月の蛇 水滸伝異聞

月の蛇 水滸伝異聞

中道裕大が『放課後さいころ倶楽部』より前の2009年から2012年にかけて連載した作品。舞台は北宋時代の末期。宮廷では奸臣が権力を握り、政治は腐敗して国全体が混乱に陥っており、盗賊があふれていた。黒い蛇矛をあやつる武人の趙飛虎は、主君である祝翠華の命を受け、108人の豪傑「梁山泊」との戦いを繰り広げる中で、互いにかけがえのない存在として強い絆を育んでいく中華アクション。中国四大奇書の一つ『水滸伝』では、英雄豪傑の集まりとして知られる梁山泊が、本作では悪辣な山賊集団として描かれている。小学館「ゲッサン」創刊号である2009年6月号から2012年2月号にかけて連載。

正式名称
月の蛇 水滸伝異聞
ふりがな
つきのへび すいこでんいぶん
作者
ジャンル
アクション
 
その他歴史・時代
レーベル
ゲッサン少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
全7巻完結
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悪辣なる梁山泊の真実

『水滸伝』において、梁山泊は108人の英雄や好漢、豪傑から成る常勝無敗の集団として描かれ、悪政に立ち向かう救世主的な存在とされている。しかし、本作の梁山泊は、英雄や義賊を自称し、周囲にもそのように噂を広めながら、実際には秘密裏に民間人を皆殺しにする悪逆な盗賊集団として描かれている。梁山泊のメンバーは強い絆で結ばれており、総統である宋江の指揮のもと、高い統率力を誇る。そのため、仲間の仇討ちをするために趙飛虎たちを狙う者も少なくない。

「月の蛇」と呼ばれる黒い蛇矛

飛虎が使用するのは、刃までが漆黒色の蛇矛で、鋼製の棍棒を容易に両断するほどの切れ味を誇る。神代の時代、強さを求めた二人の男性に武神が授けた白と黒の蛇矛のうちの一振りとされている。この黒い蛇矛は、鎧や兜をも容易に斬り貫き、刃こぼれもしないことから「月の蛇」と呼ばれている。伝承によれば、月の蛇を持つ者は必ず白い蛇矛の持ち主と出会い、戦う運命にあるとされている。野党の兵士として育った趙飛虎は、恩師の王進によって武人として再教育され、その際に月の蛇が託された。その際、王進は「白い蛇矛の持ち主は、この王進よりも遥かに強い」と断言したという。

趙飛虎、林冲との出会いと宿願

飛虎が祝翠華の従者となる契約を交わした日、彼は梁山泊の頭目の一人であり、中華一の武人と謳われる林冲と対面する。飛虎は一目見ただけで死を覚悟するほどの圧倒的な存在感に気圧され、それ以来、林冲との対戦を宿願とするようになる。梁山泊との戦いを続ける中で、飛虎は林冲が王進の語っていた白い蛇矛の持ち主であることを知る。一方、林冲もまた、世の中に価値を見出せず、両目を閉ざして生活を送っていたが、飛虎が黒い蛇矛を持っていることを察知した際には両眼を開き、飛虎を直視するなど、特別な存在として認識していた。梁山泊全体との戦いという大きな物語の中で、飛虎と林冲の運命的な敵対関係は、物語を一層盛り上げる重要な要素となっている。

登場人物・キャラクター

趙 飛虎 (ちょう ひこ)

翠華が梁山泊を討つために雇った武人の男性。肩までかかるウェーブのかかった黒髪と、顔の中央を横断する傷痕が特徴。大食漢で酒好き、さらに女好きで博打にも目がないという、少々厄介な性格の持ち主。しかし、強い相手と正々堂々と戦いたいという強い欲望を抱いており、飛虎自身が有利な状況にあっても、その条件を捨てて戦いに挑むことを選ぶ。当初は翠華に対して反発的な態度を見せていたが、彼女の素性や梁山泊を憎むに至った経緯を知るにつれて次第に協力的になり、絆を深めていく。また、一目見ただけで死を錯覚させるほどの威圧感を放つ梁山泊の頭目の一人、林冲に強い執着を抱いている。「趙飛虎」という名は、恩師である王進から授けられたもので、幼少期の本名は「趙優」だった。梁山泊の面々からは「蛇矛の男」と呼ばれている。

祝 翠華 (しゅく すいか)

飛虎を雇った女性。大きな吊り目が特徴。梁山泊の面々を強く憎んでおり、飛虎が梁山泊の頭目の一人である穆弘にとどめを刺さずに見逃そうとした際には激怒し、自らの手で穆弘の心臓を貫いた。かつて梁山泊と敵対していたため、村人全員が惨殺された祝家荘の唯一の生き残りであり、梁山泊への復讐を誓っている。村の権力者として育ったため、つねに上から目線のため、人に頼むことを苦手にしている。そのため、当初は飛虎とのコミュニケーションもうまくいかなかったが、自らの生い立ちや梁山泊との因縁を打ち明けたことをきっかけに、飛虎との絆が芽生え始める。

書誌情報

月の蛇 水滸伝異聞 全7巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2009-11-12発行、978-4091221049)

第7巻

(2012-03-12発行、978-4091235121)

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