概要・あらすじ
1999年3月のある日、城門大学の工学部に通う星真一は、研究室で先輩の牧原和美に声をかけられ、和美の自宅での食事に誘われる。思わぬ展開に大喜びする真一だったが、その直後、彼は和美と講師の寺山が交際していることを知ってしまう。ショックを受けた真一は、ヤケ酒を飲んで家に帰る途中で、里美ノアという1人の少女と出会う。
彼女は身を隠しながら、広域暴力団「和冠組」の男たちから逃げていると語るが、泥酔していた真一は、そんな彼女の前で眠り込んでしまうのだった。そして翌朝、自宅で目を覚ました真一は、ノアが自分にしがみついて眠っていることに気付く。あわてる真一だったが、おぼろげな記憶を辿り、昨夜ノアを自分の家にかくまったことをうっすらと思い出す。
こうして真一は、ノアを巡る戦いに否応なく巻き込まれていくことになるのだった。
登場人物・キャラクター
里美 ノア (さとみ のあ)
米軍から逃げ出し、星真一の住む街にやって来た少女。年齢は12歳。通常の人間にはない特殊な能力を持つため、米軍のみならず広域暴力団「和冠組」の男たちからも追われていたところを、真一にかくまわれた。明るく天真爛漫で無邪気な言動が多く子供っぽいが、心に決めたことは決して譲らず、想いを貫き通す芯の強さを持つ。真一との出会いを運命だと確信し、出会った日から真一の部屋に居ついて一緒に暮らし始める。 一人称は「ボク」。
星 真一 (ほし しんいち)
城門大学工学部情報工学科の4回生の青年。年齢は22歳。腕力に自信がなく、自分の非力さにコンプレックスを感じて空手を習っているが、半年続けても上達していない。女性に対しては不慣れで、大学の研究室の先輩である牧原和美と話すだけで、どきまぎとうろたえてしまうほど。広域暴力団「和冠組」の男たちから逃げる里美ノアに出会い、かくまった日から一緒に暮らし始めた。 無邪気なノアの言動に振り回されながらも、不思議とノアとの相性の良さを感じている。
牧原 和美 (まきはら かずみ)
星真一が通う城門大学工学部の研究室の先輩の女性。居心地のいい研究室を気に入り、今年の残留を決めている。真一の洋服のほつれに気づいて服を直したり、自宅に食事に誘ったりと面倒見がいい。4歳年下の弟がいたが、5年前に死去した。背が高く身体は大きいのに子供っぽかった弟の面影を真一に重ね、真一のことを放っておけない様子。実は研究室の講師・寺山と交際している。
寺山 (てらやま)
星真一が通う城門大学工学部の研究室の講師の男性。学生に対し、非常に高圧的な態度で接している。実は牧原和美と交際中で、大学の空き部屋で和美と情事に及んでいることもある。
木村 (きむら)
星真一の友人で、医学生の青年。里美ノアと出会ってから経験した不思議な出来事を真一から聞いた際、すぐにはその話を信じなかったものの、真一の経験を事実と仮定したうえで、ノアの能力の有用性と希少価値について推論した。この時の木村との会話が、真一がノアの置かれた危機的な状況に気づくきっかけとなった。
御咲 香織 (みさき かおり)
陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊に所属する女性。年齢は26歳。自衛官としての階級は三尉。職務により、星真一と里美ノアの警護にあたることとなった。その場にいない人物の姿を遠隔で見たり、通常の人間には分からない、特殊能力による現象を感じ取ったりすることができる。立花才蔵とは出会ってから11年になり、互いに軽口をたたきあう親しい間柄。 弟に御咲丈太郎がいる。
スカーレット・クランシー (すかーれっとくらんしー)
「シルフ」と呼ばれる特殊能力者。クランシー博士の娘で赤い髪が美しい華やかな顔立ちの13歳の少女。大変負けず嫌いで、他人に弱みを見せない。米軍に研究対象として身を置き、協力している。米軍での階級は特務少尉。戦闘力に優れ、能力を使用した模擬戦を行った際には、単独で戦車小隊を壊滅状態に追い込んだ。のちに、米軍を逃亡した里美ノアを捕らえる作戦中に実際の戦闘にも参加する。 コードネームは「サラマンダー」。
立花 才蔵 (たちばな さいぞう)
陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊のリーダーを務めている男性。年齢は43歳。自衛官としての階級は三佐。立花才蔵自身は特殊能力を持たないが、多数の特殊能力者をまとめている。知り合って11年になる御咲香織とは、互いに軽口をたたきあう親しい関係で、彼女にはくだけたところを見せる。父親の立花重蔵は「日本の影の総理」とも呼ばれる影の実力者。
高山 一夫 (たかやま かずお)
広域暴力団「和冠組」の組員の若い男性。柿沼や他の組員ともに星真一と里美ノアの外出中の路上を狙い、ノアを「和冠組」の事務所に拉致しようとした。ノアの能力のことをよく知らず、普通の人間と同等だと見て油断していたため、ノアの蹴りをもろに食らって前歯を折ってしまった。柿沼は、高山一夫の叔父にあたる。
柿沼 (かきぬま)
広域暴力団「和冠組」の若頭の男性。高山一夫や他の組員とともに星真一と里美ノアの外出中の路上を狙い、ノアを「和冠組」の事務所に拉致しようとした。ノアの戦闘能力の高さを知っていて拳銃を持参して襲撃に及んでいる。素早く動き回るノアに対して、拳銃を発砲する余裕はなかったが、その銃を真一に押し当ててノアを脅し、ひるんだ隙にスタンガンで攻撃するという手段で、真一とノアの拉致に成功する。 三代目組長・天城和好との関係は深く、和好の病気が治るのなら、ノアを連れて来た礼はいらないと思っている。一夫は、柿沼の甥にあたる。
安藤 安夫 (あんどう やすお)
広域暴力団「和冠組」の組員の男性。年齢は41歳。スキンヘッドの大柄な人物で、ややとぼけた話し方をする。組員たちからは「ヤス」と呼ばれている。柿沼や高山一夫が、星真一と里美ノアを襲撃しに出かけている間、「和冠組」の事務所に残っていた。男性は何十人殺しても心が痛まないという考え方をすることから「殺人大魔神」の異名を持つ。 「和冠組」に拉致され連れて来られたノアを運びながら、自分はかわいい子にはやさしいと一夫に話す、自称「へみにすと」。「和冠組」の事務所に出現したノームに強力な張り手で応戦するが、反撃を受けて死亡する。
宗千 方鑑 (しゅうせん ほうがん)
霊能治療を売りにする霊能力者の男性。広域暴力団「和冠組」三代目組長・天城和好の病気治療のため、成功報酬5億円で雇われている。里美ノアを「聖なる少女」と呼び、その生き血を飲めば、どんな病気も治り精気もよみがえると語った。和好の別荘の地下室に心霊治療専用の部屋を作らせ、ノアを監禁した。テレビや雑誌で広く名前が知られている。
天城 和好 (あまぎ かずよし)
広域暴力団「和冠組」で三代目組長を務める男性。年齢は72歳。弱小だった「和冠組」を日本でも三本の指に入る巨大な組織に育て上げた。不治の病にかかっているが、自身の生命への執着が強く、どんな手段を使ってでも生きるという意思を明らかにしている。霊能治療を受けるために宗千方鑑を雇い、方鑑の進言に従って里美ノアの生き血を手に入れようとする。
高山 (たかやま)
広域暴力団「和冠組」の組員の男性。「和冠組」の事務所がノームの出現で壊滅した後、柿沼とともに事務所にやって来た。凄惨な現場を目にし、吐き気をこらえながら柿沼に状況を説明する。なお、同じ「和冠組」の組員・高山一夫とは別人である。
柳田 (やなぎだ)
広域暴力団「和冠組」の組員の男性。「和冠組」の中でも三本の指に入る腕前の拳銃の使い手。柿沼が里美ノアを天城和好の別荘に連れていった後、「和冠組」の事務所に残っていた。事務所に出現したノームに、45口径の拳銃で応戦するが、ノームの圧倒的な戦闘力に敗北し死亡する。
風間 三郎 (かざま さぶろう)
陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊に所属している男性。年齢は27歳。自衛官としての階級は三尉。御咲香織とともに、星真一と里美ノアの警護にあたる。サイコキネシスと催眠パルスを使いこなす、優秀な能力者。職務以外では、女性のスカートをまくったりずりあげたりなどのスケべな行動に能力を使っては、香織に非難されている。
空手部の先輩 (からてぶのせんぱい)
星真一の通う、城門大学空手部の主将を務めている男性。身長190センチ、体重120キロの巨漢で、空手三段の腕前を誇る。空手の練習を休みがちになった真一に対し、上級生が部活を休んでは下級生に示しがつかないという理由をつけて、勝負を挑む。以前から、真一が空手が下手なのを分かっていながら勝負をしておもちゃにしていた。
シェンコップ大佐 (しぇんこっぷたいさ)
米軍でシルフの研究に携わる壮年の男性。大きなサングラスをかけている。里美ノアを捕らえる作戦の状況報告を関係各所から受けて、作戦への人員投入の指揮をする立場にある。スカーレット・クランシーがアガルタⅡの研究室で休息中、眠る彼女の姿を眺めながら、スカーレットとノアをいつ戦わせるかを思案していた。
クランシー博士 (くらんしーはかせ)
アガルタⅡでシルフの研究をする男性研究者。同じ分野の研究者の父親とともに勤務している。シルフに関係する事柄について多くの知見を持つ。ノームの破壊力について、最悪の場合、古代のムウやアトランティスのように、日本列島が沈んでしまうとシェンコップ大佐に警告した。スカーレット・クランシーの父親で、娘に対しては冷淡な態度をとるが、たまに優しい姿を見せることもある。
立花 重蔵 (たちばな じゅうぞう)
政財界から右翼・任侠団体にいたるまで、強い影響力を持ち、「日本の影の総理」「20世紀の妖怪」とも評される影の実力者の老人。年齢は95歳。長年の間に培った政治力を使って、陸上自衛隊にESP実戦特殊部隊を発足させた人物でもある。星真一や里美ノアとの面会を望み、息子の立花才蔵を通じて、真一とノアを呼び出した。 その場にいるだけで威厳にあふれるたたずまいを放つ老人だが、ノアに出会って自らの使命を確信し涙を流した。立花重蔵自身が、通常の人間には見えない未来や霊を見る特殊能力を持つ。
宝塚博士 (たからづかはかせ)
陸上自衛隊特殊能力研究所の所長。明るく快活な老人で、周りをなごませる雰囲気をいつも漂わせる。年齢は85歳。研究所を訪れた里美ノアをとても可愛がるが、可愛がり方がややスケベなために、しばしば御咲香織に怒られている。星真一やノアの潜在能力の高さを見極めて、現れている能力は氷山の一角のようなものだと評価した。
クランシー博士の父親 (くらんしーはかせのちちおや)
アガルタⅡでシルフの研究をする男性研究者。同じ分野の研究者の息子クランシー博士とともに勤務している。息子と同様にシルフに関係する事柄についての知見を持つ。ノームの能力を、過去の遺跡にある記述から推測して説明し、古い文明との関連をにおわせる発言をしている。スカーレット・クランシーの祖父。
水野 あすか (みずの あすか)
星真一が通う城門大学の1年生の女性。かつて高校生時代、教育実習中の真一の教え子だった。当時から真一に好意を抱いており、城門大学への進学を決めたのも真一が通っているからという理由から。水野あすかの住むアパートも、真一の住むマンションと同じ最寄り駅の場所にある。大学内での再会は偶然だったが、その後はあすかの方から積極的に真一にアプローチをかけている。
ウィンディーネ
里美ノアが新宿の街で出会った、金髪の幼い少女。ドイツ語を話す。星真一の用事が終わるのを待つ間、街をぶらついていたノアに近づいて来た。ノアと2人で公園で水遊びをし、意気投合する。しかし、初対面にもかかわらずノアの名前を知っているなど、不審な点がある。
ミカエル・グレンコ (みかえるぐれんこ)
特殊部隊スペッナズの元少佐で、星真一の後を密かに追う男性。年齢は34歳。DNAの生体改造によって、身体能力を強化された戦士で、通常の人間と比べて、スピードとパワーが大幅に強化されている。身長2メートル、体重95キロの大きな身体から、ノームに匹敵する攻撃を繰り出す。恐怖におびえる女性に暴行し、凌辱することを喜びとしており、真一が水野あすかの部屋に立ち寄った日、真一の帰宅後に趣味と称してアパートの住人を皆殺しにし、あすかを襲った。 手帳をあすかの部屋に忘れ、取りに戻った真一と鉢合わせして格闘した際、自らの素性を明かす。
ウィンディーネの父親 (うぃんでぃーねのちちおや)
ウィンディーネの父親で、デュカリオンに所属する男性。シルフとノームを完全に覚醒させるために、もっと敵に対する憎悪の感情を持たせるべきと、ウィンディーネと2人で画策する。組織では父親よりも娘のウィンディーネの方が、立場が上のように扱われていることが多い。
火浦 秀夫 (ひうら ひでお)
陸上自衛隊東部方面隊の幕僚の男性。年齢は53歳。自衛隊での階級は陸将補。水野あすかがミカエル・グレンコに襲われた後に入院していた病院で、ミカエルのロケットランチャーによる襲撃を受けた星真一を、現場に出向き身柄を確保するようにヘリコプターを差し向けた。身柄の搬送先はわからず、そのまま真一は所在不明となる。 搬送は、陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊の立花才蔵三佐の知らないうちに行われたが、階級が才蔵より上位の者の直命であったために、才蔵の指揮下にいた自衛隊員たちは逆らうことができなかった。
御咲 丈太郎 (みさき じょうたろう)
御咲香織の弟で、香織より4歳下の22歳。陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊で、テロリスト専門のカウンターキラーを務める。幼少時、飛行機事故で生き残り、狼と生活した経験で、自らの気配を消す能力を体得した。自衛隊での階級は2等陸曹。星真一が火浦秀夫の直命により身柄を確保された後、真一の危機を感じ取って、家を飛び出した里美ノアの窮地を救う。 自ら名乗ったコードネーム「インターセプター」は、丈太郎につけられたたくさんのコードネームのうちの1つ。
ロウ
デュカリオン所属の監察官で、冷徹な雰囲気の美しい女性。御咲丈太郎が箱根の山中に現れたロボット兵器と戦った際、遠隔コントロールを担う指揮車に同乗していた。米軍の作戦に立ち会っていたが、ロボット兵器が破壊された後に、米軍指揮官に拳銃を突きつけ作戦の指揮権を奪い取った。
グリシャム・アーガス (ぐりしゃむあーがす)
箱根の山中での対ロボット兵器戦で生き残った米軍の男性。米軍での階級は准将。3年前にデュカリオンに入った。陸上自衛隊特殊能力研究所に連れて来られ、風間三郎の催眠パルスによる催眠術で、所在不明の星真一の居場所やシルフに関する作戦について自白させられる。グリシャム・アーガスは真一の居場所は知らなかったが、デュカリオンの作戦基地の所在地は知っていた。
里美夫妻 (さとみふさい)
里美ノアの両親。父親の名は「亮」、母親の名は「セイラ」。広域暴力団「和冠組」の事務所倒壊の3か月前、1998年12月頃に殺害された。2人とも遺伝子工学を専門分野とする研究者で、天才という高い評価を得ていた。ノアとの最期の別れの時、「どんなに暗い夜が続こうとも希望の灯をともせばいつか明るい夜明けはやってくるんだ」とノアに言い遺す。 ノアは、彼らに遺された言葉を生きる信念とし、現在の苦境を耐える支えにしている。
シーラ
デュカリオン所属の監察官で、知的な雰囲気の美しい女性。デュカリオンと米軍関係者の間の連絡役を務めている。米軍に対して組織の意向を伝え情報提供をするほか、必要に応じて内容説明も行う。ナーガ導師がメンバーを呼び出す場合も、シーラを通してメンバー本人に伝えられる。
ナーガ導師 (なーがどうし)
デュカリオンの高級幹部の老年男性。組織メンバーからは「導師様」と尊称で呼ばれ、敬われている。アガルタⅢの地下で巨大な装置につながれ、全身がほぼ装置に埋まっているため、自分から動くことはほとんどない。かなりのESPの持ち主で遠隔で周囲の状況を察知可能。アガルタⅢのある島に飛ばされた里美ノアに、3人の弟子を追手として差し向けとらえようとした。 メンバーたちには、もとはインドのヨガの行者だったと噂され、年齢は120歳以上といわれている。
レヴァイア
陸上自衛隊特殊能力研究所からアガルタⅢのある島に飛ばされ、1人になった里美ノアを襲ったデュカリオンメンバーの少女。ナーガ導師の弟子で、ノアに対して追手として差し向けられたうちの1人。滝で水浴びをするノアを狙い、水のなかに引き込み惑わせて捕らえようとする。水中でも陸上と同じように行動可能で、水を自由に操り強力な幻惑を仕掛けるレヴァイアの術中にはまったノアは、彼女のなすがままにされてしまった。
オッドジョン・クラーク (おっどじょんくらーく)
ナーガ導師の弟子で、里美ノアに対して追手として差し向けられたデュカリオンメンバーの男性。もとはグリーンベレーの軍曹で、若い女性に対して変質的な嗜好を持つ。レヴァイアを倒し、ノアが一息ついた瞬間を狙って土中から出現した。土の中に潜り、相手に気づかれずに接近する能力を持つ他、身体の組織細胞の硬度を自由に変えることも可能。 ベトナム戦争従軍中、未成年の婦女を暴行した罪で死刑になったが、デュカリオンによって復活させられた。
エルフィン
オッドジョン・クラークの襲撃を退けた里美ノアの前に現れた女性。空中に浮いたまま行動し、自らをシルフやノームとは別の種類の生物系の妖精だと自己紹介した。ノアを追う追手ではないが、デュカリオンのメンバーということになっている。建前上は敵対関係にあたる彼女は、島やアガルタⅢの詳細、デュカリオンと米軍の関係について詳しくノアに教え、特殊能力で映像を見せた。
パージ
ナーガ導師の弟子で、里美ノアに対して追手として差し向けられた女性。クモ男に襲われて逃れようとしているように見せかけてノアに近づいて来る。「キャシィ牧村」と名乗り、里美夫妻と同じ研究所で働いていたと話す。デュカリオンから逃げてきたと装い、ノアを油断させた。クモ男が人間だった頃からの妻で、異形の者に変わってしまっても彼を愛している。
クモ男 (くもおとこ)
全身に毛の生えた、クモのような姿の男性。ねばついた糸を口から吐いてネットを作り、里美ノアを捕らえようとする。ノアはネットにからめとられて自由を失い、クモ男にいたずらされそうになるが、ぎりぎりでパージが制止したため難を逃れた。かつては人間であり、その頃からパージとは夫婦だった。異形の者となり、言葉が交わせなくなってもパージを愛している。
オーディン
里美ノアに追手として差し向けた弟子たちが作戦に失敗した後、ナーガ導師がノアに放った刺客。デュカリオン最強の主神兵といわれ、幹部戦士では最高位の将軍格の男性。常に仮面を被っていて素顔を知る者は少なく、組織内でも秘密のベールに包まれた存在。裏切者は容赦なく抹殺する。
ニイナ
デュカリオンの理想郷EDENで、里美ノアの身の周りを世話する係を受け持つ侍女。ナーガ導師とオーディンによってEDENに送り込まれ、目を覚ましたノアに、ノア自身も新しい世界の住人となったのだと告げる。やわらかく上品な物腰で、周りの物事にも動じずおだやかな態度を崩さない。
アミン
デュカリオンの理想郷EDENに住む少女。天真爛漫な笑顔がかわいらしく、人の心をなごませる。元の世界に戻る手段を見失ったと感じて、落ち込んでいた里美ノアに、アミンがハンカチを差し出し慰めたことから、2人は友達となる。ノアよりもずっと幼いアミンは、EDENに住む者はずっと歳を取らず、子供はいつまでも子供のままなのだとノアに話した。
ルカ
デュカリオンの理想郷EDENで、住人から「御司祭様」とあがめられる男性。池の水面を沈まずに歩いていたところをアミンと水遊びをしていた里美ノアに発見される。ルカは自ら、EDENの民に神の言葉を伝え、神の執政の代行をする者だと自己紹介したが、ノアはその言葉を信じず、ルカにカマをかけて様子を探った。 ルカはノアに洗礼を受けるようにと強く勧めてくる。
ドクター・キオ (どくたーきお)
アガルタⅢのある島に飛ばされた里美ノアと御咲香織が、アガルタⅢ内に潜入中に出会った、デュカリオンの科学者。施設内の警備から逃げるノアと香織を自分の研究室にかくまう。自らの研究が出来る場所が他にないために、組織の趣旨に賛同はしていないが、デュカリオンに身を置いている。デュカリオン創設メンバーの1人で、組織創設から現在までのすべてを知る者。 ノアと香織にデュカリオンの成り立ちと、組織の目指す真の目的を明かした。
小野寺 渡留 (おのでら わたる)
勉強もスポーツも得意ではなく、毎日が退屈なことに悩む、中学1年生の13歳の少年。夏休み明けに転校して来た里美ノアに一目ぼれし、いつもノアが気になって仕方がない。ノアばかり気にかけているのを同級生に「里美ノア好き好き病」と茶化される。知り合ってから1か月以上きっかけをつかめず、一言もノアと話せないでいる。
集団・組織
和冠組 (わこうぐみ)
特殊な能力を持つ里美ノアの生き血を求める組長・天城和好の命令で、ノアを捕らえようと目論む広域暴力団。星真一とノアが初めて出会った時、子分たちを差し向けノアを追っていた。ノアが真一と同居した後もノアを追い、拉致しようとする。
陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊 (りくじょうじえいたいとくしゅのうりょくせんとうぶたい)
陸上自衛隊の新市ヶ谷駐屯地に配備された、自衛隊唯一のESP実戦特殊部隊。さまざまな特殊能力を持つ者が集められている。特殊能力による事案などの対応に当たるが、自衛隊の他の部内では、単なる窓際の集団で通っている。陸上自衛隊特殊戦略研究課と名乗ることもあり、通称は「ESPコマンド」。御咲香織の透視した里美ノアの姿や広域暴力団「和冠組」事務所の倒壊現場の状況、米軍情報部の動きを分析し、特殊能力が関係していると見なして、関係者のノアと星真一の警護を申し出る。
デュカリオン
強力な力を持つシルフとノームを手に入れ、その潜在能力をすべて解放させようと目論む組織。「黙示録に記された審判の日」の存在を信じ、新しい世界での人類の歴史の創生を目指した活動を行う。メンバーは選ばれた人類として審判の日を生き残るとされている。目的のための犠牲をいとわず、たとえメンバーであっても、組織にとって利用価値がなくなれば容赦なく排除されてしまう。
場所
陸上自衛隊特殊能力研究所 (りくじょうじえいたいいーえすぴーけんきゅうじょ)
奥多摩の山中に作られた、陸上自衛隊のESP専門研究施設。研究所長は宝塚博士が務めている。建物全体が迷彩でカモフラージュされ、出入口にも研究施設の表記はなく、人目につかないように作られている。主に陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊のための、研究開発や訓練に使用される。施設の設立には立花重蔵が大きく関わり、必要な資金のすべてを出資した。 この研究所の設立の翌年、陸上自衛隊特殊能力戦闘部隊が創設される。特殊能力を分析、測定する設備があるほか、宿泊設備や運動場なども備え、また、御咲香織の強い要望により、女性用大浴場の設備は高級ホテル並みに豪華な作りになっている。
アガルタⅡ (あがるたつー)
アメリカ合衆国海軍所属の海上移動研究施設。房総半島の沖を航行している。スカーレット・クランシーやクランシー博士が作戦行動中の拠点とし、米軍のシルフの研究設備や、各人の居室が設けられている。日本での作戦行動では、ヘリコプターで研究施設と日本国内を行き来する。
アガルタⅢ (あがるたすりー)
太平洋のXポイントと呼ばれる場所に作られた、米軍のシルフ研究施設。島1つの山をくりぬいて施設が作られ、戦術核程度の攻撃には耐えられるよう、施設全体が頑丈になっている。アガルタⅡ同様、米軍のシルフの研究設備などと、各人の居室が設けられ、本拠地としての使用が可能。本格的な研究設備を備えているため、米軍はノームの身柄の確保に成功した後、研究のためにこの施設に運び込んだ。
EDEN (えでん)
デュカリオンの理想郷とされる新しい世界。ナーガ導師とアガルタⅢで対峙し意識を失った里美ノアが、ナーガ導師とオーディンによって送り込まれた場所。緑にあふれた温暖な気候で、中世ヨーロッパに似た文化を持つ。村は活気があり明るく、住民も親切で争いもないが、ノアにはどこかよそよそしく感じられた。特殊能力を封じられてもとの世界に帰る手段をなくしたノアは、釈然としない思いを心に残したまま、EDENを脱出する方法を探すこととなった。
その他キーワード
シルフ
米軍で極秘に研究されている、特殊な能力を持つ者たち。シルフはそれぞれ違った能力を持ち、戦闘のスタイルもそれぞれに違う。実戦投入に向けてスカーレット・クランシーによる模擬戦闘が行われ、単独で戦車小隊を壊滅させるほどの戦闘力の発揮が確認された。非常に強力な能力を持つため、扱いを誤ると危険な存在になると米軍の関係者に恐れられている。
ノーム
シルフを護る定めを持つ護身獣に変身する能力を持つ者たち。潜在的にノームの能力を持つ者は、本人もそのことを知らず、まったく通常と変わらない生活をしている。だが、シルフの特殊能力による接触を受けるなどのきっかけがあると、変身能力が覚醒する。護身獣に変身すると、身体が非常に大きくなり、軍事用の装備や拳銃でも太刀打ちができないほどに高い戦闘能力や防御力を有する。 変身した後の姿や、護身獣が発する能力そのものも、総括して「ノーム」と呼ぶ場合もある。