火輪

火輪

舞台は古の東アジア大陸。竜族の王、東海竜王・敖広の領地である昇竜山から、竜族の御神体・竜王剣が盗まれた。この事態に少年・ラン・リーアンは単身山を下り、竜王剣を取り戻す旅に出る。『封神演義』から物語の着想を得ており、道教を軸とした神話世界をベースに、人界・仙界・天界に跨がる壮大なスケールで描かれる冒険漫画。

正式名称
火輪
ふりがな
かりん
作者
ジャンル
アドベンチャー
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概要・あらすじ

東アジア大陸にある東海竜王の領地・昇竜山。ここには三千年の昔から、竜王剣と呼ばれる竜族の至宝が安置され、それを守る白真珠の化身・白玲娘々が住んでいた。十数年前、ひとりの人間の赤子が昇竜山に捨てられる。赤子を拾った白玲娘々は、赤子をラン・リーアンと名付け、我が子のように慈しみ育てるのだった。

しばらくは平穏な日々が続いたが、赤子が成長し、少年から青年へと差し掛かろうとしたある日、何者かによって竜王剣が盗まれてしまう。剣の守護者であり、竜王剣を飾る至高の三真珠のひとつでもある白玲娘々は、人界に干渉できない自分の代わりに竜王剣を取り戻してくれるようランに懇願し、少年は単身山を下りた。

やがて、大陸を支配する華王朝の王都・舜で竜王剣の在処を突き止めたランだったが、剣は第三公子・寿の手の内にあり、奪還は容易ではない。しかも、寿は竜王剣で父兄を斬り殺し、帝位を簒奪。その殺人によって生じた負の波動が、竜王剣と固い絆で結ばれている白玲娘々の精神に大きなダメージを与え、本性である白真珠へと回帰してしまう。

白玲娘々の変容を深く悲しんだランは、以前の穏やかな生活を取り戻す決意を固め、東海竜王をはじめとする各地の神仙の助けを得ながら、竜王剣の奪還と、白玲娘々の復活を果たす旅へ出立するのだった。

登場人物・キャラクター

ラン・リーアン (らんりーあん)

十数年前、東海竜王・敖広の領地である昇竜山に捨てられていた人間の赤子で、山に住まう仙女・白玲に拾われ、その養い子となる。昇竜山は、天界へと通ずる重要拠点であり、敖広をはじめとする多くの竜族が訪れて、ラン・リーアンの成長に大きく関わった。そのこととラン・リーアン自身の出生の秘密によって、常人では到底太刀打ちできない身体能力と武技を有するようになる。 反面、育ての親である白玲や敖広の愛情を一身に受け、不自由なく育てられたためか、精神的には純粋で世間知らず、そしてやや幼い。しかし、竜王剣が盗まれたことをきっかけに人界に降り立ち、竜族以外の様々な人間・神仙らと触れ合うことによって、様々な感情や多様な考え方を知り、次第に成熟していった。 また、竜王剣奪還の旅が進むにつれて、彼の内に秘められた制御できない巨大な力が発露するようになる。そして、その力の根源である出生の秘密が明らかになるにつれ、天界・仙界・人界のすべてが揺らぐ大きな動乱へと発展していくのだった。

敖広 (あおこあん)

天界の眷族であり、最大の武力と歴史を有する竜族の王。また天の四方を守護する四神の一柱・青龍であり、海を統べる東海竜王でもある。その地位に相応しい実力者で、武芸で彼に比肩しうる者はおらず、数々の神通力を発現することが可能。だが、天界の者が人界に関わってはならないという掟や、なるべく事を荒立てずに解決しようとする考え方ゆえに、その力が表立って発揮されることは少ない。 ただ、実の息子のように可愛がっているラン・リーアンが旅立った際には、自らの力を分け与えるなど、陰ながらのフォローは行っている。ちなみに、ラン・リーアンには自分のことを敖兄と呼ばせているが、最大の親しみを込めたこの呼び方を許されているのは、ラン・リーアンと開の二人のみ。 また、白玲とは五千年も前から愛憎の経緯があり、表面上は穏やかでも両者の間には修復しがたい深い亀裂がある。この亀裂が、物語終盤に繰り広げられる各界動乱の主な原因のひとつとなった。

白玲 (ぱいりん)

柔らかな光を放つ白真珠の印象そのままに、繊細でおとなしく臆病な性格を持つ白真珠の精。元々は竜王剣を飾る三真珠のひとつだったが、金真珠・昱花(ユイホウ)、黒真珠・黒韶(ヘイシャオ)と共に、長い時を経て自我と人形(ひとがた)を有し、竜族の一員として迎えられた。しかし、真珠精が集まると天変地異を誘発することから、昱花は西王母の領域・瑶池へ、黒韶は天界へ移される。 白玲は竜族の拠点・水晶宮に留め置かれ、竜王・敖広の正妃となることが定められた。だが、彼女は敖広の叔父・敖祐と恋仲にあり、やがて彼女を巡る内乱が勃発。戦いは敖広の勝利に終わるものの、白玲の心は彼に対して永遠に閉ざされる。 それでも敖広は白玲を諦めきれず、彼女を昇竜山に移して、竜王剣の守り人としての役目を与えた。そして数千年後、昇竜山に捨てられていた赤子・ラン・リーアンを拾った白玲は、彼を我が子のように慈しみ育てる。だが、そんな彼女の行動の裏には、敖広と白玲しか知らない重大な秘密が隠されていた。

リュイ

大陸全土を支配する華王朝の第四公子。彼の母は竜王剣を飾る三真珠のひとつ、黒真珠の精・黒韶(ヘイシャオ)であり、母から継承したその妖しい美貌と艶やかな魅力は、男女人仙を問わず強力に惹きつける効果がある。リュイの目的は、彼を産んで精を使い果たし、本来の姿である黒真珠に返ってしまった母を、再び人形(ひとがた)に戻すこと。 その達成のために最も効果的な手法として、人界に乱世を引き起こすことを画策している。部下のレン・ソンツェンに竜王剣を盗ませたのはその手始めであり、兄・寿に竜王剣を与えて皇帝の座を奪わせたのも、自らが宰相として兄の傍らに立ち、善人として兄を諫めるふりをしながら、自分の思い描く乱世へと導いていくためであった。 また、これはかつて母を追放した天界への復讐も兼ねている。それは天界と人界が表裏一体であるという法則を利用し、人界を乱すことで天界にも混乱を巻き起こそうという壮大な目論見だった。

レン・ソンツェン (れんそんつぇん)

華王朝の第四公子・リュイの側近で、人の身でありながら竜王の領域である昇竜山に赴いて竜王剣を奪取した人物。リュイが宰相となって以降は、将として華軍を率いて各地を転戦する。多大な戦果を挙げ、華王朝随一の武将として諸侯を恐れさせた。己の魂を捧げても構わないほどリュイに心酔しており、時折、反駁することはあっても、最終的にはリュイの意向に全面的に従う。 またリュイの本性や目的を知ってなお、彼への愛と忠誠心が揺らぐことはなかった。その彼の一途な想いは、やがてリュイのみならず黒韶の心をも動かすことになる。

寿 (しょう)

華王朝の第三公子で、妾腹の子。プライドが高く粗暴な人物で、自分の武技に自信を持っている。だが、実際には周囲が手加減していただけであり、ラン・リーアンに勝負を挑んだ際に完膚なきまでに打ちのめされ、以後、彼を目の敵にするように。リュイから竜王剣を手渡されると、己こそが皇帝になるべきと、竜王剣で父帝及び二人の兄を殺害し、帝位を簒奪。 その殺人の衝撃で白玲は白真珠へと回帰するが、寿がそれを知ることはなかった。帝位に就いてからは、リュイの佞言に乗せられるまま北伐を敢行。しかし、遠征中に女色に耽溺し、諸侯の反発を招いて反華連合の発端となる。こうしてリュイの思惑通り踊らされ、人界は乱世へと突入していくのだった。

楊 戩 (やん じん)

清源妙道真君という仙号を持つ仙人。ラン・リーアンが長寿を求めて旅をしていた折に知り合い、以後、彼の仙術の師匠として行動を共にする。元々は物語の時代の1千年前に存在した辰王朝の皇族だったが、帝位継承争いから逃れるため出奔し、仙人となった。だが、彼の不在は辰王朝の基盤を大きく弱体化させ、ほどなくして華王朝により滅亡。 彼はそのことを大いに悔やんでおり、祖国を滅ぼした華王朝を憎んでもいる。仙人としての力量は非常にハイレベルだが、加えて天の四方を守護する四神の一柱・朱雀の力を継承しており、登場人物のなかでは敖広に比肩する有数の実力者。ちなみに、モデルとなっているのは『西遊記』や『封神演義』にも登場する顕聖二郎真君である。

竜吉公主 (ろんちーこうしゅ)

西方にある瑶池の支配者・西王母(金母)の娘。類稀なる美貌を有し、神仙からの求婚が絶えないほどだったが、それが天界を乱すということで放逐され、鳳凰山で暮らすことを余儀なくされた。その後、鳳凰山を訪れた楊戩と恋仲になり、後に彼の子を身籠っている。気位が高く、勝気な女性で、以前から出自の知れぬ天帝・開を蔑んでいたが、開に瑤池の大斗閣を破壊されたことで怒りが爆発。 天界に対して宣戦を布告した。

(かい)

天界を統べる若き天帝で、無限の神通力を発現するという第三の眼・竪眼の所有者である。歴代天帝は竜族の王族を母にもつことが習わしとなっていたが、開はその出自が隠されていたため、赤子の頃より天界でよからぬ噂の対象とされてきた。そのことが彼の精神を歪め、即位してからは力ずくで物事を運ぶ傲岸不遜な支配者となる。 彼が心を開くのは、幼少時より強い想いを寄せていた敖広と、少年時に彼の情婦だった黒韶の二人だけだったが、黒韶は天界から追放されて久しく、また敖広も竜王と天帝というお互いの立場と、同性であるということ、それに長年抱き続けた白玲への想いから開の気持ちを受け止めることはできなかった。 そのことがより一層、開を苛立たせ、天界の混迷へと導いてしまう。

黒韶 (へいしゃお)

竜王剣を飾る三真珠のひとつで、黒真珠の精。白玲と同じく、人形(ひとがた)を得てからは竜族の一員となり、その後、天界に預けられる。元々は、見る者の情欲を掻き立てる妖艶な美貌と、弱者への慈愛と情深さを併せ持つ女仙だった。だが、玉皇太子だった頃の開との情事によって天界を追放されて以降、慈愛の面は影を潜め、天界への恨みを晴らすため、人界の支配者たちをたぶらかす悪女と化す。 リュイを出産した後は、精気の枯渇から人形を保てず黒真珠へと回帰。だが、彼女の復讐は息子に受け継がれ、着々と進行していった。

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