世界観
SFが題材。過去の歴史に干渉する能力「時間跳躍」を偶然手に入れた女子高生の芳山和子。無意識に、あるいは友人である深町一夫の力を借りて過去に飛べるようになった和子は、最初はごく私的な範囲で歴史改変を行っていく。しかし次第に過去を変えることの恐ろしさや影響の大きさに気づき、「時間跳躍」について学び始める。
あらすじ
高校3年生の芳山和子は、始業式の日、ラベンダーの花の香りを嗅いだことから「時間跳躍」の力を手に入れる。親しかった祖母の若山トキの死の間際に偶然時間跳躍した和子は、半信半疑ながらも過去の後悔を消すためトキに会うことを決意する。
関連作品
実写映画
1983年、大林宣彦監督の手により原作の実写映画版が公開され、大ヒットとなった。主人公の芳山和子役を原田知世、深町一夫役を高柳良一が演じた。また、その後も2回実写映画化され、1997年には角川春樹が監督を務め、芳山和子役を中本奈奈、深町一夫役を中村俊介が演じた。2010年には谷口正晃が監督を務め、主人公が芳山和子の娘という未来の世界を描いた設定となり、主人公の芳山あかり役を仲里依紗が演じた。
アニメ映画
2006年7月、細田守監督によるアニメ映画版が公開された。原作の出来事から約20年後を舞台にした未来の物語として描かれており、脚本は奥寺佐渡子、キャラクターデザインは貞本義行が務めた。また、主人公の紺野真琴を仲里依紗、間宮千昭役を石田卓也が演じた。
コミック
本作『時をかける少女』の他にも、多数のコミカライズ版が存在する。2010年公開の実写映画版のコミカライズである『時をかける少女 after』、2006年公開のアニメ映画版のコミカライズである『時をかける少女 -TOKIKAKE-』など。
TVドラマ
2016年7月から日本テレビ系にてTVドラマ版がスタートする。放送時間帯は、毎週土曜日の午後9時から。原作や本コミカライズ版とは設定が異なり、キャラクターの名前も現代風のものに変わっている。主人公の芳山未羽役を黒島結菜、深町翔平役を「Sexy Zone」の菊池風磨が演じる。過去にもドラマ版の制作は数回行われており、最も古い作品はNHKで放送された1972年の「タイムトラベラー」となる。
メディアミックス
小説
原作として、筒井康隆の小説がある。原作は学習研究社の「中学三年コース」の1965年11月号から連載がスタート。1967年3月に単行本が刊行された。
著名人との関わり
漫画家のゆうきまさみが、1巻の帯コメントを寄せている。ゆうきは、2000年代に入ってからコミカライズされたことに当初は驚いたが、本作『時をかける少女』の現代的なアレンジや華やかさに新鮮さを感じ、「新鮮な作者の手によって『時をかける少女』がまた蘇った」と語っている。
登場人物・キャラクター
芳山 和子 (よしやま かずこ)
高校3年生の女子生徒。前髪を目の高さで切り、胸のあたりまで伸ばした茶髪のストレートロングヘアをしている。明るく元気な性格で、テニス部に所属している。高校3年の始業式の日、理科室の掃除中にラベンダーの花の香りを嗅いだことがきっかけで、過去や未来の時間へ飛ぶことのできる「時間跳躍(タイムリープ)」能力を手に入れる。突如手に入れた能力に驚きつつも、主に過去へ飛ぶことで、自分と周囲の人間の歴史を変えていくようになる。 しかし、次第に時間跳躍が与える影響の恐ろしさに気づくことになる。
深町 一夫 (ふかまち かずお)
芳山和子の幼なじみで、同級生の男子生徒。前髪を眉上で短く切り、薄紫色の髪を肩のあたりまで伸ばしている。眼鏡をかけている。和子、神谷真理子、浅倉吾朗とは幼い頃からの友人で親しいが、どこか謎めいた雰囲気を持つ。普段はそっけないが「時間跳躍」については何か知っている様子で、突如得た力に戸惑う和子を、懐中時計を用いてサポートする。 特技はピアノ。
神谷 真理子 (かみや まりこ)
芳山和子の幼なじみで、同じクラスに所属する3年生の女子生徒。前髪を左の端で10対0で分けてピンで留め、肩につくほどの長さの深緑色のセミロングヘアをしている。眼鏡をかけている。和子、深町一夫、浅倉吾朗とは幼い頃からの親友。クールで落ち着いた性格で、和子には手厳しい指摘をすることも。大人っぽく振る舞おうとするあまり、他人に本心を打ち明けたり、頼るのが苦手。 大学生の恋人がいる。
浅倉 吾朗 (あさくら ごろう)
芳山和子の幼なじみで、同じクラスに所属する3年生の男子生徒。前髪を眉上で短く切った黒髪短髪ヘアをしている。和子、深町一夫、神谷真理子とは幼い頃からの友人で親しい。剣道部に所属しており、県の代表選手に選ばれるほどの腕前の持ち主。和子に想いを寄せているが、いつも勇気が出せず友人関係にとどまっている。特技は料理。
福島 (ふくしま)
芳山和子の高校に勤める女性教師。担当は科学。前髪を真ん中で分け、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。「時間跳躍」能力を手にした和子から相談を受け、アドバイスをするようになる。和子の話は信じている様子で、時間跳躍した結果として歴史を変えてしまうことの恐ろしさと責任を、和子に伝えようとする。いつも煙草をくわえている。
鴻上 (こうがみ)
芳山和子の高校で司書を務める男性。前髪を真ん中で分け、ストレートヘアを肩まで伸ばしている。穏やかだが勇敢で、いざという時に頼れる人物。福島とは高校の同級生で、現在も勤め先が同じため親しい。福島の勧めで時間跳躍について学ぶことになった和子に蔵書を用いてサポートしようとするが、一番必要な本は紛失図書となっていた。
芳山 智子 (よしやま ともこ)
芳山和子の妹。前髪を目の高さで切り、肩までの長さの髪を、左側の一部だけを結っている。元気だがやや生意気な性格で、和子のことも「ババくさい」と評したり意地悪を言うことも。同級生のコーと交際している。和子のことは「お姉」と呼ぶ。
芳山 トキ (よしやま とき)
芳山和子の亡くなった祖母。やや太めなのが特徴。笑顔を絶やさぬ明るい人物で、和子からも非常に慕われていた。しかし病気で亡くなり、和子は死の間際に居合わせることができなかったのを悔やんでいる。死の直前は体調悪化にともない視力を失っており、過去に飛んだ高校3年生の和子と、そうと知らず対面することになる。「明菓堂」のお菓子が好きで、よく和子と一緒に食べていた。
録 (ろく)
芳山和子の高校に赴任してきた若い男性教師。福島の指導のもと、和子たちのクラスの副担任を務めることになる。黒目がちな瞳が特徴。和子の時間跳躍能力のことを知っており、なぜか深町一夫のことを「十河健」あるいは「ケン・ソゴル」と呼ぶなど不審な点が多い。
神谷真理子の恋人 (かみやまりこのこいびと)
神谷真理子と交際中の男子大学生。前髪を目の高さで切り、ふんわりとした長めの髪を外にはねさせている。眼鏡が特徴。真理子に暴力を振るっている疑いがあり、真理子を案じた芳山和子と浅倉吾朗は真偽を調査することになる。
コー
芳山智子の恋人。前髪を目の高さで切り、肩のあたりまで髪を伸ばしている少年。智子と海に出かける際、保護者として芳山和子が同伴することになったことで和子と知り合う。可愛らしく素直な雰囲気だが、実際はしたたかで抜け目のない性格をしている。実家は八百屋。
場所
えびてん共和国 (えびてんきょうわこく)
芳山和子、深町一夫、神谷真理子、浅倉吾朗の4人が幼い頃に建国した国のこと。国を運営するうえで、4人それぞれに異なる役割が割り振られており、和子は「応援団長」、一夫は「タイムキーパー」、真理子は「議長」、吾朗は「兵士」を担当した。国名の由来は、その日の給食の献立に海老天が出たことから名付けられ、国旗にも海老天の絵が描かれている。
その他キーワード
懐中時計 (かいちゅうどけい)
深町一夫が所持している古い懐中時計。蓋つきの金色の時計に、長い鎖がついている。相当な年代物だが手入れが行き届いており、問題なく動作する。芳山和子の「時間跳躍」を助ける力があるのか、一夫はこの時計を用いてサポートする。非常に謎の多い時計だが、一夫によれば「思い出の品」であるという。
クレジット
- 原作
-
筒井 康隆
- 企画協力