機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のコミカライズ作品。圧政に苦しむ火星で、過酷な環境の中で生きる少年兵の三日月・オーガスが、幼なじみのオルガ・イツカ率いる鉄華団に所属しながら、安住の地を求めて戦う姿を描いたロボット戦記。「ガンダムエース」2015年12月号から2016年12月号にかけて掲載された。

正式名称
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
ふりがな
きどうせんしがんだむ てっけつのおるふぇんず
原作者
矢立 肇
原作者
富野 由悠季
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

火星にある民間警備会社、CGSに雇用されている少年達は、横暴な大人が構成する一軍の憂さ晴らしや、弾よけにしか考えられていない参番隊に組み込まれている現状に、命の危機を感じて反乱を起こす。会社を乗っ取ったオルガ・イツカ三日月・オーガスは、その直前にCGSに依頼されたクーデリア・藍那・バーンスタインの地球への護衛の任務を引き続き遂行しようとする。しかし、オルガ率いるCGS改め鉄華団に残ると選択した社員は、提携先を提案すると見せかけて、クーデリアを敵視する軍事組織、ギャラルホルンに内通し、クーデリアの身柄を引き渡そうとする。

第2巻

オルガ・イツカ率いる鉄華団は、火星の独立を訴えて革命を起こそうとするクーデリア・藍那・バーンスタインを地球へと護送する依頼を受け、その任務の遂行に取りかかる。しかし、クーデリアは世界を牛耳っている軍事組織、ギャラルホルンに危険視されており、表の航路を使った身柄の護送は困難だった。結成したばかりの鉄華団は後ろ盾を求め、表向きは複合企業だが、実質はマフィアのテイワズを頼ろうとする。そんな鉄華団を見込んだテイワズの内部派閥の一つである、タービンズを率いる名瀬・タービンとオルガは、義兄弟の盃を交わす。新たな協力者を得た鉄華団は、途上で宇宙海賊のブルワーズからの襲撃を受けるが、それを撃退する。だがその戦いの中で、鉄華団のパイロットである昭弘・アルトランドの生き別れの弟、昌弘・アルトランドと刃を交えた三日月・オーガスは、殺しを楽しんでいると指摘されて、眠れぬ夜を過ごすのだった。少なくない犠牲を払い、鉄華団はクーデリアを地球圏のドルトコロニー群へと護送するが、そこではテロリストが労働者達のデモを偽装し、一方的な反体制労働者層の虐殺及びクーデリアの暗殺が企てていた。クーデリアが姉のように慕っていたメイドのフミタン・アドモスは、テロリスト側と内通していたが、ぎりぎりでクーデリアの側に戻り、命と引き換えに彼女を護る。この一件を経て、クーデリアは、虐げられた者達の声を代弁する革命に命を捧げる覚悟を新たにし、オルガは、今回のクーデリア暗殺未遂にテイワズの上層部が絡んでいたと知り、組織の中での鉄華団の存在の小ささを思い知らされる。そんな中、暗殺の計画を知りながら静観していたモンターク商会を名乗る「仮面の男」が、革命成功後にテイワズが得るであろう利権の分配を見返りに、クーデリアと鉄華団を地球へ送ろうと商談を持ちかけて来る。

第3巻

クーデリア・藍那・バーンスタインを地球へと護送する役割を果たした鉄華団だったが、蒔苗東護之介は面会を果たしたクーデリアを助ける力を現在は有しておらず、アーブラウ代表指名選挙に自身を連れていけと答える。選挙の場に立つ事ができれば必ず再選を果たし、クーデリアの革命を成功に導く事ができる、との提言に乗る意志を固めるオルガ・イツカだったが、参謀役のビスケット・グリフォンは、クーデリアを送り届ける依頼は果たしたのだから、蒔苗の依頼を断って火星に帰るべきだと訴える。政界を追われて亡命中の蒔苗を、アーブラウ代表指名選挙に送り届ける事は、今まで以上の危険を伴う仕事であり、仲間の犠牲は深刻なものになると懸念しての意見だったが、オルガは意志を曲げない。とうとう鉄華団を抜けると言いだしたビスケットだったが、戦局が一度落ち着いたらこれからの事を話そうとオルガと和解し、もう一度だけ戦場に立つ意志を固める。しかし、その約束は果たされる事はなく、その直後の戦いでビスケットは命を落としてしまう。激しく落胆するオルガに対し、三日月・オーガスは自分達の居場所にたどり着くまで止まれないと発破をかける。それを受け、オルガは蒔苗を送り届ける任務を完遂する決意を新たにし、激戦の中へと鉄華団を導いて行くのだった。そんな中、「革命の乙女」であるクーデリアの盾として、英雄視され始めた鉄華団を阻もうとするギャラルホルンでは、組織上層部のイズナリオ・ファリドと政治家のアンリ・フリュウとの癒着が発覚。さらに、思想上「悪」とされていた人体改造が行われたアイン・ダルトンの存在が明るみに出るなど、内部腐敗を露呈してしまう。

登場人物・キャラクター

三日月・オーガス (みかづきおーがす)

火星で暮らす少年。十代に満たない幼い頃からオルガ・イツカと共に過ごしている。オルガからは「ミカ」と呼ばれる事が多い。黒髪の外はねミディアムヘアで、左手にお守りにとアトラ・ミクスタが作った腕輪を付けている。火星の民間警備会社、CGSの参番隊に所属していたが、大人達の憂さ晴らしや弾よけに使われる現状を危険視したオルガの提案に乗り、CGSを乗っ取り鉄華団を組織した。 感覚的にMSの操縦が可能となる阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けており、MSの「ガンダムフレーム」と呼ばれる機種のうちの一つ、ガンダム・バルバトスを乗りこなしている。感情を口に出す事が少なく、表情の変化はあまりない。自分から話しかける事は少ないが、クーデリア・藍那・バーンスタインが文字を教えると提案したのを受け入れるなど、付き合いはいい。 オルガは三日月・オーガスと、幼い頃に本当の居場所に連れていくという約束を交わしており、三日月はオルガが導きたいと思っている場所を見たいと願い、オルガと行動を共にしている。

オルガ・イツカ (おるがいつか)

火星で暮らす少年。十代に満たない幼い頃から三日月・オーガスと共に暮らしている。銀髪で裾を刈り上げ、トップを逆立たせ、前髪を一束左側から右目にかかるように流した髪型をしている。肌の色は褐色。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けている。火星の民間警備会社、CGSの参番隊に所属していたが、大人達の憂さ晴らしや弾よけに使われる現状を危険視し、反乱を起こして会社を乗っ取った。 その後、自分達の組織を「鉄華団」と命名した。三日月を特に信頼しており、理想を語り、支え合っている。ビスケット・グリフォンの意見を参考に、とるべき行動を決断し、団員達を導くリーダーを務めた。団員全てを家族と等しく大事に考えており、命を無駄に落とす事のないようにとの理念を抱いているが、たどり着きたい自分達の居場所に皆を導くためには、犠牲を伴う道を示さねばならない局面も多く、その矛盾を抱えて苦しんでいる。

ビスケット・グリフォン (びすけっとぐりふぉん)

火星で暮らす少年。ドルトコロニー群で働く兄が一人に、火星の農場で働く二人の双子の妹「クッキー」と「クラッカ」がいる。黒髪のショートヘアで、体形はぽっちゃりしている。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けている。火星の民間警備会社、CGSに雇用され、少年達で構成される参番隊に配属されていた。オルガ・イツカが鉄華団を立ち上げて以降は、参謀役のような地位におり、互いに相談し合って今後の計画を決めていた。 鉄華団の活動を支え、時にオルガの考えに真向から対立してでも、団員達にとっての最良の選択を考えていた。

ユージン

火星で暮らす少年。火星の民間警備会社、CGSに雇用され、「参番隊」に配属されていたが、その当時からオルガ・イツカの事をライバル視している。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けており、のちにオルガが結成した鉄華団のメンバーになる。

昭弘・アルトランド (あきひろあるとらんど)

火星で暮らす少年。火星の民間警備会社、CGSに雇用され、「参番隊」に配属されていたが、その当時から三日月・オーガスに次ぐMSの操縦技術を持っている、筋肉質で逞しい身体つきの寡黙な人物。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けており、のちにオルガ・イツカが結成した鉄華団のメンバーになる。 安値で売り買いされる「ヒューマンデブリ」として、弟の昌弘・アルトランドと離れ離れに売られ、生き別れたという過去を持つ。

ノルバ・シノ (のるばしの)

火星で暮らす少年。火星の民間警備会社、CGSに雇用され、「参番隊」に配属されていた。過酷な雇用環境だったが、クーデリア・藍那・バーンスタインの警護を参番隊が任される事になり、お嬢様を近くで見られると興味津々だった。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受けており、のちにオルガ・イツカが結成した鉄華団のメンバーになる。

ノーマン・バーンスタイン (のーまんばーんすたいん)

火星のクリュセ独立自治区を治める立場にある中年の男性。クーデリア・藍那・バーンスタインの父親。火星の独立、権利の確立を掲げて運動する娘を御しきれず、クーデリアの活動を阻止したいと考えている軍事組織、ギャラルホルンに娘を売った。

クーデリア・藍那・バーンスタイン (くーでりああいなばーんすたいん)

火星のクリュセ独立自治区にある首相官邸で生まれ育った若い女性。長く豊かな金髪を、両サイドは頰にかかる長さを一束ずつ残してポニーテールに纏めている。火星の少年達に間近に触れたいと、火星の民間警備会社、CGS所属の少年達の部隊「参番隊」に、地球までの護衛を依頼した。CGS施設内の案内を三日月・オーガスに依頼し、その時に火星の少年達と対等になりたいのだと握手を求めたが、その申し出自体が、こちらを無意識に下に見ていると三日月に指摘され、自己嫌悪に苛まれる。 ギャラルホルンから身柄を狙われ、鉄華団の中心人物となった三日月やオルガ・イツカらと幾多の危険を乗り越えるうちに、虐げられている側の真実を知り、彼らの理解者となる。

フミタン・アドモス (ふみたんあどもす)

クーデリア・藍那・バーンスタインのメイドを勤める若い女性。黒髪をアップにまとめ、眼鏡をかけている。機械に詳しく、鉄華団の旗艦となったウィル・オ・ウィスプ内で宙域航行中に、火星の仲間への連絡経路を簡単につなげてみせている。実はドルトコロニー群でクーデリアを暗殺しようとしたノブリス・ゴルドンと内通しており、労働者テロ鎮圧に見せかけて、反体制思想を持つ労働者層の虐殺と同時にクーデリア暗殺を計画していると知りながら、その地点へと導いた。 しかし、直前になってクーデリアの命を護る事を選択し、身を挺してクーデリアを助けて命を落とした。

アトラ・ミクスタ (あとらみくすた)

三日月・オーガスに恋心を抱く少女。外はねのボブの髪型をしている。火星の雑貨店で働き、食品の納品で民間警備会社、CGSを訪ね、ついでに食事作りも手伝っていた。オルガ・イツカが鉄華団を立ち上げた時に、炊事係に雇ってほしいと申し出て、そのまま行動を共にしている。料理上手で、三日月においしいと言われて喜びを隠せずに赤面するなど、素直な性格の持ち主。

マルバ

火星の民間警備会社、CGSの代表を務める中年の男性。大人達が組織している一軍と、少年達で編成されている「参番隊」の対立などの問題を見過ごし続けていた。ついには参番隊を率いるオルガ・イツカに反乱を起こされ、CGSを乗っ取られて、金を持って逃げ出す。のちに自身の会社を取り戻そうと、名瀬・タービンを頼るが、名瀬はその申し出を引き受けながらもオルガの指揮能力と人柄を評価し、彼が立ち上げた鉄華団に肩入れした。 これにより結局会社の奪還は果たせず、以降は消息不明となる。

オーリス・ステンジャ (おーりすすてんじゃ)

軍事組織、ギャラルホルンの兵士で、中年の男性。クーデリア・藍那・バーンスタインを殺害する任務を受け、その任務の部隊隊長として火星の民間警備会社、CGSの本社を襲撃したが、三日月・オーガスに討たれた。

クランク・ゼント (くらんくぜんと)

軍事組織、ギャラルホルンの実働部隊所属の中年の男性兵士。クーデリア・藍那・バーンスタインを討つ事を命じられたオーリス・ステンジャの補佐を任ぜられたが、作戦の部隊隊長であったオーリスが討たれた事と、戦う相手が少年兵達だと知って、一旦撤退した。少年とは戦争はできないと、上官のコーラルに意見したが、聞き入れられず、逆に一人残らず駆逐せよと命じられる。 少年達と戦う事を最期まで拒んでおり、その中でクーデリアの身柄をかけて、CGS側の代表との一騎打ちを提案。応じて現れた三日月・オーガスと戦いながら説得を試みたが、三日月の戦う意志は揺るがず、敗れて亡くなった。

アイン・ダルトン (あいんだるとん)

軍事組織、ギャラルホルンに所属する若い男性兵士。クランク・ゼントの部下。少年とは戦えないが、命令には従わねばならない苦渋の決断として一人戦地に赴き、説得を試みたクランクの気持ちを無碍にした三日月・オーガスを激しく憎んでいる。クランクを失ったあとにガエリオ・ボードウィンに目をかけられ、共に行動していた。 地球に降下しようとしていた三日月ら鉄華団に、ガエリオと共に戦いを挑んだが、三日月の繰り出した致命的な攻撃からガエリオをかばい、生命維持装置なしでは生きられないほどの傷を負う。その後、機械化した身体を得て、ギャラルホルンが密かに研究を重ねていた阿頼耶識システムの最新のデバイスを埋め込んだ姿で、再び三日月に戦いを挑んだ。

ハエダ

火星の民間警備会社、CGSの一軍の隊長を務める男性。オルガ・イツカや三日月・オーガス、ビスケット・グリフォンが所属する参番隊を、弾よけか憂さ晴らしの玩具としか見ていない。無謀な作戦を立て、参番隊を敵に突っ込ませて援護もしなかった事に、危機感を募らせたオルガに反乱を起こされ、死か服従かと問われたが、反発したため射殺された。

マクギリス・ファリド (まくぎりすふぁりど)

軍事組織であるギャラルホルンに所属する青年。階級は特務三佐。ショートへアの金髪で、前髪は右側に重めに分けている。ガエリオ・ボードウィンとは親友で、彼の9歳違いの妹のアルミリア・ボードウィンとは婚約を結んでいる。ガエリオと共に火星の視察に降り立った時に、ビスケット・グリフォンと三日月・オーガスといっしょに農場で作業していた「クッキー」と「クラッカ」を車で轢きそうになった。 そのお詫びに、持ち合わせていたチョコレートの詰め合わせを贈った事で、三日月から「チョコレートの人」と記憶される。また、モンターク商会に所属する「仮面の男」として暗躍している。

ガエリオ・ボードウィン (がえりおぼーどうぃん)

軍事組織であるギャラルホルンに所属する青年。特務三佐のマクギリス・ファリドとは幼少期からの友人関係にあり、妹のアルミリア・ボードウィンはマクギリスと婚約を交わしている。正義感が強く、自分が所属するギャラルホルンの側にこそ正義があると信じ、幾度となく立ちはだかる鉄華団を敵視している。上官を失い、仇の三日月・オーガスを倒す事を悲願としているアイン・ダルトンに、自身のMS機体である「シュヴァルベ・グレイズ」を与えるなど、アインを見込んでいた。

アルミリア・ボードウィン (あるみりあぼーどうぃん)

ガエリオ・ボードウィンの妹。年は9歳下。マクギリス・ファリドとは婚約者の関係にある。親同士の決めた年の差のある婚約関係ながら、兄のガエリオからの連絡の際には、マクギリスとも話ができるように求めたりと、彼に好意を寄せている。

コーラル

クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を狙う軍事組織、ギャラルホルンの火星軌道基地の指揮官の男性。地球からの監査役のマクギリス・ファリドとガエリオ・ボードウィンを出し抜き、独断でオーリス・ステンジャに一個中隊を任せて派兵し、クーデリアを暗殺しようとした。しかし、三日月・オーガスらの所属する鉄華団の反撃に遭ってオーリスは死亡、オーリスの補佐を命じていたクランク・ゼントに失敗の穴埋めをさせようと、敵の殲滅を命じた。 その際クランクは、少年達とは戦えないと命令に異を唱えたが、コーラルはそれを聞き入れず、強引に命令を下している。クランクも命を落としたのちに、自らマクギリスとガエリオにクーデリアが地球に向かっていると情報を流し、彼らが身柄確保に動くのに乗じて、クーデリアと鉄華団を攻撃し殲滅しようとしたが、返り討ちに遭って命を落とす。 自身の保身と利権のためならば二枚舌を駆使する様を、ガエリオに下衆と評されている。

カルタ・イシュー (かるたいしゅー)

軍事組織であるギャラルホルンに所属する若い女性。マクギリス・ファリドとガエリオ・ボードウィンの幼なじみ。地球外縁軌道統制統合艦隊の指揮官を務めている。セブンスターズという名で呼ばれる名家が、ギャラルホルンの中で力を保持しているが、その中でも第一席の高位の権力を持つ名家出身。マクギリスの父親であるイズナリオ・ファリドは、カルタ・イシューの後見人となっている。 自身の管轄の宙域に現れた鉄華団に果敢に攻撃を仕掛けたが突破され、鉄華団に地球への降下を許してしまう。地上でも再度戦闘を仕掛けたが、交戦相手の三日月・オーガスの圧倒的な力を前に防戦一方の状態に追い込まれ、瀕死の状態で助けに現れたガエリオに対し、密かに好意を寄せているマクギリスが助けに来てくれたと誤解しながら、息を引き取る。

蒔苗 東護之介 (まかない とうごのすけ)

禿頭で、長く立派な髭を蓄え、羽織に袴を身に着けた大柄な男性。地球を四分する経済圏のうちの一つ、アーブラウの代表を務めていたが、政変で代表を追われ、ミレニアム島にある別荘に身を隠していた。そこへクーデリア・藍那・バーンスタインが鉄華団と共に訪れて来たため、クーデリアの掲げる火星の経済的独立という革命を成功させるために、再び政治の表舞台に立つ事を決意した。

アンリ・フリュウ (あんりふりゅう)

年配の女性。軍事組織であるギャラルホルンの有力者であるイズナリオ・ファリドとは政敵関係にある、と表向きは偽っているが、実際は癒着し、協力関係にある政治家。地球を四分する経済圏のうちの一つ、アーブラウの代表指名選挙に立候補しており、下馬評では当選は確実とされていた。しかし、追いやったはずの蒔苗東護之介が再び候補者として名乗りを上げ、加えてギャラルホルンとの癒着を暴かれて、当選は果たせず終わる。

イズナリオ・ファリド (いずなりおふぁりど)

マクギリス・ファリドの父親。初老の男性で、軍事組織のギャラルホルンに所属している。カルタ・イシューの後見人を勤め、表向きは政敵であると偽っているアンリ・フリュウと裏で癒着し、アーブラウの代表にアンリを就かせ、ギャラルホルンの支配体制を揺るがぬものにしようと、秘密裡に計画を進めていた。

名瀬・タービン (なぜたーびん)

中年の男性。マフィアの集団、テイワズに所属する一派の、タービンズという組織の代表を務めている。黒髪のストレートロングヘアで、アミダやラフタなど、数多くの配偶者がいる。マルバから依頼されてオルガ・イツカらに乗っ取られたCGSを取り返すのに力を貸したが、戦いを経てオルガと彼が率いる鉄華団の働きを認め、鉄華団が望んでいたテイワズのボスのマクマード・バリストンとの面会の場を設けた。 オルガと義兄弟の盃を交わし、仕事面と精神面でオルガのアドバイザー役にして兄のような存在となる。

アミダ

名瀬・タービンの配偶者の中年の女性。ウェービーな黒髪ロングヘアをしており、褐色の肌をしている。MSの操縦がうまく、前線に出て現場指揮を執りながら戦う事も多い。

ラフタ

名瀬・タービンの配偶者の若い女性。二つに括った低めの位置のツーテールで、露出の多い動きやすい服装をしている。搭乗しているMSの名前は「百里(ひゃくり)」。ラフタのMSは推進力で優れていたという機体性能の差はあるが、三日月・オーガスと互角の戦いをした実力の持ち主。

昌弘・アルトランド (まさひろあるとらんど)

昭弘・アルトランドの弟。宇宙空間で運送業を営んでいた両親を殺され、兄の昭弘とばらばらに売られてしまった。宇宙海賊のブルワーズに買われ、使い捨ての少年兵として酷使されている。同じく厳しい境遇の仲間同士の結束は強く、鉄華団との戦いで殺されてしまった仲間の弔い合戦に闘志を燃やしていた。鉄華団に所属している昭弘の説得に一度は耳を傾けたものの、自身が救いすら望めない日々を送っていたあいだに、家族同然の仲間に囲まれていた昭弘に激しく嫉妬し、救いを拒む。

集団・組織

CGS

火星のクリュセ独立自治区にある民間警備会社。社長はマルバが務めている。一軍と参番隊とに分かれた部隊を有していたが、一軍は少年達で構成されている参番隊を、弾よけや憂さ晴らしの道具としか見なしておらず、待遇には大きな差がある。マルバは少年達を雇用するにあたり、非人道的とされて禁止されている阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を強制的に受けさせてもいる。 そういった待遇の差が深刻化し、命の危機を感じた参番隊隊長のオルガ・イツカは反乱を決意し、一軍の隊長のハエダを殺害しCGSを乗っ取った。

鉄華団 (てっかだん)

火星の民間警備、CGSに雇用されている少年兵達が団結し、立ち上げた団体。CGSでは一軍や参番隊と序列が定められており、参番隊を構成する「ヒューマンデブリ」と呼ばれる、金銭で買われる少年達と、「宇宙ネズミ」と呼ばれる、阿羅耶識システムの手術を受けた少年達で構成されている。一軍の弾よけ扱いをされ、命の危機に晒される前線に押し出される事や孤立させられる事もあったため、オルガ・イツカらは自分達の居場所を守るために反乱を起こした。

テイワズ

歳星圏を拠点とする複合企業。複合企業は表向きで、実質はマフィアとしてその名を知られている。組織のトップはマクマード・バリストンが務めている。

ギャラルホルン

マクギリス・ファリドやガエリオ・ボールドウィンが所属する軍事組織。300年ほど前に起きた厄祭戦で疲弊した人類が生き残るために、戦争を終結するための圧倒的な力を欲し、同じ志を持つ者達が集まって、国や経済圏に囚われない組織として編成されたのが、発足のきっかけとなった。72機の「ガンダムフレーム」と呼ばれるMSを作成し、その力を最大限に発揮できる阿頼耶識システムを作り上げた。 世界の平和を維持するための集団だったが、現在は内部腐敗が進み、既得権益を拡充するのに腐心する上層部達に意のままにされている。

ブルワーズ

火星・地球間の航路で活動している宇宙海賊船団。「ヒューマンデブリ」と呼ばれる、安値で売買いされる少年達を兵士として酷使している。少年達の扱いは、食事時間に談笑していただけで気まぐれに殴られるなど、酷いもの。昌弘・アルトランドが所属している。火星・地球間にあるデブリ帯に回廊状の抜け道が存在するが、そのデブリ帯はMSの残骸などに含まれる、まだ稼働しているエイハブ・リアクターなどが漂っており、それらが重力を発生させてデブリを引きよせている。 普通の船は、不安定な重力に支配されたこの宙域は通らないが、ブルワーズはこの宙域でも攻撃を仕掛けて来る。

モンターク商会 (もんたーくしょうかい)

「仮面の男」(マクギリス・ファリド)が所属する組織。「仮面の男」はドルトコロニー群でクーデリア・藍那・バーンスタインと接触し、フミタン・アドモスがクーデリアを裏切っており、ドルトコロニーでの暗殺を企てているので、立ち去って身を守るようにと伝えた。その後、モンターク商会の代表として、クーデリアの革命成功ののちにマクマード・バリストンとノブリス・ゴルドンが得るハーフメタルの利権の分配を条件に、地球降下船の手配を買って出ている。 申し出を受け、名瀬・タービンが可能な限り組織の背後を探っているが、不審なところは見つからなかった。

場所

クリュセ独立自治区 (くりゅせどくりつじちく)

火星の自治区。民間警備会社、CGSの本社や、クーデリア・藍那・バーンスタインが暮らすクリュセ自治政府首相官邸がある。開拓時代に結ばれた不利な惑星間経済協定が影響し、視察に訪れたガエリオ・ボードウィンとマクギリス・ファリドが、まさに不毛の土地だと、初見で感想を述べるほど活気に乏しい土地。ビスケット・グリフォンと双子の妹の「クッキー」「クラッカ」が働く農場も、CGS本社の近くにある。

歳星 (さいせい)

マクマード・バリストンが取り仕切るテイワズの本拠地。大型惑星巡行船で、パブなど商業施設も備わっている。

アーブラウ

四つに分割された地球の経済圏の一つ。火星のクリュセ独立自治区はアーブラウの支配下に属している。アーブラウ代表は蒔苗東護ノ介で、蒔苗は、開拓時代に結ばれた不利な惑星間経済協定の見直しを訴えるクーデリア・藍那・バーンスタインと対話する構えを見せた。しかし今は蒔苗はアーブラウ代表の座を追われ、新代表の最有力候補はアンリ・フリュウとされている。

ドルトコロニー群 (どるところにーぐん)

低賃金で何十年も働かされてきた労働者達が業務に従事している都市が集まっているコロニー群。鉄華団は積み荷の内容を知らされないままで、戦闘用MWや銃火器の運送に携わってしまい、労働者と雇用主間の武力闘争に巻き込まれる事となった。この労働者の武装蜂起は、テイワズのボスであるマクマード・バリストンとノブリス・ゴルドンの企てによる、クーデリア・藍那・バーンスタイン暗殺計画の隠れ蓑として画策されたものだった。 結果的にクーデリアは暗殺の危機を脱し、逆にドルトコロニー群での経験を糧に、革命家として大きな成長を遂げる事となる。

その他キーワード

MS (もびるすーつ)

人型に似た、二足歩行で胸部に操縦席のある戦闘用兵器の総称。三日月・オーガスが乗るガンダムフレームのガンダム・バルバトスや、ラフタが乗る「百里(ひゃくり)」などさまざまな種類がある。動力源のエイハブリアクターが稼働する際には、エイハブウェーブを発する。阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受け、感覚的にMSを操縦できる三日月は、背後に寄り添った初対面の機体のエイハブウェーブから、搭乗者を無意識に言い当てて見せた。

ガンダム・バルバトス (がんだむばるばとす)

三日月・オーガスが操縦するMSで、「ガンダムフレーム」と呼ばれる72体のうちの一つ。専用設計のエイハブ・リアクター2基が搭載されている。72体のガンダムフレームには、300年前の厄災戦末期に活躍したデータが残されており、「ガンダム」の名を冠する機体は幾度も歴史の節目に姿を現し、人類史に多大な影響を与えて来ている。

MW (もびるわーかー)

戦闘用の機械。両脇に砲台を具え、戦車のように地上を走る形状をしている。オルガ・イツカがこれに乗って鉄華団の指揮を執っている。パイロットの上体が外に出ているため、敵から目視されやすく、またパイロットが危険にさらされるという難点がある。

ウィル・オ・ウィスプ (うぃるおうぃすぷ)

火星の民間警備会社、CGSが保有していた大型の旗艦。オルガ・イツカが参番隊を率いてCGSに対する反乱を起こし、参番隊改め鉄華団を組織した際に奪い取り、以降は名を「イサリビ」と改めている。

阿頼耶識システム (あらやしきしすてむ)

人とMSを直接つなげるマン・マシーン・インターフェース。脳内に空間認識を司る疑似的な器官を形成し、それを介する事で感覚的な操縦が可能となる。デバイスを背中に埋め込む手術を受ける必要があり、その手術痕は独特な突起として目視で確認できる。非人道的とされ、今は禁止されている技術。しかし、ギャラルホルンでは今も内密に研究を重ねている。 火星の民間警備会社、CGSでは「ヒューマンデブリ」や「宇宙ネズミ」と呼ばれ、安値で売買される少年達を雇用する交換条件として施術を受けさせている。マルバは、阿頼耶識システムを施術したオルガ・イツカや三日月・オーガスら少年達を「髭ありの宇宙ネズミ」と呼んでいる。

宇宙ネズミ (うちゅうねずみ)

阿頼耶識システムの手術を受けた少年達の蔑称。マルバが自身の会社であるCGSを乗っ取った被雇用者の少年達を見下して呼ぶ時に、「宇宙ネズミ」と口にした。ユージンも、並みの船が航行を渋る重力場が入り乱れた宙域を進む時に、自分達の事を「宇宙ネズミ」と表現し、曲芸めいた航行もこなすと自負を述べている。オルガ・イツカ、三日月・オーガス、ビスケット・グリフォンらCGSに雇用されていた少年達、のちの鉄華団のメンバーとなる者達は、雇用の条件として、阿頼耶識システムのデバイスを埋め込む手術を受ける事を強制されていた。

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