概要・あらすじ
猫目小僧は大峰連山の山中で、300年に一度しか生まれない猫又の子として誕生したが、人間に近い容貌のため妖怪一族に拒絶され、人間の村に捨てられる。妖怪にも人間にも忌み嫌われながら一人旅を続ける猫目小僧は、様々な怪奇の事件に巻き込まれるが不敵に立ち向かうのだった。
登場人物・キャラクター
猫目小僧 (ねこめこぞう)
大峰連山の山中で、300年に一度しか生まれない猫又の子として誕生する。難産のため母親は死亡した。大妖怪が生まれるはずの丙午の年だったが、人間に近い容貌をしており、妖怪一族に拒絶されて殺されそうになる。しかし、猫又の父親は、密かに赤ん坊を人間の村に捨てた。妖怪にも人間にも異端の存在として忌み嫌われながら、猫目小僧は一人旅を続け、途中で様々な怪奇の事件に遭遇する。
吉野 義一 (よしの ぎいち)
『猫目小僧』の「妖怪水まねき」に登場する男性。奈良県吉野郡上市町の町はずれに住む。大峰連山に山葵を採りに行った時、身元の分からない多由を見つけて嫁にし、子どものミツグをもうけた。ある夜、大峰からうめき声が聞こえ、多由が外に出たので後をつける。大峰の山中で、猫又の出産に集まった妖怪たちの集団を目撃し、命からがら逃げ帰るが、今度は、先に戻って布団に入っていた多由とミツグが妖怪の本性を現す。 義一は気が狂って、そのまま年を取り、崖から足を滑らせて転落死する。
美々 (みみ)
『猫目小僧』の「妖怪水まねき」に登場する独身女性。猫目小僧が生まれた大峰連山を南に山越えした、新宮近辺にある海沿いの村に祖父と2人で住む。海を見下ろす丘に一体の仁王を安置した堂があり、美々は「私に子どもを下さい」と願をかけていた。ある日、猫又が自宅の玄関先に現れ、赤ん坊を捨てていく。美々が化け物を飼っていると村で噂になり、猫に似た子どもは猫目小僧と呼ばれて忌み嫌われ、迫害された。 美々は小僧を仁王の堂に隠して食べ物などを運ぶ。
水まねき (みずまねき)
『猫目小僧』の「妖怪水まねき」に登場する妖怪。津波を呼ぶ妖怪で、高い所に行くほど大きな津波を呼ぶ。人間に取り憑き、自分を高所へ運ばせようとする。昼間は石で、この間に割れば退治できる。猫目小僧が育った海沿いの村に何匹も出現し、大津波を起こそうとする。村にある仁王像が水まねきを封じる守り神だったが、村の女性の美々が水まねきに取り憑かれ、仁王像を破壊してしまう。
大台の一本足 (おおだいのいっぽんあし)
『猫目小僧』の「大台の一本足」に登場する、大台と呼ばれる山の中にいる一本足の妖怪。昔から、大台のどこかに古い釘が一本刺さっており、それは呪いの釘で見た者は死ぬと言い伝えられていた。猫目小僧は大台でこの釘に体内に入り込まれ、釘はだんだん大きくなる。猫目小僧が釘のことで漢方医の診察を受けている時、天井を破って一本足が現れる。 一本足は夏夫という少年が昆虫を殺すのをやめない限り、釘は大きくなり、その少年も猫目小僧も死ぬと告げる。
小人 (こびと)
『猫目小僧』の「小人ののろい(改題「妖怪百人会」)」に登場する人物。見かけだけ美しくて心の卑しい人間を、心にあった醜い姿に作り変えようとする妖怪百人会の会長。百人目のメンバーとして猫目小僧を勧誘する。背広を着た男として振る舞っていたが、正体はマリ子という双子の姉妹の妹。生まれつき小さな体で少しも大きくならないで、知能も発達せず、歩けもしなかったが、額に目が1つできてから、妖力を発揮するようになった。 美しい容姿の姉を嫉妬で憎んでおり、心が醜ければすぐにでも醜い顔にしてやりたいと思っていた。
肉玉 (にくだま)
『猫目小僧』の「妖怪肉玉」に登場する妖怪。奈良県五条市の桜木家の人間だけが見る腫瘍の塊のような妖怪で、見た者は必ず死ぬ。正体はがん細胞で、当初は幻覚だったが、桜木家の人々の強い恐怖心により実体化してしまい、増殖して町じゅうの人々を襲う。口から体内に入り込まれると、がんになる。
ないない
『猫目小僧』の「妖怪肉玉」に登場する、手も足もない妖怪。知能が低く喋れない。猫目小僧がねぐらにしていた天井裏に現れ、火事の時、先が手になった長い舌を伸ばし、猫目小僧を引き摺り込んで助けを求める。猫目小僧が背負ってやると、「だあ」と言ってあまえる。ないないの舌で触ると、肉玉が溶けてしまう。 正体は、猫目小僧が荷物を括り付けていつも担いでいる木の棒で、一緒に旅をしているうちに妖怪化した。
千手観音 (せんじゅかんのん)
『猫目小僧』の「妖怪千手観音」に登場する妖怪。山中にある姫神村の寺に祀られた千手観音像に春香(しゅんか)という尼僧が仕え、生き血を飲ませ続けたため悪鬼と化す。村人が千手観音像に願い事を言うと、春香は千手観音になりすまして願いを叶え、かわりに生き血を取っていく。生身の体になり動き出した千手観音は春香を殺して血を吸い、さらに人間の血を吸うため村を襲う。
不死身の男 (ふじみのおとこ)
『猫目小僧』の「不死身の男」に登場する、どんなに殺しても死なない男。再生する能力がある。武夫という少年の父親ががうっかり自動車ではねてケガをさせてから、これにつけこみ、金持ちであるその屋敷の財産を乗っ取ろうとする。武夫がもらい子であることや、武夫の父親の過去の悪事をゆすりのネタにしていた。武夫の父親が一度、顔を焼いたところ、火傷はもどらなかった。 電車にひかれて切断した足も、人間に再生する。
みにくい悪魔 (みにくいあくま)
『猫目小僧』の「みにくい悪魔」に登場する男。家柄の良い家に生まれ、両親は美形だが、赤ん坊を取り上げた老婆が気絶したほど醜い容貌をしている。性格も残酷で、子どもの頃、近所の男の子の目を手でつかみ取った。父親は何とかまともな容貌にしたいと、方々の病院を回るが無駄だった。醜い姿を人前にさらすことなど平気だったが、好きな女の子に拒絶されてから、自分の姿を呪い、普通の顔をした人々を呪う。 ある日、親子で生まれた町を離れた後、醜い悪魔は死にかけている美青年に脳を移植する。
妖怪博士 (ようかいはかせ)
『猫目小僧』の「みにくい悪魔」に登場する、生命の創造に関心を持つ博士。醜い悪魔と呼ばれる男の父親に豹の脳を移植し、「芸術品」と呼ぶ。醜い悪魔の父親は化け物のように醜い息子をまともにしようと必死で、妖怪博士を訪ね、全財産を投げ出した上、自分から進んで実験材料となり、脳を捨て去ることを申し出た。だが、豹の脳を移植した醜い悪魔の父親の顔には、やがて豹の斑点が現れてくる。 妖怪博士は醜い悪魔の脳を、自動車事故で死を待つばかりになった美青年に移植する。
たくみ
『猫目小僧』の「手」に登場する少年。自宅の部屋に地獄が現れるようになり、亡者の中に母親の姿を見つける。たくみは崖から落ちそうになっている母親に手を伸ばし、その手を掴むと地獄は消える。母親は普段と変わらず生活しているが、そのとき以来、たくみは右手を握りしめて開かない。開いたら母親が地獄の崖から落ちると信じているが、母親が地獄にいるなどと誰にも言えないでいた。 ある雨上がりの日、たくみは増水した川の激流に流され、助けを求める猫目小僧を発見する。助けるためには右手を開かねばならず、たくみは苦悩する。
ちひろ
『猫目小僧』の「階段」に登場する小学生男子。母親を亡くし、ずっと忘れられずに嘆き悲しみ、ひと目見るだけでいいと願う。一カ月ほど前から天井裏に住んでいた猫目小僧が同情し、ひと目だけ合わせると約束してちひろを空き家に連れていく。階段の上の蓋を開けて、「おかあさん」と呼ぶと母に会えると教えられ、ちひろは母と再会した。 これで忘れるようにと猫目小僧は念を押すが、ちひろは忘れるどころか母を慕う心がますます強くなる。猫目小僧に懇願して、もう一度母に会う。その後、ちひろは1人で例の空き家に向かうのだった。
モトム
『猫目小僧』の「ともだち」に登場する子浜小学校に通う少年。鉄司の親友で一緒に海岸で釣りをする。運動音痴で、鉄司がサッカー部に入ったため、次第に一人ぼっちになる。ある日、1人で釣りに行くと、鉄司が友人たち釣りをしていた。そこは、モトムと鉄司が秘密にしようと約束した穴場だった。その後、モトムは大事な話があると言って、登校前に鉄司を海に連れ出すと、岩場のほら穴に突き落とす。 その上から岩で蓋をし、鉄司を自分だけの友達にするため、満ち潮で殺してしまおうとする。
鉄司
『猫目小僧』の「ともだち」に登場する子浜小学校に通う少年。モトムの親友で一緒に海岸で釣りをしていたが、サッカー部に入ったため、運動音痴のモトムは一人ぼっちになる。自分だけの友達にしようと思ったモトムに、海でほら穴に突き落とされ、岩で蓋をされて、満ち潮になったら死ぬという状況になる。モトムの家の屋根裏に住んでいた猫目小僧は、鉄司の行方を捜してモトムの後を追うが、こつ然と姿を消してしまう。 猫目小僧は猫からモトムが東京にいると知らせを受け、鉄司を助けるため東京へ向かう。
集団・組織
妖怪百人会 (ようかいひゃくにんかい)
『猫目小僧』の「小人ののろい(改題「妖怪百人会」)」に登場する組織。会長は小人さまと呼ばれている。醜い姿ゆえに世間に迫害されたという記憶を持つ人間の集まりで、醜い心を持つ人間を醜い容姿に作り変えようと行動する。だが、メンバーの正体は、小人が額にできた1つの目から発揮する力で、病院にある臓器の標本を人間化させたものであった。