あらすじ
第1巻
花渕ちなりは、第一志望だった音大付属音楽高校ピアノ専攻科の受験に失敗し、別の高校の普通科に入学して大好きだったピアノも辞めてしまう。そんなある日、兄の花渕傑が親友の藤原一菫を自宅に招き、ちなりは自作のクッキーを二人に振る舞う。それがきっかけで一菫はちなりに興味を抱き、彼女に急接近する。一方のちなりは、自分を誉めてくれる一菫に対し、とまどいながらも好感を抱く。そんな中、ちなりの通う学校で校歌斉唱のピアノ伴奏者を選出することとなる。ちなりが音大付属音楽高校を受験したのを知っているエリの推薦を受け、ちなりが演奏をすることになってしまう。ちなりは受験失敗のトラウマから本心では断りたかったが、はっきり自分の意思を主張できずに流されてしまう。そんなちなりを一菫は励まし、ちなりはもう一度ピアノと向き合う決心をする。そして本番当日、ちなりは緊張から手が震えて、頭が真っ白になってしまうが、阿久津麻衣からのアドバイスや客席の一菫の姿を見たことで、みごとに演奏をやり遂げる。
第2巻
校歌斉唱のピアノ伴奏を成功させた花渕ちなりは、少しずつ自信を取り戻していく。そんなある日、藤原一菫は自らが出演するコンサートに、ちなりと花渕傑を招待する。一菫の演奏を聴いたちなりは感動し、同時に多くのファンを持つ一菫に対して、住む世界が違うのではないかと引け目を感じてしまう。そして、ひっそりとコンサート会場から去ろうとするちなりを追いかけてきた一菫は、ちなりにいきなり告白をし、二人は交際をスタートさせる。デートや夏祭りなど楽しい時間を過ごしていく中で、ちなりはもう一度ピアノに向き合うため、住んでいる街で開催されるピアノコンサートのオーディションへの参加を決意する。一方の一菫は、国内の有名コンクールでみごと優勝を果たし、夢だった海外留学への切符を手にする。
登場人物・キャラクター
花渕 ちなり (はなぶち ちなり)
高校1年生の女子で、年齢は15歳。母親とは死別しており、ちなりの父と兄の花渕傑の三人暮らしで、家事全般を担当している。手先が非常に器用で料理もうまく、特にお菓子作りが得意。自分に自信を持てずに、人から注目されることが苦手なタイプ。幼い頃からピアノを弾くことが好きで、音大付属音楽高校のピアノ専攻科を受験したものの、極度の緊張によって不合格となる。その際、教師の心ない言葉がトラウマとなり、さらに引っ込み思案な性格になってしまう。現在は別の高校の普通科に通っており、ピアノを弾くことも辞めている。兄の傑に連れられて自宅を訪れた藤原一菫と出会い、異性として意識するようになる。一菫の音楽に対する情熱に触れ、花渕ちなり自身もピアノともう一度向き合う決心をする。エリなど親しいクラスメートからは「花渕ちゃん」と呼ばれている。
藤原 一菫 (ふじわら いつき)
高校2年生の男子で、音大付属音楽高校のピアノ専攻科に通っている。母親が現役の有名ピアニストで、音楽一家に育った。若き天才ピアニストとして注目されており、国内だけでなく海外でも高い評価を得ている。その才能に溺れることなく、穏やかで優しい性格の持ち主。人の長所を見つけるのがうまく、それを相手に伝えることにも長けている。音楽の幅を広げるため、2年生からはトランペットを始めた。見た目も整っていることから、学校外からも藤原一菫の姿を一目見ようと音大付属音楽高校を訪れるファンも多い。花渕ちなりの兄である花渕傑とは親友で、一菫が傑の自宅を訪れたことをきっかけに、ちなりと親しくなる。
花渕 傑 (はなぶち すぐる)
高校2年生の男子で、花渕ちなりの兄。母親とは死別しており、ちなりの父とちなりの三人で暮らしている。音大付属音楽高校に通っており、藤原一菫とは親友。一菫を自宅に招き、ちなりと一菫が出会うきっかけをつくった。以降、妹のちなりと親友の一菫が惹かれ合っていく姿を複雑な心境ながらも温かく見守り、ひそかに応援している。口には出さないものの、ちなりが音大付属音楽高校に不合格になってから、大好きだったピアノを辞めてしまったことを気に掛けている。一菫からは「ぶっちー」と呼ばれている。
エリ
高校1年生の女子で、花渕ちなりのクラスメート。入学してすぐにちなりと親しくなり、行動を共にするようになる。思ったことをすぐに口にしてしまうデリカシーに欠けたところがあるがまったく悪気はなく、明るい性格故に許されることも多い。
阿久津 麻衣 (あくつ まい)
高校1年生の女子で、花渕ちなりのクラスメート。大人びたクールな雰囲気をまとった美少女で、将来の夢はアイドルになること。人と群れることを嫌い、つねに単独行動をしている。クラスのピアノ演奏をちなりが辞退しようとするものの、周囲の目を気にして行動に移せない彼女を見て、はっきりするべきだと腹を立てていた。何かとちなりに対して冷たく当たっていたが、その後のちなりの努力する姿を見て考えを改め、少しずつ友情を深めていく。
ちなりの父 (ちなりのちち)
花渕ちなりと花渕傑の父親で、会社員をしている。妻とは死別しており、料理など家事をちなりに任せきりにしていることを気にしている。やや天然気味で頼りない性格ながら、二人の子供を誰よりも大切に思っている。
場所
音大付属音楽高校 (おんだいふぞくおんがくこうこう)
藤原一菫、花渕傑が通っている音楽大学の付属高校。音楽教育に特化しており、ピアノ専攻科やトランペット専攻科など、生徒は好きな楽器の専攻授業を受けることができる。花渕ちなりも音大付属音楽高校を受験したが、極度の緊張から試験に立ち会った教師にも呆れられる演奏で、不合格になってしまう。周囲からは「音高」と呼ばれている。