帝都初恋心中

帝都初恋心中

大正時代を舞台に、16歳の少女、美園花織と20歳の伯爵、美園環の訳あり恋愛模様を描いたラブストーリー。2017年に「Sho-Comi」に読み切りが掲載されたあとに「コミック小学館ブックス」で連載され、その後「Sho-Comi」で不定期掲載された作品。

正式名称
帝都初恋心中
ふりがな
ていとはつこいしんじゅう
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊9巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

あらすじ

環の正体

大正時代の帝都で美園環は、貿易会社「美園商社」の若社長として手腕を振るい名を馳(は)せていた。半年前に16歳の少女、美園花織を妻にして愛情を一心に注いでいたが、花織は環に溺愛されるばかりではなく彼の役に立ちたいと考えていた。そんな時、環が麻薬を取り扱っているという噂(うわさ)を耳にした花織は、環が貴族を相手に薬の取引を行っている場面を目撃し、身の危険に晒(さら)される。環とアラン・バルトの機転により、その場を切り抜けた花織は、環が麻薬を取り扱っていたのは囮(おとり)捜査の一環であり、実は裏社会に潜入して違法行為を取り締まる活動を行っていることを知る。

妊娠騒動

美園花織美園環の子供を授かった予感を感じていた。まずは環に相談しようとするが、初音が一方的に小夜を預けたことで環に話すきっかけを失ってしまう。さらに環から子供が苦手だと聞いてしまった花織は、ショックを受けて環に八つ当たりする。すると環は妊娠の兆候があることに気づいていたと告げ、強制的に環を病院へ連れていく。その道中で環から嬉しいと言われて安堵(あんど)するが、実際には妊娠しておらず取り越し苦労に終わる。

吸血鬼事件

帝都では、吸血鬼事件の話題でもちきりとなっていた。若い女性ばかりを狙う悪質な犯人を突き止めるべく、美園環美園花織と共に捜査を開始する。花織は不老不死伝説を妄信している綾小路皐月を疑い、皐月が囲っていた書生の一人、霧江綴に協力を求める。霧江は最初は協力的な態度を取りながら、突然豹変して花織を襲おうとしたが、環とアラン・バルトによって阻止される。その後、霧江が警察関係者であり、個人的に吸血鬼事件を捜査していることを知ると、花織は再び霧江に協力を依頼し、皐月を追い詰めて自白させる。

客船での事件

美園花織は、美園環と共に豪華客船での社交パーティーに参加していたが、その目的は客船内で行なわれている人身売買の闇オークションを暴くためで、アラン・バルトと共に捜査していた。そんな中、突如襲われた花織はオークションの商品として出品され、その落札者が霧江綴だと知る。霧江は闇オークションの黒幕が環ではないかと疑っており、花織を人質にして問いただす。いわれのない霧江の主張に憤慨した花織は環の潔白を証明しようとするが、霧江から亡くなった父親に犯罪歴があり、その事実を環が隠滅させたことを知って大きなショックを受ける。

巡との戦い

屋敷内で美園花織は、美園環の弟と初めて出会う。弟がいることを知らなかった花織は歓迎するが、美園巡から突然殺害予告を受ける。その二人の姿を目撃した環は花織に、巡とは異母兄弟の関係で環は妾(めかけ)の子供であること、それを知った巡の母親が両親を殺害したあとに自害したことを語る。すると花織は、環の心痛を察しながら巡を助けたいと思うようになっていた。後日、環は初音からの情報で巡が潜む場所を突き止め、単身で乗り込むもあえなく捕らえられてしまう。助けにやって来た花織は巡と交渉し、環を引き渡す代わりに自分の身体を巡へ差し出すことを申し出る。そして花織は、巡に優しく語りかけ、環との確執を解くことに成功するが、すべてを吐露した巡は川へ身を投げてしまう。

王からの求婚

美園花織は、街中で偶然出会った男性に自分の母親の名前を呼ばれる。すると、その男性は花織の母親に片思いをしていたと語り、花織は亡き母を思って嬉しくなる。しかしその男性の正体は、花織の母親に未練を持ち続けている帝都の王だった。王は花織を花織の母親に重ね、美園環のもとから花織を連れ去って婚姻関係を結ぼうとするが、環は命がけで救出を試みる。

登場人物・キャラクター

美園 花織 (みその かおる)

ヨシノ商社の一人娘。年齢は16歳。旧姓は「吉野」で、商社を営む父親を殺害した犯人を突き止めるため、美園環からの求婚を受けた。環の優しさに触れ、好意を寄せるようになり正式に婚約した。黒髪ロングヘアで、基本的には和服を着用している。環のことを信頼しており、一方的に溺愛されるのではなく自分も環の力になろうと努力している。炊事や洗濯などの家事は一通りできるが、環や使用人からは制止されているため、手持ち無沙汰な毎日を過ごしている。ふだんはおっとりしているが、環に関することになると感情を昂(たか)ぶらせる。環が裏社会に潜入して巨悪と戦っていることを知ると、自分に降りかかるであろう災難も厭(いと)わないと言い切り、環の仕事を陰ながら手伝うようになる。聡明で機転も利き、伯爵夫人として社交場に出ることもあるが、自分の立場をわきまえてその役目に徹している。どんな相手に対しても対話で理解しようと心掛けており、自分と敵対する相手にも自ら歩み寄っている。

美園 環 (みその たまき)

伯爵家の男性。貿易会社「美園商社」の社長を務めている。年齢は20歳。美園花織の父親が殺害されたあと、花織を守るためにヨシノ商社を買い取って求婚した。栗髪短髪で洋服を着用していることが多く、基本的に笑顔は見せない。花織を溺愛しており独占欲が非常に強く、人前でキスやスキンシップを取ることを厭わない。外見のよさと社長としての経営能力の高さで周囲からは一目置かれているが、相手を鼓舞しすぎるところがあり、敵も多い。それが原因で悪い噂が絶えず、世間からは「死神貴族」と呼ばれることもあるが、その実態は帝都の王から下された勅令を受けて裏社会に潜入し、犯罪行為を取り締まるための活動を行っている。本妻の子ではなく父親の妾の子であり、本来であれば美園巡が跡継ぎとなる予定だったが、巡が病弱であるために跡継ぎに指名された。

美園 巡 (みその めぐる)

美園環の異母弟。黒髪のおかっぱ頭で目元にほくろがある。本来であれば美園家の正式な跡継ぎだったが、病弱であることを理由に環が跡継ぎとなったことを恨んでいる。環に復讐(ふくしゅう)するため「蜘蛛椿」と呼ばれる組織を結成し、若月璃々子を利用して美園花織の命を狙ったが、花織の説得と環の本心を知ったことで、両親にかかわる過去の真実と環への愛憎の念を吐露して川へ身を投げた。

アラン・バルト

フランス人の男性。フランスの貿易会社の日本支店社長を務めており、美園環とは仕事上の取引相手で親交も深い。美園花織のことを気に入って言葉巧みに襲おうとしたが、環によって阻止された。本来は明るく社交的な性格で、その後は環とはよき友人となった。

初音 (はつね)

芸者の女性。色街を取り仕切っている。小夜という子供がいる。美園環に裏社会の情報を提供しており、その見返りとして色街の秩序を整えてもらっている。美園花織と知り合ってからはよき相談相手となっている。

小夜 (さよ)

初音の幼い娘。たどたどしく話す。既婚の女性が苦手で、美園花織と初対面の際には辛辣な言葉を浴びせた。

綾小路 皐月 (あやのこうじ さつき)

40代の中年女性。夫はすでに亡くなっている。年齢よりも若い外見をしており、つねに若い書生を連れている。美に執着し、吸血鬼の不老不死伝説を妄信して吸血鬼事件を引き起こした真犯人。

霧江 綴 (きりえ つづり)

綾小路皐月に囲われている若い書生。吸血鬼事件を調査していた美園花織に取り入って襲おうとしたが、美園環によって阻止された。その正体は警察関係者で、犯罪者を憎むあまり単独行動する問題児として知られている。正体が発覚したあとも花織を気に入り、環から奪おうと画策している。

若月 璃々子 (わかつき りりこ)

美園環の元婚約者である女性。子爵家の娘だったが、勘当され現在は色街で働いている。過去に美園花織に暴行を加えたことがあり、環からは嫌悪されているが、環に対する恋愛感情は消えていない。美園巡にそそのかされて花織を狙うようになったが、徐々に巡自身に思いを寄せるようになり、巡が身を投げた際にはあとを追った。

鳳 譲 (おおとり じょう)

公爵家の若い男性。自信過剰で負けず嫌いな性格をしている。王家と親しくしており、帝都の王とも個人的に会話することができるほど親しくしている。幼い頃、美園花織の母親に一目惚(ぼ)れしたことがあり、花織に母親の面影を感じてアプローチしている。

帝都の王 (ていとのおう)

帝都を統べる王の男性。本名は不明。黒髪の前髪を垂らして失明した目を隠している。若い頃、美園花織の母親に片思いをしており、その気持ちを未(いま)だに消化しきれず、花織を身代わりにしようと強引な方法で花織を連れ去った。

その他キーワード

吸血鬼事件 (きゅうけつきじけん)

若い娘が全身の血を抜かれた状態。殺害された連続殺人事件。首に牙のあとがあることから、吸血鬼事件の犯人は「帝都の吸血鬼」と呼ばれている。

書誌情報

帝都初恋心中 9巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2017-06-26発行、 978-4091393777)

第2巻

(2017-09-26発行、 978-4091395573)

第3巻

(2018-02-26発行、 978-4098700073)

第4巻

(2018-07-10発行、 978-4098700851)

第5巻

(2018-11-26発行、 978-4098702916)

第6巻

(2019-05-24発行、 978-4098704774)

第7巻

(2019-09-26発行、 978-4098706167)

第8巻

(2020-04-24発行、 978-4098710393)

第9巻

(2021-01-26発行、 978-4098712250)

SHARE
EC
Amazon
logo