概要・あらすじ
宇宙開発の進んだ未来、流刑星となった火星に送り込まれた人々は、不毛の星で超能力を得て生き延びた。彼らが死に絶えたと思った地球人は、再び植民を行おうと火星を訪れ、彼らと遭遇。不幸な行き違いから、両者の間に戦争が起きてしまう。五世代目の火星人である少女星・ペンタ・トゥパールは、戦争中攻撃を受けた両親の力によって、地球人徳永周の宇宙船にテレポートさせられ、徳永周の庇護により地球人として暮らしていた。
登場人物・キャラクター
星・ペンタ・トゥパール (せい・ぺんた・とぅぱーる)
五世代目(ペンタ)の火星人で、白い髪、赤い瞳の少女。15歳。念力、透視、感応力(テレパシー)、瞬間移動などの超能力を持つ。その力は強大で、ESP研究所のつけるランクでは、表面上の能力だけでもダブルのスペシャル級。実の両親は火星の戦争で亡くなっており、死に際星を土星軌道上にいた徳永周の宇宙船にテレポートさせた。 以降、地球人徳永周の娘として、ニュー・トーキョーシティで育てられる。髪を黒く染め、瞳には黒いカラーコンタクトを入れている。夜はニュー・トーキョーシティ上区をテリトリーとする暴走族レッド・グループのリーダーだが、昼間は聖・フェミニン女学校に通っている。 火星に強い憧憬を抱き、いつか火星に行きたいと願っていた。
エルグ
ニュー・トーキョーシティ下区のボス大内源の友人の青年。その正体は異星人で、ゼスヌセルの委員会に所属するルポライター。銀河の辺境を周り、通商用のワープポイントを作っていた。かつては強大な超能力を持っていたが、ゼスヌセルの委員会によってつけられた頭の角によって力を制限されている。 六千年前に委員会によって破壊された赤色螢星の生き残り。一定以上若くも老いもせず、体が弱まったり傷ついたりすると球体となって冬眠するという一種の不老不死と言える種族。昔の自分と同じような超能力を持つ星・ペンタ・トゥパールに興味を抱いて近づき、用意していた宇宙船で彼女を火星へ連れて行く。
徳永 周 (とくなが しゅう)
星・ペンタ・トゥパールの育ての親。合成芝の研究家で、博士。土星をめぐる宇宙船の中で、ミスによって妻を死なせてしまい、生きる気力を無くしていた。しかしそこに火星の両親が戦争から逃がすためにテレポートさせた星が現れ、彼女を育てるために生きることを決意する。
陽一 (よういち)
徳永星の友人の青年。ニュー・トーキョーシティ上区をテリトリーとする暴走族レッド・グループの女ボスである星の右腕として彼女を助ける。ロマンティストで繊細な一面を持つ。カッパに星の関係者として調査の対象とされるうちに、火星をめぐる事件に巻き込まれていく。 ユーラシア貿易の跡取り息子。
大内 源 (おおうち げん)
ニュー・トーキョーシティ下区をテリトリーとする暴走族のリーダー。同じアパートに住んでいるエルグと友人になり、彼をチームの右腕としている。上区のリーダーである徳永星に想いを寄せ、チームの合併を申し出る。
コマンドN・33号 (こまんどえぬ・さんじゅうさんごう)
火星のクリュセに住むヒゲ面の大男。元はクリュセから火星人を追い払うために、地球から派遣されたコマンド部隊の一員。体は半分機械でできており、火星人の超精神波に反応するレーダーが取り付けてある。戦争中、負傷したところを火星人の女性ラーダ・テトラに助けられ、彼女を愛し合うようになるが、テトラは死んでしまう。 以降彼は正気を失ってしまった。現在はドノ・ドズ博士の家に治療を受けながら住んでいる。
ヨダカ
火星のキンメリアに住む火星人。第三世代目(トリ)の青年。シラサギの弟。滅びを回避できるという予言をするも黒羽に殺されてしまった兄シラサギの遺志を継ぎ、星・ペンタ・トゥパールを助けようとする。感応力やテレポートなどの超能力を持つ。
シラサギ
火星のキンメリアに住む火星人。第三世代目(トリ)の青年。ヨダカの兄。予言の能力を持つ夢見の一人。火星の滅びを予言する他の夢見と異なり、ただ一人だけ滅びを回避する道があるという予言をした。百黒老の命令で星・ペンタ・トゥパールを追って来た黒羽から星を守ろうとして死んでしまう。
ぺーブマン
火星人研究局を指揮する連邦の要人。上流階級の出身。めがねをかけた中年男性。かつて火星人との戦争で両手の指を吹っ飛ばされてしまい、それ以来火星人だけでなく、超能力者全般を深く憎み、排斥したいと考えている。コマンドN・33号から発せられた火星人探知用レーダーの信号を発見し、星・ペンタ・トゥパールを実験材料とするため捕えようとする。
百黒老 (ひゃっこくろう)
火星のキンメリアに住む火星人たちの長。地球人との戦いに敗れクリュセを追い出されてしまったが、今も反抗の時を待ち、着々と力を蓄えている。強い力を持つ第五世代(ペンタ)の星・ペンタ・トゥパールがシラサギに導かれキンメリアに来たことを喜ぶが、夢見たちが火星の滅びと、その滅びを導く存在として星を殺さなくてはならないという予言をしたため、悩みながらも黒羽に星の殺害を命じる。 自身もテレポートをはじめとする超能力の持ち主。
黒羽 (くろば)
火星のキンメリアに住む火星人。第四世代(テトラ)の女性。女性ではあるが、子供を産むことができない体であるため、戦士として一線で戦う。強い超能力の持ち主。百黒老に命じられ、シラサギ、ヨダカと共に逃げた星・ペンタ・トゥパールを追う。
アン・ジュール
地球の保安局情報部所属公認ESP。情報部内のESP能力開発部、ESP研究局の要請で、ぺーブマンに捕えられた星・ペンタ・トゥパールを迎えに来た。ぺーブマンとは異なり、政府筋の人間ながら超能力を持つ星を「仲間」だと考えている。自らもトップ・クラスの超能力を持つ。
カッパ
保安局情報部所属公認ESPの少年。「カッパ」という名前は公認ESPの俗称で、本名は不明。アン・ジュールの命令で、ニュー・トーキョーシティのサンシャインやゲンたちの前に現れ、星やエルグのことを探ろうとする。
ラバーバ
カイロにあるニュー・ナセル・シティの組織ソベクの重鎮。ボスであるレガットの命を助けたヨダカと黒羽を匿う。ESPではない普通の人間だが、精神が非常に強く、ESPでも意志を読むことができない。
ミュージュ
ゼスヌセルの委員会で、火星の問題を担当している人物。エルグを調査に赴かせた、上司にあたる存在。超能力者が生まれる赤色螢星である火星を夢魔の星と見做し、破壊すべきと考えている。
ピアン
火星で生まれた地球人の子供。両親はすでに亡くなっている。IQが高いので当初は連邦のシンク・タンクに入れられていたが、念動力があることがわかり、ESP研究局に入った。ESP研究局の設定するレベルではD級の超能力を持つ。火星人としては第一世代(モノ)に相当する存在。 ESP研究局ロビンソン島研究所の崩壊により、「故郷」である火星のキンメリアへ飛ばされ、火星人カスガに保護されることになる。
チグル
火星のキンメリアに住む火星人。第四世代(テトラ)の男性。百黒老の側近のような存在。地球人を追い出し、火星を自分たちのものにするべく計画を練っている。
チガヤ
火星のキンメリアに住む火星人。第四世代(テトラ)の女性。高い念動力を持ち、キンメリアにいながらにして、破壊されたクリュセの医局の修理を妨害する。
カスガ
火星のキンメリアに住む火星人の女性。星・ペンタ・トゥパールがテレポートで送り込んだピアンを、自分たちの同胞であると捉え、育てようとする。ピアンをよそ者と考える百黒老にピアンを取り上げられると、世話をしている家畜を殺すと脅してピアンを取り返した。
ゾー
火星人研究局のドクターである男性。「Dr.ゾー」と呼ばれる。ぺーブマンの罠によって捕らえられた星・ペンタ・トゥパールに残酷な人体実験を行うため、人権侵害のかどで使用禁止となっている生体反応板を星の頭と心臓に埋め込もうとする。
ヘイル
火星人研究局のドクターである女性。「Dr.ヘイル」と呼ばれる。クリュセの医局では火星人解剖のプロ。星・ペンタ・トゥパールに人体実験を行おうとするDr.ゾーの助手として実験に立ち会うが、生きた火星人である星をモルモットと思うことができず、計画から下ろしてほしいとゾーに頼む。
ドノ・ドズ
火星のクリュセに住む博士。コマンドN・33号の家主兼保護者兼主治医。コマンドN・33号が酔って暴れるたびに医局や警察から注意を受け、迎えに行っている。12年前に行われた、実験的移民の一人で、火星人たちの最初の攻撃によって娘を亡くしている。
ラーダ・テトラ
火星のキンメリアに住む火星人。第四世代(テトラ)の女性。地球人移民との戦争時、怪我をしたコマンドN・33号を助け、彼の世話をするうちに恋に落ちる。しかし面倒を見たのはコマンドの弱点を探るためと疑われ、コマンドN・33号の腕の中で死ぬ。
集団・組織
ESP研究局
『スター・レッド』に登場する組織。連邦保安局情報部に所属する研究機関。ESP能力開発部を兼ねている。メキシコ湾内の海中に作られたロビンソン島に研究所があり、世界中から集められたESP能力者が生活している。優秀な能力を持つ者は、公認ESPとして情報部の仕事をすることとなる。公認ESPはロビンソン島が海中にあることからカッパという俗称で呼ばれる。
ゼスヌセル
『スター・レッド』に登場する種族。銀河系で最も古い種族のうちのひとつで、宇宙航法を会得して三万年経つ。平均年齢は400歳前後。壊滅した古代文明の多くが記録している超次元精神生命体アミの存在と、それにとり憑かれた赤色螢星の住民が自らを滅ぼすまでに強大な超能力を身につけてしまうという運命を知り、銀河系から赤色螢星を排除するための委員会を作っている。 委員会は発見した赤色螢星を破壊、そこの住民はエルグのように能力の制限と調整を受けさせるのを通常としている。かつて太陽系第5惑星を破壊し、そこが現在のアステロイド群となっている。
火星人
『スター・レッド』に登場する種族。火星が流刑星であった時に収監された政治犯や終身刑者などの囚人たちの子孫。旧クリュセのドームは許容人数は2万人程度だったが、常時その10倍の人数が2070年から2188年にかけて送り込まれていた。劣悪な環境で囚人たちの平均寿命は6~7年であったという。2202年に送り込まれた囚人の最後の一人が亡くなった。 2188年に地球との行き来が途絶え、いつからかは不明だが、クリュセの地下にある聖地でのみ、子供の生育が可能であることがわかった彼らは独自に子孫を残し始めた。そうして聖地で生まれた子供の第一世代(モノ)は弱い超能力を備え、第二世代は皆ブロンドや銀髪、青や灰色の目といった具合に色素が薄くなる。 やがて第三世代(トリ)になると、白髪に赤い瞳のアルビノ的容姿に、強い超能力を兼ね備えた完璧な火星人となる。火星人の超能力は世代を重ねるほどに強くなり、第三世代より第四世代(テトラ)はさらに広範な能力を持つ。ただひとりの第五世代(ペンタ)である星・ペンタ・トゥパールの力は過去最大であると言える。
場所
火星 (かせい)
太陽系第四惑星。2050年、クリュセに基地が作られ、地球からの第一期移民が開始されるが、胎児死亡率が100%で子供が生まれないことから、2070年に一度植民が取りやめられ、以降は流刑星として政治犯や終身刑者が送られるようになった。その頃地球ではワープ航法の実用化が進み、プロキシマやアルファ・ケンタウリ、バーナード、シリウスなどの恒星系惑星の開発が行われ、やがて火星は見捨てられるようになる。 2188年、火星への流刑は廃止となり、物資などの供給が停止に。地球では発展した恒星系惑星との対立が激しくなり、やがて恒星間戦争が勃発、火星に構っている余裕は完全になくなっていた。火星の囚人たちにはプレートが打ち込まれていたが、その最後の生体反応が消えたのが2202年だった。 恒星間戦争が終結し、平和が訪れた地球は、再び火星に目を向ける。2264年、300人ほどの科学者を中心に移住者をクリュセのドームに送り込むと、囚人たちの子孫であるらしき白髪・赤い瞳の火星人が現れ、聖地に近寄ってはならないという警告を発した。 彼らに脅威を感じた一部の科学者が、火星人の子供二人を捕え、生体実験を試みたことをきっかけに、両者は全面戦争に突入。地球から送られた半機械化戦士コマンド部隊に対し、火星人たちは超能力で対抗。一年以上に及ぶ戦いと大量の犠牲の元に、火星人たちはクリュセを追われ、キンメリアへと逃れて行った。 2270年、地球人は再びクリュセのドーム都市を拠点に第二期移民を開始。2276年現在、クリュセの人口は40万人弱。医局では10万人に子供が生まれている。
クリュセ
火星で最も大きいドーム都市。人口40万人弱。宇宙港があるが、基本的に来訪者が少ないため利用率は低い。東側には移民開始時に作られた旧クリュセが残っており、そこに医局がある。医局の地下は、第二期移民時に科学者が偶然発見した大きな空洞があり、その空間は地上では胎児死亡率100%の火星において、唯一生命が生まれることのできる場所となっている。 火星人たちにとってもそこは聖地であり、取り戻さなくては自分たちの種族に未来はない。
キンメリア
火星で、地球人にクリュセを追われた火星人たちが住んでいる場所。クリュセの真裏にあたるため、クリュセが昼間の時、キンメリアは夜。一部の地球人には冥府とも言われる。火星人たちの住処は地下にあり、テレポートで移動するため、地表に入り口は存在していない。
ネクラ・パスタ
銀河系の中心部分に200箇所ほどある、百万年ほど前に高度な科学発展の果てに超次元精神生命体アミの力を手に入れようとして滅びた古代文明の星の中で、最も古い惑星。ゼスヌセルの委員会が管理下に置き、四つの人工衛星によって封鎖、立ち入り禁止としている。惑星内には遺跡が立ち並び、柱の一本一本が思念の刻まれたテレパシー増幅器となっている。