あやかし堂のホウライ

あやかし堂のホウライ

古道具・骨董の店「彩貸堂」を舞台に、身寄りを亡くした幼い姉弟と、妖怪退治を生業とする訳ありな面々の触れ合いを描く。藤田和日郎がTVアニメ用に考案した原案をもとにした、妖怪退治アクションと友情、親子の愛をテーマにした作品で「週刊少年サンデー超」増刊号2004年5月25日号から2006年1月25日号にかけて掲載された。なお、物語前半の一部は「週刊少年サンデー」2005年7号から13号にリメイクした形で掲載されており、これらはコミックス第2巻の途中に挿入されている。ストーリーの骨組みはコミックス第1巻の内容とほぼ同じだが、一部に独自のエピソードも描き足されている。

正式名称
あやかし堂のホウライ
ふりがな
あやかしどうのほうらい
作者
ジャンル
アクション
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

しっかり者でクラスの皆に頼りにされている小学5年生の女の子・宮前綾香の父母は、綾香と弟の宮前健士を残して突然行方不明になってしまう。そのため、綾香と健士は、親戚の井留間のおじさん井留間のおばさんのもとにそろって引き取られることとなった。しかし、彼らは裕福な生活をしていながらも、姉弟に粗末な食事しか与えずこき使い、おじ夫婦の家の兄妹・井留間博文井留間真紀子も綾香たちに傲慢な態度で接していた。

弟の手前、笑顔で辛い仕打ちにも耐えていた綾香だったが、2人が信頼する大好きな両親を貶す発言で追い詰められていき、1枚しかなかった家族の写真すらもおじに燃やされたことで、ついに我慢の限界に達する。こうして綾香は健士を連れておじの家を飛び出すが、当然行くあてなどはなく路頭に迷ってしまう。

そんな中、住み込みで働けるところを探していた綾香は、ある時「手伝い求ム、子供可、住み込み、日給はたらきに応じて、少しキケン」との張り紙を目にする。その募集を出している「彩貸堂」は、有名なオバケ屋敷だと知る健士は渋るものの、綾香はそんな彼の声も気にせずに店へと向かうのだった。

そして綾香は「彩貸堂」で、女店主・彩貸カスミに、採用の課題として化生封じに向かうホウライに同行することを命じられる。仕事中は何もするなと言われていた綾香だったが、目の前で子供を奪われ、必死に取り返そうとする両親の姿に自分の境遇を重ね、不真面目なホウライを叱りつけて自ら化生に立ち向かう。

この姿勢が結果的にホウライの心を動かし、化生退治は完遂となった。言いつけを破ってしまった綾香だったが、成果を上げたことは認められ、晴れて「彩貸堂」に採用されることとなる。過去に起こした罪を償うために化生退治を課せられているホウライ、自身の料理をもっと沢山の相手に振る舞いたい食事係の、カスミに作られた命を持たぬ出来損ないの従者人形のルウゲと、それぞれバラバラな目的のもと、形だけ集まっていた「彩貸堂」の面々は、綾香の明るさと思いやりに感化され、彼女を中心に次第に今まで抱かなかった仲間意識を持つようになっていく。

登場人物・キャラクター

宮前 綾香 (みやまえ あやか)

小学校5年生の女の子。髪は顎ライン位に切りそろえ、非対称に分け目を作って額を出している。両親が突然行方不明になり、親戚の井留間のおじさんと井留間のおばさんの家に引き取られたが、酷い扱いに耐えかね、弟の宮前健士を連れて家を飛び出した。行くあてもなく途方に暮れていた時、「彩貸堂」の子供可の求人の張り紙を見て、応募し住み込みの手伝いとなる。 活発で働き者で、「彩貸堂」以外に行くあてがないこともあり、店主の彩貸カスミに言いつけられた仕事は即座にこなす行動力を持っている。困っている人を放っておけない思いやりのある性格で、クラスでいつも1人孤立していた四位名かなえが、寂しさから化生に付け込まれた際にも、命がけで助けに向かうほど正義感が強い。

ホウライ

「彩貸堂」で働く仙人の男性。長い髪を後ろで1つに括り、頭周りは黒い布で巻いて髪を押さえているが、布の合間から前髪が数束弧を描いてはみ出している。小学校5年生の宮前綾香と似たような体格で、見た目の年齢は綾香とそう変わらない。昔、母親と暮らしていた村が妖怪に襲われた際、それを退けるために仙人になる修行をしていた。 村を襲った妖怪を倒そうと仙界の霊山の秘符・撃符を盗み出し、それが原因で封じられた妖怪を世に放ってしまった過去がある。その罪を償うため、監視役も兼ねる獄卒の泰練と鎖で腕を繋がれ、妖怪狩りを命じられている。結局、村を救うことは叶わず、罪を清算するためだけに何百年も行動を制限されているため、半ば自棄になっていた。 だが、常に前向きで笑顔を絶やさない綾香の影響で、人を助ける行為にやりがいを見出し始める。人間の子供だった頃の名前は「蓬萊」と書く。

宮前 健士 (みやまえ たけし)

小学生の男子で、宮前綾香の弟。ツンツンはねた短髪で、丸い鼻をしている。泣き虫で、何かと姉の綾香に甘えがちなところがあるが、正義感が強く素直な少年。「彩貸堂」の住み込み手伝い募集に応募して採用された綾香とともに居候させてもらっているが、宮前健士自身は仕事をさせてもらえていない。遊び相手になってくれるルウゲによく懐いている。 姉の綾香が秘密にしていたこともあり、「彩貸堂」の面々が仙人や人形であり、本当は人間ではないことには最後まで気付いていなかった。

宮前 英一郎 (みやまえ えいいちろう)

宮前綾香と宮前健士の父親。短髪で髭を生やした体格のいい中年の男性。病気がちな妻・宮前陽子を病院に送って行く途中、行方不明になった。その時に乗っていた軽トラックは崖下に転落した状態で見つかっているが、宮前英一郎や陽子の遺体は発見されていない。実は化生・千年王母にさらわれ、こき使われていた。

宮前 陽子 (みやまえ ようこ)

宮前綾香と宮前健士の母親。長い髪を後ろで1つに束ねた中年の女性。病気がちで入退院を繰り返しており、自身の代わりにしっかり者の綾香に弟の面倒見て欲しいと頼んでいた。夫の宮前英一郎に病院まで送ってもらう途中、夫婦そろって行方不明になった。その時に乗っていた軽トラックは崖下に転落した状態で見つかっているが、2人の遺体は発見されなかった。 綾香に整とん術などを伝授しており、その整とん術を発揮した綾香の働きは、「彩貸堂」の店主・彩貸カスミも驚かせるほどであった。病弱ながらも、子供たちに身になることを日頃からしっかりと教えていた、愛情深く責任感も強い人物。実は化生・千年王母にさらわれ、こき使われていた。

彩貸 カスミ (あやかし かすみ)

古道具・骨董を人間相手に扱う彩貸堂の店主を務める、高齢の仙人の女性。長身痩躯で髪をお団子に束ねて、襟の詰まった中国服を着ており、時々浮いたまま動いている。「彩貸堂」には多くの中国の訳アリ仙人たちが罪を償うため居候しており、彩貸カスミは彼らを束ねる立場にある。位の高い女仙であり、仕事に厳しく無駄なおしゃべりを嫌う。

ルウゲ

彩貸カスミにより、大気中の精霊を集めた精霊体を人形の身体に入れることで作られた従者人形。身体は古代の土、髪は千年蚕の糸でできている。外見は、金色のミディアム丈の髪に青い目の長身痩躯の青年で、普段は「彩貸堂」で店番として働いている。宮前綾香や宮前健士と過ごすうちに温かい心を持つようになり、子供に懐かれる存在になった。 メンテナンスを続けながら100年間も使役されてきたが、作られた当初から人並以下の仕事のミスを重ね続けており、カスミにも見離され廃棄を言い渡されていた。最後の仕事として、ルウゲ自身の不始末により店内に入り込んだ形霊気を倒すことを命じられ、形霊気に殺されそうになった健士を身を盾にして守る。しかし、その際に身体を破壊し尽され、辛うじて、長く形を留められないルウゲの中の精霊体が形霊気を抑え込み隙を作った。 それを綾香とホウライが封印。のちにホウライのとりなしで、カスミに復元してもらうこととなる。

(わん)

仙界の大事な桃を盗んだ凶悪な仙人の男性で、彩貸堂内で仙人用の料理を作り続けるという罰を課されている。元宮廷料理人で、小柄で団子鼻の下に長い八の字ひげを蓄えている。400年もの間、人間に料理を振る舞うことを禁じられ、仙人相手の食事ばかりを作る生活に鬱憤を募らせていたが、宮前綾香と宮前健士に料理を振る舞うことで満足し、性格も穏やかになった。 料理の腕はいいが、盛り付けのセンスが壊滅的で、その様子は箸をつけるのをためらうほど。

四位名 かなえ (しいな かなえ)

小学校5年生の女子で、宮前綾香のクラスメイト。眼鏡をかけ、ストレートロングの髪型をしている。分け隔てなく人に親切にする綾香に対し、人気取りだと大声で怒鳴り散らすなど、何かとひがんだ見方をするひねくれた人物。そのため、クラスでもいつも孤立している。両親は多忙で四位名かなえに好きな物を買い与えてはいるが、雨の日でも傘を持って迎えに来ることはなく構ってもらえずにいる。 寂しさから素直になれずに綾香の親切を拒否してばかりいたが、攫猿にさらわれそうになったところを綾香とホウライに助けられ、改心して素直さを取り戻す。その後は、クラスの輪の中にも入ることができるようになった。

華印 御月 (かいん みつき)

黒ずくめの烏帽子と水干をまとった少年で、陰陽寮に所属している。長めの黒髪を首の後ろで1つに束ね、小学校5年生の宮前綾香と似たような体格で、見た目の年齢は綾香とそう変わらない。陰陽寮の中で最も呪力が強く、陰陽寮の構成員を複数従えている。中国の仙人たちが集う「彩貸堂」が国内で目立つのを嫌い、彼らが化生を倒して功績を上げるのを阻止しようと画策している。 一般人を巻き込むような強引な化生退治を行い、その責を「彩貸堂」に負わせて日本から撤退させた。産みの母からしか笑いかけられたことがないと振り返るなど、孤独な暮らしをしており、人と対等に接する経験の乏しさから独りよがりになりがちだが、最終的には綾香たちに力を貸すこととなる。

泰練 (たいれん)

物言わぬ仙界の獄卒。ホウライと鎖で繋がっており、罪を償うために化生退治を課せられているホウライに力を貸している。頭巾を被った大男のような外見で、手のひらだけでホウライの二の腕ほどの大きさがある。状況に応じて武器に変身したり車と融合したりと、さまざまな能力の持ち主。ただし、使役するたびにホウライは霊気を消耗しひどく疲労するため、ホウライは泰練の力を使うことにあまり積極的ではない。

井留間のおじさん (いるまのおじさん)

宮前綾香と宮前健士のおじで、井留間博文や井留間真紀子の父親。小太りな体型で背が低い中年男性。眼鏡をかけ、肩ほどまでの髪をオールバックにしている。両親が行方不明になり身寄りをなくした綾香たちを引き取ったが、自分の子供の博文や真紀子を極端にひいきし、綾香たちを邪険に扱っていた。酷い扱いに耐えきれず綾香と健士が家出をした後は、民生委員に厳しく叱られ、2人の行方を探していた。 その際に化生に襲われ、連れ去られる直前で綾香とホウライに救われる。これをきっかけに完全に心を入れ替え、綾香と健士のことを大切に扱うようになる。

井留間のおばさん (いるまのおばさん)

宮前綾香と宮前健士のおばで、井留間博文や井留間真紀子の母親。眼鏡をかけた、おかっぱ頭の中年女性で、夫の井留間のおじさんより背が高く痩せている。両親が行方不明になり身寄りをなくした綾香たちを引き取ったが、自分の子供の博文や真紀子を極端にひいきして綾香たちを邪険に扱い、ことあるごとに蔑む発言を重ねていた。 酷い扱いに耐えきれず綾香と健士が家出をした後は、民生委員に厳しく叱られ、2人の行方を探していた。その際に化生に襲われ、連れ去られる直前で綾香とホウライに救われる。これをきっかけに完全に心を入れ替え、綾香と健士のことを大切に扱うようになる。

井留間 博文 (いるま ひろぶみ)

井留間のおじさんの息子で、宮前綾香と宮前健士のいとこ。長めのおかっぱ頭の少年。親子そろって綾香と健士のことを居候だと邪険にして虐めていたが、化生に襲われた両親を助けてくれた綾香に感謝し、以降は態度を改めた。

井留間 真紀子 (いるま まきこ)

井留間のおじさんの娘で、宮前綾香と宮前健士のいとこ。長めのおかっぱ頭の幼い少女で、舌足らずなしゃべり方をする。親子そろって綾香と健士のことを居候だと邪険にして虐めていたが、化生に襲われた両親を助けてくれた綾香に感謝し、以降は態度を改めた。

水妖 (すいよう)

大陸から渡って来た、魚や蛇などが変化した化生。4人乗りのボートよりも大きな蛇のような形をしたものと、魚のような尾びれを持つものが存在し、対になって海で悪行を働いていた。宮前綾香が「彩貸堂」の採用試験としてホウライに同行した際に初めてに目にした化生で、海上にいた家族連れの子供たちを食べようとしていた。 ホウライと綾香によって倒され、撃符に封じられる。

攫猿 (かくえん)

人間をよくさらう化生で、中国大陸では「狌将(しょうじょう)」や「馬化(ばか)」とも呼ばれる存在。長い毛を持つ一つ目の猿のような姿をしており、人のように走ることが可能。孤独な人間を好み真っ暗な地獄へと連れ去ってしまう。四位名かなえをさらった際に宮前綾香とホウライに追跡され、封印されることとなった。

形霊気 (ぎょうれいき)

人形の化生。繰り人形として操られて踊るうちに、魂が宿って動きだした。自身の身体が空洞なため鼓動の音を欲しがり、人間の心臓を抜き取って自身の胸に納め収集している。ルウゲが間違って開け放ったままにしていた「彩貸堂」の扉から店内に侵入し、宮前健士をさらって心臓を奪おうとしたが、身を盾にして健士を奪還に来たルウゲに抑え込まれ、ホウライと宮前綾香によりとどめの封印を施された。 この時の戦いによりルウゲは壊されてしまったが、のちに彩貸カスミの手で復元されている。

火走り (ひばしり)

蒸気機関車のような形をした化生で、人間を飲み込むことで強度と速さを増す。昔中国大陸を高速で走り回り、荒らし回っていた。仙人たちが何年も追いかけてやっと撃符に封印した相手だったが、ある時撃符から逃亡。封じられた恨みを晴らすため仙界に報復しようと、「彩貸堂」の奥にある中国仙界と繋がる門を目指し、街を壊して人をさらいながら突き進んだ。

千年王母 (せんねんおうぼ)

人間の女性のような姿で、額から触覚を生やし、4本の腕と4枚の羽を持つ巨大な化生。ハチの巣に似た複数の小部屋に分かれた巣を抱いている。時を飛び移っては、手下の化生たちに人間の親たちをさらって来させている。その目的は、巣の中の自分の子供を人間に育てさせるためであり、すでに何千人もの人間の親をさらっている。

集団・組織

陰陽寮 (おんみょうりょう)

平安の時代から日本を陰ながら霊的に守護していた集団。体裁を重んじ、日本の化生は陰陽寮が退けるべきものと考えている。そのため、自分たちの仕事に手を出して来る中国出身の「彩貸堂」に対しては、大昔の約定により日本への滞在を許してはいるものの、快く思っていない。陰陽寮が手を焼いていた化生を3体もホウライが倒したことで、「彩貸堂」を撤退させようと行動を開始。 一番の呪力を持つ華印御月を差し向け、一般人を巻き込むような周囲への配慮を怠った化生退治をした挙句、その罪をホウライらに被せて「彩貸堂」を閉鎖に追い込む。

場所

彩貸堂 (あやかしどう)

彩貸カスミが店主を務める骨董品店で、近所ではお化け屋敷として有名。実際はいわくつきな事情を抱えた中国の仙人の罪人が多数居住しており、カスミはその仙人たちを統率する立場に就いている。いつもどこからか送られてくる物が店内に溢れており、人手不足なため「手伝い求ム、子供可、住み込み、日給はたらきに応じて、少しキケン」の張り紙を出したところ、宮前綾香が応募することとなった。 仙術によって内部空間は広く、奥行きは果てが見えないほど。菜園や数十にも及ぶ仙人たちの個室の他、仙人たちの故郷である中国大陸の各所に繋がる扉が連なった「送り扉・迎え扉の回廊」などがある。

その他キーワード

撃符 (げきふ)

この世の異類・怪類を封じ込めることのできる仙界の札。ホウライは自力で化生にダメージを与えることが可能だが、封じ込めるためにはこの撃符が必要となる。昔、仙界の霊山の秘符として封じられていた品だが、仙人になりたてのホウライが盗み出し、人の世界に持ち込んだ。その時に禁呪が作用し、ホウライの身体は一度石化している。 その間に撃符に封じられていた化生が逃げ出してしまい、石化が解けた後、ホウライは罪を償うため泰練と繋がれて化生狩りを命じられることとなった。

化生 (けしょう)

あやかし、妖怪の類。古の時代から人の世界を荒らし、怪異をまき散らして人を喰う存在。人が不思議な事故に遭う原因となっていることもある。水妖、攫猿などが該当する。

クレジット

原案協力

SHARE
EC
Amazon
logo