しいれねいだったが、母が再婚しようとしているのに反抗し、孤独になる。そんな時、同学年のいじめられっ子伽弥に巻き込まれる形で、れねいは再びクーの世界を訪れる羽目になる。

登場人物・キャラクター

林 麗寧 (はやし れねい)

中学生の女の子。兄を事故で亡くしたばかりで、心に傷を負っている。祖母と母親との3人暮らし。父親はれねいが2歳の時に亡くなっている。中学校の入学式の前日から、眠ると夢の中で「クーの世界」へと旅立つようになった。その世界には亡き兄にそっくりな青年クーや、幼なじみの亮太そっくりの少年キョムが登場する。 れねいは毎晩夢の中でクーの世界へ降り立ち、本当の家を探す旅を続ける。クーやキョムと共に不思議な冒険を重ねるうち、れねいは少しずつ成長し、大人に近づいてゆく。

おにいちゃん

れねいの兄。齢は10歳離れている。実家を出て家族とは離れて暮らしていたが、事故に遭い亡くなってしまった。幼い頃に父を亡くしたれねいにとって優しく頼りになる存在だった。れねいは13歳の誕生日にばあちゃんから、実は兄は養子であり、れねいとは血が繋がっていなかったという事実を知らされる。

クー

れねいが夢の中で最初に出会った人物。亡くなったれねいの兄そっくりの姿をしている。本人はれねいのことは知らず、れねいが「おにいちゃん」と呼び慕っても戸惑うばかり。その後、れねいの本当の家を探す旅に同行することになった。姿こそ瓜二つだが、クーは現実の兄と比べてだらしなく、いいかげんな性格で乱暴なため、れねいは失望する。

雨森 亮太 (あまもり りょうた)

れねいと同い年の幼なじみの男の子。坊主頭。無口でほとんどしゃべらない。小さいころに同級生からからかわれていたところを助けてもらってから、れねいのことが大好き。れねいのばあちゃんの茶飲み友達。ばあちゃんは亮太のことを「天使のように可愛らしい」と評しているが、れねいは鈍くさくて子供っぽいと思っている。

キョム

れねいの夢の中に登場する。外見は幼なじみの亮太とそっくり。ヒシという名の、頭部が骨になっている奇妙な羊を飼い慣らしている。クーと共にれねいの旅に同行し、様々な冒険を繰り広げる。

イッポ

『クーの世界』に登場する生物。れねいの夢の中に登場する。とても巨大な爬虫類のような外見。一日に一歩しか動かない。クーの住む村の近くの山の上に立っており、その大きな足音が村人たちに朝を告げる。とても大きいので、痛覚が脳に達するまで時間がかかる。

モノキビル

『クーの世界』に登場する生物。れねいの夢の中に登場する。木の実のような頭部に細長い手足が付いている。人間の膝下くらいの大きさ。クーの住む村のそばに生息している。クーたちにとって食用で、頭を丸かじりするのが正しい食べ方らしい。

トリコ

『クーの世界』に登場する生物。れねいの夢の中に登場する。鳥のようなくちばしを持ち、毛むくじゃらの小さな生物。クーの住む村に生息しており、食用である。

王様 (おうさま)

れねいの夢の中に登場する。王冠をかぶりマントをはおっており典型的な王様の格好をしているが、人間の肩に乗れるほど小さい。本人いわく、王国は繁栄していたが息子に王位を譲り、引退したとのこと。れねい一行が旅に出てすぐ、村の近くの街道沿いで出会った。王様はれねいたちを気に入ったようで、同行することとなった。

おじさん

れねいの夢の中に登場する。クーの住む村の近くの小屋の中に住んでいる男性。身体はほとんど地面に埋まっており、顔だけ地上に出している。本人いわく「なんでも書いてある本」を持っており、れねいの本当の家のある方向を指し示した。妙に堂々としており自信ありげだが、その発言内容はあまり信用できない。

ヨン

『クーの世界』に登場する生物。れねいの夢の中に登場する。枯れ木のようにしわだらけで細長い身体をしている。れねい一行が砂漠を旅している際に出会った。食糧も水もなく難儀しているれねいたちに、自分の身体を食べさせて助けてあげた。それが自分の使命だという。みんなに食べられて、最後には声だけになり、消滅した。

ミュウ

れねいの夢の中に登場する。れねい一行と旅先で出会った。姿形は若い女性だが、背丈は人間の倍以上ある巨人。言葉は話せないようである。なぜかクーのことが大好きなようで、まとわりついてきた。クーを吸収しようとしたダキタイ様と闘い、同士討ちとなり命を落とした。

ダキタイ様 (だきたいさま)

れねいの夢の中に登場する。縦長の岩のような外見で、空中に浮いている。ハグの森の奥に多数存在する。森番によると、ハグの森には人生に疲れた人々が訪れる。そこで自分に合ったダキタイ様を発見して完全に合体し一体化すると、永遠の至福が得られるのだという。

ばあちゃん

れねいのおばあちゃん。丸メガネをかけており、いつも和服姿。夫はすでに亡くなっている。やさしいおばあちゃんで、れねいが夢の世界で体験した出来事についても信じてあげている。意外とアグレッシブで、第二部では、意識不明となったれねいを呼び戻すため、自らクーの世界へと旅立った。

伽弥 (かや)

第二部に登場する。れねいと同学年の女の子。無造作に伸ばした長い黒髪が特徴的。無口で、クラスでは「妖怪伽弥」と呼ばれていじめられているらしい。れねいを巻き込み共に意識不明となった。そのため2人はクーの世界へと飛び、ともに暮らすようになる。クーの世界で様々な経験をするうち、現実に適応できずこわばっていた伽弥の心は癒され、解きほぐされてゆく。

場所

クーの世界 (くーのせかい)

れねいは眠りについて夢を見るとなぜかこの世界に降り立つようになった。そこではれねいは常に中学校の制服姿である。現実の世界とは大きく異なっており、地球では見たことない生き物や現象が存在する、不思議な世界である。れねいはここで亡くなった兄そっくりのクーや、亡き父親と出会った。 死後の世界というわけではないが、死者も存在できる世界ではあるようだ。

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