ルナティックサーカス

ルナティックサーカス

舞台は戦後の日本。民衆に娯楽を提供しているサーカス団「ルナティックサーカス」で、空中ブランコ乗りの天才フライヤーとして絶大な人気を誇る龍之介をはじめ、サーカス団員たちの栄光と挫折を描くヒューマンドラマ。龍之介の出生の秘密や不思議な力を持つ少女、ルナなど、ミステリー要素も含まれている。「月刊コミックバンチ」2020年10月号から掲載の作品。

正式名称
ルナティックサーカス
ふりがな
るなてぃっくさーかす
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
バンチコミックス(新潮社)
巻数
既刊3巻
関連商品
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あらすじ

龍之介と乱歩

昭和の時代、サーカス団「ルナティックサーカス」は民衆の娯楽として、日本でもトップクラスの人気を誇っていた。その中でも龍之介は、空中ブランコ乗りの天才フライヤー(ブランコから飛ぶ側)として、多くのファンを魅了していた。龍之介に次ぐ2番目の実力者である乱歩は、片思いしているかれんが龍之介に恋していることもあり、ライバル心を募らせていた。そして乱歩は、龍之介に追いつきたい一心で難易度の高い技「三回転」に挑戦し、練習ではみごとに成功させる。しかし、本番で乱歩は失敗してしまい、自らの実力がまだ足りていないことを思い知る。その後、練習を重ねて筋力を強化した乱歩は、ついに本番で「三回転」を成功させる。一方の龍之介は、いつか乱歩にトップの座を奪われるのではないかと不安を抱いていた。さらに龍之介は自身の身体が成長し、演技に支障が出始めていることに気づきながらも、受け入れられずにいた。

龍之介の迷いとルナとの出会い

龍之介は、自らのスランプに思い悩んでいた。そして、その不安な気持ちをいつものようにサーカス団のテントの頂点に設置されている、月をモチーフとした看板「ルナ」に話しかけたところ、中から声がすることに気づく。すると看板の下にはルナと名乗る少女がおり、不思議な歌声で龍之介の心を和ませる。

トップスターの交代

サーカス団「ルナティックサーカス」に、内閣総理大臣の親子が観覧に訪れる。そして空中ブランコの演目で、乱歩は本当は周囲が見えているフェイクの目隠しを使用し、みごと大技を成功させる。一方、視界を遮る目隠しを使用した龍之介はスランプから脱することができず、大技に挑戦するものの、失敗に終わってしまう。当日はテレビ放送されていたこともあり、龍之介の失敗を受けて客席にも空席が目立つようになっていく。この状況に激怒した孔雀は、これからのトップスターは乱歩だと言い放ち、龍之介を冷遇するようになる。

龍之介、再び舞台へ

サーカス団「ルナティックサーカス」は巡業のため、新たな土地に向かう。そこでは乱歩をトップスターに公演がスタートするものの、乱歩では客が呼べず、孔雀は謹慎を命じていた龍之介を再び舞台に立たせる決断を下す。一方の龍之介は、これ以上自らの身体が成長しないように絶食をしていた。その影響で龍之介は拒食障害に陥って痩せ細り、幻覚を見るようになってしまう。

登場人物・キャラクター

龍之介 (りゅうのすけ)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は17歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。空中ブランコチームのメンバーとは一定の距離を置いて付き合っている。天才フライヤーとして周囲からは一目置かれている存在で、サーカス団の中で最も多くのファンを獲得している。クールな顔立ちをした美男子ながらも、神経質で気難しい性格の持ち主。また、乱歩の秘めたる才能を見抜いており、いつか龍之介自身のトップスターとしての立場が奪われるのではないかと恐怖心を抱いている。無愛想なことから、クールで冷徹な人間に思われがちだが、動物と子供には好かれている。サーカス団のテントの頂点に設置されている月をモチーフとした看板に「ルナ」と名づけ、自らの本音をつぶやくのを日課としている。その後、看板の「ルナ」の下にはルナという名前の不思議な少女がいることを知り、彼女と交流を持つようになる。

乱歩 (らんぽ)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は17歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。サーカス団の空中ブランコチーム内では龍之介に次ぐ実力者であり、彼に勝つためにがむしゃらに努力を重ねている。かれんに片思いしており、彼女が龍之介に思いを寄せていることもあり、恋愛に関しても龍之介を一方的にライバル視している。

千羽 蛍 (せんば ほたる)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は21歳。空中ブランコの演技者で、キャッチャー(キャッチする側)を務める。龍之介とバディを組んでおり、周囲とかかわろうとしない彼をフォローすることが多い。個性豊かな空中ブランコチーム内では、兄貴分的な存在のまとめ役を担っている常識人。憂巳から恋心を抱かれているが、まったく気づいていない。周囲からは「蛍兄ィ」と呼ばれて慕われている。

傷丸 (きずまる)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は22歳。空中ブランコの演技者で、キャッチャー(キャッチする側)を務める。乱歩とバディを組んでいる。生まれながらに顔に目立つ大きな傷があり、筋肉質で大柄な体格から怖い人物だと思われがちだが、実際は優しい性格の熱血漢。サーカス団の団長を務める孔雀は父親で、運営に携わっている紅玉は母親。兄の翔丸は空中ブランコの練習中に事故で亡くなった。孔雀からは激しい暴力を受けていることから、親子関係は非常に悪い。

かれん

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している女性。年齢は16歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。龍之介には天才フライヤーとしてのあこがれだけでなく、好意を抱いている。龍之介からは相手にされていないものの、まったく気にしていない。ふだんはサバサバとして姉御肌ながら、龍之介の前では女性らしい恥じらいを見せることも多い。乱歩から好意を抱かれているが、気づいていない。

憂巳 (ゆうみ)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している女性。年齢は16歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。目隠しをしての演技の際、龍之介の目にハチマキを巻く役割を担っていることから、彼と接触する機会が多いため、龍之介に片思いをしているかれんからは羨ましがられている。喜怒哀楽を表に出すことのない、クールな性格の持ち主。自分の気持ちを口にすることは少ないものの、サーカス団のメンバーは自分の家族同様だと考えており、何よりも大切にしている。千羽蛍に対して、ひそかに恋心を抱いている。

(なぎ)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は15歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。天才フライヤーの龍之介にあこがれており、彼から技を習いたいと思っている。以前は地方サーカス団に所属しており、最近「ルナティックサーカス」に入団した新人でもある。年齢の割に幼い外見で、言動も子供っぽい。明るく素直な性格で、空中ブランコチーム内ではマスコットキャラクター的な存在としてかわいがられている。

一刻 (いっこく)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属している男性。年齢は16歳。空中ブランコの演技者で、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)を務める。明るい性格のお調子者で、空中ブランコチームのムードメーカー的な存在。細身の均整の取れたスタイルから、ほかの団員よりも露出の高い衣装を身につけているが、一刻自身は気に入っていない。乱歩と親しくしており、龍之介にライバル心を抱く彼を応援している。

夕夜 (ゆうや)

かつてサーカス団「ルナティックサーカス」に所属していた20代の男性。千羽蛍と傷丸がフライヤー(ブランコから飛ぶ側)として演技していた際に、キャッチャー(キャッチする側)として活躍していた。孔雀の息子で、傷丸の兄である翔丸と空中ブランコを練習していた際、自らのミスによって翔丸を事故死させてしまった。その後も翔丸への償いのためにサーカス団に残り、優秀な演技者を育てることに尽力していたが、そんな中、傷丸を危険な目に遭わせてしまい、退団した過去を持つ。現在はヤクザに身を落とし、地方巡業に訪れる団体からみかじめ料を請求する役目を担っている。

翔丸 (しょうまる)

サーカス団「ルナティックサーカス」に所属していた10代の男性で、故人。サーカス団の団長を務める孔雀は父親で、運営に携わっている紅玉は母親。キャッチャー(キャッチする側)に転身する前の千羽蛍や傷丸、夕夜と共に、フライヤー(ブランコから飛ぶ側)として活躍していた。当時のルナティックサーカスでトップスターだったが、空中ブランコの練習中に夕夜のミスによってネット外に落下し、そのまま命を落とした。

孔雀 (くじゃく)

サーカス団「ルナティックサーカス」の団長兼経営者を務める男性。年齢は74歳。サーカス団ではトップの人気を誇る龍之介をかわいがっている。龍之介が演技で失敗をしても、集客できればそれでいいと考えている守銭奴。傷丸の父親だが、たびたび激しい暴力を振るっていることもあり、親子関係は非常に悪い。長男の翔丸を、空中ブランコの練習中に亡くしている。団員が演技の失敗をしたり、自分に少しでも反抗的な言動を見せたりすると、相手が女性や子供であっても躊躇(ちゅうちょ)なく鞭(むち)を振るう。妻の紅玉にも暴力を振るっており、心身共に支配している。傍若無人に振る舞うが、ルナだけには孔雀自身の弱い部分を見せている。

紅玉 (こうぎょく)

孔雀の妻で、傷丸の母親。サーカス団「ルナティックサーカス」の運営にかかわっている女性で、年齢は46歳。長男の翔丸を、空中ブランコの練習中に亡くしている。孔雀の気に入らないことがあると、傷丸と共に激しい暴力を受けている。精神的にも孔雀に支配されており、本当は孔雀に抵抗して傷丸を助けたいと思いながらも、何もできずにいる自分を恥じている。

ヤナギ

サーカス団「ルナティックサーカス」の全体監督を務める男性。孔雀の執事と司会も兼任している。年齢は77歳。孔雀に忠誠を誓っており、彼の傍若無人な振る舞いにも苦言を呈することはない。目の前で孔雀が傷丸と紅玉に暴力を振るっていても、まったく意に介さずにいる。孔雀からの指示を受け、秘密裏にサーカス団のテント内に住むルナの世話をしている。

スージー

サーカス団「ルナティックサーカス」のメイクと衣装制作を担当している女性。年齢は84歳。龍之介の衣装を作るだけでなく、彼の髪の毛を染めるなどビジュアル面も担当している。若い頃は高綱(カンスー)の演技者だったが、演技中の落下が原因で再起不能となり、裏方に回った過去を持つ。孔雀とは古い付き合いで、幼い頃には彼のおむつを替えたこともある。傍若無人に振る舞う孔雀に対して、唯一苦言を呈すことができる人物でもある。

ルナ

サーカス団「ルナティックサーカス」のテントに住む少女。龍之介の見立てによると年齢は12歳から13歳くらい。テントの頂点に設置されている月をモチーフにした看板のすぐ下にある、屋根裏のような場所に住んでおり、ほかの団員はその事実を誰も知らない。龍之介が看板に「ルナ」と名づけて話しかけたところ、自分の名前が呼ばれたのではないかとカンちがいをして声を出したことにより、彼と知り合いになる。美しく儚(はかな)い容姿の美少女で、言葉をうまく話すことができない。歌を聞いた者に対して、相手が一番見たいものの幻覚を見せる特殊能力を持つ。孔雀に囲われており、ヤナギによって身の回りの世話をされている。

書誌情報

ルナティックサーカス 3巻 新潮社〈バンチコミックス〉

第3巻

(2022-11-09発行、 978-4107725417)

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